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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
337/748

第135話-12 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃たちはリーンウルネによってリースを案内されるのであった。その中で、サンバリアへ向かうための砂漠越えに必要な物を買ったり、昼食を取ったりして、リースの港湾の中の商品が管理されている倉庫にいるのだった。

 リースの港湾。

 その中の施設をいくつか見回っていくのだった。

 「リーンウルネ様。見回りですか。」

 「そうじゃ。」

 リーンウルネに話かけてきた人物も、警備の方の見回りではないことには気づいている。そういう意味での見回りではなく、ただ、見て回っている方の―…。

 「サンバリアの方が領土拡大戦争で、周辺諸国の物資が集まりにくくなっている。特に、岩塩が酷い状態だ。イスドラークからの砂漠越えの輸送だと量も運べないから、品薄で値段が異常に上がってしまう。」

と、ある港湾労働者ではなく、商人の倉庫管理の責任者が言ってくる。

 実際に、ここ二年ほど、サンバリアが領土拡大戦争をおこない続けており、岩塩が品薄になってきていたのだ。特に、ここ最近は酷い。それまでは、そこまで酷くはなかったが、岩塩の一大生産地がサンバリアの軍勢によって攻められ、壊滅状態になってしまっているのだ。

 その国は、サンバリアに塩を輸出していることでも有名な国である。そうなってしまうと、サンバリアでは塩の不足となり、塩の価格の上昇で、サンバリアに住んでいる人々の生活が混乱したものになっていてもおかしくないのだ。

 だが、実際には、そのようなことになることはない。最近、サンバリア近海でも塩の生産のための工場の規模を無理矢理に拡大したのだ。そうすることで、一国で塩を賄うことができるようになり、輸出も可能になっているほどだ。

 サンバリアは、すべてを領土拡大戦争のために費やしているのだ。そういうふうにしか動いていない。誰が動かしているか? そんなものは一人とは限らないことだけは確かだ。

 さて、そうなってくるとサンバリアを経由して入ってくる岩塩で生計を担っているリースの商人や商店が困ってしまうのは確かである。感情論だけで、サンバリアを非難したところで、サンバリアの軍事力は明らかに強大であることはわかりきっており、リースでは太刀打ちできない。

 そうなってくると、別の塩の産地、特に岩塩の産地はないかを探る必要がある。

 そこに―…。

 「ならば、アウリア大陸の東にあるサグーラ半島の砂漠からの岩塩を買い付けると良いですよ。あそこの岩塩はさっきのアウリア大陸のフファファベアのものとは少し違いますが、リースの人々の舌に合うと思いますよ。それに、そこは最近、岩塩の生産量が多くなって、値が崩れ始めているという情報もありますので―…。私たちならその伝手で岩塩を手に入れることができますし、一緒に同行しましょうか?」

と、声が聞こえる。

 その声を発したのは―…。

 「ニドリア様!!」

 今代のラーンドル商会のトップであるニドリアである。

 「ふむ、確かに、サグーラ半島の岩塩は一度食べたことがあるが、塩味が少量でもかなり強かったりするから、大量に仕入れるのには向いていないじゃろうし、サンバリアのより輸送費が高い―…。そういうことかの~う。」

と、リーンウルネは、サグーラ半島で生産されている岩塩に関する味と同時に、それを大量に仕入れるのには向いていないと言ったのが、ニドリアが言おうとしていることを理解する。

 そう、サグーラ半島とサンバリアからの輸送を考えると距離からしたら、サンバリアの方が長いが、船に直通で輸入ができるので、仲買人が少なくなり、その分の中間手数料というものが安く済む。

 一方で、サグーラ半島からの輸入の場合、実際にリースの商人が受け取るのは、アウリア大陸のアレンドラティナかファンラルの港となり、こちらはリースよりも東南方向にある大きな川の入り口にある都市だ。そこに、多くの物産が集まり、規模で言えば、リースの二倍、三倍と言ったほどだし、大きな川の沿岸を支配する大国家の二大都市と指定されているほどだ。ファンラルは首都でもある。

