第134話-3 陽動作戦
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃がサンバリアからの刺客であるラナに襲われるのだった。そこに李章が助けにくる。
今回で、第134話は完成します。ちょうど良い、いつもの文章量と今回はなりました。
(今度は、あの目で追えないほどの速さで避けるのさえ気を付ければ―…。)
と、ラナは心の中で言う。
ラナとしては、瑠璃がラナの攻撃に対して、一瞬のうちに避ける行動は注意すれば、大丈夫だと推測していた。
その推測の理由としては、ラナが李章を攻撃している時に、ラナの隙をついてこようとしてこなかったからだ。そうであるならば、その避ける行動はかなり消費の激しいものではないのかと、考えることができる。
だからこそ、今度は、一瞬のうちに避ける行動に対して、注意をしておくことで、瑠璃を討伐することが可能であると―…。
ラナは大剣を上に構え、右斜め上から左斜め下に向かって振り下すようにするイメージを頭の中に浮かべる。
その間、瑠璃は、
(とにかく、ここは守りに入らないと!! あの回避はかなり天成獣から借りられる力の量を消費するし、それに、襲撃者との間で持久戦になった時に備えて、節約していかないと!!)
と、心の中で言う。
瑠璃によって、グリエルの力を借りての光の高速移動は、借りられる力の量の消費はかなりなものであり、多く使用することはできない。要は、使える回数の少ない技でしかないのだ。
そして、今度の攻撃は、その光の高速移動に注意している感じで、ラナは瑠璃へと攻撃しようとしているのだ。
そのことに、瑠璃が気づかないというわけではない。ちゃんと気づいている。
ゆえに、すぐに仕込み杖の中にある剣を覆っている鞘を抜かずに、ラナの大剣による攻撃を防御することを選択する。
ラナは、問答無用で大剣で瑠璃を斬るという感じで、上から下へ、軌道を描いて攻撃する。
瑠璃は、普段の剣を扱う時のようにして、鞘を抜かない状態で防御するのだった。
キーン。
そのような音をさせて―…。
ラナの大剣による攻撃によって、瑠璃の仕込み杖の鞘の方は一切、傷つくことはなかった。それぐらいに、防御力があるのだろう。天成獣の宿っている武器のことに関しては、天成獣と同様にわかっていないこともあり、未知の領域がどれぐらいあるのか完全に把握されていない。要は、わかっていることが少ないのである。この時代においては―…。
そして、ラナは、剣を再度に上に上げるのだった。
瑠璃が仕込み杖を鞘の中におさまっているのが見えたので、鞘から抜いた状態で攻撃するのに時間がかかると判断して、このような行動をとる。
そして、同時に―…、
(ここがチャンス!! ターゲットを討伐できる。)
と、ラナは心の中で確信する。
ラナとしては、自らの大きな一振りで倒せると―…。
「!!」
と、瑠璃は、ラナの行動に驚く。
そして、その様子をすぐに見ることができた李章は、瑠璃がピンチであることを理解する。
その中で、ラナは、
(終わりだ。瑠璃の人生は―…。)
と、心の中で、自らが三人組の一人を殺すことに対して、喜びを感じる。
別に、子どもを殺したいわけではない。ラナは、あくまでもフェーナのために、フェーナが有利になるためにしていることだ。
自らの信じる正義のために、ラナは世間からは良しとされないであろうということをなそうとする。正義のために人は殺せる。それがたとえ、世間から良しとされないことであろうとも―…。
ラナは、上に上げた大剣を振り下す。瑠璃を縦に真っ二つにするように―…。
そんな中で、李章はすぐに体を動かしていた。
いや、動いているといった方が正しい。
(たぶん、あの攻撃を瑠璃さんが避けることは可能だけど、それは、光の移動でしか不可能です。今の状態ですと―…。だけど、瑠璃さんをこのまま殺させるわけにはいきません。緑の水晶。)
李章は、緑の水晶を発動させる。
そして、緑の水晶の能力である危機察知をして、どれが一番、危機なものではない選択かを示すようにさせる。そうすることで、ラナの攻撃から瑠璃を守ろうと考えている。
その中で、緑の水晶は、李章の頭の中に答えを告げる。
言葉ではなく、イメージを流すということで―…。
(なるほどですか。)
と、李章は心の中で緑の水晶を使った結果を理解するのだった。
その理解したことに対して李章は、決してマイナスな最悪の結果ということではないことに安心し、かつ、そのために自らがしないといけないことを実行する。
ゆえに、ラナの攻撃を防ぐために、ラナのいる方へと向かい、到着する。
ラナは、李章の気配に気づき、瑠璃に向かって、ラナの持っている武器である大剣を振り下そうとするも一瞬、躊躇ってしまう。その選択がラナにとってのミスであった。
李章はすぐに、ラナが攻撃を躊躇っているのに気づき、一瞬で蹴りでの攻撃に移行する。
その時、ジャンプしての大剣に近い足の方での蹴りなので、その反対の足でジャンプし、すぐに、大剣に向けって蹴りを入れるのだった。ラナが手を離してしまうほどの威力で―…。
そのために、大剣に当たる足の部分に、フィルネから借りた力を最大限覆う。
そして、李章の蹴りの攻撃は、ラナの大剣に当たり、手を離させることに成功する。
その時、李章は、心の中で成功したことに喜ぶ。決して、表情にだすことはなく―…。
(チッ!!)
