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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
322/748

第133話-8 後始末

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、サンバリアにいるフェーナによるラナに対して、何かが命令されるのだった。それは―…。

今回で、第133話が完成します。

 リースの城の中。

 朝食後、瑠璃、李章、礼奈、クローナは、しばらくの間、暇に過ごしながらも、修行は続行されているのだった。

 理由は、ベルグが現実世界を石化させた犯人であることは、ランシュの言葉からわかっている。

 そのベルグから石化を解除させるための方法を聞き出すには、倒すしかないというのはわかっている。

 交渉事で話してくれるのであれば、困ったことにはならないが、それでも、石化してくるのだから、何かをしようというのは明白である以上、交渉だけで話してくれる可能性は低いと見積もっておいた方が良い。

 それと同時に、ベルグを殺すことは最悪の選択肢でしかない。なぜなら、ベルグを殺してしまえば、現実世界における石化の解除方法を聞き出すことが永遠にできなくなるのだ。

 そう、瑠璃たちは、ベルグとの戦いはかなり難しいことを要求されているのだ。

 だからこそ、実力をつけないといけない。ベルグの実力以上に―…。余裕でベルグを倒せるほどに―…。

 ここに、アンバイドは加わっていない。

 もう、ランシュを倒すことができたし、ベルグの居場所を知ることができたのだ。瑠璃、李章、礼奈、クローナに、天成獣の宿っている武器を用いての戦い方を教える義理もない。

 アンバイドの目的は、ベルグに対する復讐なのだから―…。

 そして、中庭での修行をミランが見ているのだった。

 (相変わらず、まだまだ未熟な面もあるものねぇ~。まあ、この世界とは別の世界から来て、まだ、二、三ヵ月ぐらいだろうし、そこからの成長具合は著しいものと言った方がいいかしら―…。瑠璃にいたっては、ランシュに勝つぐらいの実力を示しているのだから―…、実力ははっきりと言って、経験以外はあると言ってもいいぐらいね。この中で一番の天才が、礼奈。あの子は、戦い方の工夫やバラエティーがかなりある。熟練の扱い手か、と思わせるぐらい―…。成長スピードは、天成獣から借りられる力の量とは別の方向で著しいものを感じるわ。頭の中でいろんなことでも考えて、それを本能的に―…。礼奈に関しては、私でも数カ月もしないうちに、実力で抜かれるかもしれない。末降ろしいわ。)

と、ミランは心の中で思う。

 全体的に、天成獣の宿っている武器を扱うようになってから、ほんの月日はそこまで経過していないのに、成長スピードが著しいと感じるのだった。

 天成獣の宿っている武器を扱うようになったとしても、すぐに実戦というわけにはいかず、基本の武器の扱い方に加え、属性の把握と、力の発揮させ方をしっかりと理解する必要がある。そのことをこなすのが至難の業である。

 ミランも、そのことに関して、苦戦したのは覚えている。だからこそ、成長スピードの著しさには驚かずにはいられなかった。

 その原因は、瑠璃、李章、礼奈の場合、一週間で基本的な使い方を完全ではないけど教えられ、旅立たされ、ローなしで旅をしなければならなかったし、ランシュの部下から狙われていたので、実戦ばっかりだったのだ。

 ゆえに、一般的な天成獣の宿っている武器を扱う者の行動とは多くの面で違っており、同じ期間で比較したのなら、戦闘経験はかなりある方である。ゆえに、戦い方も自分達でその場その場で工夫する必要があり、同じくらい期間を一般的な天成獣の宿っている武器を扱う者よりも実力の方は付いていてもおかしくはない。

 さらに、実力者との、時には殺されるかもしれないという戦いを経験しているせいか、無理矢理でも実力を身に付けないといけない環境であったからこそ、成長スピードも速くなったのだろう。まあ、諸々の要因があるだろうが、主には以上のような感じだ。

 クローナに関して補足すれば、ほぼ同じではあるが、天成獣の宿っている武器の扱い方は、瑠璃たちよりもローから少しだけ期間を長く、教えてもらうことができているので、基本的なことはしっかりとしているのだ。

 そういう面では、アンバイドも教える時には、苦労の数は少なかった。別の意味、苦労はさせられたが―…。

 ミランが、一番恐ろしく感じたのは、礼奈である。

 礼奈は、天成獣から借りられる力の量は、瑠璃より少ないのは事実だ。だけど、それを補ってもお釣りがくるほどの戦い方に関して、優れているのだ。天成獣の力の使い方が優秀だけじゃなく、戦いそのものにおいても―…。

 いわゆる、戦いの天才と言っても過言ではないぐらいに―…。今のところは、ほとんどそういうのを見せていないし、ほんのその一端程度しか露わにしていないが、確実に、その才能があると見る者が見ればわかるぐらいである。

