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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
338/748

第135話-13 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、リースの港湾へとリーンウルネの案内で、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、ミラン、イルーナは訪れるのだった。そこにはニドリアがいて―…、会話となるのであった。

 ミランは見回した後、ことの成り行きを見守りながら―…。

 「お母さん。」

 「何?」

 「瑠璃たちと一緒に行くのはいいけど―…、サンバリアまでには確実にあの一族がいるよね。そこには寄った方が良さそう。」

 ミランは、砂漠越えで今、気づいたことがあって、聞けるタイミングだったので、聞いてみる。

 ミランとしては、サンバリアまでの砂漠越えの中には、ある一族が暮らす移動性の集落が存在する。彼らの存在をミランは知っている。

 そして―…。

 「まさか、()()()に会いたくないの。」

 「会いたくはない。あいつ―…、絶対、私に告白してきて、しつこい。」

 あの子については、今、名前について触れる必要はない。いずれわかることなのだから―…。

 そして、ミランがその人物に会いたくない理由は簡単である。

 あの子という人物が、ミランに只管告白してくるのだ。あの子はミランのことが一人の女性として好きなのである。

 ミランとしては、そこまで好きというわけでもないし、告白されて断っているので、気まずくて関わりたいとは思っていないのだ。理由は、はっきりと本人の目の前で言ったし、何度も何度も同じことを!! それでも、しつこく告白してくるのだから、本当の意味で好きになるどころか、嫌いになってしまった。あの子とミランの関係は―…。

 そして、あの子というのが、サンバリアまでの砂漠越えの途中の集落に住んでいるのだ。だからこそ、ミランは砂漠越えの途中で、その集落に寄るべきなのかを聞くのだった。時と場合によって、彼らの力を借りないとサンバリアに辿り着けない可能性も存在するのだ。

 「う~ん、それはわからない。だけど、無理して、寄る必要はないと思うよ。」

と、イルーナは返答する。

 イルーナとしては、寄る可能性はあるとしても、寄らないという結果になる可能性も存在するので、ここで答えというものを出すことはできない。

 ゆえに、無理してでも会う必要はないだろう。というか、サンバリアのことが終わった後に、会う可能性も十分にあるのだから―…。

 ベルグとの決戦があると考えると、確実にあの一族との関わりというのが避けて通ることのできないものであることは確実であろう。

 そうなると―…。

 (ミランはあの一族のある考えは嫌いだろうし―…。砂漠という過酷な環境で生きていくには仕方のないことなんだけど―…。)

と、心の中でイルーナは思いながらも、口にして言わないようにした。

 理由としては、口にすれば、口論になるのは確かであり、このことに関しては大きな声で言うべきことではない。まあ、ローのことだから、ある一族に瑠璃たちを会わせようとしているのは確かである。別に、サンバリアの前でも後でも良いのだが、ローとしてはサンバリア前の方が良いということだけは確かだろう。

 ある一族とともに行動するなら砂漠越えは容易なものは確かなのは事実だ。

 「ええ、そうするわ。ありがとう。」

と、ミランは感謝するのだった。

 この間の会話は、ヒソヒソという感じでおこなわれ、ほとんどの人には気づかれなかった。

 だけど、気づいた人物はいた。

 その人物が―…、

 (ある一族? 私たちに会わせたいという感じなのね。今は、わからないことだらけだから、聞くのは出会った時にすれば良いのかな?)