(李章君。)
ラナは悔しそうな表情をするが、同時に、瑠璃は李章の自分を守ってくれる行動に心をときめかせるのだった。どんなに強くなろうとも、大好きな人から自分を大切にされていることを実感できることは嬉しいことだし、ここが戦いの場であることを一瞬ではあるが、忘れてしまうぐらいものだ。
ラナは、自らの武器である大剣を手から離してしまい、悔しさを増幅させる。
一方で、大剣は、部屋の中の地面へと落下していくのであり、それをギリギリのところで拾うが、あるおかしな感覚に気づき、瑠璃から距離を取るのだった。
(何!! 足先が冷たいように感じたのは!!!)
と。
ラナは、このような感触を知らない。知るはずもないだろう。
サンバリアという国に、現実世界における日本という国にある冬という感じの季節は存在しないのだ。あるのは、雨期と乾期であり、氷というものは知っているであろうが、それは人工的に作り出されたもの以外は知らないであろう。
そう、体の芯へと伝わっていくほどの、冷たいという感触を―…。
ラナも水の属性を扱うことができる天成獣の宿っている武器を持った相手と戦ったことはあるが、それでも、サンバリア近辺の環境条件によって、氷にするのは不利でしかなく、熱を利用した熱湯の方が有利であるのは確実だ。
まあ、凍らされるということは、体験して良いものではないが―…。
そして、ラナは、冷たい感覚がした右足の方をみると―…、
(あのまま、あの位置にいたら凍らされるところだったのか。サンバリアと違い、ある一定の時期には気温が低くくなるのだった。そして、あの二人以外にもいる、ということか!!)
と。
そう、ラナは、自らが凍らされていることに気づき、瑠璃と李章以外にもいるということを理解する。
正確に言うのであれば、李章が侵入した以後に侵入してきたことになり、李章ともう一人の間に、瑠璃の泊っている部屋に入る時間に、タイム差があった。それなりの―…。
そして、ラナは、
「凍らせようとしているようだな。私を―…。だけど、それぐらいの攻撃では私を倒せない。三対一になろうがな!!」
と、宣言するように言う。
ラナとしては、自信を完全にもったうえで言っているわけではない。
相手に対して、一歩も引くことはないという意思を伝えるために強がっているのだ。この強がりがどこまで通用するかはわからない。
そして、ラナは、瑠璃と李章以外の存在を理解しており、そのもう一人に向けても、同様の意味で言うのであった。その人物が氷を使うということをさっきの攻撃から理解しているが、それでも、氷を使うと言っても、その面での戦い方のすべてを知っているわけではない。
ゆえに、慎重に警戒するということを忘れるわけにはいかない。
そして、瑠璃は、
(…………雷をここで使うわけにはいかないし、光を使いながら、体に纏って戦うしかない。三対一…? さっきの氷から見て、礼奈がここに来ていることになってるよね。)
と、心の中で言う。
瑠璃は、ラナの足先が凍りそうになっていることに気づいていた。ゆえに、そのようなことが可能なのは、自分たちの側にいる礼奈がこれに該当するということを導き出した。
つまり、礼奈が今、瑠璃の泊っている部屋の近くもしくは中にいるのではないかという答えを導きだすのに時間がかかるということはないと言っても良い。
そして、礼奈が姿を現わすのだった。
礼奈は、すぐに姿を現わすのではなく、ラナに気づかれていないのであれば、姿を現わさず、そのアドバンテージを利用して、これらの戦いで不意打ちを狙って、ラナを無効化することを狙っていた。だが、ラナが気づいているので、姿を現わすことを選択した。
そして、もう一つ―…。
「三対一ではないから―…。」
と、礼奈は言う。
礼奈は、すでに確信していた。
というか、これで、ラナの敗北は確定したのだということを―…。
そう、礼奈に続いて、ギーラン、ロー、クローナ、セルティー、ミランが瑠璃の泊っている部屋に入ってきていたのだった。
(いつの間に!!)
