第133話-7 後始末
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
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前回までの『水晶』のあらすじは、ベルグの重臣によって、アングリアらが暗殺され、その死体に対するスキャンで死因が探られるのであった。一方で、サンバリアにはフェーナがいた。
一方で、少し時が戻る。
場所は、サンバリアの中央にある塔の最上階。
そこから、外を眺めることができるのなら、サンバリアの市街の一面を余すことなく覗き込むことができるだろう。
まあ、あまりにも高いからガラス窓やらを置くことはできるわけがないのだから―…。
たとえ、高い塔のようなものを建設する技術があったとしても、周囲に砂漠がある以上、砂が塔の近くまで舞い上がって、流れてくることがある。
そう、サンバリアはある一方を砂漠が占める場所にあり、もう一方は、海と同時にサバンナ…、小さいけど森がある場所にあり、交易拠点として栄えているのは当たり前のように感じる。
サンバリアがある場所は、リースとは別の大陸であり、技術に関してもリースよりも発達しているが、この異世界における一番ではない。
また、それとは別の大陸にあるのだから―…。
さて、話を戻して、サンバリアの中央にある塔の最上階の一つの部屋に、議長護衛室という豪華な部屋があり、その中にフェーナがいた。
さらに、もう一人、秘書と思われる女性がいた。
「うん、これを次の議題にあげるように…と、議長から―…。」
と、フェーナは、一人の秘書に渡すのだった。
その資料を受け取った秘書は、ホッチキスで止められた紙の束に書かれているレジュメを見ながら、言い始める。
「また、侵略計画ですか。こんなに侵略、侵略、…で大丈夫なのでしょうか? 私とても不安です。」
と。
その秘書の言葉に対して、フェーナは少しだけ顔を顰めるのだった。
気に食わなかったわけではないが、自分に言われても困るのだった。
「……………そうね。私のような一介の近衛長官には、政策に対して、意見する権限はないのだから―…。文民統制。この国の軍事に関する大きなことは、議会によって決められるのだから―…。」
と、フェーナは言う。
フェーナとしては、サンバリアの国の仕組みをしっかりと理解しているからこそ、自らに軍事に関することで侵略を阻止する権限などないことを理解している。文民統制。シビリアンコントロール。軍事において、文民が軍人よりも優越し、軍事を統制することである。そのため、サンバリアにおける軍人が、勝手気ままに他国と戦争したり、侵略することはできないとするものである。
そのため、サンバリアにおける軍事行動のすべてが、議会による決議によって、決められることになっている。
そして、秘書が心配していることは、他国侵略を宣言してから二年ほど、サンバリアは、戦争をしていない日がないのだ。王政の最後の王の時代には、一切の侵略を放棄しており、かつ、他国との和平を保っていたのに対して、共和制における議会が主導することになって、戦争ばかりだ。
行政側の人間である秘書にとっては、軍人の一人であるフェーナの秘書であったとしても、このように、費用を膨大に使ってしまう戦争というのはあまり好きではない。金を工面してくる立場の身にもなって欲しい。お前ら軍人の身勝手な行動のせいで、いつも苦労しているのは我々だ。
だけど、行政側の人間としても、軍人たちの目的と同時に、侵略に対して一つの権力における三つの役割の中の行政と司法とは違う、もう一つの役割である立法を司る議会が関わっているのを知っている。
「それでも、裏では―…。」
と、秘書は言う。
秘書にとっては、本当のことでしかない。
(だって、裏では、軍人と議会が繋がっており、議会の中にも元軍人がいるのは、公然の事実なのだから―…。サンバリアの繁栄には、戦争が必要だ。サンバリアは憎き敵たちに囲まれており、そいつらは文明化していて、世界に誇る技術をもっているサンバリアを羨んでおり、その富と技術を欲しているのだ。だけど―…、実態は、サンバリアの軍事力が圧倒的すぎて、周囲はサンバリアに恐怖している。それをサンバリアが周囲が纏まらないように外交で分断工作をおこない、一つずつ戦争で潰しているにすぎない。潰す国の中に、反サンバリア派だと言いながら、本当は親サンバリア派を政権にすえて―…。本当に、国は善人でやっていけるほど甘くないから、悪どいことも重要だけど、限度というものがあるでしょ。まあ、一介の秘書が言える立場ではないね。感情的になりすぎた。)
と、秘書は心の中で思い、反省するのだった。
一介の秘書に、サンバリアにおける権力などあるはずもない。行政側の人間である以上、出世を望むし、そのことを実現させるためには、上司に媚びるしかないし、権力者に寵愛される必要があるのは決まりきったことだ。サンバリアでは―…。
