第134話-2 陽動作戦
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
久々の投稿になります。第134話が完成させたら、第135話は、2022年8月下旬に開始しようかなと思っています。第135話が完成すると、当初の予定通り、2カ月ほど投稿をお休みして、番外編と新章を書き溜めていこうと思います。投稿遅くなって申し訳ございません。
前回までの『水晶』は、サンバリアからの刺客であるラナが瑠璃の部屋へと侵入して、襲ってくるのであった。
「李章君!!」
と、瑠璃は叫ぶかのように言う。
気持ちとしては嬉しいものだ。
ピンチというわけではないが、それでも、命を狙われている以上、助けてくれる人がいるのはありがたいことであるし、喜ばしいことである。
その助けてくれる人が、瑠璃自身の好きな人である李章ならば―…。
瑠璃は李章の方へと視線を向けながらも、ラナの方へとも警戒という名の視線を怠ることはない。
「二対一になるのか!! 私が目的を果たせないわけではない。」
と、ラナが言うと、すぐに、瑠璃と李章の方へと視線を向けて、隙を窺う。
ラナとしては、目的は別にあるが、瑠璃や李章の方には襲撃していて、暗殺することが目的であると思わせておく必要があり、そう思わせるための行動を取り続けないといけない。
ラナは、動き出すことはしばらくの間、しなかった。
一方で、李章の方では―…。
〈李章!! 相手の方は、私たちを襲撃して殺そうとしている感じがしない。〉
フィルネは念話で李章に念話で話しかける。
フィルネとしては、ラナから何かを感じるのだった。殺そうという殺意がそこまでないというか、何かを隠しているような―…。そんな感じの―…。
李章の持っている武器である刀の中に宿っている天成獣であるフィルネは、たとえ、李章が武器を手放していたとしても、ある程度の距離であれば、普通に念話で話しかけることができるし、李章と視界を共有することができる。
そんななかで、ラナが何をしようとしているのかを探っていたのだ。殺意以外の何かを感じて―…。
そのフィルネの念話に対して、李章は、
〈はい。殺意というものを感じません。フィルネの言う通りなら、この襲撃は何か別の意図があると考えられます。それでも、襲撃して瑠璃さんを殺そうとしていることに変わりありません。だから、撃退するまでです。〉
と、念話で返事をする。
返事をする相手は勿論、フィルネである。
李章としては、フィルネの言っている通り、ラナが何をしようとしているか、はっきりとはわかっていない。だけど、襲撃している以上、撃退する以外の選択肢はない。捕まえることも含めて―…。
そのように、李章が考えている時、瑠璃は、
(李章君が来てくれたぁ~。これで二対一。勝てるかもしれない。)
と、瑠璃の方は、心の中で自らの方が優位になったことだと理解する。
実際、ラナの実力から考えると、瑠璃たちと純粋な力の面では、劣っていることは事実であるし、そのことをラナが理解していないわけではない。
だけど、今は、瑠璃の宿泊しているリースの城の中の部屋であり、雷のような攻撃は周りの物を破壊するだけに止まらず、隣の部屋とかにある物を破壊してしまうかもしれない。そして、李章のように生の属性を手加減して、上手く、技術や戦略を用いて、倒すことができるのであれば、ラナは確実に敗北しているだけでなく、逃走は難しいだろう。
要は、瑠璃や李章がいくらランシュやヒルバスを倒すほどに実力を身に付けたとしても、手加減という面や技術的な面では、未熟という領域からやっと離れ始めているだけであり、上手にこなすということは難しい。過去の戦いから手加減よりも全力を出すことが多かったのだから、その逆というのは難しい注文でしかない。
そして、その手加減というものが難しいがために、瑠璃や李章も十分な実力を完全に発揮させることはできていないのだ。
「ここまでじっとしていても意味はないだろう。私が二対一になろうが、あなたがたが勝てないということは未来で証明済み。だから、私の手で、抹殺されなさい!!」
と、ラナは言う。
その時に、ラナは、「だから」という言葉のところで、一気に構え、「私の手で」が言い終えるところから一気に、瑠璃に向かって攻めてくる。
ラナとしては、瑠璃という存在を抹殺することが目的であるということを瑠璃に思わせることであり、全力にそう思わせようとする演技であると同時に、偶然、瑠璃を殺すことになったとしても、損をするどころか、儲けものぐらいの認識だから、本気で、このような行動ができる。
ゆえに、瑠璃や李章に、これを演技だと見抜くのは至難の業であるし、可能性としてはゼロに近いと言った方が表現としては適切なのかもしれない。
そのラナの動きには、迷いはない。あるわけがない。
(!!! 抹殺!!!)
と、瑠璃は心の中で驚きながらも、さっきからラナのしていることがそのような抹殺とほぼ同じような感じであることから、すぐに冷静になることはできた。
そして、ラナの方は、瑠璃に攻撃できる位置に移動をし終える。
そのことに、瑠璃は気づく。
その間、李章は、ラナのさっきの言葉を聞いた時、
(そんなことはさせない!!)
