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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
323/748

第134話-1 陽動作戦

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、瑠璃が何者か襲われるが、何とか、傷を負わずに、戦うことが可能であった。

第134話は、文章量が多くなったので、分割します。内容の増量はほぼないと思います。

 少しだけ時が戻る。

 ラナがフェーナのいる議長護衛室に入った後のことである。

 「実は、あなたに頼みたいことがあるのよ。もちろん、今回、空間移動できる機械を用いて―…。まあ、ベルグの後ろにいるあの方が特別に一回の往復分だけ使える機械を―…。そして、依頼内容は陽動作戦―…。」

と、フェーナは言う。

 フェーナの言っている言葉の意味をラナは、すぐには理解できなかった。陽動作戦が何であるかは分かっている。

 「その内容の陽動作戦とは―…。」

と、ラナは尋ねる。

 そのラナの言葉に対して、フェーナは依頼内容を語る。

 「リースの城の中で侵入してもらって、この三人組を襲って欲しい。」

と、フェーナは言いながら、近くにあったリモコンを押して、部屋を暗くし、映写機から三人の人物の顔を浮かび上がらせる。

 この映写機は、このサンバリアのある大陸では、サンバリアがぐらいでしか使われていない、道具であろう。元々のこの映写機が作られるようになった経緯は、戦争や陰謀工作において、ターゲットの顔を正確に味方が把握するためにある。

 人の聞いた話だけでは、完全に伝わることはなく、間違ってターゲットとは異なる人物を始末してしまう可能性がある。そこで、確実なターゲットの姿がわかり、味方と共有することができる映写機があるとなれば、情報はより強固になり、ミスが減少する。

 サンバリアという国は、戦争による領土拡大政策を追求して、そのために必要なことを求めた結果の一つにすぎない。

 そして、映写機に映し出された三人の人物は、瑠璃、李章、礼奈である。現実世界で石化した時に、運よくギーランと出会い、この異世界へと逃げることができた人物たちである。その人物を倒しておく理由は、現実世界で起こった石化に対する情報が知られる可能性があることと、魔術師ローと接触すれば、確実にベルグの実験を阻止するためにやってくることは確実なのだから―…。

 それでも、ベルグとしては、ランシュおよびフェーナに任せたのは、ベルグの元へ来る時間をなるべく遅くさせるというためであった。それは、実験を止められないところまでいかせておくことと、三人組にそのことによって絶望を与え、心をへし折った上で、討伐しようとしているのだ。そして、魔術師ローが関わっている以上、三人組が強くなるのは事実だし、それを倒そうとすれば、確実な不利の場合はローが介入してくること間違いなし―…。それに対処できるのは、あの方ぐらいであり、あの方はローと出会い、倒すことを望んでいるのだから―…。その結果が、終わりを意味することであったとしても―…。

 「三人組を襲う事はわかりました。しかし、襲ってしまうことのどこに陽動作戦の要素があるのですか?」

と、ラナは、フェーナの言葉に疑問を感じて、言うのだった。

 陽動作戦の意味と、繋がらないのだ。

 「それは―…。」

と、フェーナは言う。


 【第134話 陽動作戦】


 時は戻る。

 リースの城の中の瑠璃が泊っている部屋。

 「教える気はないって―…。」

と、瑠璃は言う。

 これは、自然と出た言葉というよりも、心の中で思っていたことが、口にされてしまったと言っていい。

 その言葉を聞いた襲撃者であるラナは、

 「教えたところで、お前らが何かできるわけではない。なら、無駄だ。」

と、言う。

 ラナとしては、自分が何者の目によって襲われたのかを教えることに対して、何も制約というか、教えるなという命令はされていない。

 だけど、あえて秘密にしていることが重要なのである。言ってしまうことによって、疑うという気持ちを相手側に発生させては意味のないことなのだから―…。必死に引き出した情報ほど、人はその情報が本当であるかを確かめる可能性は低いのだ。必死になるほどに気力や体力を消費しており、情報に対する警戒を怠るし、その方がミスに気付いた時のダメージは大きいと思われるのだから―…。罠にどれだけの力を入れるかという面で―…。

 そして、ラナは気づく。

 瑠璃が仕込み杖の水晶玉の部分をラナの方に向けて、雷ではなく、光をおびさせる。

 この狭い空間で雷を使うのは、リースの城における建物のダメージを大きくしてしまうだけであるし、そうさせてしまうと、いろいろとリースの城にいる人たちから文句を言われるかもしれない。セルティーは言わないだろうけど、後処理の書類で大変な思いをするのは確かである。

