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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
327/748

第135話-2 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、フェーナが瑠璃たちをサンバリアへとおびき寄せ、時間稼ぎをするための陽動作戦が成功するのだった。一方で、クローナがラナが落としていったバッジを拾う。そこには―…。

 クローナは紋章の彫られているバッジをより集中的に見る。

 そこに、彫られているのは―…。

 (鳥?)

 クローナは頭を傾げる。

 それぐらいに、クローナの今までの人生で見たことのない鳥の形をしているものだった。

 羽が四つあり、頭の上には王冠をかぶせている(くちばし)が尖っている鳥なのだ。

 そして、それを瑠璃と、ギーランが後ろから覗き込んでくる。

 そのことに対して、後ろの方が気になってしまい、バッジの方にクローナは集中できなくなるのだった。

 ギーランは、クローナのそのようなことに気づかず、あのバッチの鳥に見覚えがあった。

 さらに、瑠璃は、

 「このバッジは何だろう?」

と、疑問を口にする。

 瑠璃は、この異世界に来てから、それほどまで、時間が経過したというわけではない。大体の感覚で言えば、四カ月から五カ月ぐらいの時が過ぎたのかもしれない。まあ、現実世界の方との時間経過は今、現在においては異なっているのであるが―…。

 そして、瑠璃はこの四つの羽をもつ鳥がどのような意味を持つのかを考えるのだった。答えは見つかりにくいであろうが―…。

 ギーランは思い出す。

 「それ―…。」

と、ギーランが言いかけたところで―…。

 「瑠璃のお父さんは知っているの。」

と、クローナが言い始める。

 クローナとしても、瑠璃を襲ってきているので、その正体が誰かぐらいは知りたい。自身はローから、まだこの異世界に慣れていない瑠璃、李章、礼奈の旅に同行して欲しいというものであった。戦いでの護衛とまではいかないが、協力という感じで―…。

 仲間意識というものがクローナには、瑠璃、李章、礼奈に対してあった。

 ゆえに、仲間を守ろうとするために、襲ってきた相手についてしっかりと知っておく必要がある。

 「それは―…、このリースのある大陸エウユアから南の海の向こうにあるアウリア大陸にある大国サンバリアのものだ。四つの羽の鳥に王冠―…、四羽鳥(しはちょう)の紋章は俺が見た限りではサンバリアしか思い浮かばない。だけど―…、あそこからリースだとかなりの日数がかかるぞ。それに消えるように!!」

 ギーランが言いかけたところで―…。

 「恐らくは空間移動じゃろう。それに、サンバリアがどうしてそのような技術を扱えているのかはわからぬが、サンバリアの近くに、かつて存在した帝国の技術を知ることができれば可能だったかもしれぬがの~う。まあ、その技術をほとんど広める前に滅んでしまったのじゃが…な。」

と、ローは指摘する。

 ローは、空間移動が可能な技術であることを知っている。実際、ローは別だとしても、ローが赤の水晶に空間移動の能力を組み込んだ後の時代が下った時に、その二百年前アウリア大陸に存在した帝国が空間移動の技術を発明することになったが、それでも、それを世間に広めて恐怖を感じさせる前に、滅んだのである。その理由をローは知っているし、その滅ぼした一族のことも知っている。

 人という生き物が、支配欲という欲に翻弄され、身を破滅に向かわせるということを―…。

 そして、ローは話し続ける。

 「空間移動は別じゃとしても、サンバリアの紋章であるのなら、これは、サンバリアが何らかの理由で、ベルグと繋がっていることであろうの~う。そうすれば、サンバリアへと儂らの目をひきつけて、何をなそうとしているかもしれぬがの~う。まあ、夜も遅いしの~う。瑠璃はミランの部屋で寝た方が良いじゃろう。ミランが護衛という意味で―…。明日、ゆっくりと話し合うことにするしかない。良い判断には時として、時間を置いた方が良いこともあるからの~う。」

