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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
335/748

第135話-10 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、サンバリアへ向かうための準備を進めていく中で、リースの街中である程度揃うのだった。そして、リーンウルネの案内で、昼食にあるお店に向かうのだった。


 一方で、リースのクローマス街から少し外れた場所。

 ここでは、近くにある労働者が多くいる港湾と、商業街の大きなクローマス街の間にあり、昼時になると人が多くなる。

 それは、その中間という立地によって、飲食店が多い。

 そのため、飲食店が競合し、入れ替えも激しかったりする。

 そんななか、ある店に八人が止まっており、多くの人々から注目を集めていた。

 「あれ、何かリーンウルネ様に似ていないかしら―…。それに、ゲームに参加されていた人もいるから―…。」

 「というか、セルティー王女もいるよ。というか、なぜに庶民の着るようなものを―…。」

 「お忍びに違いない。だから、今は―…。」

 「そうね。」

 これは、ヒソヒソ話の一部でしかない。

 注目を集めているのは、当たり前のことであり、服装を変えたからといって、顔形を変えたわけではないし、容姿を変更したわけでもない以上、似ている人という感じで怪しまれるであろうし、同一人物じゃんという判断をする人がいてもおかしくはない。

 さらに、瑠璃、李章、礼奈、クローナが実際にいることから、すぐに、似ている人ではないという判断を下すのには、十分な証拠であった。

 まあ、このような場所に王族とその客が来るわけがないという思いを抱いている人は少数ながらもいるだろうから、全員が本物であるということに気づいているわけではないが―…。

 そして―…。

 (あ~、気づかれているのか。いや、むしろ、気づいていませんというふうに思っておるのじゃろう。それには助かる。)

と、リーンウルネは心の中で、自らの失敗に気づきながらも、周囲の人々に感謝するのだった。

 実際に、声を出し、頭を下げることで感謝するということはしないし、できない。周囲の気持ちを慮れば、そのような行為をするのは、台無しにしてしまうことなのは、はっきりとしているからだ。

 そして、同時に、リーンウルネはこのお忍びの時の場合、リースの民衆の反応はどうすべきかという暗黙のルールが決まりそうなことを思っていたりもした。

 さらに、イルーナも気づかれるだろうと思っているし、ならば堂々としているのが一番良いと判断して、気にしない素振りをするのだった。

 「さてと、今日は平日だから並んでおるし、後ろに行って並ぶとしよう。」

 ということで、リーンウルネが言うと、みんなで最後尾から何で待つことにするのだった。

 理由は、いくら王族であったからと言っても、特別扱いしろと自ら要求するのは良くない印象を周囲の人々に与える。そうするならば、事前に予約をしているし、店側が他のお客さんに説明できるような理由をちゃんと店側に言っている。

 また、今日、この店に来たのは、クローマス街の来た時からの思い付きなので、店側に自分達の意見を押し付けるのは良くない。

 そして、列に並び、回転率が早いのか、列のすぐというわけではないが、順調に進んでいく。

 「次の人どうぞー」という言葉が数分おきに一回、もしくは二回、三回と聞こえていることからも確かであろう。

 「どうして、お母様はこのような場所を知っているのですか。」

と、セルティーは聞くのだった。

 セルティーは、前のリーンウルネがこの飲食店に案内することに対する話を、飲食店に行くということしか聞いていなかったのだ。そうなると、今の質問も納得がいくというものだ。

 「少し前に言ったのじゃがの~う。修道院に隠居している時代に買い出しで、偶々この店を発見して、寄って、味が良かったので、何度も通っておったのじゃ。リースの王宮は、豪勢な食事はパーティーやお客さんが来ない限りや、特別な日でないとしないものだということは知っておるなぁ~。」

 「ええ、食事は使用人も含めて、一緒のものを食べるのが良いとされ、そうすることで、一体感を強めたり、使用人たちの裏切りを防ぐという狙いがあるのだと―…。」

 「そういうことじゃ。だから、こういうお店で出されている食事には、舌が慣れておるというものじゃ。それに儂は、リース(こっち)に来る前から、生まれた領地の中のあちこちにも行っておるから、庶民的な味は返って、昔懐かしく思えるのじゃよ。最後の方が大きな理由なのかもしれない。」