と、ラナは、心の中で驚く。
いくら強がっているラナといっても、八対一では勝利することはできないのだから―…。
数だけで判断するのは浅はかなことにすぎないが、ローはわからないにしても、この瑠璃の泊っている部屋にいる者たちは天成獣の宿っている武器を扱うことができる者たちだ。その中には、実力者がごろごろいる。ラナでは到底かなうはずのない。
そのことをラナは、心の中で驚きながらも理解する。
ゆえに、警戒心をより強いものへとさせていきながら、視線を一点にすることができない状態になる。
そんなラナの状態を知ってか知らずか、その表情から推察することはできないが、それでも、確実にラナを倒すことは簡単にできるほどの実力を有するギーランが、この場における代表かのように、ラナに向かって言い始める。
「で…、どうやってこの状態を打開して、ターゲットを狙い、討伐に成功させるのだ。」
と。
ギーランは、お前にはできないだろうということを面と向かって、ラナに言う。
ギーランがここで油断しているわけではないし、実力を見誤っているわけではない。周囲にラナの味方がいないか、という警戒はしている。
こういう場面で予想外となるのは、ラナの味方が近くに言って、ラナから情報が漏れるのを恐れて、ラナを始末することだ。このようなことをしてくるのは、裏の人間だけではないが、その方がラナに襲撃させている存在を隠すうえでは有用な方法であることは確実だ。
死人に口になし。情報は口や筆記された文字から漏れるという考えがこの異世界における主流であり、例外は勿論存在する。
その例外は、本当に、頭の片隅にあれば、それだけで、十分すごいと思えるほどのことだ。そう、死体から情報を読み取ることに長けた方法や技術が、ほとんどの地域においておこなわれているわけではない。リースでもギリギリあるのかないのか、曖昧という感じだ。
能力の類となれば、もう、本当に一握りであり、数は十人いれば多い方だと言っても過言ではない。能力者というのは、世界でも稀な存在であり、普段はその能力のことを隠して生きているのだから―…。
そして、ラナは考えるも、結論は決まりきっている。
(どう足掻いたとしても、三人組を討伐することはできないのは確か―…。ならば、フェーナ様から与えられた任務をこなし、逃走することにする。)
と、ラナは、心の中でやるべきことの優先順位を決め、実行に移す。
時を少しだけ戻す。
フェーナがラナに命令している時―…。
「それは―…、ベルグが私たちには時間稼ぎしかできないと判断しているし、ローが今回のために見つけた代理人は確実に、ベルグとあの方に到達すると思っているからみたい―…。まあ、私としてはどっちでもいいけど―…。そして、そのベルグの時間稼ぎのために、三人組をサンバリアの方へ誘導して欲しいということなのよ。そのために、ラナ、あなたが三人組を襲って、最後に、サンバリアからの刺客であるという証拠を残すことは絶対に忘れないように―…。」
と、フェーナは言う。
フェーナは、瑠璃、李章、礼奈の三人組が確実に、サンバリアに向かって来るように仕向けるのだった。
そう、ベルグの実験における阻止をされないためにも―…。たとえ、ベルグの元へと瑠璃たちが到達しても実験を阻止できないほどまでに進める時間を稼ぐために―…。
そして、このフェーナとラナの会話は、これから数分で終わるのだった。
時は今。
リースの城の中の瑠璃が泊っている部屋。
「残念だが、私は撤退させてもらう。」
と、ラナは言いながら、何かを落として、どこかに消えるのだった。
それも一瞬のうちに!!
その時、ラナは、
(作戦成功。)
と、心の中で言うのだった。
そして、ラナが一瞬で消えるのを見て、
「逃げられた!!」
と、瑠璃は驚くのだった。
【第134話 Fin】
次回、リースのことと、次の章へのプロローグのような感じに!!
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
『水晶』の前回の投稿からかなり間隔が空いてしまいました。申し訳ございません。2022年8月上旬は不調という感じでした。特に、ネームのセリフをほとんど打っているので、そのセリフを読んで考えるのに時間がかかりました。
次回の第135話は、ある程度なのかかなりは書いてみないと分かりませんが、第134話よりはきつくないとは思います。第134話よりは文章量は増えると思いますが―…。
そして、新作の方も進めております。順調とは言えませんが、プロローグのプロットを頑張って仕上げていきたいです。
最後に、次回の『水晶』の投稿は、2022年8月下旬頃を予定しており、投稿の日付に関しては、活動報告の方で書いていくと思います。
お盆、二日ほど休む予定にしています。疲れが出ているので―…。
では―…。