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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
341/748

番外編 ルーゼル=ロッヘのその後とある店主の店の再建(1)

『水晶』以外に、以下の作品を投稿しています。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」およびカクヨムで投稿中):

(小説家なろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランは、サンバリアへと向けて、リースから旅立つのだった。

その前に、番外編を二本ほど投稿していきます。

最初の番外編は6回の投稿で完結するものです。

話は、ルーゼル=ロッヘ、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドがトリグゲラらを倒した翌日の昼からとなっております。


 少し時は戻る。

 サイドストーリーと言っても良い、話をしていこうか。

 時は、瑠璃たちがルーゼル=ロッヘでランシュに出会って、ランシュが企画したゲームの招待状をもらった翌日の昼から―…。

 飲食店の店主が、途方に暮れている。

 そりゃそうだろう。この男にとって、この自らが経営する店は生きがいであった。

 それなのに、クローナがたまたまゼルゲルたちの集団に煽られた後、見事に返り討ちにしたのだ。その腹いせに店を丸ごと壊されたのだ。

 少女のことは、店を守ってくれている感もあるので、恨むことはできなかった。

 だけど―…。

 複雑な感情を抱きながらも、このどうしようもない状況、男にとっての希望を断ち、絶望の停滞に他ならない。

 そんななか―…。

 「マルガウさん。あんた―…。」

と、この飲食店を経営する人物であったマルガウという男を見かけた、常連客の一人が声をかける。

 その声を聞こえてもおかしくないはずの音量であるが、マルガウは傷心のせいか聞こえていなかった。気持ちという面で、声が聞こえるかどうかが変わるのだから、よほどのことであるのは確かだ。

 そして、常連客の一人は、

 (聞こえてないよ―…。)

と、思い―…。

 「マルガウさん!! 聞いていますか!!!」

と、声を大きくして、叫ぶほどではない声で言う。

 これだけ言えば、はっきりと聞こえているだろう。そう、思うのだった。

 兎に角、聞こえたかどうかは、反応がなければわからない。

 そして―…。

 「ああ~、お客さん。お店はこの通り、ゼルゲルらに破壊されたから、今日の営業は無理です。すみませんが今日のところは―…。」

と、マルガウは言う。

 でも、その声は、今までの陽気さというものがないし、かつ、心ここに在らずという感じで、まるで、生気のない営業トークでしかなかった。これが、もしも普段のお店でおこなわれているのであれば、不快に思って、誰も通っておらず、即店じまいになっていたとしてもおかくしはない。

 だが、普段からマルガウはそのような営業はしないし、不機嫌そうな感じのある人だとしても、生気のない営業などしやしない、そのような接客をおこなったりすることはない。

 「あんた、店がこんな状態になっているけど、それでも、朗報だから、聞いてくれ!!!」

と、常連客の一人は、マルガウにとにかく自分の話を聞いてくれと言う。

 本当に聞いて欲しいのだ。

 マルガウの飲食店は、すでにゼルゲルによって壊されてしまっているけど、決して、マルガウが最悪の状態になる可能性が低いという知らせでもあった。

 「ルーゼル=ロッヘの裏を牛耳っていたトリグゲラが捕まったんだ!! これで、俺らはあいつらに怯えなくて済むんだ。」

と、常連客の一人は意気揚々に言う。

 そう、今朝、トリグゲラおよびゼルゲルらの組織の多くが捕まったのだ。トリグゲラは、アンバイドに敗北し、そこから何とか逃げ出し、ルーゼル=ロッヘに戻ってくるがそこには、ルーゼル=ロッヘの中でトリグゲラに恨みのある者たちによって、残虐に殺されそうになったところを、ルーゼル=ロッヘの衛兵が見つけ、捕まえたのだ。

 衛兵からしても、どうして、トリグゲラを捕まえて良いのかわからなかった。

 その理由は、もう少し、二人の会話を見てからにしよう。

 「そうか―…。だけど、俺の店は返ってこない―…。リースなら、まだ、このような場合には生活再建の補償金がもらえるが、ルーゼル=ロッヘでは―…。」

と、マルガウは、常連客の一人の言葉を聞いても、喜びもしない。

 できるはずもない。だって、自分の店は、いくらゼルゲルらが捕まろうとも、再建の資金が手に入るわけでもないければ、その資金を手に入れる方法もあるわけがない。

 まず、ルーゼル=ロッヘで再建のための資金を借りることさえできない。

 なぜなら、借金を抱えている者に金を貸してくれる公的および銀行に相当する機関はない。そうなってくると、トリグゲラのようなルーゼル=ロッヘの裏の存在である組織から借りるしかないのだ。元々、彼らは、金貸しで成り上がり、裏を率いるようになってきたのだから―…。