と、心の中で言う。

 その人物とは礼奈であり、礼奈は近くにいたわけではないが、何となく周囲を観察していると、ミランとイルーナの会話が耳に入ってきたのだ。だからこそ、何を話しているのか興味を持って、聞いていたのである。

 だけど、礼奈にはわからないことの方が多い。あの一族? とか、ミランが会いたくないあの子という存在に―…。

 そのことを考えたとしてもすぐに、礼奈にその正体や答えというものがわかるわけではないのだから、これ以上考えても無駄のように思えた。何かあった時に引き出すぐらいの知識として、頭の隅っこに置くという感じで―…。

 一方で、セルティーが頭の中のパンクから回復する。

 「あまりにも多くの情報量が頭の中に入ってきたので―…。」

と、セルティーが言うと―…。

 「これは、話が長くなってしまい、申し訳ございません。それでも、重要なことには変わりありませんから―…。」

と、ニドリアは言う。

 ニドリアとしても、一気に理解できなくても不満はない。大事なのは、それをただ知識という形で終わらせるのではなく、自分の中の行動理念、使命感というものへと、これは言い過ぎであろうが、その物事の本質をちゃんと認識するというところまでいって欲しい。

 そうすれば、自らの根幹を持って、信念を持った行動をすることが出来るのだ。まあ、それが完全に正しいということはないのだから、柔軟性は重要だったりする。

 「いいえ、大丈夫です。それよりも、私は城の外に出るのはランシュの企画したゲーム以外ではほとんどなく、外が見えないようにして、目的地へと移動されていたので、こういう場は新鮮に感じます。今日はお母様に案内されて、リースの街をいろいろ見て回っています。だから―…、だから―………。」

と、セルティーは言いかけると、涙が溢れていたのだ。

 昔から、セルティーはリースの城の外に出ることはほとんどなかったし、あったとしても、外が見えないようにされていたのだ。

 だからこそ、今日、初めて、リースの城の外を主体的に見ることができているのだ。あれほど自身が望んだ―…。

 そのセルティーの涙が出ている様子を誰もが、仕事の手を止めて魅入ってしまっているのだ。仕事どころではないぐらいに―…。それだけ、セルティーのことが気になっているのだ。恋愛感情とかそういうのではなく、城の外に出られることのない王女という物珍しさというのもあって―…。

 ニドリアも、リーンウルネも、セルティーを見ながら、促すということをせずに、セルティーが言いたいときに自らの思いを言えるように待つのだった。

 (……やっと外に出られたのだから―…。)

と、瑠璃は心の中で思うのだった。

 リースの王族が外になかなか出られないというのはわかっていたし、外に出たとしても、リースの街並みを眺めることができるはずもない。瑠璃、礼奈とともにリーンウルネが隠居している修道院へと向かう時に、馬車からリースの街並みを見せないように、ラーンドル一派の息のかかった者たちが見張っていたのだから―…。

 本当に、そういう面ではラーンドル一派は抜け目というものがないのだが―…。

 そして、全員がセルティーが涙を流している場面を見、時が止まったかのような状態になる。

 現実には、時というものは曖昧という概念を持ちながらも、流れていた。ただ、自らの意味を人に理解させるかのように―…。

 「嬉しくて…………、嬉しくて……………、涙が止まりません。」

 これは、セルティーの本心の気持ちだ。

 望んだことであり、実現したいことであったのだから、現実になればどれだけ嬉しいかは表現のしようがない。

 人の気持ちなんてものを完全に、正確すぎるぐらいに表現することなど不可能なのだ。できるのは、だいたいを示すことぐらいでしかないのだ。

 そして、涙は嬉しさという気持ちが、かなりのものであり、これ以上、器の中に納まることができないから、溢れ出すしかなかったのだ。

 この涙によって、嬉しさを零しすぎても、決して、その嬉しさをなくすことはない。強い印象というものが今日という日にはあり、記憶に留め置かれ、重要な記憶として残り続けるのは確かだ。

 「だから、私は―…、私は―……、まだまだ言える立場ではありませんが、リースを良くしていきたいと思っています。私の見分はかなり少ないでしょうが―…。」

と、セルティーは自信を持っては言えなかった。

 それでも、リースを良くしていきたいという気持ちに自信というものは存在したが、それでも、実力があるかといえば、ないということを理解していたからこそ、完全に自信というものを持つことができなかった。

