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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
320/748

第133話-6 後始末

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、アングリアが暗殺され、その死体がある死体安置室へと、ロー、ギーラン、イルーナ、ランシュ、リーンウルネは向かうのだった。

 死体安置室。

 そこには、収容所で亡くなった人々および、事件に巻き込まれた人、処刑された者等が一時的に安置される部屋。

 そのような場所に到着する。

 「昔に何度も何十回もこういう場所に来たことがあるからわかるが、相変わらず死体の匂いはきついの~う。」

と、ローは、自らの鼻を抑えながら言う。

 ローは、死体安置室に何度も来たことがある。ただし、リースの死体安置室を含めて、旅した場所の死体安置室にであるが―…。

 ローという人間は、たくさんの死体を見たことがある。戦場における殺された無数の死体。国によって虐殺された者の死体。安寧に生を終えることができたものと、数えればきりがないし、遠い昔のこともある。

 ローは、死体に関して、どのように殺されたかということに関して、自らの手に入れた能力を用いて、どのように殺されたかということを探ることができる。

 そして、世間における魔術師ローというものの評価は、特殊な能力を持っており、世界各地で暗躍されており、一部の噂には、不老不死であるとされている。実際は、どうなのかを調べることはできないであろうが、ローという存在が特殊な力を使うことができるのは事実である。

 ローは、死体の匂いに苦悶の表情を浮かべる。いくら死体を見ていると言っても、この匂いになれるわけではない。そして、この死体の匂いによって、理解してしまうのだ。死というものの存在と、失われるということの意味であり、理を―…。

 「アングリアの遺体はこちらです。」

と、死体安置室の管理人は言う。

 死体安置室には管理人がおり、リースの中でも閑職中の閑職であり、やる気もない初老の男性であり、髭が白くなっている人物が今の職に就いていた。この人物は、能力自体はないわけではないが、すでにやる気をなくしきってしまっている。活力を取り戻すのに、相当な刺激を必要とするのは間違いない。

 まあ、死体安置室の管理も立派な仕事であり、大事なものであることに間違いないが―…。

 そして、死体安置室の管理人が、すでに伝えられていた要件であるアングリアの死体を手術台のような場所の上に置いてあった。

 「ふむ、ありがとうの~う。死体安置室の管理も立派な役目じゃ、死んだ目をするのは止めるようにして欲しいの~う。ラーンドル一派は空中分解したのじゃから―…。」

と、リーンウルネは、感謝しながらも、死んだ魚の目をしないで欲しいと言うのだった。

 リーンウルネにとっては、このままで大丈夫なのか、と疑問に思うし、周囲のやる気をなくす原因にもなりかねないと思った。

 それに、この初老の男性がラーンドル一派の宰相であるメタグニキアに反抗したことで、このような閑職に飛ばされたという―…。それまでは、着実に仕事をこなす周囲からの信頼がある人物であったという。

 リーンウルネも、ちゃんと調査ぐらいはしているのだ。完全ではないにしても―…。

 「そう言っていただけるとありがたいですが、絶望が終わったとしても、私の心の絶望の渇きは終わらないのです。後は、余生だけでも平穏に過ごせるかだけです。」

と、死体安置室の管理人は言う。

 この人物にとって、冷遇される期間が長すぎた。人生というものは、生の終わりまでやり直すことが理論的にはできるだろう。だけど、人は知る。体の衰えと同時に、自らのやろうとしている気持ちの衰えを―…。

 だけど、全員がそうなるわけではなく、何も変わらないという技の攻撃を受けても、次第に蓄積する自らのしたいという体力のダメージを少なくすることもできるし、大きい者もいる。

 ゆえに、そういう人たちというのは、自らの体の衰え感じようとも、やる気に溢れるものを持つであろうし、これとは別に、やり方というものを変更して、自らの今の状態に適応した方法をとるだろう。

 でも、その方法すら、この死体安置室の管理人は見つけ出すことができなくなってしまっていた。抵抗したのだ。何度も、何度も。だけど、失敗だった。失敗も自らのしたいというものにダメージを与え、受ける回数が増えるごとにダメージの量が増加してしまうのだ。そのダメージを受け、回復させることができなかった。

 そう、誰か一人、この人物に対して、認めていることが伝わっていて、精神的な支柱になっていさえすれば―…、もう少しぐらいはこの時点でしたいという気持ちを残すことができていたであろう。

 つまり、この人物が冷遇される時から、職場から冷遇されたり、無視されたりなどをされたのだ。人に裏切られた。自らの気力がわかなくなるほどに―…。

 リーンウルネも何となく、この死体安置室の管理人がどんな目にあったかを理解できたので、これ以上は言わないことにした。

 「そうか、平穏なんてものは、脆いものだ。簡単に崩してしまうことが可能なものじゃ―…。平穏を手に入れ続けたければ、常に周囲に気をつけ、対処しないといけないの~う。」

