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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
32/746

第21話 ルーゼル=ロッヘ(4)

前回までは、ゼルゲルがクローナによって倒された飲食店をぶっ壊しました。その近くには、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドがちょうどそこで食事をするためにいたのであった。

 一つの影は見る。

 実際に見ているのは、一人の人である。

 自らが後ろから、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドを―。

 そして、瑠璃、李章、礼奈がフードを被った一人の人物が探している標的であると―…。

 (あれは―…。)

と、一つの影は言い、自らの所属している組織のアジトへと向かう。そう、自らの組織のトップであるトリグゲラに報告するために―…。

 ゆえに、一人の人は走ってその場から去っていった。


 【第21話 ルーゼル=ロッヘ(4)】


 クローナが今日ゼルゲルを倒した飲食店は店ごと潰されていた。

 ゼルゲルによる報復によって―…。

 その崩壊した店の上に一人の人物が立っていた。

 「フン…、久々に暴れられたぜ~…。だが、この怒りはこの店潰したところでおさまらねぇ。」

と、一人の人物であるゼルゲルは言っていた。クローナに倒され、ルーゼル=ロッヘの近郊にある森へと飛ばされたということに対する怒りはおさまる気配すらなかった。いや、むしろ増加しているのかもしれない。ゼルゲルの心の奥底ではそうかもしれないが、ゼルゲル自身はそれに気づいていないようだった。

 「クローナ(あの小娘)は兄者に任せるとして―…、この怒りを抑えるために―……………………。」

と、言いながらゼルゲルは考え始める。そのため、ゼルゲルの声に出ている言葉は、途中から遮られたように止まるのであった。その代わりにう~んというのが周囲に聞こえるようになった。

 恐怖の始まり。周囲にいる人々の多くは、そう感じていた。なぜなら、これはゼルゲルが怒りを抑えるために何かを矛先にして、壊そうとする前兆であったからだ。周囲にいる多くの人々は、それを過去の経験や伝聞から知っていた。

 ゆえに、自らに恐怖が向かないように、ゼルゲルからそれを向けられないように、ただ、自らがここにいるという存在感を消すのであった。

 しかし、ゼルゲルは怒りを感じながらも、冷静にあたりを見る。自らの後ろの左右九〇度以外のすべてを―…。そして、ゼルゲルは自らの怒りを抑える可能性が高いのを見つける。

 そう、少女が二人ちょうどいたのだった。

 少女二人とゼルゲルは、お互いに視線が合う。それより、ほんの一秒に満たない前、一人の少年によって危機は察知されていたが―…。

 「お前ら~、俺の怒りのために殺されろや。」

と、ゼルゲルは言うと、少女二人へと向かっていった。ものすごいスピードで走りながら―…。

 そして、ゼルゲルは右手をグーのかたちにして、少女の一人に自らの攻撃を当てるために、少女の一人の近くに到達して構える。

 殴られる対象となった少女は気づいていた。自らがゼルゲルという攻撃の対象にされたことを―…。

 ゆえに、準備はしていた。()()()()()()()()()()()()()()()―…。

 すでに、少女―いや、瑠璃は、仕込み杖の水晶部分で発生させていた雷をゼルゲルに向かって放った。

 「征け」

と、言いながら。

 それに、攻撃の構えをしていたゼルゲルは、瑠璃に攻撃しようということに集中しすぎていて、瑠璃の雷の攻撃に気づくのに遅れた。ほんの一瞬のことであるが―…。

 そのために、ゼルゲルは瑠璃の雷の攻撃を避けることができずに、まともに受けてしまった。

 「ガアアアアアアアアアアアアアア。」

と、雷を受けている間、ゼルゲルは叫んでしまった。それほどの衝撃であった。

 ゼルゲルの声、悲鳴は、周囲の人々に響き合った。ゼルゲルの攻撃の対象に外れた周囲の人々は、ゼルゲルに何が起こっているのかわからなかった。なぜ、ゼルゲルが雷に当っているのか。ゆえに、無理矢理に理由付けするのであった。つまり、そこにいた一部の者は、

 (ゼルゲルの奴には、罰が当たったんだ。天罰だ。)

のだと、思ったのである。

 それは、店の周囲に離れていた人々にとっては、もしかすると、奇跡が起こって、ルーゼル=ロッヘからゼルゲルやトリグゲラがいなくなるのではないか。そして、平穏な時がこの町に訪れるのではないかという希望をかすかに抱いていた。


