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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
329/748

第135話-4 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ギーラン、イルーナ、ロー、リーンウルネの間でこれからの瑠璃たちの行動に関する話がおこなわれ、ローの言う、砂漠越えによるサンバリアへと向かうことが決定されるのだった。ほぼ強引に―…。

 翌日。

 朝食を食べている時間。

 王族用およびその関係者が訪れる食堂。

 今日も、王族および瑠璃たちが食事をしている。

 その中で、ギーランが話し始める。

 「昨日、瑠璃の部屋に侵入してきた奴は、サンバリアからやってきた者で間違いないし、サンバリアの軍隊に属している可能性が高い。そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランには、リースから海を渡って、砂漠を越えてサンバリアの方へと向かって欲しい。ベルグの元へと向かうのはその後でも、十分、大丈夫だ。」

 そのギーランの言葉に、李章が声を荒げそうになるが、冷静に言い始める。

 「あのすみませんが、そのような時間は私たちにはありません。瑠璃さんが襲われたのは、悲しいことでありますし、今すぐにでもサンバリアでなぜ襲ったのか探りたいぐらいです。しかし、私たちは石化を解く方法をベルグという人から聞き出すことがまず一番にしないといけないことなのです。だから、サンバリアではなく、クルバト町の方へと早めに行きたいのです。」

 李章としては、今すぐにでもサンバリアに行って、瑠璃を襲った奴に理由を聞き出し、倒してやりたいという気持ちが強い。

 だけど、そのようなことをしたとしても、自分達の目的がベルグの元へ行き、現実世界で人が石化の解除方法を聞くということが後回しとなってしまい、石化している人たちの命の方が危険な状態になると―…。

 その懸念を抱いているし、石化している人の中には、瑠璃の大切な義理の両親や兄がおり、石化解除の前に何かしらの要因で死んでしまったら、石化解除できなくなってしまったら、瑠璃はそのことを悲しむだろうし、悔やむ。李章としては、瑠璃には笑顔でいて欲しいのだ。

 李章の気持ちを理解したのかギーランは、「だが―…」と言いかけようとして―…。

 「うむ、李章の言いたいことはわかるの~う。石化解除をなすのなら、早ければ早い方が良い。だけど、ベルグの実力は儂クラスに近い領域にあるかもしれない。儂はベルグの元で戦うことは可能であろうが、だが、儂がそこまで到達するとは限らない。儂がベルグの罠に引っかかるかもしれないし、何かあって、殺されてしまうかもしれぬからの~う。だから、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランの五人が確実にベルグと戦える実力をつけておく必要があるのじゃ。じゃから―…、サンバリアへと向かう過程で、天成獣の宿っている武器の扱いや戦い方、実力をしっかりと身に付けておいて欲しいのじゃ。それに、現実世界の石化に関しては大丈夫じゃ。ベルグやその仲間などが侵入できないようにしておるし、しっかりと石化した人々が死なぬようにしておる。だから、安心せい。李章、お主だって、気持ちとしては瑠璃を襲った者がいるとされるサンバリアに向かいたいのじゃろう。」

と、ローは言う。

 ローとしては、李章の気持ちを読むことはそこまで難しくないし、ある程度想定することができる。李章が瑠璃のことを好いており、瑠璃を襲ってきた者の存在がなぜ、瑠璃を襲ったのかという理由を探り、復讐とまではいかないが、二度と瑠璃を襲えないようにしようとしていることぐらい―…。

 ゆえに、完全な嘘ではないが、瑠璃を襲った者がいるとされるサンバリアへ向かうようにさせることはできると思ったのだ。だって、ローは、瑠璃、李章、礼奈、クローナをサンバリアへと向かわせ、その向かっている途中で、天成獣の宿っている武器の扱い方と戦い方の経験をどんどん積んでいって、実力をあげさせたいのだ。

 ベルグ、それだけでなく、ベルグの後ろにいる存在を倒すことができないとローは考えている。特に、ベルグの後ろにいる存在を倒すことは今までに一度もできていない。代理人という存在で二度ほどその存在の元へ到達させたが、失敗に終わっている。まあ、その後の生死に関しては、今、ここで語る必要もない。

 そして、ローにとっては、三度目の挑戦であり、今度こそ、ベルグの後ろにいる存在を確実に倒したいのだ。倒すことによって、自身の存在に影響されるようなことがあったとしても―…。

 そして、確実にベルグの後ろにいる存在を倒すためには、ランシュをやっとの思いで倒したような状態では駄目なのだ。ベルグの実力は、それよりもはるかに上だと予想することができる。ベルグの後ろにいる存在など、ローと同格だと言っていい。確実にだ。