 それも、無理矢理、狙った相手に借りさせるということをして―…。

 特に、その餌食になったのは、ルーゼル=ロッヘに来て、右も左もわからない、これから商売をおこなおうとしている者たちであった。

 マルガウは、トリグゲラどもが危ない存在であると知っていたので、公的機関でお店を構えるための資金を借りようとしたが、その公的機関の中にもトリグゲラの仲間のような存在がいて、邪魔をして、無理矢理、金銭を借りる契約を脅して、結ばされるのであった。何度も断ったが、武器や暴力で脅され―…。

 その光景を公的機関の人間も見ていたはずだが、実際には何も助けてくれなかった。

 そういう目にあっているからこそ、公的機関を信用することはできないし、銀行に相当する機関は借金をしている人たちに貸してくれることはない。貸した資金が返ってこない可能性を怖れて―…。

 銀行に相当する機関には恨みはないが、それでも、公的機関の人間は―…。

 一方で、マルガウはたまたま商売をやっている客から聞いた話では、リースでは二年前の王の暗殺事件以後、暗殺犯の主犯が国家を掌握し、その中で、商業の再建のための貸し出しの制度がある。

 だけど、ラーンドル一派に妨害されることもあり、実際にはそこまで上手くいっているわけではないが、それでも、隣の芝生は青いと感じるぐらいにマルガウはリースでその制度は上手く言っているのだと思っている。

 「まあ、リースのことを言ってしまえば、俺らもリースの国の中の一つの街ではあるが―…、ここはラーンドル一派と裏で繋がっている奴らが街のトップを務めているからな。その資金が奴らのための金になっているのだろう。」

と、常連客の一人が言う。

 そう、ルーゼル=ロッヘは、ラーンドル一派に裏で繋がっている者がトップを務めている。

 それでも、ランシュがそのことを知らないわけではないが、この街のトップは狡賢いのか、ランシュやヒルバスに対して尻尾を見せるようなことはしなかった。

 ラーンドル一派の中では、下っ端でしかないが、これはアングリアが無能であり、リースの王が暗殺された以上、ラーンドル一派で目立った存在になるのは、自らの危険を引き寄せると感じて、大人しくしているのだ。ルーゼル=ロッヘが貿易港であるとしても、リースの規模から考えると、あまりにも小さな港町であることに変わりはない。

 そして、ラーンドル一派の意向というものをあまり使わずに、トリグゲラのような裏の人間と密約の感じで繋がり、自らの支配基盤を確立しているのだ。

 「だから、俺の店は―…。」

 マルガウの店は再建できない。

 その答えから一歩も進みだすことができすに―…。


 さて、ここで物語を別の方向へと向けよう。

 場所は、ルーゼル=ロッヘの刑務所と言っても良い場所。

 その中に二つの牢屋。

 そこには、今日、捕まった二人の人物がいた。

 「ふざけな!!! 俺を誰だと思っていやがる!!! ルーゼル=ロッヘの裏の顔、トリグゲラの第一の子分ゼルゲル様だ!!! お前ら、衛兵がこのようなことをして許されると思っているのか!!!」

 ゼルゲルは叫ぶ。

 なぜ、自分はこのような粗末な場所にいなければならないのか。

 どうして、衛兵に捕まらなければならないのか。

 おかしいではないか。

 ゼルゲルにとって、捕まる理由はわからない。

 自らのしていることは、至極真っ当なことであることは当然であり、罪に問われるようなことをしているはずがない。

 一方で、トリグゲラは、

 (クソッ!! あいつら~、覚えとけよ。ここを出たら、血祭りにあげてやる!!!)

と、今朝、あったことを思い出しながら、このような粗末な場所を出て、どう復讐してやろうか考えるのだった。

 ゼルゲルのように直接的に感情をぶつけるのではなく、いかに合理的に、必要なこと、それは感情的なことではあるが、なそうか。

 トリグゲラは、ゼルゲルのように単純ではなく、頭も使えるのだ。厄介ではあるし、論理を崩したとしたとしても、それを捻じ曲げるぐらいの力を有しているのだから―…。

 天成獣の宿っている武器を没収されているけど、しばらくの間は、その力を行使することは可能なのだ。そのことを知っている者は、天成獣の宿っている武器を扱う者でも数は少ない。実力者なら知っている者の割合は大きくなるのであるが―…。

 そして、トリグゲラは続ける。

 (だが、ここから出るためにもタイミングというものが必要だ。なるべく早めにそのタイミングというものが来てくれるのがありがたいんだが―…。それに、あいつは何をやっているんだ。)

と、心の中で、あることを思い始める。

 そう、トリグゲラが裏の顔として威張ることができたのは、ある人物の後ろ盾というものが存在したからだ。その人物はトリグゲラが利用しやすい奴だと思っていた節があり、裏からもルーゼル=ロッヘでの自らの権威というものを確立しようとしたのだ。

 行く行くは、ルーゼル=ロッヘのトップを世襲にしていって、自らを死後も崇められるように―…。死んだら、本人は自らの栄光というものを知れるはずがないのに―…。

 「五月蠅いぞ!! ゼルゲル!!! お前の時代はもう終わったんだ。だから、大人しく刑罰を下るのを待っておけ!!!」

と、刑務所職員の一人が言う。

 ゼルゲルやトリグゲラは、天成獣の宿っている武器を扱うことができるため、見張りの数はこの職員を含み十人がローテーションで見張り、現在は四人がゼルゲルとトリグゲラを見張っている。

