第22話 ルーゼル=ロッヘ(5)
前回までは、でかい悪魔がでてきた。どうなる?
悪魔は、ルーゼル=ロッヘの噴水を覆うほどの大きさであった。
それゆえに、この悪魔はルーゼル=ロッヘ中で人々に確認することができたであろう。
この悪魔はなぜそこにいるのか。誰が出現させたのか。
それは、少し時を遡る。
フードを被った一人の人物が噴水広場の近くへと辿り着く。
黒色のフードを被った人物が、だ。
そして、その人物は確認する。噴水が目の前にあるのを―…。
(あれが噴水場か。ということはそこから東か―…。太陽は俺から見て左に沈んだのだから、東はその反対の右ってところか。ということは―…。)
と、心の中でどこが東なのかを探す。その間も心の中では言葉を続け、
(そこか。東にあるから東通りってわけだし。こういうのは、ちまちまやるよりも、ド派手にやったほうが人が集まって逃げやすくなる。)
と。
(じゃあ、行くとするか。)
と、心の中で呟くと、フードを被った一人の人物は、自らの両手を前に出した。そして、手のひらを互いに見つめさせ、ある物をだす。
それは、夜の色に紛れこまれて見えにくいものであった。また、手のひらが互いに見つめあっているその間に形成され、しだいに大きく楕円の形をするようになった。黒い楕円の球体であった。
その球体を噴水広場の上空に投げ、
「現れよ。」
と、言うと、黒い楕円の球体はしだいに悪魔の形へとなっていった。そう、手と足と翼を持つこの世にはいないと言っても過言ではないものが誕生したのだ。噴水広場を覆うほどの―…。
その悪魔の誕生に、フードを被った一人の人物は、笑みをこぼすのだ。
「俺の悪魔。」
という言葉とともに―…。
これから、この悪魔が、瑠璃、李章、礼奈を討伐するのだということに―…。
【第22話 ルーゼル=ロッヘ(5)】
噴水広場に展開された悪魔は、ゆっくり自らの誕生をぼう~っとしながらむかえていた。
そう、自らの意思を少しずつ形成していたのである。
そして、少しの時間が経ち、
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。」
と、叫び出すのであった。
それに対して、
(相変わらずうるせぇ~よ。こいつは。)
と、フードを被った一人の人物は思うであった。派手にうるさいと。
それでも仕方ないと思っていた。この悪魔は、このフードを被った一人の人物の中で、攻撃の直線状の範囲が長いという理由で、形成したのであるから。
「右を向け、悪魔!!」
と、フードを被った一人の人物が言う。それを聞いたのか悪魔は、
(我の名は、ディアガルデ…そう言ったはずだ。小僧。)
と、悪魔は自らの名を呼べと言わんばかりのことをフードを被った一人の人物に言う。
(……チッ!! めんどくせぇ~奴だ。俺が誕生させてやったのに―…。)
と、フードを被った一人の人物は悪魔ディアガルデにそう思っていた。
すでに、ディアガルデとフードを被った一人の人物は、東を正面に向いていた。
「わかったよ。ディアガルデ。正面に向かって、一撃を放て!! 最大威力で。」
と、フードを被った一人の人物が、ディアガルデに命令する。
「命令しているのは、俺の気に障ることだが、まあ、やってやるか。お前が二度と我にため口を聞けないようにするために…な。」
と、ディアガルデが言うと、自らの口を開け、そこから、球体をどんどん形成していく。球体を大きくしながら。
ディアガルドの真下にいたクローナとロー、そして、トリグゲラは見上げることしかできなかった。一時的ではあるが―……。
その生物が何をしようしているのかが真下にいるためにわからなかったのだ。
(何!! これは!!!)
と、クローナは心の中で呟く。
(この生物が、今のところ何をしようとしているのかわからないが、それよりも俺が優先すべきなのは……、ゼルゲルを酷い目に合わせて、クローナだ。)
と、トリグゲラはそう思うと、すぐに実行した。
(あの生物に見ている。隙ができている。)
と、トリグゲラは心の中で呟きながら、クローナへと攻撃を仕掛ける。
トリグゲラは、クローナに自らの武器が当たる範囲内に素早く入った。そして、今度は右足を横に上げ、攻撃体勢に入る。
(ゼルゲルの分だ!!)
