第135話-8 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、これからサンバリアに向かっていく途中にある砂漠を越えるために、そのために必要なものをリースで買い揃えようとするのだった。それは、リーンウルネのリースの案内による道中となるのだった。
クローマス街、フードやローブを売っている店。
その中では、礼奈とクローナに合うサイズをルドレドアと、部下と思われる女性の店員が探していた。
ルドレドアの方は、砂漠越えのために自らのお店のフード付きローブを必要としているのだと理解する。
アウリア大陸の砂漠が大きく、苛酷な環境であることを知っている。
なぜなら、一回ほど、フード付きローブの強度をどれぐらいにすべきかということを検証するために、職人とともに、アウリア大陸の砂漠を商人たちとともに横断したことがあるのだ。
その時の環境はかなり苛酷なものであり、モンスターと呼ばれるものも出現することさえあったり、盗賊との戦いもあった。
ルドレドアは、実際に、戦闘に参加しなかったが、そこでのフード付きローブの強度はどれぐらいにした方が良いのか、かつ、困ることなどを聞いて、それらを参考にして、実際に砂漠越え用のフード付きローブを作ったり、実際にしたのだから―…。
そして、職人とともに完成したフード付きローブが有名なったのは、前にも触れた。
だからこそ、サンバリアまでの距離を考えると、なかなか破れにくいようにしておいた方が良いし、予備も必要になるかもしれないと考えていた。
(サンバリアまで―…。たぶんアウリア大陸の砂漠の端からから砂漠の端までのかなり距離のあるルート。イスドラークのみか、目立った都市によるのは―…。そうなると、予備だけでなく、強度も―…。しかし、既製品からだと多くある汎用型になるが、まだ、子どもである以上、少し補正をした方が良さそう。)
と、ルドレドアは心の中で思う。
ルドレドアは、たぶんだけど、礼奈とクローナのフード付きローブに関して、既製品になるのは確実であり、少し大きいサイズに補正という感じで、布地の一部を裁断したりして、ちょうど良い大きさに調整する。
それに、リーンウルネがともにいるということは、お金に関して安心することはできる。タダ働きされるということはないのだ。王族であるリーンウルネの体裁というものが存在しており、代金を踏み倒すような奴らとともにいることがバレれば、王族の威信は地に落ちることもあり、リースの人々との信頼関係に溝を作り出しかねないのだから―…。
そのようなことを王族の中で、かなり変わり者であるが、人として優れているリーンウルネがする確率はかなり低い。完全にないと言ってもおかしくないとほぼニアイコールであると言ったとしても同様の結果になるほどだ。
そうこうしているうちに、瑠璃、李章がミランによって連れられて来ており、その近くにセルティーがいるのだった。
そのセルティーの顔を見て、ルドレドアは驚くのだった。
リースの王族がこのような庶民も通う場所に来るはずがないのだ。リーンウルネという存在は例外として考えているが―…。
かつて、リースの中央で権力を握っている者たちであるラーンドル一派は、自分達の意見のみを聞いて自分達の都合の良いように動いてもらうために、庶民の生活とか、ラーンドル一派以外の考えを見せないように、聞かせないようにしていた。
だからこそ、リースの王族を城の外から出すことはほとんどないし、出すとしても、馬車を使い、車の中から外が見えないようにしているし、外を覗くことができないように、ラーンドル一派の息のかかった人物を馬車の中に乗せていた。
現に、瑠璃もリーンウルネが隠居していた修道院へと向かう途中で馬車から外をこっそりと見ているが、それでも、長く見ることはできず、見ようとすると注意されるほどだった。
ここまで、徹底的におこなっているのだ。そこまでに、自らの意見を一派とは違うということを認識していたのだろうか。まあ、それは、ラーンドル一派の生き残りに聞くしかないことだが―…。
「セルティー様がなぜ?」
と、ルドレドアは驚くのだった。
そして、リーンウルネが一緒にいるということは、何となく理解したのだった。あることを思い出すことによって―…。
そう、数日ほど前に、ラーンドル一派が完全に壊滅したというのだ。アングリアはその翌日に亡くなっており、ラーンドル商会のトップに立ったのは、先代の子であり、かつ、アングリアの異母弟のニドリアである。
ニドリア自体は、アングリア達から冷遇されており、同情しない者がいなかったわけではないし、彼の商人としての実力は十分にあるとわかっている。