と、ローは言うと、ギーランとともに去って行くのだった。

 そして、瑠璃はローに言われた通りにミランの部屋に行くということは選択しなかった。

 「瑠璃、私の部屋においで。」

と、礼奈に言われて―…。

 「うん。」

と、瑠璃が返事をしたからである。

 瑠璃としても、ミランの部屋で一緒に寝ることはできる。だけど、ミランとは身内であることはわかったが、まだ、最初に会った時に命を狙われていた頃の警戒心が完全になくなったわけでもなく、さらに、お姉ちゃんと呼ぶことを許可してくれないので、さすがに気まずいと判断して、ローの言う通りにしなかった。

 まあ、実際にしなくても、ローが怒ったりすることはない。たとえ、その会話が聞こえていたとしても―…。過剰に縛るような束縛は、いくら本人のためになると言っても、苦しませるようなことになってしまえば、返って、最悪の結果になることがあるのだから―…。

 瑠璃がミランの部屋ではなく、礼奈の部屋で今日、一緒に寝るということになったことに対してミランは、悲しいという気持ちはならないし、ミランとしても少しだけ考えておきたいことができたのだ。一人で―…。

 そして、全員、瑠璃が泊っている部屋から外に出るのだった。


 ローの泊っている部屋。

 そこには、ローとギーラン、さらには、リーンウルネ、イルーナがいた。

 ランシュもここに来る予定であったが、リースの体制の確立のための仕事が多量にあり、それに追われており、しばらくの間、大きなこと、特に、リースに関することでない限り、仕事を増やすのは良くないと判断したためだ。人にはできることに限りがあるのだから―…。本人ができない以上のことをさせるのは、酷なことでしかない。

 そして、話し合いが始まる。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナのようなまだ、成長しきれていない子どもに夜更かしは良くないことであるし、かなり、人のグロいかは分からないが、暗い部分もあるので、なるべく話さないようにしたのだ。要は、まとめたことを、なるべく、子どもが聞いても精神的に大丈夫かもしれない程度にして話すつもりなのだ。

 「瑠璃の宿泊している部屋を襲った人間は、サンバリアの人間のようだ。このバッチに彫られている四羽鳥に王冠が証拠になる。」

と、ギーランが会話を始める。

 そして、言いながら、全員に見えるように、さっきクローナの持っていたバッジを見せるのだった。四羽鳥が見えるように―…。

 クローナが持っていたこの瑠璃の泊っている部屋に侵入してきた者が落としていったものを借りて、ここに持ってきていたのだ。

 「サンバリアか―…。これは、リースから介入することのできない案件じゃの~う。サンバリアの軍事力は、リースの軍事力なんかの比ではないぐらいに強すぎる。ここ二年ほどは毎日、毎日、周辺諸国と戦争をし、一体どこからそんな数の兵を供給しているのやら―…。交易をしている以上、あまり、サンバリアの悪口は言えないじゃがの~う。胡散臭さはかなり感じておる。」

と、リーンウルネが言う。

 リーンウルネも、サンバリアという国がどういう国かは知っている。二年前に王政から共和制へとクーデターによって移行していったことを―…。

 そして、その共和制に移行してから、すぐに周辺諸国への征服活動を再開し、この二年の間に二年前の倍近くの領土を新たに加えていったということも―…。

 リーンウルネとしても、交易をサンバリアとしている以上、あまり、相手方の悪口を言うのは良くないと思っている。それぐらいの空気は読める。その空気を読めなければ、サンバリアから攻められる可能性だってあるのだから―…。現実には難しいかもしれないが、サンバリアの軍事力がリースよりもはるかに上なのは事実なのだから―…。

 この二年の間に、人のように動く兵器が導入されていて、それが戦争でかなりの戦果をあげているというのだ。そのようなものを相手にしたら、リースが一たまりもないのはわかりきっている。要は、戦争は避けるべきだ。サンバリアとの間では―…。

 だから、瑠璃が襲われたと言っても、国のプライドのためにサンバリアに反抗するのは賢明な選択ではない。それに、サンバリアとリースでは海だけでなく、真南に向かって、アウリア大陸に到達しても砂漠を越えないといけないのだ。

 だから、このサンバリアに関する問題に関しては、リースとして介入はできないし、ローたちに一任するしかない。ここで大事なのは、ローたちがどのようなことをするのか、しっかりと把握することである。

