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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
315/748

第133話-1 後始末

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ベルグの実験により、突然、現実世界は石化されていくのであった。その石化の中で何とか逃げようとしていた松長瑠璃と松長理章、途中で合流した山梨礼奈は、逃げる中で、ギーランという存在に出会い、無理矢理異世界へと連れていかれるのだった。そう、現実世界を石化から救う方法を知っている人物に―…。

そして、異世界へ連れて行かれた瑠璃、李章、礼奈は、そこに魔術師ローと出会うのだった。現実世界のために、ベルグを探して石化解除の方法を聞き出すしかないと言われるのだった。

この異世界では、天成獣というものが宿った武器を扱って戦うことが重要なのであり、そのための戦いをローから教えてもらい、瑠璃、李章、礼奈は旅を始めるのだった。

その後、アンバイドというある人物への復讐を企む男を仲間に加え、ルーゼル=ロッヘでは、ローから派遣されたクローナが仲間に加わるのであった。

リースでは、二年ほど前に当時の王の暗殺事件により、王位は空白となり、そこを実質上支配していたのは、ランシュであった。彼はベルグの部下であり、瑠璃、李章、礼奈を討伐しようとしていた。そして、三人を討伐するために自らの企画したゲームを瑠璃に参加するようにすでにルーゼル=ロッヘの時に手紙を渡していた。瑠璃は、参加を表明し、そこに、リースの王女であるセルティーが加わるのであった。

ランシュの企画したゲームは、瑠璃たちのチームが勝利を重ねていき、さらに、その中で、瑠璃の血の繋がった実の姉であるミランと戦い、その後に、瑠璃はギーランの娘であり、研究所という組織によって連れ去られ、現実世界への渡航の実験に使われた存在であることが判明する。

その後、ランシュ率いるチームとの戦いで、瑠璃たちは苦戦する試合も多かったが、何とか勝利することに成功する。

だけど、そこに、かつてリース王国の実権を握って、好き勝手やっていたラーンドル一派のトップアングリアがリースを再度掌握しようとしてくるのであった。ランシュの引き渡しを要求するが、セルティーが拒否し、リーンウルネによって、アングリアは追い詰められ、ギーラン、イルーナ、ミラン、瑠璃という再開した家族に倒され、ラーンドル一派の野望は砕け散った。

一方で、ランシュは、リーンウルネに敗北を認め、従うことになり、セルティーとの婚約が確定するのだった。


第133話も内容が長いので、分割します。

 ベルグのいる場所。

 ベルグは、ランシュが敗北したのを知る。

 そして、映像が送られてくる機械を見ながら、心の中で言い始める。

 (ランシュは三人組の中の一人に敗北したか。あの子は、何と、俺の育った世界で生まれ、あいつらの実験による犠牲者とは―…。その後、アングリアとか言ったかな、彼のおかげで、居場所を知ることができたよ。まだ、生きていたとは―…。ローによって完全に倒されたはずなのに―…。あの人が言っていたから事実なのに―…。)

 ベルグは知っている。

 ずっと、見ることができたのだから―…。

 これまでの、三人組である瑠璃、李章、礼奈の動向を―…。

 そして、同時に、産まれたばかりの瑠璃を連れ去った研究所の残党が生きており、アングリアに協力していたことに対して、嫌味もあった。彼らの存在は、ベルグにとってはライバルというよりも、排除したい存在でしかない。

 ベルグは、研究所のおかげで、自らの好奇心を満たすための実験を邪魔されたのだから―…。

 そして、研究所という組織がローによって倒されたということは、あの人というここでは触れることのできない人物によって、知ることができたのだから―…。

 そして、あの人の言う事は、事実でしかない。嘘を付くことが苦手なのだから―…。

 この世界において、暗躍しているという―…。

 (そして、あの残党どもは排除しておかないとな。ランシュは、ちゃんと任務を果たしたから、俺の居場所をローらに教えたとしても始末する気はない。まあ、親方の要望かどうかはわからないけど、叶えられそうなので、それで良いっか。さて、アババ君に言わないと―…。)

と、ベルグは、心の中ですべき行動を実行に移すのだった。

 ベルグとしては、ランシュを始末するということが自らにとって合理的なことは言うまでもないことは理解しているが、ランシュがこれまで楽しませてくれたことを思うと、殺すのには忍びないと思うのだった。

 ベルグは冷徹さを兼ね備えているが、血の通っていない人間ではない。ただ、ただ、好奇心の塊にすぎないのだから―…。

 そして、ベルグは、ポケットから通信機を取り出し、アババへと連絡を入れるのであった。

 この通信機となるものは、あの人が昔、こことは別の大陸での技術を用いて、二百年前に栄えたサンバリアなどがある大陸の大国家の時代に作ったものであるという。そのような機器および技術を何とか持ち越すことができて、ベルグの知り合いのマッドサイエンティストが使えるようにしてくれたのだ。

 そのおかげで、大量生産はできなかったが、個別で十数個ほど生産することができており、ベルグの主要な部下たちにちゃんと配布することができている。

 ツー、ツー、ツー、ザー、ザー、バシッ!!