さらに、アングリアとは違って、リースの商人たちにも妥協的であり、商売相手としても申し分のない存在であり、リースの産品および他国からの産品もこれまで以上に市場の拡大によって、大規模なほどの交易がなされることが予想される。
そして、ルドレドアというか、リースの多くの人々が、アングリアを殺したのはニドリアではないかと思っているのだ。それも、一種のラーンドル商会におけるクーデターという感じの―…。それに、リースで実権を握ったリーンウルネが関与していることを―…。
だけど、それは全く噂程度でしかないし、真相とは全然異なるものでしかない。あの事件は、ベルグがアババに命じて実行したものである。その真相を知る者は今の所はベルグとアババぐらいだろうし、ランシュがそうなのではないかと勘づいていると思われるものだ。まあ、リース王族とローたちはベルグ側の暗殺ではないかという推測はしているのだが―…。
要は、アングリアを含む暗殺事件は、世間に真相が知らされておらず、未だ、一部の者の中に真相があるという状態なのだ。ルドレドアもその例外ではない。
そして、ルドレドアの驚き、リーンウルネはニタァに近い表情をしながらも、ルドレドアも何となくセルティーがいることに見当がついたのだと思い、すぐに、感心した態度になる。
「まあ、ルドレドアも予想はついておろう。ラーンドル一派の奴らが、自らの意見を通すために、リースの王となる者たちを意図的に城の外に出して、リースの様子を見させないということを―…。」
「ええ、彼らが原因でリースの商売は繁栄していると言っても、少しずつ売り上げの方が減っていると、周りの仲間たちが言っていたし、私めもラーンドル商会に賄賂を断っておったので、中々、商品を輸出できませんでしたが―…。」
ルドレドアの勤めている商店は、実際に、ラーンドル商会に賄賂を贈っていなかったわけではない。商売で有利になるためなら、時に、賄賂なんて良くないとか言っていられるわけがない。
だけど、多額の賄賂を渡したかというと、実際にはそうしていない。自らが出せるお金に限度があり、その限度額以上は出すことをしていない。
それに、売り上げの多くは、ここで雇っている従業員にちゃんと給料とボーナスで払ったり、材料およびその仕入れで使っており、利益も多くなるものではなかった。従業員の給料をケチったり、高いからと言って、給料が安くても大丈夫な未熟者の職人や素人だけに作業させるように交替させてしまえば、品質が低下し、評判低下に影響し、売り上げの減少を招いてしまい、廃業という未来が見えてしまうのだ。そのような選択肢を取ることはできない。
そのせいもあったが、何とかラーンドル商会以外の商会およびニドリアとの伝手を使って、何とか輸出してもらえうことで功を奏していた。
そして、ニドリアがラーンドル商会のトップとなったから、フードの輸出がしやすくのは事実だし、ラーンドル商会からも取引をしたいと話がきており、すでに了承の返事と売り上げの内訳の交渉も終わっているのだ。
この店にとって、明るい材料だ。そして、未来に希望があれば、人はパフォーマンスを上手く発揮させようとする。品質の向上にも繋がっていくものだ。売り上げに結び付くかは、それを買う側の動向によるので、一概に結び付くとイコールにすることはできない。
それでも、可能性が上がるのは良いことだ。
一方で、リーンウルネがルドレドアの嘘を見破れないほど愚かではないし、ルドレドアもリーンウルネが気づいていることはわかっている。それに、賄賂をラーンドル商会に渡さなければ、輸出をしている商人は、これだけで自らの商売をなしていくのに苦しくなるのは事実だ。
そのことを理解しているからこそ、リーンウルネがここで非難してくることはない。だけど、リースの政府を使って、逮捕や捕縛などのようなことはしなくても、ラーンドル商会に賄賂を贈った者たちをマークしているということと、賄賂や横領などの犯罪をおこなえばどうなるかということぐらいは示すつもりだ。
そのスケープゴートはすでにこの世にはいない。すでに、翌日に、その賄賂を受けたアングリアは殺されており、こいつに脅されて仕方なく払ったことという体裁になっており、今回は大目に見るが今度、賄賂を贈れば、アングリアのような運命を辿るだろうということを―…。
そう、リースの現政権は賄賂を貰った者に対して、裏で秘密裡に殺すぞという脅しまがいのようなものをしているのだ。圧力という名の―…。まあ、アングリアが殺された事件というものの犯人が分からないということが分かっているからこそ、それを利用して、リースの綱紀粛正をはかったのである。リースの人々に対して、怖れというものを抱かせるようになってしまうが、アングリアのような人物や勢力を二度と台頭させないためには仕方がないとして、必要悪として正当化するのだった。