と、心の中で呟いた後、左足を軸にして右足を左回転させる。クローナの腹部を切り裂くために―…。
しかし、クローナはすぐに気づき、自らの両手に装着している武器を自らの腹部の前に出し、ガードを姿勢をとる。
「チッ!!」
と、トリグゲラは言い、その後に、トリグゲラの右足に装着している武器とクローナの武器が衝突する。
一方、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドのいる場所。
そこから、瑠璃と礼奈は、悪魔ディアガルデを見る。いや、見えてしまっているのだ。その大きさゆえに―…。
「礼奈…、あれって、悪魔っぽいんですけど。アニメとかに出てきそうな。」
と、瑠璃は言う。瑠璃にとって比較ができるのが、経験上、アニメというものでしか見たことがなかったのだから。アニメに出てくるにしても、人より小さく、ディアガルデのような威厳ではなく、ずる賢そうな表情を全面にだす汚らしい悪魔であるが―…。
「たぶん、悪魔だと思う。……それに、何かこっちを向いていますが…。」
と、礼奈は言う。そう、悪魔ディアガルデは、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドのいる東通りを正面から見ていた。
「何だぁ~。瑠璃、礼奈とも悪魔って、この世に悪魔なんて…、天成獣の能力でも召喚獣つきの持ち主以外にそんなことは―…。」
と、アンバイドはやれやれのように言う。そして、言い終える頃には、救助に成功し終えるところだったが、それを少しやめて、瑠璃、礼奈のいる方向を見る。
そして、
「……………!!!! おい、何だよ、あれは…。悪魔…ってことは、ルーゼル=ロッヘには召喚獣つきの天成獣の宿った武器を持っている奴がいるのか…!!!!!」
と、アンバイドは悪魔を見たとき、あまりのことに思考を一時停止させてしまうが、すぐに思考することを復活させ、可能性を口にする。そう、考えられることを―…。
(召喚獣つきかよ!! こうなったら、俺も本気をださないと対処すらできない。それにこのままだとルーゼル=ロッヘに多大な被害がでる。それに俺たちのいる方向に向いている。ディアガルデの攻撃対象はこの東通りか!!!)
と、アンバイドは絶望にも近い感情を抱く。悪魔は東通りに正面を向いていたからだ。そして、アンバイドの考えは事実に変わる。
(!!! まさかブレス!? 砲撃!!?)
と、アンバイドは心の中で呟く。そう、アンバイドは見た。悪魔ディアガルデが口から球体を発生させ、徐々に大きくなっていたこと―…。それが東通りに向かって放たれようとしているものであると―…。
「おい、このままじゃ、ここら一帯が廃墟と化すぞ!!!」
と、アンバイドは怒声をあげる。あげざる負えなかった。それほどに、召喚獣の攻撃の一撃は、強いのである。
「アンバイドさん。どうすればいいんですか!!?」
と、瑠璃はアンバイドに悪魔の攻撃の対処法を尋ねる。
「瑠璃!! 広範囲に及ぶものだ!!! それに周りは建物だらけ、対処法はない!!!!」
と、アンバイドは告げる。建物や周りに人がいる可能性が高いと考えられる限り、悪魔の広範囲に及ぶ一撃への対処法なんてないのだ。ゆえに、アンバイドはどうしようもできないと、わかってしまっていたのだ。
そんななかで、一人だけ可能性を見つけていた。それは一度もやったことがない賭けだ。
礼奈は思う、
(私と……、瑠璃がいればどうにかなるかもしれない。)
と。
ゆえに、礼奈は瑠璃に向かっていく。
「瑠璃!!! 私に考えがある!!!!」
と、礼奈は大声で瑠璃に聞こえるように言う。
「礼奈!!」
と、瑠璃はその礼奈の言葉に返答をする。
そして、李章は、
(これは、俺にはどうすることもできない…クッ!!)
と、悔しがることしかできなかった。自分は緑の水晶の力で危機を察知したとしても、対処できなければどうようもないことを心に強く抱きながら―…。
悪魔ディアガルデは、口を開け、球体を徐々に大きくしていった。そう、大きくなるごとに口をより大きく開けていって―…。
(そろそろか。)
と、フードを被った一人の人物が心の中で言う。ディアガルデの攻撃が始まるのだと確信しながら―。
そして、球体は大きくなるのを止め、下へと球体から攻撃が放たれる。色の黒い球体からビームような、光線のような攻撃が―……。
そして、フードを被った一人の人物の予定では、ルーゼル=ロッヘの東通りの辺りが、真っすぐに建物が全くないという状態になっており、そこには人、一人いないこととなっていた。
しかし、そうならなかった。
黒い球体から一撃を放たれるのと同時に、次元の裂け目のようなものが、黒い球体の攻撃の大きさと同じかそれ以上の大きさで展開されたのだ。
(何だ!! あれは!!!)