 ここまで、深くは考えていないけど、瑠璃としては、弁償費用を払える自信は確実にないので、なるべく、城にとって損害が少ない方法を選びながら対処しようと考えるのであった。

 光をおびさせた後、すぐに、自らの血の繋がった実の父親であるギーランに教えてもらった光の速さの移動を使って、ラナへと攻撃できる範囲まで移動し、杖で物理的攻撃をする。杖を振り回すという方法で―…。

 (そこからか。)

と、ラナは心の中で言う。

 そう、瑠璃は、ラナの目の前の視界に入る方法で現れたので、すぐに、対処することが可能であった。

 ラナは、自らの武器である大剣を前に出して、防御するという感じで―…。

 (防がれた!! ここで雷の攻撃は使えないし―…。光でも、光線のようなことは一切できない。とにかく、この侵入者に直接、杖の攻撃を当てないといけない。……覚悟は決まっている。とにかく、あの人を倒すか、撤退させる!!)

と、瑠璃は心の中で言いながら、覚悟を決める。

 「覚悟が決まっている」という前で一呼吸をおいたりもした。

 そして、ラナ、瑠璃、双方に相手から距離を取る。

 瑠璃は、ラナの方へと視線を向け続ける。警戒を一切怠るということをせず―…。するわけがないか。

 今、まさに、最悪の場合は、自らの生の終わりを迎えるという局面にあることは間違いないし、血を大量に流した上での勝利や、水の中に閉じ込められるようなこともあったのだから―…、危険を感じる経験はこの異世界に来てからは十分にしているはずだ。

 したくてしたわけではないが―…。

 一方で、ラナはターゲットである瑠璃の方を見る。

 やるべきことは決まっている。

 「抹殺する。ただ―…。」

と、ラナは言いながら、自らの体中に白い光を纏わせていく。

 続けて、

 「それのみ!!!」

と。

 そして、ラナは、瑠璃へと向かって移動を開始する。

 その速度は、常人では確実に目で追うこともできずに、何も理解できずに、生の終わりを迎えていることは確かであろう。

 だが、瑠璃は違う。

 (抹殺!! ということは、ベルグとか言う人の関係者?)

と、瑠璃は心の中で思いながらも、ラナへの警戒を―…。

 ここで、瑠璃は、少しではあるが、ラナに対する警戒を怠ってしまい、見失うのだった。

 〔瑠璃!!!〕

と、念話が聞こえる。

 この念話は、瑠璃にとっては、さっきまで念話していた相手であり、瑠璃にとっては、自らの持っている武器に宿っている天成獣のグリエルのものである。

 グリエルは、ラナが瑠璃を抹殺しようとして侵入した時から、ラナへの視線をそらさないようにしていた。

 そして、グリエルの言葉にすぐに気づいた瑠璃は、何のスッ、という音が聞こえたので、すぐにそこから離れるように動く。光の速さで―…。

 一方で、ラナは、瑠璃へ向かって、移動する段階で、自らの武器である大剣を横に振るのだった。体験を振っている間に瑠璃へと大剣を当て、斬ることができると判断して―…。

 ラナの攻撃は、瑠璃が光の速さの動きで、回避したので、攻撃が失敗に終わる。

 (素早い!!)

