第133話-5 後始末
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、第十回戦の翌日の朝、リースの城での食事の中で、ランシュの口からベルグの居場所が告げられるのであった。
「殺された…、だと。」
と、リーンウルネは驚く。
ローが考えている間にも話は進んでいく。
「ああ~、クルバト町にあるベルグのアジトに近づく者たちは、ベルグの邪魔をさせないために、重臣たちの誰かが排除、もしくは殺害することになっている。たぶんだが、クルバト町近辺に住んでいる人々は、殺されていないだろうが―…。リースの騎士…、俺ではなくラーンドル一派の息がかかっているのならば、殺されていてもおかしくはないだろう。」
と、ランシュは言う。
ランシュとしては、ベルグの今の行動に文句とか言う気はない。ベルグは、今のおこなっている実験の成功を願っている。それが、どういう結果をもたらすのかを知っていたとしても―…。まあ、対立する気もないが―…。
そして、ラーンドル一派の息がかかった騎士は、二年前の掌握以後、完全に追い出すことはできなかった。ラーンドル一派もランシュの実権を崩そうとして、騎士たちをラーンドル一派の側に向くようにしているのだから、ランシュがいくら目を光らせたとしても全員を監視することなどできやしない。
それがランシュの実権にとって、どれだけのマイナスの影響を与えるかを考慮して、危険だと判断すれば、対処するという感じだ。人の労力には限界があるのだから―…。たとえ、機械であろうとも―…。
「ベルグがおこなっていることを俺は言う気はないし、ベルグがそのことを実行しようが別にどうでも良い。瑠璃、李章、礼奈とか言ったな。お前らの世界が石化したのは知っている。だけど、俺は敵対した以上、お前らに協力する気はない。ベルグのいる場所と、ベルグが世界の石化をおこなった実行犯であり、主犯であることだけは言っておく。」
と、ランシュは言う。
ランシュとしては、一応、約束というものは果たしたという気持ちである。これ以上は、瑠璃、李章、礼奈における問題に関して、関わる気はないということにしたい。あくまでも、ベルグにも世話になっている以上、ベルグが完全に不利になるようなことを言う気はないし、ベルグの目的を言うわけにはいかない。義理ぐらいは悪人であろうとも通す気だ。必要最小限程度であるが―…。
そのランシュの様子を見て理解したリーンウルネが、
「ふむ、そこまでにしておこう。これ以上は、危険としか言いようがないからの~う。それに―…、悲しい話ばかりをしていても良いことがあるとは限らないしの~う。今は、お主らが捜しているベルグの居場所がわかり、かつ、どういう状態なのかを理解できただけでも良しとするのが妥当だ。それに、久々の城での食事だ。」
と、リーンウルネは言う。
リーンウルネは、この二年の間は修道院での質素な食事が主であった。別にリースの城に戻ったからと言って、豪華な食事を毎日食べるというわけではない。むしろ、庶民よりも少しだけ良い食事をするぐらいだ。だからこそ、修道院での質素な食事に文句を言う気もなかったし、普通に食べることができた。
さらに、リーンウルネは子どもの頃から結婚するまでは、食事が豪華な時はパーティーとか、客人が来た時ぐらいで、それ以外は、普通の庶民とそこまで変わらない食事であった。ゆえに、豪華な食事というのは、たまに食事するのだから良くて、毎日、毎日、そのような食生活をしていたら、体を壊してしまいそうだと思うぐらいだ。
現に、この異世界における豪華な食事とは、珍しい食材をふんだんに使っていたり、カロリーや脂肪分が多い料理が主要なものであったりする。現実世界のように、ヘルシー志向やら健康食、オーガニック食材が追加されることはあまりない。この異世界と現実世界に共通する面は、珍しい食材をふんだんに使用したりするという面では、あまり原則として変わっていないと思う。
「というわけでの~う。食事を堪能するとしよう。食事の方はできておるか。」
と、リーンウルネが言う。
そうすると、
「はい、出来上がっております。人数分。」
と、給仕長が答える。
そして、朝食が運ばれて、食事の時間となった。
朝食後。
リーンウルネは、ローとギーラン、イルーナ、ランシュが話をすることになった。
その場所は、ランシュが二年前から使っている宰相室である。
そして、ランシュは、自らの机に座っており、それ以外の人たちはソファーに座っている。
