第133話-2 後始末
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ベルグがアババにアングリアと研究所の元研究者の始末を命じるのであった。一方で、ベルグは、三人組に対する何か作戦があるようだった。
ラーンドル商会の研究室棟。
ここでは、アングリアによって集められた研究者が日々研究していた。
兵器開発もしかり―…。
この兵器は、二年ほどはリースの中央にランシュが幅を利かせていたので、供給はできなかったが、それでも、リースより遠い国に向けて輸出することができた。
その国では、紛争というものは存在しないが、スラム殲滅のために用いられるほどだった。
だけど、現実世界の最新兵器に比べたら、一世紀から二世紀ほど遅れているほどの武器だ。
その武器は、遠距離攻撃が可能な大砲のことである。この武器を作るのには、技術が必要だし、さらに、砲弾を作るという面では、科学的な要素も必要とされる。そのために、ローによって倒された研究所の人間との協力が必要となった。
表立って協力関係にあるというわけにはいかないので、秘密裡に―…。ローも気づくことができなかったので、かなりの情報隠蔽手段を持っていることは確かである。
そして、半年ほど前に、ローが研究所を崩壊させて、研究所の生き残りが、ラーンドル商会を頼ってきたのだ。そこから、彼らの研究のための施設を作り、そこで、研究所の規模とはいかないけど、研究をおこなわせていた。主に大砲の輸出のために―…。
今回、大砲を使えば、リースの競技場を吹き飛ばし、再度、アングリアはリースにおける実権を掌握することはできたかもしれないが、それを使用しなかったのは、リーンウルネに防がれたあの爆発兵器で十分だとアングリアが思ったからだ。結果は、アングリアの破滅ということになったが―…。
そして、アングリアがラーンドル商会のトップから追い落とされ、実権を掌握したリーンウルネに捕まってしまったことを知らずに―…。
「今日も何も発見できずだ。」
「そりゃ仕方ないだろ、何かを発見できるのは奇跡のようなものだしな。」
と、休みながら、二人の人物が会話をする。
今日も今日とて、研究の日々だ。
アングリアは、最新の技術を用いた兵器を望む。武器は売れるのだ。高く―…。
人が他者より優れようとしていて、さらに、他者から何かを奪うことに固執している限り―…。人は欲することを望むのだから―…。
「まあ、そうだけどよぉ~。アングリア様は、本当に俺らの研究内容には興味なく、軍事ばかり研究させやがる。」
「文句を言うな。俺らは、魔術師によって研究所を破壊されている以上、ここ以外に頼れるところはないんだ。アングリア様の要望を叶えていって、いずれは自分達のしたい研究をしていけるように―…。」
そう、この二人は、自らが望む研究はできていない。
なぜなら、アングリアは、軍事兵器の研究を彼らに求めているのだから―…。兵器はどこの国、地域でも最新であれば、高く売れるし、大きな収入源になる。ゆえに、アングリアはそのことに味をしめているのだ。
それは、誰かの死の上に成り立っているにすぎないものでも、自らの利益になれば、人は時にその欲望を肯定してしまうのだ。脅威に備えることは必要であるが、その脅威の本質を見誤ってはならない。見誤れば、破滅という結果は一気に飲み込もうと手を差し伸べてくるのだ。国家の滅亡、人々の大量の生の終わり、人類の滅亡などと―…。
さて、この二人にここから出て、新たな場所へ向かう勇気もなければ、ここ以上に良い待遇で研究ができる場所はない。自分達のやりたいことではなくても、生活、ひいては自らの命がかかっている以上、従っていくしかない。貨幣が主流になっている経済では、人を雇い、金を持っている人間が原則として優利になる。例外も勿論存在するが―…。
そんな中で、アングリアに聞かれていない時に、アングリアの悪口を言うことがそのストレスの解消となっている。ストレスは溜め込むと良くないので、吐き出すことで発散させている。家に帰ることはなく、この研究所で日々を過ごしているのだから―…。
「そうだな、それに、そろそろアングリア様が今日のランシュが企画したゲームから戻ってくるだろう。アングリア様が再度リースを掌握すれば、俺らは大忙しになるしな。」
「ああ。…ッ!!」
そう、アングリアが帰ってくれば、リースの全権を再度掌握している状態となり、武器の製造でかなり忙しくなるだろう。
特に、砲弾の中の火薬に関しては、配合の面で細かいことが要求されるし、最新の成果を取り入れるだろうから―…。砲弾の形および大砲の鋳造法の改善とかで―…。
そうなれば、残業となり、寝る時間も存在しないかもしれない。そのことに対して、キツいとは思うが、それでも、自分達は研究以外に何があると言われれば、何もないとしか思えないし、研究しかできないと感じているから、ここから逃げ出すということはしない。他に行くあてもないのだから―…。