 それは、成長速度からして、恐怖を感じないはずがない。時に、その成長は、人から恐れという感情と同時に、嫉妬を抱かせるには十分なのだ。

 だけど、そのような感情を抱いたとしても振り払うことも可能だ。完全ではないにしても―…。

 そして、瑠璃たちの修行を見ながら、昼前まで、その様子を見るのであった。


 城の中のアンバイドの部屋。

 時間は昼食の時間を終えてからのことだ。

 (………………。ベルグの居場所を知ることができた。もう、ここにいる必要も、あいつらと一緒にいる必要もなくなったな。俺が目指すべきはクルバト町と言われる、もう存在しない町のある場所だからな。)

と、アンバイドは心の中で思う。

 アンバイドとしては、もう、瑠璃、李章、礼奈、クローナとともにいる必要はなくなった。今朝のランシュの会話から、ベルグの居場所がわかったのだ。

 元々、ランシュの企画したゲームに勝利した場合、ベルグの居場所を教えるということが約束されており、それが果たされたにすぎないのだから―…。

 アンバイドとしては、ようやく手に入った情報であり、これから、自らの目的を達成するために行動をしようとするのだった。

 (だが、ランシュの野郎が言っていやがった。)


 ―そうか。場所を教えたところでアンバイド一人で対処することは不可能だ。確実に、な。ベルグには直轄下にある重臣が十二人いる。そいつらの実力は、俺と同等かそれ以上だと思っていた方が良い―


 アンバイドは心の中で、今朝のランシュの言った言葉の一部分を―…。

 そう、印象に残って、植え付けられた言葉を―…。

 さらに、それは、アンバイドのプライドを傷つけるには十分なほどの言葉を―…。

 だけど、これは、ランシュが別にアンバイドのプライドを踏みにじりたいから言ったわけではなく、冷静に、アンバイドとベルグの重臣の実力を比較して言った評価にすぎない。なぜなら、ベルグの重臣を全員倒せないようなアンバイドが、ベルグに勝とうとするなんて無謀なことでしかないのだから―…。

 復讐するにしても、相手との間にある実力や権力ぐらいは考えるものだ。そうしなければ、復讐の刃は相手に届くことなく、破壊されていくのは当たり前のことなのだから―…。やり方の工夫もそこに含まれることになるだろうが―…。

 (本当に見くびられたものだ。俺がベルグの重臣ごときを全員倒すことができないだと―…。本当に舐めやがって―…。)

と、アンバイドは心の中で続けて言う。

 ランシュとしては、ベルグの重臣が一人一人相手するにしても、全員が一気に相手するにしても、数人だとしても、どこまで、アンバイドが戦い続けられるかを想定した冷静な評価に過ぎない。それをアンバイドは理解することができていなかった。

 普段のアンバイドなら、そういうことはなかったであろう。アンバイドは傭兵の中ではかなり有名人であり、実力者であることに間違いはない。だけど、自らの目的であるベルグに対する復讐ということが目の前の現実の手に届くかもしれないという範囲にきて、ベルグの手前のその重臣を倒すことが不可能だと言われたのだ。

 実際は、アンバイドでも何人かを倒すことはできるだろうが、それでも、全員を倒さなければ、ベルグの元へとたどり着くことはできないということである。そう、ベルグの重臣は全員が忠誠心を強く持っているわけではないが、それでも、ベルグを守るために全力を尽くて戦うことは明らかであった。ゆえに、アンバイドは、結局のところ、全員と戦わなければならないということから逃れることができない。

 ベルグへの復讐を実行しようとする限りにおいては―…。

 そして、アンバイドは目的を前にして、不可能と言われたので、普段の持ち前の冷静さを失ってしまっているのだ。それでも、完全に失っていないから、戦いの中でちゃんと気づくことはできるかもしれない。

 (俺だって―…なぁ~、ランシュの言う通りのこと以上の切り札ぐらいは持っている!!)

と、アンバイドは心の中で言うのだった。

 そして、アンバイドは、しばらくの間、切り札を使うタイミングと同時に、これから、クルバト町へと行くために必要なものをリストアップするのだった。


 夜。

 場所は瑠璃の部屋。

 〈グリエル~。他に隠している力とかあるの?〉

 〈あるか、そんなもの!! 後は、瑠璃自身が戦い方を工夫しろ!!! 天成獣の宿っている武器を扱う者どうしの戦いなんてそんなものだぞ!!〉

 瑠璃は念話をする。

 その念話の相手は、瑠璃の持っている仕込み杖に宿っている天成獣のグリエルである。

 瑠璃としては、何かグリエルが力を隠しているのではないかと思ったからだ。

 だけど、グリエルが瑠璃に対して、力を隠しているものはない。仕込み杖に仕込まれている剣を用いての戦うことは最初からわかっていたが、本当の属性が光であることは教えてもらえなかった。瑠璃自身も気づいていなかった。

