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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
345/748

番外編 ルーゼル=ロッヘのその後とある店主の店の再建(5)

『水晶』以外に、以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


『ウィザーズ コンダクター』は、2022年12月12日の投稿で、第7部が完結します。長かった第7部ですが、いろいろと伏線の回収がなされた話だったと思います。『ウィザーズ コンダクター』の第8部は、2023年1月中旬から投稿を開始していく予定です。執筆は、今のところ、第8部の後半の盛り上がりが終わったところら辺まで完了しています。

ぜひ、興味のある方は、『ウィザーズ コンダクター』および、『この異世界に救済を』を読んで見てください。


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ルーゼル=ロッヘの後日談。トリグゲラと繋がっていたモートレットン公は、イルターシャらによってルーゼル=ロッヘのトップから陥落し、かつ、捕まえられ、デモをしている人々の所へと顔を晒すのであった。


 庁舎の外。

 一斉というわけではないが、斜め上を見る。

 そこは、ルーゼル=ロッヘのトップであるモートレットン公のいう執務室がある場所だ。

 そこの窓が開かれ、何者かによって捕まっているモートレットン公がその姿を現わすのだった。

 そして、デモをしている人の何人かがある存在に気づいて声を上げる。

 「おい、モートレットンの後ろにいるの、リースの騎士団で最強の女騎士がいるぞ!!」

 声を上げた人物は、モートレットン公の後ろにいる人物が何者かを思い出すのだった。

 リースの騎士団の中でも、最強の騎士とされるほどに、騎士としての実力が高いメルフェルドが後ろにいるし、彼女はリースの国の領域の中で名前を知らない者はほとんどいない。

 リースにとって騎士とは、(ほま)れ高い存在であり、その中で最強なのだから、敬意の対象にされないわけがない。ルーゼル=ロッヘでもその名は知られており、分かる人には分かってしまうのだ。

 「マジかよ。」

 「ああ~。」

 デモをしている人々の声がいくつも波が重なっていき、ざわざわとした感じを作り、そして、斜め上へ視線を集めて行くのだった。


 それを見下ろしている者たち―…。

 一番前に手を後ろに縛られているモートレットン公。

 手を縛り、縄を持っているイルターシャがデモの見ている人々から見て左側に、右側にはモートレットン公に近い側からメルフェルド、レラグとなっている。

 「静まってください。」

と、メルフェルドは大きな声を出し、デモをしている人々に呼び掛ける。

 その声が聞こえたのだろうか、いや、メルフェルドが何かを言っているのかを感じて、声の波を鎮めるのだった。

 メルフェルドが何を言おうとしているのかを聞きたくて―…。

 それが時には、デモをしているルーゼル=ロッヘの住民にとって、解放を意味するかもしれないということに―…。

 デモをしている住民が静まったのを確認したメルフェルドは、

 「皆さん、ルーゼル=ロッヘで不正をおこない、かつ、悪政をおこなっていたモートレットン=クラベリンスキーをルーゼル=ロッヘのトップから更迭することにいたしました。」

と、高らかに宣言する。

 その時でも、言葉遣いは丁寧であることから、メルフェルドが騎士の中でも礼儀正しい、謙虚な人であるという印象をルーゼル=ロッヘのデモをしている住民に植え付けることになる。

 これは、モートレットン公のように自らが自発的に作ったものではなく、元来の性格である。ゆえに、怪しむ者もいるかもしれないが、多くの者は受け入れることになる。

 モートレットン公は、物凄い形相でメルフェルドではなく、イルターシャの方を睨むのだった。メルフェルドは捕まえただけで、それを追い詰めたのがイルターシャと分かっているからだ。

 でも、モートレットン公はメルフェルドを睨んでいるとデモに参加している人々は思うのだった。

 メルフェルドしか知らないのだから―…。

 そして、周囲から声が一斉に湧く。

 「モートレットン公が追放された。リースの女騎士がやってくれたんだ。」

 「これでもう、トリグゲラやそいつからも、モートレットン公からも―…。」

 「おい、周囲にも知らせてやろうぜ。」

 人々は嬉しい悲鳴を上げる。

 これは、モートレットン公におけるルーゼル=ロッヘ支配からの解放であった。

 今まで、モートレットン公が支配した最初の頃は善人だと思っていたが、公的職員で働いていた元職員らによって、噂という形でモートレットン公がトリグゲラという裏の人間と繋がって、トリグゲラから便宜を受けていた。

 さらに、公的機関での貸し出しをモートレットン公の息のかかった者や港湾以外の者および組織では、トリグゲラから借りるように脅し、それを公的機関の職員はそのように行動しないといけないと内部文書によって通達されていたのである。

 それに、トリグゲラの横暴をモートレットン公が止めなかったことにより、次第にモートレットン公の信頼は失っていっていたのだ。それに、気づかぬはモートレットン公とその周辺のみであった。