「今日、すでに二つほど報告が上がってきている。その両方とも最悪な方じゃ。」
と、リーンウルネは言う。
リーンウルネには、情報が昨日のアングリア捕縛後から上がるようになっている。それぐらいのことをするのは造作もない。というか、そのようにするために、リースの城に泊まったというのが正しい。客人用の部屋に―…。
ロー、ギーラン、イルーナ、ランシュは、大人しく聞く。
「あまりにも惨いことであるから、子どもたちには話す気にはなれないことじゃ。一つ目は、ニドリアから上がってきた報告がある。それは、アングリアがラーンドル商会の本部の敷地の近くに、研究者用の別棟があって、そこで研究者に武器の製造や弾薬の配合に関する研究をおこなわせていたみたいだ。その製作した武器を海外の国や都市に輸出していたようだ。主な取引先は、イスドラーク。サンバリアには、買ってもらえなかったようだ。まあ、サンバリアの方が武器製造の技術は上だし、ラーンドル商会が作っているのは性能が劣って、使い物にならないと思っておるのじゃろう。あの国は、二年前に共和制に移行後、武器製造を再開し、領土拡張戦争をおっぱじめているからの~う。議長が主導して―…。まあ、サンバリアのことを詳しく話すよりも本題じゃな。そのラーンドル商会の研究者が使っていた別棟で、研究者どもが首を斬られて、殺されてしまっていたようじゃ。それも、反抗したり、助けを求めたりすることもできずに―…。研究所に所属していた人間も含めて―…。研究所に所属していた人間を消しておく必要でもあったのじゃろう。一体、誰が―…。」
と、リーンウルネは、一つ目の最悪の出来事を言う。
リーンウルネとしては、ラーンドル商会の研究棟にいた犯人が誰か推測することもできない。それはそうだろう。リーンウルネは、アババに会ったことはない。そうであるなら、アババが犯人であることもわかりようがない。手がかりがないのは事実であろう。
「研究所の人間がおったことは知っておったがの~う。アングリアが変な機械を使って、リースの競技場を破壊しようとしておったからの~う。」
と、ローが言う。
ローとしては、あのような馬鹿なことばかり考えるアングリアの気持ちなど理解する気もないが、その技術力をアングリアに与えた理由は知っておきたい。
(いや、半年前の儂が破壊した時に逃げ場所として―…。そのように考える方が都合が良いことになるの~う。)
と、ローは心の中で考える。
ローの考えていることにおける研究所に所属していた研究者たちが、ラーンドル商会に逃れた理由という意味では、ほぼ正しいと言える。なぜなら、研究者たちの全員ではないが、一部がラーンドル商会に逃げてきた。理由は、大きな商会であり、リースとその周辺の地域でも有力な方に分類されていることを知っているからである。
残りの研究員は、他の国に逃げ、そこで研究をおこなっている者たちもいるという―…。まあ、これ以上、研究員の逃げ場所に関して、述べたとしても意味はない。大事な話はこんなことではないのだから―…。
「ええ、自分のことだけしか考えられず、そのためなら他者を貶めることも平気でするし、命を奪っても良いと思っている奴にあんなものを渡しているようだし―…。というか、あの時は本気で死を覚悟したわ。」
と、イルーナが言う。
イルーナとしては、あの時の出来事を思い出したいとは到底思えないほどであった。実権を握ろうとしている人間が、実権を握る国の中に暮らす人々を平然と殺すことを厭わないことをしているのだ。最悪な奴としか言いようがない。頭にきてしまう。
それぐらいに、イルーナの心の中でのアングリアの心の中で怒りは心頭と言ってもおかしくはない。
そして、アングリアがリースの競技場を破壊しようとしているのを本気で実行しようとした時は、本当に、死を覚悟しかけたほどだ。まあ、何か来る予感はしていたけど―…。
「アングリアのリースの競技場の爆破未遂のことよりも、ラーンドル商会の別棟での研究者が殺されたというのは、アングリア関係者なら、証拠隠滅だろうが、そうでないのなら、何が目的か不明になるだろうな。」
と、ギーランは言う。
ギーランは冷静だ。いくら過去のことを気にしても意味はないとは思わないが、それでも、終わったことで考えなければならないような場合以外は、そこまで気にする必要はないと考えている。
実際、リースの競技場の爆破未遂のことよりも、重要な要点は、ラーンドル商会の研究棟における研究者が暗殺されたことである。
その中で、ラーンドル商会の人間が、証拠隠滅のためにやったのか。それ以外か?