と、心の中で言いながら、李章は瑠璃のいる方向へ移動を開始する。
李章の気持ちとしては、瑠璃をラナに殺させるわけにはいかないという気持ちが強いものであった。それは、愛ゆえなのか、ということはすべての面において完全に判断することはできないが、瑠璃に対する好きという気持ちが優先的にはたらいていることは確かなことであろう。
李章は、移動しながら気づく。
ラナの攻撃が終わるまでに瑠璃のいる場所へと向かい終えることができずに、瑠璃がラナから大剣で攻撃されることを阻止することはできないと判断する。
そこで、李章が絶望したところで、瑠璃がラナの攻撃を完全に受けるという確定した未来ということが保障されているわけではない。
そう、李章は、瑠璃がラナの大剣による攻撃を回避しようとする姿勢があるということを理解し、すぐに、その後のことを考え、行動を開始するのだった。
李章にとって絶望と言っていいほどに想像できる未来が起きないことがありえるのなら―…。
(これで一撃か!!)
と、ラナは心の中で、確信しながら言う。
ラナは、瑠璃はラナの攻撃に対して気づいている可能性があるということはわかっているが、それに上手く対処できるとは考えていなかった。
なぜなら、瑠璃は、あまり動いたような感じがしないからだ。
その間に、ラナは、大剣を自らが見て左側の方に構え、横に振るのだった。瑠璃の腹の部分斬り裂くような感じで―…。
そして、ラナは横に振り終えると、感触がないことに気づく。人を斬った時には、対象に触れるという段階で、少し自分のところへ戻るような感覚があってもおかしくはないと思っているし、大剣を横に振るっている時に、瑠璃に対して視線を外すということはなかった。
だからこそ、理解する。
避けられたのだと!!
そう、瑠璃は、ラナの攻撃に気づいているし、避けられないわけではない。そのために、自身の体にわずかな光を覆わせ、相手の視界がぼやけないほどの明るさにして、瞬間移動している感じで、わずかの距離を移動したのだ。
これに関しては、かなり技術的に難しいことであるが、瑠璃の血の繋がった父親であるギーランの教えもあり、ほんの少しの移動を正確に自らのイメージでできるようになっていたのだ。
ただし、ある程度の距離となると、かなり大雑把なものとなるから、このような部屋や狭い場所が遠くにあったりするような所では、光の高速移動は使えない。
瑠璃自身の体が、何かに衝突するし、衝突の結果大怪我を負うことだってあり得るのだから―…。戦いの場で、そのようなことをしてしまったら、最悪の結末になることは確定的だし、戦いの相手にとって都合の良い結果をもたらすだけだ。
そして、同時に、このような移動方法は、意外に天成獣から借りられる力の量を消費してしまうのだ。だから、多くの場面で使えるわけではない。本当に、リスクのある移動法ということだ。
ラナは、瑠璃が今の攻撃を避けたことに対して、
(!!! チッ!! 一瞬で避けるなんて!!! 光? それとも時?)
と、心の中で予想する。
そう、瑠璃が天成獣の宿っている武器を扱うことができるのは確定的であるという前提で、ラナは考え始める。
ラナとしては、瑠璃が生ということはあり得ないということはわかっている。生の属性ならば、襲撃してきた時点で、ラナを簡単に制圧していてもおかしくない。瑠璃ぐらいの実力があれば―…。
だけど、すぐに制圧をしてくることはなかったので、生の属性ではないということは確実だ。
そうなってくると、移動の仕方や光を纏わせることから、光もしくは、時という可能性もある。この中でラナが瑠璃の持っている仕込み杖に宿っている天成獣の属性として可能性が高いのは、光なのではないかと思っている。
理由としては、光らせたという曖昧な理由でしかないが、それでも、そのちっぽけな理由が重要な時があるということを知っている。戦いの場では、その小さな差が生死をわけることがあるのだ。そういうことを理解している以上、わずかの情報も侮るわけにはいかない。
一方で、瑠璃は、
(あの侵入者を倒すためには、相手の隙を見つけていかないと!! まずは、相手の攻撃に合わせて、しっかりと避けていくこと!!!)
と、心の中で考える。
このことに関しては、戦っていく中では常識と言ってもおかしくないことであり、瑠璃はその確認をしているにすぎない。
そんななか―…。
(一撃、かわしたぐらいで―…。調子に乗るな!!)