 そのこともあり、グリエルがまだ何かを隠しているかもしれないと思い、念話で聞いてみるのだった。

 グリエル自身は、本当の属性が光であること以外は隠していなかったし、その隠していたものも、実は自らの力を扱う者が未熟なうちに強大な力を扱うとどこかで、その力を持て余しかねない。だからこそ、成長していくとともに、扱える力の量を増やしていって、心技体が揃った上で、自らの力の量を扱えるようにしているのだ。実に、優しいグリエルである。

 〈そうなの~、実は―…。〉

 〈とかは、ねえからな。〉

 〈はい。〉

 結局、グリエルはもう隠していることはない。ようだ、ではなく、本当に―…。

 天成獣の宿っている武器を扱うことができる者は、天成獣から選ばれるということによって、なされる以上、天成獣の側だとしても、戦闘を好む者であれば、選んだ者が簡単に死んでもらっては困るので、ある程度は力をどうやって扱うのかぐらいは使用者に認識できるようにする。これは本能的になされている。

 〈だけどまあ~、それでも瑠璃は、十分にやっているほうだと、俺からしても思うぜ。戦いが最初から多かったせいでもあろうがな。だから、焦ることなく、自分は自分だと割り切った上で強くなっていった方がいい。〉

 〈わかった。〉

 瑠璃は、グリエルの言葉に返事をする。

 グリエルとしては、瑠璃の成長は早い方だということはわかっている。そして、その原因が、強者との戦いが多かったということと、生死が関わる可能性が高かったこと、そして、修行をつける人間が実力者であったことから、十分に説明がつく。

 その成長でも追いつけるかどうかもわからないほどの実力者との戦いが多い以上、自分と比較してしまい、成長していることを感じにくく、劣っているのではないかという劣等感を抱いてしまうかもしれない。それは、決して、瑠璃自身の成長のためにはならない。だからこそ、瑠璃は、自分のペースというものに焦らないで欲しいと思うのだった。そこに、グリエルの優しさがでていた。

 〈じゃあ、もふもふしていい。そっちに行って―…。〉

 〈いかせるか―――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!〉

 瑠璃は、グリエルをもふもふしようと考えるのだった。

 理由としては、グリエルは体長の大きい天成獣であるし、瑠璃も過去にグリエルの姿を見たことがあり、その毛並みでもふもふしたい気持ちがあるのだ。

 グリエルは照れてしまい、瑠璃をグリエルのいる場所へと連れていく気にはなれなかった。

 〈!!! 誰か近づいている!!!〉

 〈えっ!!〉

 そして、瑠璃は今、持っている仕込み杖を構えると同時に、瑠璃の部屋の中にある外との間にある大きな窓が一つが割れるのだった。

 パリーン、と大きな音をさせて―…。

 それをした一人の女が瑠璃の部屋に窓を突き破って侵入してくるのだった。

 (侵入者!!)

と、瑠璃は驚くが、それでも、すぐに戦闘態勢を整える。

 そして、侵入者である一人の女は、瑠璃のいる方へと視線を向ける。

 (顔は映像で見た。こいつだね。)

と、一人の女は、瑠璃が自らの今回のターゲットであると確認し、確信する。

 そして、肩紐にさげている剣を抜き、瑠璃のいる場所に向かって攻撃するために、移動してくる。

 それを理解した瑠璃は、すぐに、仕込み杖を用いて、防御態勢をとる。

 キーン。

 (防がれた!! まあ、いい。私の目的は別にあるのだから―…。)

と、一人の女は心の中で言いながら、あくまでも暗殺者を装うのだった。

 一方で、瑠璃は、

 「あなたはなぜ私を襲おうとするの? その理由を教えて!!」

と、はっきりと言う。

 瑠璃としては、確実に、自らが狙われる理由を確認しておく必要があるのだ。それは、ベルグの関係者のなのかということかどうかをしっかりと相手の口から確認して、知っておくべきだと判断しているからだ。

 もし、ベルグと関係がないのであれば、別の勢力の存在があるのかもしれないと考えられるからだ。瑠璃がそこまで理解しているかは、あやふやなところがあるが―…。

 「理由―…、そんなものを教える気はない。」

と、一人の女は、毅然とした態度で言う。

 そして、両者、距離をとるのだった。


 【第133話 Fin】


次回、作戦成功!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回で何とか、第133話を仕上げることができました。第134話はネームを見た感じ、内容の追加はほとんどないので、第133話よりは短くなるとは思います。分割が発生しないかは、現時点ではわかりませんが―…。その反動で第135話は長くなりそうな予感がします。

『水晶』もあとちょっとで、リースの章に一応の区切りを付けられ、二カ月ほど休みながら、番外編の方を書き溜めて、次の章の方の文章も書き始めていきたいと思います。お盆までには、リースの章を終えるのはかなり可能性の低い状態にあります。

早ければ、2022年の9月あたりになるとは思います。遅くても、2022年の12月ぐらいまでには仕上げたいです。

今後とも、『水晶』の応援をよろしくお願いいたします。

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年7月22日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年7月23日頃を予定しています。

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