 そう、リーンウルネは、大事な人、人生の師匠と言ってもいい人から生き方というものを教わり、生まれた領内のいろいろな場所に、知り合いとともに行っていたので、庶民的な食堂もしくは飲食店には結構慣れていたりするし、豪華な食事も食べることはできるが、どうしても珍しいという点ばかりが実家では強調されているせいか、毎日食べていると、飽きてしまうのだ。

 リースの王族に嫁いで来てからは、リースの城で出される料理はそこまで豪華ではなく、リースに住んでいる多くの家庭で出される食事を少しだけ豪華にした感じなので、実家よりも食事に関しては好感度を持つことができた。まあ、皮肉に近いというものでしかないが―…。

 それでも、このように外で動き回って、飲食店で食事をするのは、それらをセットにしたうえで、昔と変わらないことができていると実感できるのだ。二年前までも、かなり自由に行動はしているので、そんなわけがないだろと思われるが、人の気持ちはこういう思いをしたりもするのだ。

 「……………。」

 セルティーは、リーンウルネの説明を聞きながら黙ってしまう。

 自らは、母親であるリーンウルネがどこで育ったのかは、ある程度知ってはいるが、あくまでも知識という感じであったり、リーンウルネの心情というものが抜けているものであったりするのだ。

 ゆえに、気持ちの入ったリーンウルネという人間の言葉によって知らされる自身の過去というものには、新鮮さというものをセルティーは感じているのだ。セルティー自身は、そのようなことを意識しているわけではないが―…。

 それでも、興味という感情は抱いているので、少しの沈黙の後―…。

 「お母様がリース(ここ)に来るまでに過ごしていた時のこととか、幼少期のこととか、教えて欲しいです。」

と、セルティーは聞いてくるのであった。

 (………………………………。)

と、リーンウルネは恥ずかしそうにする。

 自らの過去を自分の娘に教えるというのは、どうしても気恥ずかしさという気持ちが湧いてくるのだ。

 なぜなら、リーンウルネは過去にいろいろ自由気ままに行動しすぎて、リーンウルネの両親に怒られることもあったし、呆れられることもあり、これからリースを背負っていくことがほぼ確実なセルティーに話すのは少し躊躇われる。

 ある程度は、リースの城の外がどうなっているのかを見せておく必要があるし、それなしでは政治というか、リースの現状というものを理解することはできず、リースに住む人々との間に溝を作るか、作られた溝を深くして、もう二度と双方を渡ることができないほどにしてしまうことがあるからだ。

 そして、その溝というものが、リースの王族およびリースにとっての不幸に繋がることがあるのだから―…。最悪の結果は、リースという国の消滅ということになる。

 だけど、リーンウルネ自身もわかっている。あまりにも城の外ばかりに出しすぎて、城の中での職務を放棄するようになるのも良くないと―…。だからこそ、自身の過去の話をして、リーンウルネのように外ばかりに出まくられるのは―…。

 (う~む、どうしようかの~う。…………………。)

と、リーンウルネが考えている間に―…。

 「次のお客さんどうぞ~。何名様ですか。」

 「八名です。」

 イルーナが店員の言葉に返事する。

 そう、列の最前列はすでに、瑠璃たちの一行になっていたのだ。

 そして、店員さんの言葉に自分達がこの店に何人で来たのかを答えるのだった。

 「八名様ですか―…。ちょうど、四名様の席が二つほど開いているので、ついてきてください。」

 そう店員さんが言うと、瑠璃たちは、奥の方にある四人用の席の二つに座るのだった。

 瑠璃としては、李章の隣になりたかったのだが、向かい側の席となり、李章の目が見えてしまうので、ドキドキが止まらなくなって、借りてきた猫のように大人しくなるのだった。

 一方で、李章の方も似たような感じではあるが、それに加えて、瑠璃の前で恥ずかしい姿を見せられないという気持ちもあり、緊張した様子になっていた。見た目からはそのような感じには見えないようになっているのだが―…。

 瑠璃と李章と同じ席に座っていたのは、礼奈とクローナであった。

 礼奈とクローナは、いつも通りという感じであったり、店がどういう雰囲気なのかを見回していたりする。

 そして、瑠璃たち八名全員が椅子に座ると、店員さんが、

 「注文はどんなものにいたしましょうか。」

と、いつもの営業スマイルで注文を取ろうとする。

 だけど、この店員さんも客が誰であるかを知っている。

 今、店の中に入っていた客が、ランシュが企画したゲームの中で観客もしくは瑠璃チームの関係者であり、かつ、リースの王族の二人がいるのだから、そこで間違うということはほとんどない。