ラナは心の中で、さっきの瑠璃がラナの剣撃をかわしたことに対しての悔しさというものがあった。
ラナとしては、瑠璃のさっきまでの動きから避けることができないほどの速度で、攻撃したつもりだった。
ラナも戦うことや暗殺を生業にしているので、相手の力量を測ることができないわけではない。ちゃんとできる。
ゆえに、瑠璃が何かをして、避けるスピードを上げていることを理解することができるが、それでも、このように実際に実行され、成功されてしまうと、悔しさはラナが思っているほど強く、衝撃的なものであった。
そして、ラナは動き出しながら再度、瑠璃を攻撃しようとしたが、瑠璃の方からではないところから、嫌な視線を感じた。
その予感を直感的に、ラナへの攻撃だと理解し、ラナはすぐに右へと移動し避けるのだった。
(チッ!! 私が攻撃した隙を利用して、蹴りで攻撃してくるなんて―…。)
と、ラナは心の中で悔しくしながら、現実に舌打ちする。
そう、ラナが瑠璃に向かって大剣による攻撃をしている間に、李章はラナの後ろ側へと移動し、瑠璃がラナの攻撃を回避し、しばらくした後に、右足による蹴りで攻撃するのだった。
そして、その攻撃を避けられた李章は、
(気づかれた時点で、駄目でした。だけど、二対一の状態なら、まだまだチャンスは存在すると思います。)
と、心の中で言う。
李章としては、ラナの動きはかなり速度のある動きであることは理解できるが、それでも、瑠璃と一緒に戦っている状態では優位なのは確定的だ。ただし、油断すれば、簡単に瑠璃と李章が不利になることもあるというのはちゃんと頭の片隅の方に入れているのであるが―…。
李章はすぐに蹴りを終え、右足が地面につくと同時に、ラナの方へと視線を向ける。
そこでは、すでに、ラナが瑠璃からターゲットを李章の方へと変更して、李章の方へ大剣を用いての攻撃に移行してくる。
そして、そのラナの攻撃に対して、李章は気づき、すぐに避ける。
横振りに大剣を振るうものであるが―…。
そして、何度も何度も、ラナは李章への攻撃を試みていくが、簡単に李章は避けていくのだった。
李章は、ラナの大剣の動きをちゃんと見ることができており、避けることは造作のないことだ。
(………………クッ!! ちょこまか、ちょこまかと避けるなんて!!! さっさと当たってしまいなさい!!!)
と、ラナは、心の中で苛立ち始めるのだった。
それでも、自らがここにいる目的を忘れているわけではないが、それでも、瑠璃や李章の片方もしくは両方を討伐することができれば、自らの上司であるフェーナにとっても都合が良いのは確かだ。
ゆえに、むきになるのだ。討伐の方に―…。
フェーナとしては、このような討伐を望んでいるわけではなく、時間稼ぎのための陽動作戦を成功させてくれれば、それだけで十分である。過剰な欲望は身を滅ぼす可能性が存在しているのだから―…。
まあ、フェーナの気持ちなど、今のラナには伝わらないことであろう。片方がサンバリア、もう一方がリースの城にいるのだから―…。
そして、ラナは大剣を用いて、李章への攻撃を続けていく。
それを李章は只管に避けていく。
その中で、ラナは、
(見切られている!!! だけど、大丈夫だ。李章は私の攻撃をずっと避けてばかりであり、攻撃してきているわけではない。攻撃をする気はないのかもしれない。瑠璃にしてもそうだ。そろそろ、もう一方の方へと攻めていった方が良い。)
と、心の中で、次の行動を考える。
これ以上、李章ばかりに攻撃を仕掛けていったとしても、意味はないことはわかりきっている。それに、李章へと攻撃している間、ラナに隙がないわけではないが、そこを瑠璃はついて攻撃してこようとはしてこなかった。ゆえに、瑠璃はラナを攻める気はないと、ラナからしてみたらそのように判断することができる。
さらに、李章の方も避けるばかりで、ラナに対して、攻撃してくるわけではない。同様の判断をラナは下す。
だからこそ、いつまでも攻撃が当たらない李章ではなく、再度、ターゲットを瑠璃に変更するのだった。
それに対して、瑠璃は「!!!」と、驚くのだった。
瑠璃としては、何もラナに対して、考えていなかったわけではない。ラナの方へと視線を向けながら、どうやって倒すかを考えたりもしながら、器物損害をどれだけ少ないものできるかを考えているところであった。
そんな中で、瑠璃は一瞬ではあるが、ラナから視界を外してしまい、その時に、ラナが瑠璃へとターゲットを変更したのだ。
だから、瑠璃は、自らにターゲットを変更されて、驚いたのだ。
そして、ラナが瑠璃へと向かっていることに対して、李章は、
「瑠璃さん。」
と、叫ぶのだった。
第134話-3 陽動作戦 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
この頃は、執筆スピードがなかなか上がらない状態です。それでも、『ウィザーズ コンダクター』の時にあったような感じのきつい時期よりはだいぶましな方なので、ゆっくりと書きながら、ペースを掴むことができるようになれば、と思っています。先に執筆スピードが戻りそうなのは、『ウィザーズ コンダクター』の方だなと感じています。
『水晶』の執筆は、第134話がネームのセリフをかなり正確に再現したり、変えたりと、細かいことをしているので、執筆時間が余計にかかっている状態です。内容の追加は、少しだけありましたが―…。今回の分で―…。第135話になれば、少しは楽になると思いますが―…。
第135話を書き終えることができれば、新作の方の準備を加速させていかないと、と思っています。新作の方は、ネームを少しですが書き始めています。
最後に、次回の投稿は、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年8月11日 次回の投稿分が仕上がりました。次回の投稿は、2022年8月12日頃の夜を予定しています。次回の投稿で、第134話は完成し、第135話は、2022年8月下旬頃のどこかで投稿を開始する予定です。