 そこから輸入することになり、かつ、二つの都市までにサンバリアよりも多くの商人が介在するので、どうしても中間手数料というものが多くかかってしまい、それが価格に転嫁してしまうのだ。

 だけど、そこと味に関することを組み合わせることで、リーンウルネは気づくことができた。

 それこそが、ニドリアがさっきの倉庫管理の責任者に言いたいことなのだ。

 「そういうことです。」

 まだ、倉庫管理の責任者は気づいていないようだが―…。

 倉庫の管理であって、商人ではない。

 このように、リーンウルネに聞いてきたのは、近くにいる岩塩の商人に尋ねられたからだ。倉庫の管理の責任者が岩塩に関する周辺外国事情に詳しいわけではない。どこに、何々商店や商人が保管している場所に関しては、この場にいる誰よりも詳しい。それをちゃんと覚えておくのが仕事なのだから、当たり前のことだ。

 だから―…。

 「えっ、一体どういうことですか?」

 そう、口にするしかなかった。

 「そうですね。サグーラ半島の岩塩とサンバリア経由で運ばれてくる岩塩を比べると、サグーラ半島の岩塩の方が塩っ気が強いのですよ。サンバリア経由で運ばれてくる岩塩よりも少量使うだけで塩辛くすることができるから、ここまで持ってくるのに費用が高いとしても、少ない量でサンバリア経由で運ばれてくる岩塩と同じぐらいの塩味になりますと、宣伝すれば同じ量で値段が高くても十分ということになるのです。それに、岩塩を手に入れる層は、富裕層が多いので、買いに来た人もしくは料理人にそのような説明をしておけば、ちゃんとそれを考慮に入れて料理をされると思いますから―…。」

と、ニドリアが言う。

 ニドリアはそのことに気づいており、実際に味わった時に感じた舌と同時に、ここまで運ばれてくる流通経路と相場を理解しているからこそ出てくる対策法なのである。

 アングリアには、こういうことをやれと言われてもできやしなかったことであろう。商人にとって、自らが売ろうとしている層の需要というものをしっかりと把握しておかないといけないし、どう考えを持って行動するのかを理解しておかないといけない。そして、流通の経路に関しても同様に―…。

 それらができる者が、一流の商人になっていくのであろう。商才と言ってもいいかもしれない。後は時流とタイミング、運という面もあり、それらができる者であっても、誰もが商人として成功するとは限らないということは理解した方が良い。

 「………はあ~。言っておきます。」

 「そうじゃの~う、そうすると良い。」

 そして、倉庫管理の責任者は困っている岩塩商の元へと向かうのだった。

 この岩塩商は、ニドリアの言葉が聞こえていたのか、ニドリアの方に向かって感謝するのだった。この商人は、サグーラ半島で岩塩が生産されているのは知っているが、それでも、そこから輸入する手段を持ち合わせていない。サンバリア経由の方の岩塩の産地の輸入をするために、大きな商船の船の一部のスペースを借りて、そこに荷物を置かせてもらう契約をしていたのだ。その商船はラーンドル商会の所有物であり、前トップのアングリアの部下によって高い料金と、他から岩塩を輸入するなという契約もさせられていた。それで利益を得ることができたので、あまり深く考えていなかったのだ。それに、岩塩はラーンドル一派などが良く買い取ってもらっていたのだから―…。

 ラーンドル一派が失脚してしまったため、買い手がなくなってしまったのは事実だが、これからリーンウルネがいるので、富裕層が増加することと、リースに住んでいる人々の生活が改善し、収入も増加するので、その方面での売り上げが期待できるから、リーンウルネとニドリアを恨んでも意味がない。