「ニドリアによると、研究者への証拠隠滅をすると考えられないしの~う。それに、研究者のいる別棟に調査に入ったのが昨日の夜もそれも遅くになってからじゃし、メルギエンダも同様に言っておったし、そもそも、研究者が殺されたことを城に報告してきたのは、フロッドだからだの~う。」
と、リーンウルネは述べる。
これは事実である。夜の遅くに、リースのこれからの政治方針に関して話し合っている間に、リーンウルネにフロッドがそのような報告をもたらしたのだ。そのことには驚きながらも、調べるしかないという答えしかその時には言えなかった。
ゆえに、ここで、ランシュを交えることによって、あらゆる可能性を探ろうとしているのだ。
ランシュが考え、答え始めるのだった。
「ベルグなら十分にありうるだろうな。ベルグがおこなおうとしていることの中で、研究所とか言うグループかはわからないが、ベルグが妨害を受けていたという話は聞いたことがある。ベルグ自身は、そのことで悔しそうにはしていたが―…。暗殺方法から考えても、ベルグの中にいる重臣なら一人だけ、それができる奴がいるのは確かだ。」
と。
ランシュとしては、前に何回か会ったことのあるアババならそれが可能だということはわかっている。だけど、これ以上情報を教えるかどうかは悩みどころだ。
「ただし、名前を言う気はないな。」
と、ランシュは、付け加えるようにして、少しだけ間をあけて、言う。
「わかった。」
と、リーンウルネは返事するのだった。
(無理矢理に聞き出すことも可能じゃがの~う。そういうことで、余計な溝を作るのは、今のリースにとっては良い方向に働くことはない。ヒントは多く手に入れることができておるしの~う。)
と、心の中でリーンウルネは考える。
リーンウルネとしては、少しだけだけど、有力な情報を手に入れることはできた。そして、次の事件への話を始める。
「まず、ラーンドル商会における別棟での研究者に関する暗殺事件に関しては、今後、調べていく方針じゃ。そして、二つ目、朝方のことじゃ、リースの城の近くにある収容所の特別管理階に収監させていたアングリアが死んでおった。発見した特別管理階の看守も驚き、報告をあげ、アングリアの死体を調べさせておるが、不自然な傷が見当たらないで自殺とも、他殺だとも決定できずにいる。このことに関しては、ローの力を借りたいと思っておるのじゃが―…。」
と。
次の事件は、アババがアングリアを殺したものである。殺害方法が特殊なせいか、リースの騎士団における死体の検分をおこなう者たちにはさっぱりと理解できないものであった。
ゆえに、ローという例外としか言いようのない人物に頼るしかない。ローで駄目なら、お手上げというぐらいに―…。
ローは、少しだけ考えて、
「うむ、わかった。儂は、今後のために、あまり能力を使いたくはないのじゃが、致し方あるまい。まあ、死体の検分で、大量消費することは稀でしかないしの~う。」
と、言う。
ローは、今回のアングリアの死体検分で、能力を使う可能性はある。だけど、その能力はロー自身が元から持っていたものではない。手に入れた能力だ。
そして、死体検分で使われる可能性のある能力は、そこまで消費量というものは多いものはないと考えて、これからの大きな行動のための分の消費に大きな影響はないと判断して、リーンウルネの言葉を受けるのであった。
リーンウルネ、ランシュ、ロー、ギーラン、イルーナは、収容所における死体安置室へと向かうのだった。
第133話-6 後始末 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
ペースアップはしていないのですが、何とか書けているような感じです。
次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告させていただきます。
では―…。
2022年7月13日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年7月14日頃を予定しています。