「そういうことは言うべきではないですよ。あなたは優秀な人です。私は、あなたを失いたくはありませんので、それ以上の発言は慎んでください。改めて言いますが、私は一介の軍人でしかなく、サンバリアに対して、権限も権力もございません。私にできるのは、サンバリア議会および政府から言われた命令を近衛長官として受け入れるだけです。」
と、フェーナは言う。
その言葉に悔しさも、歓喜も、誇りもなく、淡々と自らが当たり前のことをするかのように―…。フェーナに表立って権限があるわけではないし、公式上は、サンバリア共和国軍部陸上軍隊護衛部近衛長官という軍人の役職の一つに就いているのでしかない。
秘書もそのことを承知しているが、議長に意見はしなくても、実際に、意見を申せる立場で真面なことを言えるのはフェーナぐらいだと思っているのだった。
「すみません。口がすぎました。」
と、秘書は、フェーナに謝る。
行政側の人間の多くが心の中で思っていることを議会には言うことができないと悔しくてたまらなかった。だけど、行政側の人間の中には、議会の長、議長に取り入って、美味しい思いをしている奴らはいる。そいつらは、国の軍事費の一部を着服して、私財を蓄えているという―…。議長派の議員とともに―…。
「それでいいの。大丈夫、あなたもきっと幸せな未来を見ることができるから―…。では、ラナを呼んできてくれるかな。」
と、フェーナは言う。
「わかりました。」
こうして、秘書は、ラナという人物を呼びに行くために、議長護衛室から出て行くのであった。
その様子を見終え、フェーナは心の中で思うのだった。
(サンバリアを悪政の例とするベルグの計画は成功している。それに、サンバリアの議長は、我々にとっての玩具にすぎない。まあ、秘書の一人だろうとも、その真実を教える気はないわ。そして、今日、ベルグからの通信があり、昨日、ランシュがあの三人組のうちの一人に倒された。本当に、時間稼ぎぐらいはしてくれたのか。それに、敵方との婚約だなんて―…。本当に、おかしな展開になっているわね。そして、次は私か―…。時間稼ぎ役は―…。まあ、私はランシュと違って、討伐ではなく、純粋に時間稼ぎに徹させていただきます。その中で、倒したり、殺したりすることがあれば、それで良いぐらいに―…。)
と、フェーナは心の中で思いながら、今朝の出来事を思い出すのだった。
時は戻り、今朝。
フェーナの自室。
この部屋は、近衛長官に与えられる部屋であり、部屋の広さと同時に、盗聴防止の設備もしっかりしており、砲弾による攻撃でも簡単に破壊されることはないほどの頑丈な壁で覆われている。
その部屋の中で目を覚ましたフェーナは、洗顔および朝の鍛錬を終え、シャワーを浴び、朝食へと行こうとしていた。
その時、通信機がポケットの中からなるのだった。
(ベルグから―…。)
通信機をポケットから出し、通話をする。
「やあ~、フェーナ。そっちの方はどうだい。」
と、ランシュが、まるで、久しぶりにあったかの感じで会話をしてくる。
その言葉に対して、呆れながらも、フェーナは返事をするのだった。
「いつも通りよ。サンバリアは、議会の議長による戦争、戦争の日々よ。私は近衛長官だから、戦線に行くことはないけど―…。軍人の消耗はかなり激しいかな。まあ、材料としては大量に増えているんじゃない。トラガルのお望みの―…。兵器に人の形を与えるための―…。」
と、フェーナは言う。
フェーナとしては、王政から共和制に変わって以後、サンバリアは戦争に次ぐ戦争で、戦争がない日なんて一日もないと言って良いほどだ。そんなことはベルグでも知っていることだ。
ベルグは、別にサンバリアを周囲と戦争を過度におこなっている国にしたいわけではない。悪政の国にして、その国がどのように判断しているのかを知りたいだけだ。リースの善政と同じように―…。
サンバリアの戦争自体は、国家の成立の時からおこなわれており、初期の頃はそこまで多くなく、対外関係で相手が攻めてくるから対処していたにすぎない。その中で、次第に、サンバリアは拡大し、いつの日にかある野望を抱くのだった。そう、二百年前にこの地域に存在した大帝国を作り上げようと―…。その国は、ある日を境に滅びてしまうが、この話に関しては、まだまだ述べる必要のないことである。
それからというものサンバリアの戦争は、領土拡大のために、自らが積極的に仕掛けるようになり、周囲からサンバリアは危険な国家であり、支配した国の人々を殺すことも平気ですることもある国として知られるようになり、恐怖の対象となっていったのである。
その後、王政の最後の王が即位したと同時に、領土拡大政策を放棄し、平和な統治をおこなうようになり、国策として貿易などの発展も十分におこなっていった。
だが、二年前のクーデターで、王政は崩壊し、共和制になってから、領土拡大政策を再開し、周囲の国々の多くを滅ぼしている。
そのことをフェーナは知っているし、いろいろな野望があり、実験場であることを知っている。その悪政の中のサンバリアに、ベルグの部下であるトラガルも十分に関わっているのは事実である。