 瑠璃の雷の攻撃が終わった。

 ゼルゲルは、体中に煙みたいなものを噴き出していた。瑠璃の雷の攻撃を受けたためであろう。

 「クッ、ウ~~~~~。」

と、ゼルゲルは、瑠璃からの雷の攻撃を受けたダメージのために、かなり強い痛みをともなっていた。

 ゆえに、そこから少し時間がかかり、

 「今日はなんて日だ―――――!!」

と、叫びながら、

 「俺が、クローナと瑠璃(こんなクソガキ)たちに簡単に追い詰められるなんて~。ありえねぇ――――ッ」

と、言いかけたところで、ゼルゲルは右肩の衝撃を受ける。ゼルゲルの言葉を無理矢理止めさせ、痛みを発言をすることさえすることのできないダメージが与えられた。

 それをしたのは、李章だった。

 李章はすでに、緑の水晶の能力で危機を察知し、さらに、瑠璃が雷の攻撃を仕込み杖の水晶玉から準備していたことを確認していた。瑠璃の雷の攻撃後に、もしゼルゲルが戦闘不能になっていなければ、攻撃を加えることを考えていた。そのために、ゼルゲルの隙を李章は窺っていた。

 機会はすぐに訪れた。ゼルゲルは怒りながら瑠璃に向かって怒りをぶちまけ始めたのである。

 それをチャンスだと感じた李章は、ゼルゲルに気づかれないところからゼルゲルに向かって高く飛び、左足をあげて、ゼルゲルの右肩をめがけて左足を蹴り落したのだ。

 そして、ゼルゲルは自らの右肩から崩れていき、膝をついて前へ倒れていった。背中とは反対側の面で―…。そう、顔面を地面に無防備に衝突させたのである。

 「ガ…ァ…。」

と、ゼルゲルは自らの言葉にすることすらできなかった。

 その様子を見ていた周囲の人々は、希望以外のものも感じていた。ゆえに、呆然としてしまっていた。ゼルゲルが倒されるということを夢のような出来事ではないかと、思って―…。

 (グ…ゥ……!! なぜ…この俺が……こんなことに……)

と、ゼルゲルは思いながら、

 「許さ…ねぇ……、許さねぇ―――――――――――――――――――――!!!!」

と、かすれた声を、二言目で最大に荒げて叫ぶ。それは、クローナ、瑠璃、李章に自らが追い詰められたこと自体がありえてはならないことだ。しかし、現にありえている。その現実を受け入れることができないゼルゲルの気持ちが表われていた。

 それを冷静に見ていたゼルゲルに攻撃対象にされなかった少女は、自らがこれから天成獣の力で出そうとしている氷のような冷たい表情で、

 「凍れ」

と、言う。そう、礼奈である。ゼルゲルの言葉は、あまりにも自分勝手で、周りの人、他者への気持ちの理解のなさを礼奈は感じ、ゼルゲルへの軽蔑の意味を表情に込めて―…。

 そして、ゼルゲルは凍らされていく。そのなかで、どうして凍らされているのか、なぜ凍らされているのかを理解できないままに―。そのためにか、

 「なんだこれは!! どうして俺は…凍らされて……、クソッ…、砕けろよ。」

と、焦りはじめ、どうにかして凍らされている状況から打開しようと必死に氷を砕こうとする。凍らされていない手をグーにして、ゼルゲル自身が凍っている体の部分に叩きつながら…、氷を殴りながら、氷を破壊しようとする。しかし、氷は次々からゼルゲルを凍らせようとして、ゼルゲルの体全体を覆いつくそうとしてゼルゲルを侵食しようとする。その勢いは、ゼルゲルの必死の抵抗をも無意味にするものだった。

 「クソッ…、どう…して……、俺が……………。」

と、言葉を発しながらも、凍らさせていくなかで、意識が少しずつ薄れていき、ゼルゲルの体すべてに氷が覆うころには、すでに言葉すら聞こえなかった。喋っていた口をも凍らされたからだ。

 周囲の人々は、この状況を理解することができなかった。どうして、ゼルゲルは凍らされたのか。もう、何か適当に自分達にとって都合のつく説明などできないことが目の前で起こっていたのだ。

 そんななか、アンバイドは、

 (俺が出る幕もなかったか。瑠璃、李章、礼奈(こいつら)の連携もかなりのものだったな。)

と、感想を心の中で思っていた。

 (周囲を見ると、あの男が、ルーゼル=ロッヘにいる貸金業のトップのトリグゲラの部下のゼルゲルってところか。情報屋で得た情報とも一致する。こりゃ~あ、狙われるな。この組織から~、っと。参ったね~。こうなったら、組織ごと潰すのが一番得策ということか。)