 それよりも、利益を上げる可能性があるチャンスを棒に振るわけにはいかない。

 だけど、サンバリア経由で運ばれてくる岩塩の量が減少してしまえば、それこそ、値段が上がり、買っていただける人々が減少してしまう。

 さらに、値段が上がるというだけで買う人が減少するのではなく、厳密に言うと、リースに住んでいる人々の収入はここ数年で上昇していないどころか、下層および中間層の収入は全体的にわずかであるが減少している実態があるので、値段が上がると安い代替品があれば、そっちの方に消費が向いてしまうのだ。

 そうなってしまうと、ただでさえリースに住んでいる人々の中でも値段が高いとされる岩塩は余計に買われなくなるというわけだ。ラーンドル一派という顧客がいない以上―…。

 そして、ここにラーンドル商会の現トップであるニドリアが新たな販路を商会してくれているし、かつ、その業務でラーンドル商会の一部の船のスペースを借りることができるのだ。ゆえに、感謝する。

 そして、ニドリアの方も頭を下げるのだった。

 「リーンウルネ様。倉庫にご用事とは―…、セルティー様もいられるので―…。視察ですか?」

と、ニドリアは、リーンウルネに向かって言いながらも、リーンウルネ、セルティーの方に頭を下げながらも、瑠璃たちの方へも頭を下げるのだった。

 ここで、差別的な態度をとりすぎるのは良くない。ニドリアにとっては、瑠璃たちもランシュの企画したゲームに勝つほどの実力者であり、かつ、どんな地位も名誉もない者であったとしても、謙虚な姿勢を貫くのは、どこに商売の種が転がっているかはわからない。

 また、何をするにしても、情報というものは役立つし、真偽を確かめる能力を併用することが絶対的な条件となるのであるが―…。

 人から得られる情報は確実に真実を言っているのかを区別する必要があり、本当の意味での真実を言っているとは限らないのだから―…。

 そう、言っている本人は真実だと思っていたとしても、実は、真実ではなかったということもあり得るのだから―…。

 「ふむ、そうじゃ。お主の方は、今日は商品の確認と商談か、ニドリア。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネとしては、ニドリアに対して嘘を付くようなことをする必要はこの場面ではない。

 そして、同時に、ニドリアの用事も何となくわかっている。

 「そうです。それにセルティー様がおられることだから、ここに初めての案内も兼ねていることでしょう。ここの商品倉庫は、いろんな商人、商店、商会がリースからレンタルしています。このレンタル料と一部の売り上げがリースの税となっています。この商品倉庫は、世界から集まる数々の物資があり、陸を移動する商人に品物が売られることもありますし、リースに住んでいる人々が消費するために市場の商店に卸されることもあります。リースの発展のための大事な場所の一つです。また、ここでは、商談が多くおこなわれるますし、国際情勢についても知ることができます。情報は国にとっても、商人にとっても大事なものですから―…。」

と、ニドリアは言う。

 ニドリアは、折角だから、これからリースを背負って立たれるセルティーに対して、説明するのだった。この商品倉庫のこととか、どういう場になっているのかを―…。

 ここで、ニドリアは嘘をつく気はない。アングリアのようなリースの王家を自分達の都合の良いものにするためにすることが目的ではないのだから―…。

 そんなことをして、失敗しているアングリアという例があるのだから―…。それに、馬鹿は都合通りに動かしやすいが、想定外には対応できないし、そのまま勝手に動いてしまいかねない。感情だけを優先しすぎて―…。

 ゆえに、しっかりと先のことが見える人間と対話や議論をしていくような感じで、自らも相手方をも高めていくのが、自分の後々の利益に繋がっていくのだ。相手の考えも吸収する機会を保障し、成長へと促される可能性を持っているのだから―…。

 そして、リースの港湾にある商品の倉庫に関しては、商談がおこなわれているから、そこでの会話で、各国の情勢というものの情報を集めることができる。こうやって、自分も相手も情報を交換し合うことで、よりよい利益になる話はないかというのを見つけることができる。