 「そうじゃの~う。というか、儂から言わせてもらうと、サンバリアの王政の最後の時を知っておるから言うと、今の共和政はリーンウルネの言っておる、胡散臭さは事実じゃ。それに、今のサンバリアを支配している議長ラング=イバラグラは、ラング=トラガルの実の子どもじゃ。」

と、ローは言う。

 その言葉は、この場にいる誰もが驚かずにはいられないものだった。

 特に、リーンウルネにとって―…。

 ギーランは知っていたが、それでも、驚かずにはいられない。サンバリアの議長があの危険人物の子どもだとは―…。

 「えっ、あの人を使った人体実験をした―…。」

と、イルーナも驚くのだった。

 これは、リースのある地域およびサンバリアの周辺の一部ではあまりにも有名な情報であり、ラング=トラガルというのは、過去に残酷な人体実験をおこない、そのことがサンバリアの最後の王に知られ、サンバリアから永久追放処分を受けることになったマッドサイエンティストである。

 そのような人物の息子が現在のサンバリアの議長であり、トラガルとイバラグラに親子関係あるとはこの場にいる者のなかで、ローとギーランは知らなかった。

 「そうじゃ。まあ、そのことがわかったのは、二年前のクーデターの時であり、この情報はサンバリアの中でもほんの一部しか知らないトップシークレットじゃ。そのトラガルという人間がサンバリアを追放されてすぐに、フードを被った人物と話しており、その後、消息が一切掴めていないのじゃ。儂でも情報が追えられていないのじゃ。かなりの猛者が関わっているのは確かじゃろう。」

と、ローは言う。

 ローは、トラガルという人物の行方を追うことができていない。情報などを仕入れるルートを使ったとしても、手に入れることができないだけでなく、掴もうと情報屋が動くと多くの者が二度と再起不能で、喋ることすらできないほどの精神的ショックを受ける。

 それをなしている人物は誰であるかは、ローには想像できないが、誰かは後に分かることだ。今は進めていこう。

 ゆえに、これほどのことができるのが実力的な猛者であることを予想することで終わることしかできない。

 「………。」

と、イルーナは黙り込む。

 イルーナとしては、話のレベルがはるかに異次元だとも思えるぐらいの話でついていくので精一杯だった。

 (うむ、ラング=トラガルとイバラグラが親子関係とは―…。この二人の関係を長い間、秘匿にできたのはなぜじゃ。確か、トラガルがサンバリアを追放された後、家族も外へと逃げてどこかへと―…。ならば、名前を変えて、サンバリアへと入ったのじゃろう。サンバリアの王政でも共和政でも大きな面で、行政職員を雇うのは公開試験による成績から選択しているはずじゃ。珍しい仕組みだから一発で頭の中に残ってしまったわい。そうなると、サンバリアの最後の王とその関係者が気づかないのも無理はないかの~う。)

と、リーンウルネは心の中で思うのだった。

 実際、どうやって親子関係を隠したのかは、現時点で触れることは必要のないことであろう。いずれわかることなのだから―…。

 「さて、話を進めるかの~う。このバッジがサンバリアのものである以上、どうして瑠璃を襲うような真似をしたという理由じゃの~う。儂としては、サンバリアとベルグに何がしかの繋がりがあるのではないかと思っておるのじゃ。まあ、これは根拠のないことであるし、証明しろと言われてもできはしないからの~う。そして、ベルグと繋がりがあるのなら考えられるのは一つじゃ。」

と、ローが言う。

 ローの言っている言葉をこの部屋にいる者たちは、真剣な表情をして聞いている。これから、ローが重大な発言をするのではないかということが言っている言葉から理解することはできる。雰囲気からしても―…。

 そして、ローは今後の方針を言い始める。

 「ならばの~う、ベルグの策にでも乗ってやるかぁ~。」

 その方針には、誰もが驚くのだった。



第135話-3 あえて乗ってみるのもいいのかもしれない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


いろんなで今回はかなり重要なことを書いているのような気がします。ある人物の設定というか、根幹に触れるようなところを―…。

では―…。

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