 だからこそ、ローから見て、ローが本気を出す必要もなく、簡単に倒せるような瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランの実力では、ベルグに傷一つ付けることもないからこそ、実力をしっかりとつけさせ、確実にベルグおよびベルグの後ろにいる存在を倒すようになる必要があるのだ。ローの経験から―…。

 同時に、完全に嘘ではないという面に関しては、現実世界において、実際にギーランがその世界の時の流れをかなり遅く流れるようにしており、まだ、事件が起きた日、瑠璃、李章、礼奈がこの異世界に来てからそこまでほんの一秒ぐらいが経過しているかいないからぐらいだ。

 そういう意味では、ローの言っていることは(あなが)ち嘘ではないことは確かだということがわかる。

 そのローの言葉に納得したのか、

 「はい、わかりました。」

と、李章は頷くのだった。

 李章としては、疑問に思っていたことが解決されたからであり、自分の心に従って行動ができるのだから―…。

 その一方で、ローの言葉をペテンとしか思えないと考える人物がいた。

 (李章は、誤魔化された感じだが、ローのババアがやろうとしていることは、自らが蒔いた災いの種を他者を使って刈り取らせているに過ぎない。自分と向き合うことのできないなぁ~。まあ、今回、俺がリース以降、瑠璃、李章、礼奈らのサンバリアへの旅に一緒について行かないということを想定しているのだろう。俺にはほとんど情報が漏らされていないのがその証拠だ。だが、俺は知っているんだぜ。)

と、アンバイドは、心の中で言う。

 自らの表情に出すような、わかりやすいことはしない。

 そして、アンバイドは、瑠璃が襲撃を受けた後の、ギーラン、ロー、イルーナ、リーンウルネによる話し合いを盗み聞きしていたのだ。

 そのなかから、瑠璃たちにおける今後の方針と、ローの狙いを理解するのだった。アンバイドは、ローという存在が何者であるかを知っている。ゆえに、ローという人間の目的が何かを知っている。

 そして、アンバイドは、昨日の四人の話し合いを思い出して―…、

 (まあ、俺が瑠璃らとともにサンバリアへの旅に一緒について行かないということは確かだな。もう、あいつらと一緒にいる意味もない。ランシュの野郎は、俺がベルグの直属の部下を何人かしか倒せないと見立てていたようだ。だがな、俺にはちゃんとベルグに対する秘策もあるし、ベルグの直属の部下どもが強い可能性ぐらいは推測できる。それでも、俺が復讐を果たすけどな。)

と、続けて心の中で言う。

 アンバイドに慢心というものがないと言えば嘘になるが、それでも、自らの実力がどれだけということを理解ができないほどに愚かというわけではない。

 だからこそ、次のアンバイド自身の行動も決まっているし、ローに読まれてしまっていることには頭にくるものはあるが、その通りにさせてもらう。

 (クルバト町跡の方へと向かうか。)

と。

 一方で、ローは、

 「これから、サンバリアへ向かうためには必ず砂漠を越えないといけないの~う。砂漠は決して、ド素人の初心者が乗り越えられるほど簡単な場所ではないし、一個の選択のミスが死へと直結するほどの場所じゃ。苛酷な環境―…。」

と、砂漠の恐ろしさを言い始める。

 ローとしては、砂漠を舐めてもらう困るので、これでもかというぐらいに砂漠の恐ろしさを伝えるのだった。砂漠越えで戦闘経験を積むことになるが、越える過程で死んでもらっても困る。だからこそ、砂漠に対する恐怖と同時に、その対処に関して、すべてではないが、一部だけでも教えておく必要があるのだ。

 言っている本人が、相手に行く気を削ぐようなことを言っているので、返って、瑠璃たちの中に砂漠への恐怖が植え付けられるのだった。

 まあ、そのような恐怖はクローナ以外は、大したものではなかった。

 瑠璃、李章、礼奈は、テレビや学校の授業などで、砂漠がどういう場所であるという知識を少しだけ知っているのだから―…。砂漠越えに関する知識というものは皆無であることに変わりはないし、ローもほとんど教えることはないので、その知識は素人に毛が生えた程度のものになるのは確かなことだ。

 一方で、知識を得たとしても、実践というものが初めてである以上、頭の中のイメージと直面する現実におけるギャップが大きければ大きいほど、それに苦しみ、生存確率を減少させることもある。生死の危機に接する可能性が上がるというわけだ。

 クローナは、

 (砂漠ってそんな怖いところなの。………初心者である私が―…。)