 「ベルグ様ですか。アバババババババババ、何か御用ですか。こちらはリースの試合が終わり、ランシュが三人組の一人に敗北したのを見たのですが―…。それと、ランシュがリースの王女との婚約とやら確定しましたよぉ~。だけど、ベルグ様の居場所を教える可能性があるから、始末しておきます?」

と、アババは言う。

 アババは、ベルグに仕えている忠実な臣下である。ゆえに、ベルグにとって邪魔となる存在であるなら、消すことさえ厭わない。

 ゆえに、ベルグの居場所を教える可能性があるというか、確定的なランシュを始末しておく必要がある。そのことについて、連絡してきたのではないかアババは思うのだった。

 「ランシュ君を始末する必要はないよ。ランシュ君は、私を楽しませてくれたんだ。ランシュ君が何かをしたとしても、私が不利になったとしても、後悔はしない。だけど、ランシュ君よりも危険な奴らがいるのだよ。アババ君も聞いているよね。研究所という組織―…。そいつらはちゃんと始末しておかないといけないし、ランシュ君へのプレゼントとして、ラーンドル商会の元トップのアングリアも始末しておいてくれるかな。やりすぎた奴らは、消えないことには何も意味をもたないのだから―…。」

と、ベルグは言う。

 ベルグとしては、ランシュを始末する気はないということをアババに伝える。そして、同時に、別の人物たちを始末して欲しいとお願いをするのだった。

 その一つが研究所という組織の関係者である。彼らは、この異世界とは別の世界を探そうとしていたことと、非合法な実験を数多くおこなっていたのだ。そして、脅威となり、味方とならないベルグに対して、数々の妨害をおこない、ベルグの実験を邪魔してきたのだ。だからこそ、彼らに、ベルグを敵に回してきたことを後悔させようとするのだった。これまで、中々上手くいかなかったので、今度こそは―…、という意気込みで―…。

 そして、もう一つ。ランシュへのプレゼントという意味で、ラーンドル商会の元トップのアングリアの始末ということになった。理由は、ランシュがリースとの関連で、セルティーとの婚約が強制的に確定されたので、そのためご祝儀という意味合いで―…。

 ランシュがそのことの意味を理解すれば、嫌な気持ちになることを理解できずに―…。まあ、ベルグとしては善意という感じなのだが―…。こんな善意あってたまるか、という方が世間のほとんどの人々が思うのは当たり前のことだ。時代によって価値観は異なってくる面が存在するので、完全に当たり前ということは言えないのであるが―…。

 さらに、アングリアの父親には、かなり嫌な目に合わされてきたので、その報復を意味している。まあ、ニドリアのような行動の持ち主であれば、そういうことはする気にはなれなかったが、アングリアは愚か者であり、調子に乗りすぎたので、その報いを受けさせないといけない。代償は自らの死をもって、償われる―…。

 そう、ベルグは、ある言葉を続けて言うのだった。

 「神に対する罪は、その者の命と災いによってのみ、償われなければならない。」

と。

 「アババババババ、リースを中心とする半島において信仰されている宗教の教えですか。開祖がある王に対して説いた説法にあるとされる。」

と、アババは言う。

 アババは、これでも教養ぐらいはある。ベルグに教えられたというのもあるが、人として生きていく以上、情報を知っておくことは大切なことだ。知ってはならない情報というものは存在するが―…。情報というか知識を知っておくだけでは、意味をなさないが、それをさまざまなことに当て嵌めたり、深く探り、その知識および情報の性質を理解することによって、新たな側面やものの見方や使い方を獲得し、それを別のことでも当て嵌めることで、自らの行動をより良いものにすることができる。

 人々は、多くの面で、ある知識を知識だけで終わらせようとするから、知識の本当の意味に気づくことができないだけだ。まあ、日頃の生活でそのように考える時間というものがないことも事実なのであるが―…。

 ゆえに、知識の性質を完全に理解したという錯覚の中で、その知識の性質を深堀することをやめ、意味のないものとして扱い無駄とし、役立つという表面的なことに対して、簡単に目を奪われてしまう。役立つということを表面的にするという作業自体のことを馬鹿にして―…。