 モートレットン公の悪口を言う者は、トリグゲラとその部下によって酷い目に合わされていたのだから―…。気づかれないようにコソコソとなるのは当然の結果であった。

 そして、これがモートレットン公失墜の楔として、次第に逃れられなくなるぐらいに強く縛られるのだった。本人は、危険な薬に手を出して、綺麗な幻想を見ていて、そのことに気づかなかったかのように、薬の効力から覚め、今の最悪な、どうしようもできない状況を知り、陥っていることに絶望するのみだ。

 危険な薬による甘く素晴らしい世界(まぼろし)に、もう浸ることはできないのだから―…。モートレットン公にとって都合の良い幸せな世界を二度見ることなく。

 いや、自らの頭の中にそれを創り出し、そこに浸ってしまえば良いのか。さて、モートレットン公の頭の中はどのようなものを描く―…。

 その頃、一部のデモをおこなっている者たちは、ルーゼル=ロッヘの中を走り回りながら、モートレットン公が更迭されたことを周囲に伝えていく。

 これで、モートレットン公体制が終わり、ルーゼル=ロッヘの住民のためのルーゼル=ロッヘになることを期待して―…。期待があるから絶望も存在するが、それでも、今までの絶望から解放されるのなら、良いのかもしれない。それに、次も絶望であるのなら、その絶望を再度振り払えば良い。そうやって、自らにとって、いや、ルーゼル=ロッヘに住んでいる者たちにとって過ごしやすいルーゼル=ロッヘを実現できれば良いのだから―…。

 声と行動にしなければ、誰も意見を聞いてくれない。

 さらに、自分達を敵に回すと最悪になるということを示さないと、聞いてもくれない。人は自らの優位な地位に酔うし、自らの幸せの安全を確保できなければ、人は他者のことを気遣うことはかなり難しいことなのだから―…。無意識に自分が損をして助けることもあるにはあるだろうが―…。


 一方、その頃、公的機関の職員の何人かが外に出る。

 そして―…。

 (モートレットン公が捕まっている!! それに、後ろにいるのは―…、新人?)

と、外に出た公的機関の職員の一人が驚くのだった。

 理由は、ルーゼル=ロッヘの公的機関に最近入ってきた新人が、ルーゼル=ロッヘのトップであるモートレットン公を捕まえたと思われる者たちの中に含まれていたからだ。

 そう、その新人とは、レラグのことである。

 レラグは、この機関に少し前から潜入していたのだ。公的機関の職員として―…。

 そして、外に出た一人が、中へと入って、レラグがモートレットン公を捕まえている側にいることを知らせるのだった。

 その知らせを聞いた公的機関の職員たちは驚く。

 そのうちの一人は、

 「えっ!! 新人が!!! 確かに新人は、ルーゼル=ロッヘに来る前にどこかの都市の公的機関に勤めてことがあると書いてあったが、なぜ、モートレットン公を捕まえる側に―…。」

と、言い、心の中では、

 (まさか、モートレットン公を追い落とすためのスパイ。スパイなら、可能性としてあるのは―…。)

と、思いかけたところで、外から戻って来た一人が追加して言うのだった。

 「リースの最強の女騎士も来ていると、外で騒いでいます。」

 この言葉は、庁舎の中に入り口近くのフロアにいる公的機関の職員たちにさらなる驚きと、同時に誰がモートレットン公を追い落とそうとしているのかを理解する。

 「つまり、リースを事実上掌握している王殺しのランシュか。」

 (確かに、モートレットン公は噂によれば、ラーンドル一派に賄賂を贈ることで、このルーゼル=ロッヘのトップの地位を手に入れたとか。自らの領地を手放して―…。貿易の利益を欲して―…。利益ならない領地を捨てて―…。ランシュは、二年前、レグニエド王の誕生日に王を大勢の客人の目の前で殺したとか。そして、レグニエド王はラーンドル一派を重用しているから、リースの実権を握っているラーンドル一派に加担した者たちを追い落とそうとしているんだ。ここ二年は、対外面で大変だったから、地方のすべてまでは目がいかなかったのだろう。本格的にルーゼル=ロッヘからもラーンドル一派を排除しようとしているわけだ。だが、モートレットン公は、ラーンドル一派とはそこまで深くつながっているわけではないのだが―…。)

 ランシュがモートレットン公を追い落とそうとしていることはわかった。

 だが、それだと疑問が出てくるのだった。

 二年前にリースの実権を完全ではないが、掌握したランシュが、今になってラーンドル一派と繋がりのあったモートレットン公を潰すのはどうしてなのか?