だから、過労で自らの生が終わる可能性があったとしても、ここで働き続けるしかないのだ。昔よりも、効率を落としながら―…。
だけど、そんな話し合っている中で、返事を頷いた方も人物が、急に、何か気づくと同時に倒れるのだった。首からは宙を舞い、それから下は司令塔を失って、ただ、自らの腹部のある方を地面に接触させるように倒れたのだった。
そのことに、もう一人は気づきはしない。
すでに、
「ガッ!!」
と、同様の目にあい、自らの生を終えてしまっていたのだから―…。
そして、この部屋に一人の人物がいるのだった。
「アバ。」
そう、アババだ。
ベルグから受けた命令を実行したのだ。
そう、研究所という組織の生き残りを始末するために―…。
(良い夢も見せられずにごめんねぇ~。だけど、悪い夢も見ることはもう二度とない。さて、これで研究所の生き残りの研究員はすべて殺し終えたし、次のアングリアの始末に向かうか。)
と、アババは心の中で考え、すぐに、研究棟から消えるのだった。
アババがこのラーンドル商会の研究棟で研究員を全員殺すのかかった時間は、ほんの数秒であった。天成獣の宿った武器を扱うからこそ可能なことなのだ。それはまだ、ここで知る必要はない。
リースの城の中にある収容所。
ここには、犯罪を犯した者たちが捕まっている。
当、不当を含めてであるが―…。
そこには、今日という日、新たな囚人が収容された。
その人物は、
「出せや!!! 俺はラーンドル商会のトップだぞ!!! こんなことを扱いをしてタダで済まされると思うなよ!!! ここから出たら、セルティー、リーンウルネ、俺の計画の邪魔をした全員をぶち殺して、二度と俺に逆らえないようにしてやる!!!!」
と、叫び出す。
「五月蠅いぞ!! お前はもうラーンドル商会の会長ではない!! 元だけど、リースに対する反逆罪および、殺人未遂の罪を犯しているのだ!! 大人しくそのことについて反省しろ!!!」
と、言いながら、看守は去って行くのだった。
そう、囚人として収容されているのは、アングリアである。アングリアは、リースを再度自らの元に実権を取り戻そうとして、リースの競技場にいる者たちを殺そうとした殺人未遂と、国家反逆の罪で捕まっているのだ。まあ、これをアングリアが否定することもできないし、ラーンドル商会もアングリアにはもう協力しない。
これは確定していることである。
アングリアは、すでにラーンドル商会のトップではなく、元であり、ラーンドル商会に影響力はすでになくなっている。
アングリアの言葉は、ここでは通じるわけもない。信頼も信用もなく、ラーンドル商会のトップという地位だけが、彼の言葉を聞いてくれる要素でしかなかったのだから―…。
「クソ、クソッ、クソ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、アングリアは再度叫ぶ。
その言葉は、周りの囚人には聞こえなかった。
アングリアの収容されているの収容所の中でも特別管理階である。声が周囲に聞こえないようになっている。だからこそ、いくら叫ぼうとも周囲に迷惑になることはない。
なぜ、このような特別管理階に移送されたのか。
アングリアが叫んだりすれば、周囲の囚人に迷惑でしかないし、かつ、囚人同士の会話で、アングリアの暴発および、アングリアの煽りで、周囲の囚人が暴発して、看守の仕事が増えてしまうのだ。そんなことになってしまえば、労力をそこに割かないといけなくなるので、面倒でしかない。
さらに、一定の賃金をもらうことになっているので、問題を起こされるよりも、大人しくさせておいた方が得だというものだ。
リーンウルネは、アングリアを特別管理階にした理由はアングリアの以上のことと同時に、これからのリースの再編において、一人でも多くの労力を必要としており、無駄なことに構ってはいられないのだから―…。自分の行動が余計なことになっていると周囲が感じることもあるので、余計な労力を増やして迷惑をかけないようにしているという、誰にも気づかれない気遣いでもあった。
なら、余計な事をしないでくれ、というのがリーンウルネ周囲の反応であり、リーンウルネに対する心の中の本音である。
(俺は…、俺は…、こんなところにいていいはずがない。ラーンドル商会のトップであり、リースの実権を握って、俺様のために良い国を作り上げる。それこそが、素晴らしい世の中なのだ。リースの住民は、俺のために働くことこそが幸せであり、そうでなければならない。当たり前のことだろ。どうやって、ここから抜け出し、兵を集め、リーンウルネやセルティーを殺して、俺が権力を握ってやる。まずは、ここの看守を買収するしかないか。)
と、心の中でアングリアが思っている時、この特別管理階に何かがやってくる音が聞こえてくる。
(!!! 看守か。買収のためには、俺の秘密資金を使うしかない。これは、ラーンドル商会の売り上げからある程度、俺の資金になるように溜めていたが―…。ここで使うしかない。背に腹は代えられない。)
と、さらに、心の中で思っていると―…。