と、いう感じで、完全にビビッてしまっているのだった。

 その後、ちゃんと砂漠を実際に目の当たりにするのだから、砂漠がどういうものかは理解できるだろう。

 その中で、ランシュは、サンバリアという言葉であることを頭の中に浮かべ、考えるのだった。

 (サンバリア。二年前に、王政が崩壊し、共和制に移行した。その時、フェーナが共和制の今の議長になる奴の側についたとか言っていたな。ベルグが言うには、悪政の実験か何かで―…。まあ、共和制移行後は、領土拡張戦争ばかりで、戦争していない日なんて存在しないぐらいだと言われている。というか、実際にそうだしな。てか、よくそんなに戦争を続けられるもんだな。よほどに、資金があるのか、もしくは征服した地域から略奪などでも働いているのだろうか。まあ、サンバリアのことを考えたとしても意味がないし、リースの今後だけでも大変なのだからなぁ~。ということは、三人組を襲ってきたのはフェーナの部下というわけか。ベルグの時間稼ぎのための―…。このことを言う必要性も義理もない。ローとかいう婆さんやリーンウルネあたりは確実に気づいていてもおかしくはない。)

と。

 ランシュとしては、結論から言って、我関せずという感じになった。ベルグの目的とサンバリアに何があり、どういう奴が瑠璃を襲ったのかを言うことはできるだろうが、それでも、言う必要はないと考えた。リーンウルネ、ローあたりは、確実にフェーナやベルグの意図というものを理解することができているはずだ。

 最近、ランシュは知ることになったが、ローという存在がこの異世界におけるかなりの例外であるということを―…。規格外と言っても良い。老婆になってしまっているが、存在自体があり得ないのだ。一般的な人として―…。

 そうである以上、ローがフェーナやベルグの意図に気づけないということは、可能性として考えると低いというべきだろう。

 そして、ベルグは、朝食を楽しむことにしたのだった。

 その後、砂漠越えに関して必要なこと、そして、商隊の護衛の仕事を受ける方が良いというアドバイスを受けるのだった。

 「そしてじゃの~う。お主らだけで砂漠を越えるのは不可能じゃ。だけど、ある方法で、砂漠越えは可能になる。」

 ローが説明を開始する。

 「砂漠の間を行き来する商隊、遠い地域へと砂漠を通って交易をする商人たちがおる。その商人たちは、砂漠を横断していく時に必ずと言っていいほどに、腕のある護衛を雇うのじゃ。理由はの~う、砂漠には、商人の商売用の物品やら奪う盗賊、さらには、砂漠の中に生息するモンスターと呼んでもおかしくないぐらいの生物がおったりするのじゃ。」

と。

 そのローの言葉に疑問を感じたのか、礼奈が質問する。

 「それなら、砂漠を越える必要なんてないと思います。リースも海上からサンバリアと交易していると聞きますし、海から運んだ方が安全なのではないでしょうか?」

と。

 そんな礼奈の疑問に、ローにかわって、リーンウルネが答える。

 「礼奈とか言ったの~う。船を用いてでの海上交易ができるのは、一部の富裕な商人や商会だけじゃ。それに、小規模の商人および商会は、船を所有している商人や商会の船の一部に間借りして、商品を運ぶようにしておる。だけど、そのための間借りだってタダではなく、その間借りのための費用だってかかるし、これが高かったりする場合もあるし、伝手がなければ、そもそも間借りすることができない。それに、間借りしたとしても利益が得られるとは限らないのじゃ。だから、船ではなく陸路で交易をおこなうのじゃ。砂漠での陸路ならラクダと荷物を運ぶための荷車を用意しておけばいいし、初期投資であれば、船を所有するよりも費用が少なくて済む。維持費においても同じような感じになるの~う。砂漠の場合、商人たちは他の商人と一緒になって砂漠を進んでいけば良い。さらに、言うなら、砂漠にはオアシスがあり、そこに、街があったりとするから、そことの交易もあるしの~う。だからこそ、砂漠を越えるためには、商人たちは自らの安全のために、腕の強い護衛を雇い、守ってもらうわけじゃ。そこに、礼奈、お前さんの戦闘での実力を売り込んで、護衛として雇ってもらい、砂漠越えの知識は商人どもが知っておるし、砂漠での盗賊や生物との戦いで、戦闘経験を積めるというわけじゃ。長くなってしまい済まぬの~う。」

と。

 (長いですね。知っているのなら、改善する方向にしていった方がいいと思いますが―…。)

と、礼奈は、リーンウルネの最後の言葉の長さを長いと自ら言っているので修正して欲しいということを心の中で思うのだった。

 だけど、リーンウルネに向かって、話す長さを改善するように言うことはできなかった。リーンウルネの威厳というものを感じてしまって―…。

 その後、朝食を終え、それぞれに一日を過ごすのであった。


第135話-5 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第135話に関しては、2022年9月以内に遅くとも完成させていきたいと思っています。早ければ、2022年9月上旬になると思いますが―…。

第135話を書き終えたら、心機一転という感じで、番外編を書いて、新作の方を本格的に書き始めていき、書き溜めていきたいと思います。

では―…。

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