まあ、この世に完全に正しいというものが人の中に認識できたとしても、それを言葉で完全に証明できないし、人が考え付いて言葉にできることの中に完全に正しいと証明できるものはないのだから―…。
だからといって、何でもしていいというわけではない。自らと他という関係が存在している以上、他の配慮しつつ自らの良き道を実現していくしか、良き人生を送る方法はないのだ。それさえ、違いによって、その正義となすものは完全に同じではないし、行動するということによって、良きおこないをしていたもしくはそう思っていたとしても本人にとって最悪の結末を迎えることはありえるのだ。
本当に、人生とは何が正しいということが完全に通じることはないのだ。それが人の世かもしれない。
そして、ルドレドアもリーンウルネもこれ以上、追及する気はなかった。双方で足の引っ張り合いをしても利はないのだから―…。
「そうか、なら、これからも正々堂々商売に励むことじゃの~う。」
「そうさせていただきます。」
こうやって、二人の探り合いは終わる。
そして、
「お二人さんのサイズ調整が終わりました。」
と、店員の一人がルドレドアたちに向かって言う。
そう、礼奈とクローナの分のフード付き砂漠越え用のコートのサイズ調整を終えたのだ。
店の中にあった既製品の中から大きさが合うのがあり、それを着た上で、長さの方が少しだけ長かったので、その長さに関して、調整をしたのだ。
「ッ!! 瑠璃!!! 李章と二人だったの。」
と、礼奈は尋ねてくるのだった。
瑠璃の隣に李章がいたので、二人で探索でもしてきたのだと理解したのだ。瑠璃に確認していない以上、完全に理解したという表現は良くなく、推測したという方が正しいのかもしれない。
「うん、そう。」
と、瑠璃は笑顔に答えるのだった。
喜んでいる感じで答えている。
そして、二人は相手が一緒になったことを喜んでいることは理解できていたが、それが自らに対する好意によってなされたのかということまでは分かっていない。両思いであることに気づかずに―…。
その後、合流した瑠璃、李章、ミランの三人のサイズ調整を終えて、ローから渡されたお金でフード付き砂漠越え用のコートを十着ほど購入するのだった。もしも破けてしまった時のために備えて―…。
一時間が経過した。
「皆様、特に五人の方は、リースに寄られた時は、また、我々のお店へとお越しください。」
と、ルドレドアは瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミラン、セルティー、リーンウルネに向かって、頭を下げるのだった。
あくまでも、お買い上げいただいたことに対する礼のようなもの―…。接客で決まっていることをしているに過ぎない。
だからといって、お買いいただけたことに対する喜びというものがないわけではないし、これからご贔屓になる可能性を考えて―…。
特に、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランに関しては、しばらくの間、リースに立ち寄ることはないとわかっているが、それでも、リースに再度寄られることもあるだろう。その時は、ここで、フードやローブなどを購入して頂けると助かるという気持ちを込めて言うのだった。あくまでもビジネスなのだから―…。
そして―…、
「セルティー様、リーンウルネ様。お店の方にもお顔をまたお見せください。」
と、付け加えて言うのだった。
ここの方がメインと言われてもおかしくないぐらいに―…。
それは、リースの王族であるセルティーとリーンウルネに訪れたということは、店にとっても重要な宣伝になるのだ。王族が来た、というのはリースでは商売上の優位を確立するために、重要なことは言うまでもない。
そして、イルーナと合流して、クローマス街を見ていくのだった。
第135話-9 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
この買い物とリース案内の内容が調子に乗って、どんどん増えているような感じがします。少しだけちゃんとセーブしないと―…。気持ちを―…。
次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年9月11日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年9月12日頃を予定しています。