と、フードを被った一人の人物はそれに驚くことしかできなかった。自らの確実な予定にないことが起こったことに対して―…。
悪魔ディアガルデが放った闇の放撃は、次元の裂け目のようなものによって、別の場所へと強制的に移動させられたのである。ルーゼル=ロッヘの上空の雲を切り裂かんとする思わせるほどに―。そう、ルーゼル=ロッヘの上空に上向きに形成されたもう一つの次元の裂け目のようなものから上空へと向かって、ディアガルデの闇の放撃は突き進んでいったのである。
ゆえに、ルーゼル=ロッヘ上空で放撃は、上へ上へいくほどその威力を弱め、消滅していったのである。
そして、無益と感じたディアガルデは、それに気づき、攻撃を中止した。
それから、ほんの少し時間が経過して、次元の裂け目のようなものは全て消えていった。
次元の裂け目が消えた後、瑠璃と礼奈は立ちながらも息を若干切らしていた。
「はあ…はあ……なんとか…できた。」
と、礼奈は言う。あの次元の裂け目のようなものは瑠璃の赤の水晶の能力によって展開されたもので、それを礼奈が青の水晶の能力である回復を用いて、次元の裂け目のようなものを成長させたのである。ゆえに、あんな大きくすることができたのだ。
「後は、李章君とアンバイドさんが―…。」
と、瑠璃が息も切れ切れになりながら言うと、
「少し体力を回復させてから、行きましょう。」
と、礼奈は言う。
ルーゼル=ロッヘの噴水広場。
そのすぐそばの建物の上にフードを被った一人の人物がいた。
そして、人物は東通りに向かって二、三軒の家を飛びながら移動して、地面へと降り立った。
(ディアガルデの攻撃を防ぐだと!!)
と、フードを被った一人の人物は心の中で呟く。
「ディアガルデ!!! 引っ込め。」
と、フードを被った一人の人物が悪魔ディアガルデに向かって言う。
「チッ!! 小僧などに命令されたくないが、仕方ない。」
と、ルーゼル=ロッヘの東通りを破壊することに再度挑戦しようとする気持ちを止めたのか、ディアガルデは、また、球体へとなった。そして、フードを被った一人の人物のもとへ向かっていく。
そのとき、フードを被った一人の人物がある気配を感じとった。
(チッ!! 誰だ!!! こんなときに)
と、フードを被った一人の人物が心の中で言った。
球体を自らの手にして、それを武器の姿に変形させて、気配一つの奇襲に対応する。
奇襲してきた人物は、左足を蹴りを入れてきたのである。
奇襲してきた人物の左足と、フードを被った一人の人物の武器である刀が衝突する。
そして、数秒の後、両者は少し距離をとった。
フードを被った一人の人物は、奇襲を自らに仕掛けてきた人物の顔を武器の衝突に見ることができた。
その顔は、まだまだ少年で、十代前半だとフードを被った一人の人物は推定した。
そう、フードを被った一人の人物に奇襲を仕掛けたのは、李章だった。
「あなたですか。ディアガルデを使って、攻撃してきましたのは―…。」
と、李章は言う。
それに対して、フードを被った一人の人物は、
「……」
と、無言である。それは、フードを被った一人の人物にとって、李章は苦戦する相手かもしれないが、そこまで気を付ける相手ではない。むしろ、最も恐れていたのは、後ろにいつの間にかある程度の距離を保っている魔術ローと、どこかに姿を隠しているもう一人の人物の気配であった。このローともう一人の人物のほうがフードを被った一人の人物にとっては、勝つことができないのではないかと思わせるほどの実力を持っている感じたからだ。
フードを被った一人の人物の後ろについていたローは、ゆっくりと準備していた。その準備によって発動する技は、それなり時間がかかるからだ。ゆえに、ローからは、しばらくの間攻撃を仕掛けることはないであろう。よっぽどのことがない限り―…。
もう一人の人物、いや、アンバイドは、フードを被った一人の人物を見て、
(あいつ……、昼に情報屋にいた奴か……。)
と、昼に会ったこともあるし、会話したこともある人物である。
そして、アンバイドはさらにあることに気づく。そのフードの被った一人の人物を後ろからある程度とっていた人物に、
(あれって……………、魔術師ローじゃねぇか。)
と、その人物である魔術師ローがいることに気づく。少し、困った表情をしながら―…。
二つの気配に注意を払っていたフードを被った一人の人物が、対峙している李章を見て気づく。
「お前―…」
と、言うと、
「なんですか?」
と、李章はそのフードを被った一人の人物の言葉に、驚き、尋ねてしまう。
「そうか、お前が、ランシュの探しているターゲットの一人か。」
と、フードを被った一人の人物は心の底から喜びながら言う。ただし、声は抑揚のなく、大きな声ではなかったが―…。それでも、ランシュに命令されたターゲットである瑠璃、李章、礼奈のうちの一人、李章に遭遇したのだから―……。
そして、フードを被った一人の人物が、
「楽しもうぜ。戦いを―…。」
と、言った。それはもう満面の笑みであり、狩猟者の目で―…。
【第22話 Fin】
次回、フードを被った一人の人物VS李章との対決へと!! アンバイドも乱入するのか。一方で、ローは行っている技は…!!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
悪魔の名前は適当に付けました。とにかく、不定期ではありますが、頑張って更新を続けていきたいと思います。