 セルティーは、この言葉を言いながら、今日、リースの街を巡って来たことを思い出しながら、特に、港湾での仕事ぶりや、商談などを見て、生き生きさというものを感じていたからこそ、リースという場所を良くしていかないといけないと思ったのだ。

 まあ、これは取っ掛かりでしかない。セルティーにとっての―…。思ったというだけで、立派な君主になることができるかというと、嘘でしかない。それでも、なることを信じて突き進んだ先に、そういうものはあるのであり、かつ、立派な君主はそうと思ったからこそ、それを築くことができているのだ。自分の思いと他の動向によって、達成できるのかそうじゃないのかという結末を未来のどこかの地点で迎えるのだろうが―…。

 さて、セルティーはどうなることやら。ここでは、そんな関係のあることではないので、触れられることはないだろう。物語に関係ないのだから―…。

 「そうじゃの~う。まだまだ自信を持てるものではない。人は最初から優れた人間になるのではない。自らの確固たる信念を持ちつつも、それを上手く、というか、よりよいものへと上手く変化させていくことができるようにしていくのじゃ。儂もそうじゃったしの~う。できぬことの方も、悔しいと思うことの方も多かった。ラーンドル一派というのはそれだけ、力というものが強かった。だから、儂自身の信頼できる味方、時には厳しいことを言ってくれる者などを、いろんな人と出会いながら、儂自身の目で確かめて、時には失敗して、そこから学んで、そんななかで、必死に歯を食いしばり、精神を奮い立たせて何とかやってきたからの~う。じゃから、セルティーも失敗することはあると思う。そういう時に、どうしてなのか必死に考えて、また、信頼できる味方、自らを諫めてくれる者を見つけて、時には口論し、時には協力して事に当たるのじゃ。そうすれば、本当の意味で、輝かしい道というものが開かれていくのじゃ。だから―…、今日、この日をその最初の第一歩にすれば良い。儂とは違って、良い婿になってもらえる者がおるんじゃし―…。」

と、リーンウルネは言う。

 ニドリアの長いセリフを批判する権利はリーンウルネにはない。というか、リーンウルネの方も、こうやって諭す時には、話が長くなってしまうのだ。

 まあ、悪い事を言っているわけではなく、むしろ、その諭している相手にとって良い事を言っているのであるが―…。リーンウルネが思っていることにすぎないので、相手側がどのように判断するかによって、良し悪しというのは変わることを忘れてはならない。

 そして、リーンウルネが言いたかったことは、世間から素晴らしいとか評価されている人が最初からそうであったわけではない。そのために、それなりに自分の信念というものや、やりたいということの目標に向かって突き進んでいった先にあるものであり、後者の方は人々は努力という言葉で片付けたりする。

 だけど、本人たちにとっては、努力だとは思っていないし、思うわけがない。努力という言葉が、さも自分は良いことをしているという優越感に浸りたいためとか、劣っている者に対して劣っていることを優れている者の比較で認識させ、その方向へと向かわせようとしていると催促するための言葉になってしまっている。

 それを、本当の意味で良いかどうかは、未来におけるある時点での結果でしかないので、一概に否定することはできないが、後者の劣っている者に対しての言葉の場合はただの刃物を持って劣っている者の心に傷を負わせる可能性を孕むものであることは知っていた方が良く、場合によりけりであるが―…。

 さて、優れた人物になるためには、信念と同時に、挑戦するということが重要になる。自らの信念というものが、世界における完全に普遍ではなく、不変ものではないということである以上、ということはどこかで、自らの信念に対して、通用しない場面が訪れることになる。

 そのような場面に直面したら、少しずつどこかにある適合できない面を適合できるように変えていく必要があるし、その都度、しっかりと合っているのかどうか考えていかないといけない。これは歯を食いしばるほどに大変だし、きついことであることに変わりない。

