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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
339/748

第135話-14 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃たちはリースの街で、サンバリアへと向かう途中にある砂漠越えに必要なものをリーンウルネのリース案内のもとで揃えるのだった。

 その日の夜。

 夕食の場。

 そこには、ある人物がいなかった。

 「アンバイド…、あいつ、城を出て行ったの!!!」

と、イルーナが驚きの声をあげる。

 イルーナは、この場で、アンバイドという人物がリースの城の外に出て行ったということを知る。

 「別れの挨拶ぐらいはしていくべき。こういう失礼な子に育てた覚えはないのに!!! 次、会ったら、絞めてやる。」

と、続けて言う。

 イルーナとしては、城の主がいない間に、リースの城から出て行ったということである。アンバイドが向かう場所ぐらいは簡単に予想が付く。ベルグがいるとされる旧クルバト町の方である、と―…。

 (……いや、イルーナ、君はアンバイドより年下でしょ。それに、アンバイドがそのような言葉を聞いたら、声を荒げると思うんだけど―…。)

と、ギーランは心の中で思う。

 ギーランとしては、イルーナのさっきの言葉をもし、アンバイドがこの場にいて聞いたのなら、口論になっていてもおかしくはない。

 アンバイドは、イルーナに天成獣を使った武器での戦いでは敵わないほどである。イルーナの方が扱いが上手いというわけではなく、力とスピードの使い方が異常に上手くこなすからだ。アンバイドは反射やら、剣による一撃という面もあり、イルーナの攻撃に対応が遅れてしまうからだ。

 だけど、アンバイドが弱いということではなく、むしろ、強者の方であり、この地域においては、強者であり、アンバイドを倒せる者はいるのかさえ怪しいというぐらいの実力者だ。

 ゆえに、アンバイドに勝てるイルーナというのは、ある意味で強者中の強者と言ってもおかしくはない。

 「そこまで、しておくのじゃ、イルーナよ。儂とて、止められるものなら止めたいがの~う。だけど、ああいうのは、いくら止めたとしても、復讐に囚われておるから、その目的のために手段は選ばんのじゃ。」

と、ローは言う。

 ローは、アンバイドが復讐の道に走り、ベルグを倒すということは望んでいない。というか、アンバイドで、ベルグを倒すことはできないと思っている。確実に―…、その逆が存在とはっきりと言えるほどに―…。

 「そうじゃの~う。ローの言う通りじゃ。復讐というのは感情の問題。合理性というもので、その心が救われるのなら復讐という気持ちは元々存在しはしないのじゃから―…、の~う、ランシュ。」

と、リーンウルネは言う。

 その言葉には、物事を見通すがゆえに、自身の言葉では誰も説得できないと判断して、実際に、復讐に成功したランシュに意見を仰ぐのである。

 経験者の言葉は、説得力というものを持ちうることは十分にあるのだから―…。だけど、その反対も存在する場合もあるが―…。

 そのリーンウルネの言葉を聞いた食事中のランシュは、

 「確かに、復讐というものは感情の問題ですから―…。無意味を説いても意味はないですよ。痛みを理解しない説得は、返って、復讐者の邪魔者とみなされますから、時と場合によっては―…。」

と、ランシュは含みのある言い方をする。

 ランシュとしては、クルバト町の虐殺の後、その虐殺を主導した領主とリース王国の当時の王レグニエドに対する復讐心を抱いていた。そして、その復讐は二人ともを殺すことで達成している。

 一人は四年前の戦争で、もう一人は二年前の王の誕生日会の日に―…。

 そして、ランシュは、復讐に関して、あまり周囲には打ち明けるようなことはしなかった。計画というものがバレると、失敗するのは確実であることがわかっていたからだ。偶然にもランシュの味方になった者がそのような情報を漏らすということをしなかったこともあり、復讐に成功したのであるから―…。

 復讐者の気持ちは、復讐者であったからこそランシュも理解できるが、復讐するというのは物凄いエネルギーと情熱、使命というものがなければ遂行しようとなんて、できやしないし、復讐自体が生きる意味という感じになっている。

 ゆえに、復讐を無理矢理させないようにしてしまえば、生きる意味を失い、復讐者は喪失して、最悪の場合は廃人になるかもしれない。また、復讐の邪魔をしようとしている者を排除する可能性もある。だからこそ、復讐をやめろというのはかなり難易度があり、成功できれば、それはとんでもない奇跡なのである。

 (アンバイドの場合は、ここにいる者たちの多くがちゃんと、アンバイドの復讐すべき存在を知っていることだな。で、アンバイドの復讐に反対している者たちか―…。ベルグの方は、守りの方もしっかりしているから、復讐に協力してもらう人間も強くないといけないはずだ。だけど、アンバイドにそのような協力者がいるとは―…。あまり考えすぎるほどではないな。)