と、リーンウルネは一言を添えて―…。

 「ふむ、これは―…、何も大きな外傷は見えないの~う。」

と、ローがアングリアを観察する。

 ローとしては、外傷があれば、そこからアプローチを可能にするのであるが、目に見えないのであれば、いろいろとしないといけなくなるのだ。現実世界における司法解剖のように―…。

 司法解剖に関する事情は、この時代のこの異世界においては一部の大陸の一部場所でしか、そのようなことができる技術も方法もないが、少しずつであるがそれができる国は多くなってきているという感じだ。将来において、異世界中になるかはわからないが、大きくなり続けるだけでなく、縮小することもあるだろう。そのことに関しては、蛇足にしかならない。

 そして、ローは、司法解剖する前に何か損傷がないか、能力を使って、確かめるのだった。

 「スキャン。」

と、ローは言いながら―…。

 このスキャンに関しては、右手の掌を死体の方に掲げ、そこから、発生させる光を発して、足の付け根から頭に向けて、右手を掲げながら一定速度で歩きながら、体の中および目に見えない外傷がないかを確認していくのだった。背中側のあわせて―…。

 (特に、目立ったものは感じられぬが―…。)

と、ローは、進めていく。

 そして、首から頭の下の方、口の部分あたりに来た時―…。

 「!!!」

と、ローは気づく。

 (これは―…。どういうことじゃ―…。アングリアは、中年ではあるが、老人というわけではない。なのに、脳の一部分がかなり衰えているじゃと―…。そんなことができるのか? もし、そのようなことができるのなら、かなりの実力者だとしか考えられないの~う。それに―…。)

と、ローは心の中で考え始める。

 ローとしては、あまりにもこの地域における人々が用いる天成獣の宿っていない武器ではこのようなことはできないと、判断せざるをえない。だって、脳の一部分を衰えさせることによって殺しているのだから―…。ありえないと思ってもおかしくはない。

 この方法でアングリアを殺しているのだから、誰もアングリアの殺害方法に気づくのは難しい、気づかなくてもおかしいことではない。

 「うむ、アングリアの死因は、脳の一部分が老化していたことによる。他の部分では老化が見られないの~う。外傷も目立っていない以上は、天成獣の宿っている武器を用いたり、属性を用いたり、もしくは能力者かもしれない。儂としても、顔に覚えのある人物の中で、そのような能力者がいるにはいたがの~う、そやつらはすでに故人じゃ。犯行は不可能。そうなってくると、天成獣の宿っている武器を扱っている者の犯行か。そうなってくると、属性は時であろうな。それもかなりの使い手。儂以外の人間は、どんな実力があろうとも、気づかれないうちに属性の力を使われたら、抵抗できずに殺されるだけじゃ。アングリアの犯行をおこなった犯人を捕まえるのは止めておいたほうが良いの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、このアングリアを殺した犯人の実力がかなりの者であり、リースにいる騎士だとしても、兵だとしても、この暗殺犯を捕らえることができずに、余計な犠牲者を増やすだけになるということだ。

 それならば、実力者というか、魔術師ローぐらいしか、この暗殺犯を捕まえることができないし、天成獣の宿っている武器を封じるもしくは能力者の能力を封じる方法を行使した上で、暗殺犯が生を終えるまでに二度と、犯罪を犯させないようにできるのは―…。

 ゆえに、ロー以外は、アングリアを殺害した犯人であるアババを捕らえることはできないということになる。

 「脳の一部分の老化―…。そんなことが…どうやってできるというのだ。能力者なら話は簡単ですが、天成獣の属性が時だと、どうして可能なのですか? ローさん。」

と、ギーランは言う。

 脳の一部分を老化させるようなことに対する方法をギーランは、思い浮かべることができない。この時代のリースおよびその近辺の地域では、医術の発達もあり、大分、人体に関する仕組みについても理解されるようになり、人の脳がどういう仕組みになっているのか分かり始めている。

 死刑執行後の遺体を解剖して、仕組みを理解するということによって―…。ゆえに、脳波という概念は根付いていないし、脳の活動については、そこまで詳しくわかってはいない。

 だからこそ、ここでは、ローとそれ以外では重要な面で齟齬というものが発生する。ロー自身は、脳波というものや、脳がどういう役割をしているのかは十分に理解している。専門家ほどに詳しいというわけではないが、それでも、一般教養程度には―…。

 「まず、さらにスキャンでわかったが、首裏の上の方にわずかだけど、目立たないが、刺されたようなものがあり、そこから、針やらの先の細いものを刺していたのじゃろう。そして、そこから、天成獣から借りた力を流し、脳の一部分を老化させた。それも、呼吸や心臓の動きに関する指令を下す部分の―…。要は、脳の一部分を老化させて殺したということだけ理解しておけば十分じゃ。その老化方法に時という、時間の操作を可能とする属性が関わってくるのじゃ。時の属性は、周囲の時間を一時的に止めたりすることがメインとなっておる。それは、天成獣から借りられる力の量が少なく済むからであり、自分の体の一部を時を進めることで強化したり、逆に、ある対象に対する時を進めたりするのはかなり難しいことじゃ。前者の自分の体の強化は多くいたりするし、ある程度鍛えればかなり難しいことではあるが、何だかんだ言って、そのところまでは到達する。しかし、後者のある対象の時を進めるのは一部の時の属性の天成獣を扱っている者しかできないし、そこに到達するのは至難の技じゃ。要は、このアングリアを殺した犯人が、時の属性である天成獣の宿っている武器を扱うことができるのであれば、かなりの実力者であることは間違いないということが示されておるし、知っていなければ対処なんて不可能じゃということ。」