 モートレットン公は、確かに、ラーンドル一派との繋がりは存在したが、そこまで強いものではなく、ルーゼル=ロッヘのトップになる時に、賄賂を渡した時ぐらいで、それ以外は、あまり必要以上に関係を持とうとしなかった。ラーンドル一派に属したとしても、どこかで予想外のことで崩壊するのではないかと感じたからだ。

 そういうことが理解できないランシュではないはずだ。ランシュのリースにおける治世は、完璧とは言えないが、それでも、リースの生活に関しては少しずつ改善がみられるようにはなっていた。ラーンドル一派が生き残っている以上、できることには限りがあるということの方が多いようであるが―…。

 ゆえに、ランシュのルーゼル=ロッヘにおけるモートレットン公追放への加担がわからないのだ。

 そして、この公的機関の職員の考えていることは―…。


 一方、庁舎の外。

 レラグがメルフェルドに変わって言い始める。

 「ルーゼル=ロッヘの皆さま。私はリースで行政の副宰相兼筆頭行政官を務めさせていただいております、レラグ=フィーランドです。今回、リースの領土内にあるルーゼル=ロッヘにおいて、不正な方法でルーゼル=ロッヘのトップに就任したモートレットン=クラベリンスキーを追放することにいたしました。その不正の方法は、リースのラーンドル商会のトップ、アングリア氏に対して賄賂を渡すことによって、ルーゼル=ロッヘのトップの地位を見返りとしたことです。さらに、ルーゼル=ロッヘでは、脅迫によって無理矢理、これから事業を起こそうとする人々および継続しようとしている人たちに金をトリグゲラから借りさせるように誘導し、かつ、返済できないことによる暴力被害が多発していることがリースにも報告されています。お金の貸し借りに関しては、我々、リースでトリグゲラたち一派の罪を問うことができませんが、それによって暴力行使、挙句の果て、器物破損、建物破壊に関しては、リースの法律上で罪に問うことができます。ルーゼル=ロッヘでもリースの領土内ということもあり、リースの法が適用可能です。モートレットン=クラベリンスキーおよびトリグゲラはリースの法により裁くことになるでしょう。さらに、司法に関しては、中立の者たちを派遣することにします。次に、無理矢理お金を貸された者の借金は、トリグゲラの事務所を差し押さえ、その資金をルーゼル=ロッヘ公的機関にリースの者による管理の元で一時的に移し、再度、店に関しての被害調査をした結果、お店が再建できるように金銭面の支援をおこなっていくことになります。さらに、トリグゲラ一派から差し押さえた金額が再建費用に足りない場合は、公的機関から支出させていただきますし、かつ、リースの方からも支援をしていくことになります。ランシュ様ならそのような裁可をしてくれることでしょう。さて、最後に、ルーゼル=ロッヘの皆さま、我々が二年ほどもモートレットン公のこのような行為を放置していたこと、申し訳ございませんでした。」

 レラグは頭を下げる。

 レラグとしても、この二年ほど、リースおよび対外関係においても、かなり量の仕事があり、ルーゼル=ロッヘまで手が回るような機会はなかった。

 それに、ラーンドル一派による妨害というのが、大なり小なり存在したことにより、余計にそっちの方にも割かないといけないような状態が続いたりしたのだ。

 レラグとしては、そういう意味で、ルーゼル=ロッヘのことを放置してしまったことは申し訳ないと感じるのだった。ランシュにしても、ルーゼル=ロッヘの現状を知って、申し訳ないという気持ちになる。特に、ヒルバスが―…。

 ヒルバスとしては、昔、ルーゼル=ロッヘにも行ったことがあり、リースよりは港湾街としての実力としては劣っているかもしれないが、それでも、活気があり、人が賑やかであることを覚えている。その時は、モートレットン公がルーゼル=ロッヘのトップになる前のことであったが、モートレットン公の時代になって、トリグゲラのような人を不幸にしている奴が罷り通っているのを見て、苛立ちを感じたのである。

 冷静さを失わなかったヒルバスは、しっかりとルーゼル=ロッヘを統治できる人材を育て、情報を裏からもしっかりと調べた上で、慎重に行動した。成行きだけで行動しては、ルーゼル=ロッヘを返って、最悪の方向に向かわせる可能性が存在したからだ。

 この二年ほどで、ヒルバスも時には慎重に行動することと、力の行使の仕方というものをしっかりと学んだのだ。

 まあ、要は、ヒルバスがルーゼル=ロッヘの現状を知って、どうにかしようとしたことが今回のレラグ、イルターシャのモートレットン公の追放に関わるような一連出来事へと向かわたのである。

 そこに、デモやルーゼル=ロッヘの住民も加わることによって―…。


番外編 ルーゼル=ロッヘのその後とある店主の店の再建(6)に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回で、番外編の一つが完結します。次の番外編がかなり長くなりそうです。今も執筆中で、今年中には確実に終わらないことだけは確かです。長くなるとは予想していましたが、正直、まだ、アルデルダ領の獲得戦をやっている途中だとは―…。

それでも、ランシュ視点でしか書けなかったミラング共和国との戦いを、別の視点から描写できているところは私自身良いなと感じています。第1編最終章で出てくるキャラも出てくるし、セリフとかもあるので、激熱な展開なのかなと思います。

まあ、次の番外編は、ランシュに殺されたあの人とか、ランシュを倒したあの人とか、対外強硬派などの登場人物が出てくる感じです。なるべく、残虐な描写は控えるようにして、書いていっているとは思いますが―…。


さて、2022年のあと少しとなってきていますが、私自身は集中力が切れ始めており、なかなか集中できない時も続いていますが、PV数やらユニークの上昇を見ながら慰められながら、何とかやっていきたいと思います。

無理しない程度に頑張ります。


では―…。

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