と、ランシュは、心の中で考えるのを放棄した。

 ランシュとしては、今、自らがやらなければならないことがリースの発展であり、それ以外のことも場合によっては重要となるが、アンバイドのベルグに対する復讐がそこまで大きなことではないということは確かだ。

 ならば、これ以上、アンバイドのベルグに対する復讐に関して言うことはもうない。

 「ふむ、そうか。」

と、ローは、ランシュの言葉に納得する。

 ローとしては、アンバイドの復讐に関する気持ちを理解できないわけではないが、それでも、アンバイドとベルグでは実力が違いすぎるというのは完全に理解できていた。アンバイドの敗北という結果を―…。

 ゆえに、アンバイドには、復讐を思いとどまってくれるのが一番なのだが―…。

 「アンバイドの奴は駄目か。暗い話題を変えよう。今日、砂漠越えに必要なものは揃えられたのか?」

と、ギーランは話題を変える。

 理由としては、これ以上、アンバイドの復讐に関する話をしても意味がないからだ。

 何か、良い結論というものが得られるというわけではないのだから―…。

 そういう意味で、この話題を終わらせ、別の話題に変えたギーランはある意味で空気を読んだともいえる。

 一方で、瑠璃たちは、アンバイドに関する復讐がどうたらこうたらに関して、気にならないわけではないけど、さすがに聞けるような雰囲気ではなかった。それに、アンバイドの復讐というものは、瑠璃、李章、礼奈にとっては止めるべきことであるという常識を持っていたが、ランシュの話を聞いていると、自分達は復讐者のことを何も理解できないと思わされる。ゆえに、アンバイドを止めることが自分達にはできないとわかるからこそ、何も発言することはできない。

 瑠璃、李章、礼奈は、まだまだ子どもと言われる年齢であり、この異世界においては、大人への一歩を踏み出し始めるだろうかどうかの年頃であり、このリースとその周辺の地域では、子どもという扱いはあまりされないようになってくる。さらに、物事の理解に関しては、大人より劣っていると思われるだろうが、それでも、これからいっぱい理解していくためにいろいろと大人たちから教えてもらう立場なのだ。大人の行動からしっかりと吸収していって欲しいというのが一般的な思いだったりする。

 だからこそ、瑠璃たちが発言していなくても、別に気にするということはない。

 そして、話題を変えられたので、誰が答えるのかを迷っていると代表して、瑠璃が答えるのだった。

 「はい、砂漠越えに関しては、大丈夫だと思います。フード付きのローブ、食料、ロープ、磁針、調理道具、火打ち石、防寒具と―…。」

と、瑠璃はその他にも、砂漠越えに必要なものを列挙して言う。

 なぜ、それを瑠璃が覚えているのかというと、瑠璃の使っている赤の水晶の中に、今日、買ってきたものが仕舞われているからだ。赤の水晶の能力である空間移動を応用して、空間の狭間に道具を仕舞っているのだ。その空間の狭間では、時間という概念が存在せず、経過もしないので、腐るということはない。

 瑠璃の言っていることを聞いたギーランは、

 「それぐらいあれば大丈夫だろう。砂漠越えは危険なことも多いが、護衛依頼でなら、必要以上に気取る必要はないが、砂漠にいる生物や盗賊との戦闘には油断しないことだ。奴らは、戦いのプロと言っても過言ではないから、判断ミスが最悪の結果になる時がある。無理はするな。」

と、言う。

 ギーランとしては、瑠璃たちが砂漠越えをして、サンバリアに向かうのは心配で仕方ない。だけど、一緒にはついていかないので、心配するなら一緒に行けばいいだろということを言われれば、ギーランが言い返すことはできないのは確かだ。

 「はい、わかった。パパ。」

と、瑠璃は返事をするのだった。

 パパ、瑠璃から言われたギーランは、頬を赤く染めながら、照れるのだった。隣にいたイルーナは、「フフフフフフフフフ」と口を押えながら笑うのだった。

 ギーランが、どういう感情を抱いているのかイルーナには、あまりにもわかりやすすぎたのだ。そういうギーランの一面を可愛いと思うのだった。まあ、ギーランに実際に口にして言う気はない。なぜなら、あまり可愛いということを言っても、ギーランはあまり喜ばないのだから―…。男らしくというのなかに、可愛いは不要という価値観を持っているためだ。まあ、そんな価値観が有効なのかどうかはわからないが―…。