「あなたがアングリアさんですか。元ラーンドル商会の―…。」
と、アングリアの元に来ている人物が言う。
その人物は、不気味な表情をしており、折角の素晴らしいカッコイイ中年らしい顔を台無しにしている。まあ、この人物は、自らの顔の良さというものを気にすることはないだろう。顔は特徴があるよりもない方の方が自らの仕事では都合が良いのだから―…。
「お前は、何者だ? 助けてくれるのか?」
と、アングリアは言う。
藁にでも縋る思いである。
そりゃそうだろう。リースの収容所から脱獄するのは容易なことではないし、かなり難しいことに分類した方が良いくらいだろう。
だけど、弱点がないわけではない。一般の収容場所から脱獄することはかなり難しい。囚人同士の争いがあるために、看守が常時、見張りをしていて、かつ、厳しい監視の目があるからだ。一方で、特別管理階は、囚人の数がそもそも少なく、ゼロの時もあるぐらいで、看守もそこまで厳重に管理することはない。というか、そういう必要性が存在しないのだ。
ゆえに、特別管理階に侵入し、脱出する実力があれば、簡単に脱獄してしまえるのだ。だけど、一般収容場所の上に特別管理階があるので、侵入するのが難しいということには変わりないから、脱獄するのは難しい。
だけど、この人物はいとも簡単に侵入してしまったのだ。
「私は、アババと申します。ここの階の見張りはいないので、少しだけお話をしましょうか?」
と、アババが言う。
そう、特別管理階に侵入してきたのはアババである。
アババなら簡単なことであろう。彼の武器に宿っている天成獣の力を使えば―…。
そして、アババはアングリアと話そうとするのだった。
「いや、こちらはのんびりと話している暇などないのだよ。俺は、今すぐにでも脱獄して、ラーンドル商会をあの憎きニドリアから取り戻して、再度、リースの実権を取り戻すための計画を立てなければいけないのだ。私は、このリースのために―…。」
と、アングリアはさっさと脱獄するために協力しろと言うのだった。
アングリアとしては、こんな場所でゆっくりとアババの話を聞いている暇などなく、いち早くラーンドル商会を自らの手中に取り戻して、リーンウルネやセルティーのリースの実権を握った奴らを追い落とす計画を立案して、実行しないといけない。
そして、成功して、リースの実権をアングリアの元に―…。
「俺の話を聞け。」
と、アババは言う。
その言葉には、圧というものがあった。
アババにとっては、アングリアの存在など、そこら辺にいる目に見えないが存在しているものと一切変わらない。そんな存在の要望を聞く気などない。聞く意味すらないのだ。
その圧は、アングリアには十分に、アババに対する恐怖を植え付けることができる。
(何なんだよ、こいつ。アババとか言ったか。本当にふざけた名前をしやがって―…。だけど、こいつに頼ることでしか、ここから脱出することはできない。なら、取り入ってやる。)
と、アングリアは心の中で言う。
アングリアにとっては、どんな圧をかけてきてムカつこうが、自らの置かれている状況というものを完全に理解できないほどの馬鹿ではない。だからこそ、アババを利用して、特別管理階および収容所からの脱獄を図ろうとするのだった。
ゆえに、やるべきことは決まっている。
「話とは何だ?」
と、質問するように、アングリアは言う。
アングリアにとっては、アババのご機嫌をとっておく必要があり、アババの要望を満たそうとするのだった。そうすれば、きっと、アババの方もアングリアに恩を感じて、アングリアの脱獄に協力してくれるのではないか、と―…。
そんな浅はかな希望を抱きながら―…。
第133話-3 後始末 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
そろそろ、次に大きな章へ向けての伏線を張っていけるように進めていきたいです。まあ、次の目的地までのヒントというか答えはすでに出しているのですが―…。
『水晶』の第1編にとっては、中盤戦という感じで、いろいろと登場させていかないとな。「人に創られし人」の一つの一族とか―…。う~ん、後書きで書くことはあまりネタがないです。
ということで、新作への準備に関しては、ほとんど進んでいませんが、何とか主要キャラクターは少しだけ決まっていっています。一応、新作も異世界が舞台という感じになりそうです。細かいところでは『水晶』とは異なっていたりすると思います。『水晶』の世界観は一切関係ないのですが―…。もう少しで、たぶん、新作の方の設定に少しでも多くの時間が割けると思います。
新作に関しては、前回の『水晶』の時の反省を踏まえて、書き溜めてから投稿を開始していきたいと思います。
最後に、『水晶』の次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年7月2日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年7月3日頃を予定しています。