と、ラナは、心の中で言いながら―…。

 だけど、ラナは、自らのフェーナから命令された目的を忘れているわけではない。忘れてしまっていたら、すぐにでも、瑠璃に向かって攻撃するだろう。

 そして、瑠璃の居場所を確認すると、動くのではなく、少しだけの間を開ける。ほんの数秒であるが―…。

 数秒の時間が経過した後、ラナは動き始める。

 瑠璃に向かっている時に、何かの音を聞くのだった。

 ドタン、っという音を―…。

 その音からラナはすぐに推察する。心の中で言葉にするほどの時間もなく―…。

 「邪魔者か!!」

と、ラナは言いながら、一端、視線を瑠璃から離し、この瑠璃が宿泊している部屋の出入り口の方に向ける。

 そこには、扉を開けられたのがわかるぐらいに、扉が開くように動き、ある地点に達すると、元に戻るかのように動いているのを―…。

 そして、ラナは、視線を移動させながら、その中で、瑠璃の宿泊してきたラナにとっての邪魔者の姿を捉えるのだった。

 「貴様は、後でこちらから向かって行く予定だったが、好都合。」

と、ラナは言う。

 このラナの言葉には、深い意味があるとは限らないが、それでも、瑠璃の宿泊している部屋に入ってきた人物がラナのターゲットの一人であることに変わりはない。

 そして、入ってきた一人の人物はすぐに、ラナの目の前へと近づき、ラナへと右足の蹴りを入れようとする。

 ラナもそのことに気づきすぐに、体を後ろへと仰け反るようにして、攻撃をかわすのだった。

 ゆえに、右足による蹴りの攻撃は、ラナに当たることはなかった。

 「チッ!! 不意を突かれそうになった!!!」

と、ラナは悔しそうに言う。

 その声は、大きなものではなかった。

 だけど、不意を突かれそうになったのは事実だ。

 攻撃を予想することはできるが、見た目からして、蹴りによる攻撃をしてくるとは思えなかったのだ。ラナの持っている情報では、刀を用いた戦いをするとばかり思っていた。

 厳密に言えば、刀で戦うようになったのは、第九回戦以後のことであり、それまでは、蹴りで戦っていたのだ。これは、リースとサンバリアにおける距離と情報の伝達量がかなり少なく、適当な伝聞がかなり混じっていたためであろう。

 しっかりと情報を集めることができる時間があれば、このようなミスをするはずはない。実際、情報を集める時間はほとんどなく、急な依頼であり、かつ、ランシュが企画したゲームも終わり、リースも体制というかいろんな意味での変化があり、現地で、一人の人物の蹴りの攻撃かどうかをする者であるかという情報も会話の中でなされることもなかったのである。

 そして、部屋の中に入ってきた一人の人物は、瑠璃を守る存在であるかのように、瑠璃の目の前へと向かい、すぐに、ラナの方へと視線を向けるのだった。

 「何か嫌な予感がすると思い、瑠璃さんの部屋に来てみたら、襲い掛かっている人がいますとは―…。あなたは何者ですか!!! もしも、瑠璃さんの殺害を目的としているのならば、容赦はしません。」

と、李章ははっきりと言う。

 李章は、愛おしい人を失うわけにはいかない。失うことの本当の意味での辛さを知っているわけではない。だけど、それがとても辛いことであるということを想像することはできる。

 ゆえに、瑠璃を守ることに必死なのだ。

 (………少年か!! 少年にしては良い蹴りをしている。天成獣の宿っている武器を扱っているのだろう。三人組なのだから当たり前のことか。だが、まだ完全にダメージが回復しているわけではないな。ランシュの企画したゲームが終わってから、日も浅い。)

と、ラナは心の中で、理解する。

 李章の蹴りに関しては、威力の強さや動きから、良く鍛えられているのだろうということがわかる。ラナも戦いの中に身を置くことが多い以上、相手の実力を見抜くことぐらい造作もない。そうしなければここまで生き残って、フェーナの信頼を勝ち取ることはできなかったのだから―…。

 そして、李章の動きが完全に、天成獣の宿っている武器を扱うことによって、可能な速さであることがわかったので、天成獣の宿っている武器を使っているのだろうと考える。現に、李章は使ってはいるが、天成獣の宿っている武器を手元に持っているわけではない。なぜなら、体が勝手に動いたのだから―…。

 天成獣の宿っている武器を持っていたり、所持している状態の方が、力を十分に発揮させることができるのだが、武器を体から離したとしても、少しの時間なら、完全ではないにしても、十分に発揮できるに近い状態であることは可能だ。少しの時間である以上、次第に天成獣から借りられる力の量を十分に発揮できないどころか、借りられることもできなくなるのであるが―…。再度、天成獣の宿っている自らの武器を体に触れさせることができれば、元に戻すことができる。

 そうである以上、李章は、そのことを承知の上で、侵入者であるラナに対して、長期戦をしようとは考えておらず、撃退もしくは捕まえる、逃がしたとしても瑠璃の身に危害を加えられるということがなければそれで十分なのである。

 李章は、ラナの方への視線を外さないようにする。


第134話-2 陽動作戦 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年8月4日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年8月5日頃を予定しています。

遅くなってすいません。バトルシーンの時のネームを見ながらしていたので、時間がかかりました。

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