 だけど、人生というものが決して砂糖たっぷりの甘いお菓子のようなものではなく、カカオ百パーセントもしくはブラックコーヒーのように苦いもののようなことの方が多いのだ。だから、ほんの少しの甘さという幸運を強く、幸せなことと認識できるのだろう。

 そのために、セルティーには、大変なことも、思い通りにならないことも起こるが、そういう時は歯を食いしばってでも、気持ちに負けずに、しっかりと冷静に考えて欲しいとリーンウルネは思うのだ。

 さらに、自らの道を良きものにするためには、人との出会いが重要であり、自らの味方になってくれる者、間違えば諫めてくれる者が必要なのだ。出会いは、自らの経験を積ませていくのに大切なことであり、かつ、その中から、自らの味方および諫めることのできる者がいるのを見つけることの大事な要素になる。そして、彼らと、時には口論をすることもあるが、協力して、突き進むという道を達成できるのだ。そう、アングリアには諫める者というのが足りなかったせいだし、その者がいたとしても耳を貸さなかったせいで、失敗したのだ。破滅という名の結末を迎えるという―…。

 セルティーには、そのような結末にはなって欲しくない。リーンウルネがセルティーに対して、親が子を思う気持ちを向けている。

 それに、セルティーには、良くない道を進ませないような婚約者がいるので、リーンウルネよりは恵まれているという気持ちがあった。まあ、リーンウルネにとっては、自らのパートナーを殺されたのであるから、複雑であるが、ランシュがやらなくても、いつかはリーンウルネの手で追放していたのかもしれないが―…。

 周囲の者たちは、言葉もなく、見守り続ける。それぞれに思う気持ちもあるが―…。

 「お母様、相変わらず説教をする時は、話が長すぎです。それでも、私はやっていきたいと思います。」

と、セルティーが言う。

 そうすると、

 「頑張れよ!!」

 「よっ、未来の女王様!!!」

 「期待しているからな!!!」

 「まだまだヒヨッ子なんだ、これから、これから!!!!!」

 「ランシュ様に、愛想をつかされないように、しっかりと虜にするんじゃぞ!!」

と、というな感じで、一斉に、声が出されるのである。

 これは、セルティーのことを応援している声でもあり、失敗すれば、大変なことになるぞということも含められている。喜びと応援、失敗するなよ、そんな感じだ。

 そして、最後に余計なことであるかもしれない言葉があるが、それは、冷やかしと同時に、応援という意味も込められているという感じだ。悪気があって言っているわけではない。

 それらの声、すべてがセルティーの耳に聞こえたわけではない。

 セルティーは大まかに、自分が応援されているということに気づくことはできた。

 「ありがとうございます。」

と、セルティーは頭を下げる。

 その行為は、少し昔であったなら、ラーンドル一派によって、王族が頭を下げるのは何事か、王族は城の中にいて、人と会う時は、傲慢で、尊厳あるような感じになり、低姿勢や謙虚さなどあってはならないのだ。

 それは、ラーンドル一派にとって王とはそういうイメージであり、リースに住んでいる人々やそれ以外の国、地域にいる人たちにリースの王族というものが神聖で、お前らとは違う高貴な人間であるということを示そうしているからだ。

 そうすることで、自らの国の優位、ラーンドル一派における優越感というものを満たすことができるのだ。自分のことばかりなラーンドル一派にとっては、そのような結論が正しいという結果にいたるのは当然の帰結であろう。まあ、別の方法になる可能性も存在しないわけではないが―…。

 その後、少しだけ、商品管理の倉庫の方に瑠璃たちはいたが、ニドリアと別れ、リースの城へと戻るのだった。

 その頃には、夕日が傾き始めていたことは確かであった。


第135話-14 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回で、リースの港湾の場面が終わるので、もう少しです。予定としては明後日ぐらいに、次回の投稿ができるかもしれません。次回の投稿分はほとんど出来上がっているので―…。次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年9月26日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年9月27日頃を予定しています。

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