と、アンバイドはこれからの行動に不安を感じていた。そして、瑠璃、李章、礼奈、それに自分自身を追わせないために、力の差を見せつけないといけないと思っていた。


 ここは、ルーゼル=ロッヘ。

 瑠璃、李章、礼奈、アンバイドのいる場所、クローナ、ローがいる場所とは違う場所。

 そこに影一つ。

 夜の明かりさえも気づかないほどの夜の黒に紛れて家々を飛びながら移動している。

 目的は、瑠璃、李章、礼奈を討伐するため―…。そう、フードを被った一人の人物である。

 (トリグゲラ(あの男)の部下の情報によると、噴水広場から東通りで、崩壊した店の所だな。どんな説明だ、それは。)

と、フードを被った一人の人物が、トリグゲラの部下から受けた説明の適当さにイラつきながらも、素直に向かっていく。そこに、瑠璃、李章、礼奈(ターゲット)がいるのだから。

 そして、フードを被った一人の人物は噴水広場の近くへと辿り着くのである。


 一方、クローナとローのいる場所。

 クローナは、トリグゲラと交戦状態にあった。

 クローナの武器の片方とトリグゲラの武器の片方が衝突していた。

 トリグゲラは両足に装着した武器をクローナの武器に当てていた。

 そして、両者は双方に少し距離をとるため、後ろ飛びをして、地面の上に立つ。

 (風の攻撃が相殺された。トリグゲラ(あの人)も私と同じで、天成獣の属性は風?)

と、クローナはトリグゲラの天成獣の属性について予想する。

 それは、さっきの攻撃でクローナは、自らの武器に風を纏わせて、振ったのだが、それを、ゼルゲルは装着している足の武器の片方で防いだのである。クローナはそのとき、風が相殺されたのを感じて、風を風によって相殺されたのではないかとクローナは予想した。

 一方で、ローは、トリグゲラがかなり天成獣の能力の使い手であると感じた。たぶん、経験によって扱い方を覚えたのだろうとローは考えていた。

 (トリグゲラ(あ奴)相手では、クローナはかなり苦戦しそうじゃのう。)

と、ローは今のクローナの実力と相手のトリグゲラの力を比較しながら、そう結論付ける。

 そして、クローナとトリグゲラの交戦は、周囲の人々を噴水広場からそれぞれの通りへ逃げさせたのである。

 (これほどの実力とは…。ゼルゲルが簡単に敗れても仕方あるまい。ゼルゲル(あいつ)は天成獣の能力を十分に使いこなせていない。素手での破壊にばかり頼りすぎている。……しかし、こうなってくると、周りに被害がでるのは仕方ない。ここで私がクローナ(この少女)に敗北することは、すなわち私の組織の壊滅を意味する。ゆえに、ここは何が何でも私は、勝たなければならない。)

と、トリグゲラは組織の今の状況と、クローナに敗れることが何を意味するのか理解し、クローナに勝利しなければならないことを感じた。自らの地位と命を守るために―…。ゆえに、トリグゲラ自身の天成獣の能力を使った戦いでの実力を最大限にしようとする。

 そのなかで、噴水広場は、黒いに近い青の夜空から真っ暗へとなった。

 そう、噴水広場上空に何か黒い物体が覆ったのである。

 「えっ。」

と、クローナがそれに驚く。

 「!!!」

 (なんですか。この時に。)

と、トリグゲラが驚きながらも、邪魔が入ったのではないかと思った。

 「なんじゃ、あれは。」

と、ローが自らの顔を上にあげて、ビックリする。


 瑠璃、李章、礼奈、アンバイドがいる場所。

 そこでは、アンバイドが崩壊した店から店主を救出しようとして、瓦礫をどけながら探していた。

 そんななか、礼奈と瑠璃は気づく。

 二人は「!!!」と、茫然とするしかなかった。

 西の方向に何か黒いのがいると。そう、現実世界の生き物にそんな形のものはなかった。

 おかしいのである。

 手(もしくは前足)や足(もしくは後ろ足)がある生き物なら現実世界にもいた。そいつは手も足もあり、かつ()があったのだ。

 そして、そいつは悪魔を思わせるような雰囲気を漂わせていた。そう、そいつは―…。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 噴水広場で笑みを浮かべた人物が一人いた。

 「俺の悪魔。」

と、喜びを笑みで表現しながら言う。

 そいつはフードを被って、自らの素顔を隠していた。


 【第21話 Fin】


次回、悪魔は一体誰によって生み出されたのか。その力とは…。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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