 「チッ!! ここから出たら、お前らも含め、家族諸共(もろとも)生きていることを後悔させてやる。」

と、ゼルゲルは言う。

 ゼルゲルは、このような場所から出られると本当の意味で思っていた。

 なぜなら、ゼルゲルのボス、トリグゲラの後ろ盾の存在をちゃんと知っているのだから―…。トリグゲラを操りやすいと最初のうちは思っていたようだが、トリグゲラの方が一癖も二癖もあり、頭も回るのだ。

 捕まってしまっている以上、そうなんだとは思えないであろうが―…。

 そして、ゼルゲルはあえて、トリグゲラの後ろ盾の名前を挙げなかった。ゼルゲルは馬鹿であると自身も認めているが、それでも、これを言うと不味くなることは少しぐらいは理解できているつもりだ。

 今回がそのようなケースだとゼルゲルは判断した。

 それに、トリグゲラが近くにいる以上、余計なことを言えば、自分自身が消されるという未来しかなくなるのだ。

 刑務所の職員は、ゼルゲルの相手を時々、ゼルゲルが五月蠅すぎればやるが、ほとんどすることにはすぐにやめてしまった。注意しても意味がないと早々に理解したのだから―…。

 そして、こんな嫌な奴らの相手をしなければならないのだから、ストレスを少しでも重くしないようにするために、無視している。

 刑務所のゼルゲルとトリグゲラを見張っている職員は、

 (ああ、五月蠅い。不幸だ。)

と、心の中で、何度も思うのだった。


番外編 ルーゼル=ロッヘのその後とある店主の店の再建(2)に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


新作の『この異世界に救済を』を2022年11月30日から投稿を開始しています。今日で、小説家なろうの方ではストック分を全部消費することになります。

あらすじは、抜粋したものです。

 「ある日、現実世界で電車に轢かれそうになった達観有輝(たつみ あるき)は、どこかの部屋で目を覚ますのだった。

 そこに一人の女性(少女と言ってもいいぐらいの)がいて、死にそうになったので、この場所に移したという。移した理由は、ここで有輝が死ぬと、ある異世界が完全に崩壊するというシュミレーションの結果が出たからだ。

 有輝はこの時は何を言っているのか理解できなかったが、一人の女性イルアーナ=レイスリによって現実世界に戻さず、異世界へと連れて行くことを強制させられるのだ。イルアーナを異世界行きの道連れにしようとするが失敗するが、イルアーナの上司による辞令で、有輝とイルアーナは異世界フォングラ(この世界において、「幸せの世界」)に転移させられるのだった。

 そこから、有輝とイルアーナのファングラを崩壊から救う旅が始まるのだった。


 だけど、二人は知らなかった。このファングラの世界の救済のための関数シュミレーションで、変数にはもう一つの存在があった。それは、有輝の気になっている現実世界の少女三勢成璃(みせ なるり)が異世界ファングラで有輝と再会することであった。そのタイミングが重要なのだ。

 どうして、成璃と有輝の会うタイミングが重要なのか、どうしてファングラは滅びようとしているのか。その謎を知る時、異世界救済のための行動が起こるのだ。


 勇者、英雄? そんなものは周りが決めた存在にすぎない。ただ、抗い、掴むことに必死にもがいただけだ。


 さあ、このシュミレーションはそのまま運命の掌のように成功するのか。

今、ここに異世界救済物語が始まる。」

抜粋は、https://ncode.syosetu.com/n5935hy/より。


この作品、会話文以外の語り手が語っているところに関しては、私自身がしたかったことが詰め込まれています。おふざけだと認識してしまうかもしれませんが、私なりに細かい所や、ただ語っているのではなく、会話している感じというか、上手くは表現できないのですが、語り手の感情というものをぶっこんだ感じです。

上手く表現できてなくて申し訳ございません。

それでも、私なりに頑張っていこうと思います。

どうぞ、再度『この異世界に救済を』を、よろしくお願いいたします。


『ウィザーズ コンダクター』については、そろそろ第7部の完結に近づいています。第8部は、2023年の初頭の再開になると思います。第7部は当初の予定より短くなり、第8部の方が予定より長くなっています。回数で言うと、第7部の方が多いとは思うのですが―…。

『ウィザーズ コンダクター』も中盤となり、各田十言の生い立ち、能力の正体に関して、徐々に明らかになっていっていると思います。まだ、第6部で張った伏線はまだ完全に回収していませんが、第10部までにかけて、それなり回収できていくと思います。

後は―…、アルケーの正体もわかったのか? アルケーと親しい人物が第8部で登場すると思います。


以上かな。今、言えることは―…。言いたいことは―…。

さて、皆さまの年末となり、忙しい頃合でしょうが、体調などに気を遣って、無理をしない程度に過ごしてください。

では―…。




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