 そして、今はお忍びで来ているのだということを勝手に推測して理解してしまっているので、一般のお客さんと変わらない態度で接している。表面上は―…。

 気持ちとしては、もし失礼なことをしてしまえば、最悪の結末になるのではないかと思いながら―…。リーンウルネに対しては、何回か接客したことがあるので、失礼なこともしないし、距離感もわかっているので緊張感というのはそれほどないが、セルティーはわからないので、緊張してしまうのであった。

 何が失礼にあたるのかはわかっていないのだから―…。

 そして、全員が注文を順次に言って、それを受けた店員さんは、

 「注文の品は以上です。では、料理の仕上がり次第、持って参ります。失礼します。」

と、言って、注文を厨房の方に言い、さらに他の仕事にも取りかかっていく。

 店員もホールは二人で担当しており、お客が多い時間なので、客が食べ終わった皿を厨房の方へと運んだり、机を拭いたり、散らかっているのがあればそれを片付けたりとかなり忙しかったりする。休んでいたり、一人の人に関わっている時間や余裕はないのだ。次から次に仕事が湧いてくる。

 注文を受けて、待っている間に、リーンウルネは、

 (話せばならぬかの~う。)

と、心の中で結論付けた。

 「儂の昔の話をするぞい。」

と、リーンウルネが言うと、セルティーは「わかりました」と返事をする。

 そして、リーンウルネは、自らのリースに来るまでの話をするのだった。

 その話を聴いていたセルティーがそのことに興味を持つだけでなく、周囲の人々が興味を持って、聴いてしまうのだった。

 その結果―…。

 (人生の師匠とも呼べるべき人がいて、その人の教えで―…、外に出て、人の話を聞いたりするようになったのか!! そして、俺らでは解決できない問題を解決するようになったのも―…。)

 この心の中の言葉に代表されるように、感動する者も多いが、城の中にいる人の苦労を理解して、複雑な思いを抱く者もいる。

 (あ~、すごいけど、従者の方たちは大変だろう―…。もう少し、従者に気を遣ったら―…。)

と。

 そして、その間に、注文した料理が出来上がり、食べるのだった。パスタの類がメニューには多いが、それと同時に、魚を使った料理もあり、リースが港湾都市であることから、リース近辺でも魚が取れたりするので、このように魚のメニューを中心に扱っていたりするのだ。ただし、香辛料というものが高級品であることから、現実世界におけるペペロンチーノというものはないし、ナポリタンも存在しない。

 そして、味に関しては、王宮の料理とは違った意味で美味しいものであり、全員が納得のいくものだった。リーンウルネは味に五月蠅いというわけではないが、美味しくないものを勧めたいというようなひねくれ者というわけではない。

 そして、三十分ぐらいで食べ終えた瑠璃たちは、会計を済ませて、外へと出るのだった。会計はもちろん、リーンウルネがしたのであるが―…。

 ちなみに、これは後のことになるのだが、リーンウルネの死後に、リーンウルネの逸話の中に、幼少期の人生の師との関係の話およびそれから成長後、政権奪還後の話が一つの伝記として出版されることになり、それがベストセラーになる。このことは、決して、この物語に関係することではないが、リースを周辺とする地域で有名な話となり後世に語り継がれることになるのだった。リーンウルネ本人の知らぬところで―…。


第135話-11 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


新作の方は苦戦していた第2話をある程度仕上げて、第3話へと入ることができました。まだ、目的へと旅立てていませんが―…。たぶん、この新作は、地の文の方は、少し変わっていると思います。意図してそうしています。投稿開始日は、2022年11月下旬か12月上旬頃を予定しています。その時までにどれぐらい溜めることができるか―…。予想より少なくなりそうです。トホホー…。

そして、『水晶』の方は、もう少しすれば、第135話が完成すると思います。そろそろ、思い浮かべているシーンを入れていきたいです。当初の予定とは違い、場所が変わってしまいましたが―…。

最後に、次回の『水晶』の投稿日時は、完成次第、この部分で報告すると思います。


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