「そうかい、まあ、トラガルはサンバリアに、戻ることはできないからねぇ~。レグランド王の時代の最初の頃を生きている者たちは、嫌っているからねぇ~。トラガルの人道に反する実験を―…。さて、昨日、ランシュが三人組に敗北したんだ。ランシュが企画したゲームで―…。」
と、ベルグが言う。
ベルグとしては、フェーナの最後の方のトラガルのお望みが手に入っているということに関して、サンバリアとトラガルの関係について言うのだった。
トラガルは過去に、人道に反する実験をおこなっていたし、サンバリアの高官の一人でもあり、その地位を利用していた。そのことが発覚し、サンバリアを追放されているのだ。そのことに関しては、いずれ詳しくわかることでしかないのだから―…。
そして、トラガルに関する話の後、本題であるランシュの敗北に関して、フェーナに伝える。
「そうなの。まあ、向こうも成長しているということね。じゃあ、次は私がランシュの役目を引き継ぎ、時間稼ぎをするの。ベルグの実験を完全に完成させるために―…。」
「そう。話が早くて助かるよ。」
そう、ランシュが瑠璃、李章、礼奈という現実世界からこの異世界に来た三人組をベルグへと近づけないように時間稼ぎをベルグから命令されて、実行しているということだ。それが、昨日の第十回戦第六試合でランシュが瑠璃に敗北し、時間稼ぎがこれ以上できなくなったのだ。
ベルグとしては、ランシュが十分にその役割を果たしたと思うし、攻めたり、粛清するつもりもない。ゆえに、そろそろフェーナがランシュの役割を引き継ぐのが良いと考えたのだ。それに、フェーナの考えることは何となく想像がつくのだから―…。そこから計算すれば、実験を完成させることは可能だし、ギリギリのところでの対戦となり、ベルグの実験を阻止することはできない、と予測することができる。
「ええ、サンバリアまではリースからかなりあるから十分に、時間を稼ぐことはできるわ。まあ、殺してしまっても構わないわよね。」
「ああ、それはご自由に―…。」
そして、フェーナとベルグの会話は終わるのだった。
時は戻る。
サンバリアの中央にある塔の最上階の議長護衛室。
そこに―…。
トントントン。
「あら、入ってきて大丈夫よ、ラナ。」
と、フェーナが言うと、部屋の中に、ラナと呼ばれる女性が入ってくる。
年齢が若く見える女性であるが、フェーナと比べて、身長は高く、スラっとしている。服装は、黒で覆われており、顔の中の目の部分だけが見える以外は黒と言っていい。
このラナという女が裏の任務を担う人間であることがわかる。
そして、背中の方に大きな剣と思われるものをしょっているのがわかる。肩紐のようなものをかけて―…。
「何の御用でしょうか? フェーナ様。」
と、ラナと呼ばれる女性が用件を尋ねる。
ラナという人間は、フェーナに対して心酔しているほどに、忠誠心が高い。
そのフェーナから呼ばれるということは、重要な任務を授けられるということである。喜ばないわけがない。表情には出さないが―…。
それでも、ラナが喜んでいることにフェーナはちゃんと気づいている。表情に出ていないが、わかりやすかったりする。
「実は、あなたに頼みたいことがあるのよ。もちろん、今回、空間移動できる機械を用いて―…。まあ、ベルグの後ろにいるあの方が特別に一介の往復分だけ使える機械を―…。そして、依頼内容は陽動作戦―…。」
と、フェーナは言う。
その後、ラナに今回の任務というか頼み事に対する内容が話され、これが本当の意味で陽動作戦であることを知る。
そして、ラナは、フェーナの頼み事を受ける返事をすぐにして、実行に移すのだった。
第133話-8 後始末 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回で、何とか、第133話は完成すると思います。ここから、次の目的地の場所がどこかがわかってくると思います。ネームの方ではすでに完成していますが、リースの章がここまで長くなったとなると―…、どれだけになるか想像できません。というか、長くなりそうです。文章とか追加してしまって―…。残虐なことも味方の側ではないですが、起こると思います。描写はなるべく、深くはしないと思いますが―…。
あと、新作の方は設定の段階で行き詰ってしまいそうな感じなので、プロットを書きながら、行き詰まりを回避していけたらと思っています。行き詰って同じことを考えても、良い打開策が開かれるわけではないので、行動してみるという感じでいこうかな~、と―…。書いているうちに、どういう物語かの漠然に対して、しっかりとした大黒柱以外の柱がしっかりとかたまってくると思いますので―…。
最後に、次回の投稿分に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告したいと思います。
では―…。
2022年7月19日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿日は、2022年7月20日頃を予定しています。