 これは、商人としての視点であるが、同時に、国際情勢を集めることに注目すれば、将来リースを背負うセルティーにとっても商談とは別の意味で重要であることは確かである。情報は武器なのだから―…。ただし、美術品における審美眼と同時に、作品を見破る目、そのような力に近い、情報の真偽を見ていく力を携えることで、最高の利益をもたらすのだから―…。

 「そうじゃの~う。それに―…、ニドリアの言っていることを補足するのなら、商品の目利きでも、今年のその商品が運ばれてきた場所がどうだったかをある程度推測できたりするの~う。まあ、食べ物に限られるじゃろうけど―…。それでも、そのような取っ掛かりから有力な情報を手に入れるのは確かじゃ。」

 リーンウルネは、商品における状態から生産された場所がどういう状態なのか予測できる可能性を示す。すべてでそのようなことができるというのなら、嘘になるが、それでも、食べ物の関係ではできたりする。みずみずしいか甘味があるなどのような要素で―…。

 「そうですね。食べ物はそのようなこともできます。それに、こういう場での会話を聞くだけでもリースの対外政策と国内でどういう影響があるのかを推測することができます。特に、リースの多くの人々が消費している者で輸入しないと手に入らない物は、不作もしくは不足してしまえば、値が上がるので、生活に直結し、最悪の場合、国をも揺るがしかねないでしょう。我々は気象をコントロールすることはできないのですから―…。さらに、不穏な情報も手に入ります。どんな秘密事も完全に秘密のままにしておくことはできないのだから、どこかしらで情報は漏れていたりするものです。後は―…、情報を精査し、真偽を見ることも大切です。セルティー様、わかっていただけたでしょうか。こういう情報を集める場には―…。」

 「ニドリア、重要なことを言っているのはわかるが、それでも、多くのことを言いすぎて、セルティーの頭がパンクしてしまっておろう。」

 セルティーがニドリアの言葉に頭の処理が追い付かなく、パンクしてしまうのだった。

 ここでの要点は、最初に、ニドリアが言ったように、商品の倉庫では商談がおこなわれるので、そこでは情報も頻繁に交換される。そこに加えて、商人が情報を大切にしているのと同じで、国を統治する者も情報が大切であり、その情報の真偽を見破り、リースに住んでいる人々にとってより良い利益になる選択をすることだ。それがリースという国とっての最大限の利益になるのだから―…。

 まあ、そのようになるためには、しばしば時間がかかるだろうが―…。ランシュの方が、これまでの経験からこういうのは得意な方であろう―…。それでも、一人より二人できる方が、より上手くできるのは確実性の高いことであろうが―…。

 「これはすみません。しかし、ゆっくりとで良いので、覚えて、理解していってください。これは大事なことなので―…。」

と、ニドリアは頭を下げながら言う。

 ニドリアとしても、ついつい話を長くしすぎたという気持ちになる。ニドリアは感じていないが、リーンウルネも話が長いの事実である。

 (国についての長そうな話ね。まあ、ここは適度に聞き流すぐらいにしようかしら―…。それよりも、こんなに商品があるなんて―…、さすが、リースというわけね。砂漠越えに必要なら、ここで交渉して購入しようとしているけど、木樽の中に入っていて分からないわね。)

と、ミランは、心の中で辺りを見回すのだった。

第135話-13 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していく予定です。


もう少しなのですが、商品が管理されている倉庫の話が思った以上に伸びています。2022年9月まで第135話が終わるのか不安になってきました。伸びてしまったら、ごめんなさい。

もう少しだというのは事実です。入れたかったシーンを入れて最中なので―…。

一方で、新作は、やっと異世界に行かせることができて、第4話に入っています。

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年9月23日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿日は、2022年9月25日頃を予定しています。2022年9月24日は朝に投稿ができないので、その翌日の予定にさせていただきました。

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