と、ローは長く言葉を言う。

 途中で、言葉を詰まらせそうになるが、それでも、ここまで天成獣の宿っている武器およびその天成獣を扱うことが上手い存在はなかなか出会えるものではない。ローも過去には一度や二度ぐらい会ったかもしれない時の属性の使い手かもしれない。

 感心すらしてしまう。

 「つまりは、この事件は、犯人も捕まえられずに、未解決のまま終了ということなのじゃが―…。それは、新たな政権としては困ったことにしかならないの~う。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネとしては、権威とか権力というものを国民やら人々に示すには形のあるものが重要だったりする。形のないもので示すことも可能であるが、それでも、形という名の結果があれば、国民もしくは人々にはわかりやすいというものだ。

 そうなってくると、アングリアが暗殺されたという事件は、世間に広まるということは避けられないし、犯人が捕まえられないことは、リースにおける実権というものがそこまで強くないということを示すにすぎない。いくらランシュがいるとしても、完全に抑止する力となるわけではない。

 相手側のあることであり、相手側における行動の予測が相手にとって最悪の結果をもたらすということを相手側がちゃんと理解していることが重要である。こればかりは自分たちの側でできることに限度というものがある。武力の強化イコール国を完全に守れるということが成り立たないというように―…。相手の意図と考えを知ってから、行動するしかないのだから―…。ちゃんと、相手の本心を自らの勝手な都合の良すぎる妄想なく理解しなければ、ということが重要となってくるが―…。

 その中で、ランシュが言葉にするのだった。

 「リーンウルネ様。さすがに―…、アングリアを殺した犯人を捕まえることは止めておいた方がいい。こいつは、完全に、さっきも言った、ラーンドル商会の研究者を殺した犯人と同じで、かつ、リースの騎士団でも兵でも敵わない。返って、リースの騎士団と兵の実力を弱らせることにしかならない。魔術師ローの言っていた予想はある程度当たっている。これ以上は、俺から言う気はない。」

と、ランシュは言う。

 ランシュは、犯人に気づいた。そう、アババであることを―…。

 アババならローの言っていた、時の属性の天成獣が宿っている武器を扱うことができ、暗殺などの仕事をこなすことが可能で、かつ、実力について申し分ない。

 脳の一部分を老化させてアングリアを殺すことも造作もないかもしれない。実際に、アババが誰かを脳の一部分を老化させて殺したシーンを見たことはないので、確定的に言えることではないが―…。可能であると言ってもおかしくないぐらいには、実力はある。

 「そうか、うむ―…。ここが引き際かの~う。」

と、リーンウルネは諦める。

 リーンウルネとしては、そのベルグの部下という人物が犯人である証拠があるのなら、確実に捕まえて司法による裁きを受けさせたいと思っていた。

 だけど、ランシュの表情を見て、その部下というのがただ者ではなく、ローの言う通りに実力者であり、かつ、ランシュの言葉によって確信せざるをえなかった。悔しいことかもしれないが、引き際を謝っては、余計な犠牲が出て、リースの国力を低下させかねない。

 上手く最適解における基準を設定し、想定されるいくつかの行動した場合を比較して、どれがダメージが少なく、致命的なことにならないかをしっかりとリーンウルネは判断することができる。この力は、国とか組織などを動かしていく上では重要な力となることは間違いないのだから―…。

 「だね。」

と、イルーナが言い、そして、これ以上、アングリア暗殺事件に関することは誰も触れないようにした。

 最悪な選択肢にならないように行動する。そのことによって―…。

 そして、死体安置室から、出て行き、死体の匂いが体に付着していたので、それを男女に分かれて、風呂場で落とすのだった。


第133話-7 後始末 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『水晶』における残酷なところも何とか、お茶を濁す程度に、残酷になりすぎないようには書いているとは思っていますが―…。あまり、残酷なことは私自身苦手なのですが―…。どうしても進行上、そうなってしまいます。言い訳っぽいことを言っていますが―…。

それでも、『水晶』のテーマに近いのですが、ある程度想定していて、たとえ残酷なことがあったとしても、自分の心から向き合えないことがあったとしても、いつか向き合って、乗り越えて欲しいなぁ~、ってことがあります。たとえ、残酷な出来事が起きようとも―…。いろんな人が―…。

まあ、暗い話はここまでにして、『水晶』はそろそろ、次の目的地もわかってくるだろうと思います。そして、そこへと向けて、瑠璃たちは進んでいくと思います。その過程を書いていく感じだと思います。

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年7月16日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年7月17日頃を予定しています。

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