 そして、ギーランは恥ずかしながら、

 「済まない。変なところを見せてしまった。」

と、ぶっきらぼうに言う。

 周囲は、心の中で、笑いという感情が起こることになったが、そこまで表情に出すことはしなかった。ギーランに気づかれないようにしていたが―…。

 「まあ、砂漠越えに関しての準備も完了したし、五日後ぐらいには、いよいよアウリア大陸へと船で渡り、そこから砂漠を越えて、サンバリアへとかの~う。武運を祈るものじゃ。ピンチの時は儂に連絡してくれても構わないからの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、瑠璃、李章、礼奈、クローナを強くしておく必要がある。ベルグの勢力に対抗させるためには、サンバリアへと向かう間、その後においても、ある一族と合流しておく必要が存在するのだ。ベルグの勢力で、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミラン、その他の一部を含んだ上で対抗するのは不可能だと思う。瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランが強くなったとしても―…。数の上で―…。

 だからこそ、ある一族の力を借りることによって、数を補うだけでなく、戦力をも強化することで、ベルグとその後ろにいるある存在を倒す可能性が出てくる。絶対に成功するということを保証することはできないが―…。

 「わかりました。」

と、瑠璃は返事をし、これ以上、話すことがなくなったのか、食事をすることにした。

 それでも、完全に会話がなくなるということは有り得ず、話し声がいろいろとあり、賑やかさが適度にある夕食となった。その日は―…。


 瑠璃たちが出発する前日の夜。

 ランシュが執務をしている部屋。

 そこには、ランシュとヒルバスがいて、ある報告を聞いていた。

 「クルバト町のあった場所に、七つの塔が出現しました。どういたしましょうか。」

と、報告してきた者は慌ただしい感じになる。

 そりゃそうだろ。何もない場所に、いきなり塔が七つも出現したのだから―…。

 そんな現象を見てしまったリースの騎士団の人間が、対処できるわけがない。というか、不可能だ。

 そうなると、このような事態は上へと意見を求めるしかない。

 だからこそ、ランシュとヒルバスの方へと報告が直接に上がってくるのだ。下では裁量できる権限や規模ではないのだから―…。

 (……七つの塔。…………………う~ん、やっぱりベルグのせいだろうな。あれは―…。)

と、ランシュは心の中で、報告してきた七つの塔が誰によるものかを理解する。

 ランシュとしては、ベルグの実験に関して、邪魔をするつもりはそもそもない。あくまでも、そうならない程度の範囲で、上手く行動するし、一応、直接にベルグと戦う気はない。

 あくまでも、直接ではあるので、ベルグの直属の部下と戦う可能性がないわけではない。

 そして―…、

 「いきなりの出現なら、どうすることもできない。むしろ、調査はしばらくの間、させない方が良い。ろくな結果にならない。ラーンドル一派の息のかかった騎士がクルバト町の周辺を調査しようとして、行方不明になったというからな。それに、今は、リースの発展が優先だから、騎士団の人数を無駄に減らすべきではない。」

と、ランシュは言う。

 ベルグと対立する気はないからだ。

 それに、いくらリースの騎士団を派遣したとしても、騎士の数を減らすことがわかっているのだから、対立するよりも重要と判断するまで、何もせずに、監視しておくのが良いことは間違いない。

 「わかりました―…。」

と、報告してきた者が言うと、すぐにランシュからの言葉を伝えに向かうのだった。

 そこに―…。

 「ふむ、で、クルバト町に出現した七つの塔は何じゃ。」

 「聞いてみたいの~う。」

 リーンウルネとローがランシュのいる執務室の中に入ってきていたのだ。

 (はあ~、面倒くさいことになった。)

と、ランシュは、溜息をつくのだった。


第135話―15 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第135話、次回で終わるのであれば、9月中に完成すると思いますが、次々回となると、10月に入ってしまう可能性が高いです。申し訳ございません。リースの章は去年の段階で終わるのが、内容をつい追加してしまって、長引いたせいで、今年の今頃までも連れ込んでしまいました。ので、再度、9月のうちに第135話を完成させられないことを謝罪します。

実際、第135話は後、もう少しで終わります。

そして、2カ月ほど休んだ後、番外編を投稿し、新章の話に移っていく予定です。今度は、サンバリアへの旅路ということになります。いろいろグロいことをなるべく柔らかく書いていきたいと思います。すでにサンバリアのネームは数年前に完成していますが、それに、かなりの追加があると思うので、早ければ二~三年ほどの時間がかかると思います。途中で、週に一回の投稿になるので、長くなるのは避けられないと思っています。

一方で、新作の方に関しては、予定しているわけではないですが、なかなか進んでいないですが、書いていないわけではないので、何とか、『水晶』を休んでいる期間に、進めていきたいと思います。

最後に、次回の投稿分に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年9月29日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年9月30日頃になる予定です。

無理矢理感になってしまいましたが、次回の投稿分で第135話を終わらせ、リースの章を終わらせることができました。

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