 アババにそのような表面的にするという作業自体に馬鹿にすることはないし、その重要性を理解している。

 そして、アババは、なぜ、ベルグがそのようなことを言っているのか疑問に思い、何かしらの意図があるのではないかと理解するのだった。

 ベルグも、アババがベルグの答えを求めていることを理解して答える。

 「そう、これは、王がおこなう政治は、周囲の人々を巻き込むことがあり、それが良い方向ならばそのような結果を、悪い方向ならば悪い結果となる。だからこそ、王という者、いや、政治をおこなう者たちはその自覚をもって行動しなさい。もしも悪い結果になるのであれば、王だけでなく周りを巻き込むほどの内乱、紛争、外圧、クーデターなどのような悲惨な目、スラムの拡大および無政府状態に陥るという報いを受け、最後は滅びという神によって、自らとその関係者を巻き込んで死という結末を迎えるというわけだ。そのことを理解しない者は、バッドエンドを引くだけなのだよ。だからこそ、アングリアにはそのバッドエンドを体験させてあげないといけない。もしも、この世界に輪廻転生が存在し、記憶を受け継ぐことができるのであれば、彼には再起するチャンスがあるのだから―…。まあ、これはあの人にも俺にもわからないことなのだがな。じゃあ、頼んだよ。」

と。

 そう、人は行動することによって、周りへと影響を与えること、与えないということに対して、影響を与えているのである。そうである以上、良い結果をもたらす時には良いが、悪い結果もありうることになり、それが因果応報かはわからないが、自らに返ってくることがある。なので、そのことを自覚して行動しないといけない。

 そのことを理解できずに行動したアングリアには、バッドエンドという結末を与えないといけない。そうしなければ、報われることはないのだから―…。まあ、アングリアがそのことに気づけるかどうかに関わってくるし、ベルグの言っているように輪廻転生ということがこの異世界において成り立っていて、記憶を引き継ぐことが可能であれば、気づいて反省し、行動を良い方向に改めればよいのである。再起のチャンスは存在することになる。

 実際、この異世界における輪廻転生はわからないし、ベルグという存在とその後ろ盾においてさえもわかっていることではない。あるかどうか―…。

 だけど、そんなことが起こるのは、異世界においては、ほんの小さな奇跡を軽く越える出来事でしかない。能力者でもなければ―…。

 そして、ベルグも話し過ぎたと感じて、アババにアングリアと研究所という組織の人間の暗殺を頼んで通信をきるのだった。通信機を元のポケットの中になおして―…。

 (さて、リースのことはこれで一段落というわけか―…。まあ、ランシュ君は、リースにこれまで起こっていたことのすべてを知っているわけではない。それに―…、リースには善政を、サンバリアには悪政を―…、比較してみて思ったが、良き政治に政治体制はあまり関係ないのかもしれないね。大事なのは、その政治を判断する人々の判断力と、どうあるべきかをどれだけその方向に向けることができるかだね。そう、暗闇の中で生き残れる道を探し続けることでしかないのだから―…。我々という始点の存在がある存在は―…。)

と、ベルグは心の中で言うのだった。

 ベルグとしては、政治体制については人が作りだすものである以上、メリット、デメリットの双方が存在する。そのことに対して、一つの政治体制を完全に正しいと思い込むことによって、見えなくなってしまっているということを証明しているのかもしれない。

 リースの住民もそうであるが、サンバリアの住民も同じなのだ。人は環境に適応できる生き物であることに起因があるかはわからない。

 一つの政治体制を完全に正しいと思っていて、他の地域の政治体制を何も考えることなく、ただ批判することを正義だと思ってしまうこともあるぐらいだ。それはその地域の歴史であり、どのようにして形成されたのかを考えずに批判するのは、返って危険なことでしかないし、争いもしくはその地域および双方の混乱および政治体制崩壊の元にしかならない。本当は、自らの体制に問題がないか、相手の体制の問題点はこうすれば良い結果になるということを示した上で、提案にしておく方が良いのかもしれない。だけど、人の考える物事など完全ではないので、その時の状況に応じて、変化してくるのであるが―…。

 ベルグは、二つの国を見ながら、比較していたというわけだ。善政と悪政というものがどんな影響を及ぼすか―…。まあ、これはベルグの実験の一つでしかないし、二年前に開始したことでしかない。それも、瑠璃、李章、礼奈の異世界から来た三人組の討伐の中で、頓挫せざるをえなくなったのであるが―…。

 ベルグの目的は、政治体制の比較よりも、もっと大きな別の何かであるのだから―…。そっちの方を優先したに過ぎないのである。

 さて、ベルグは―…、

 (そろそろ実験の方も大幅に進めていかないと、完成する日は近いのだから―…。それに、サンバリアにはフェーナがいるのだから―…。)

と、心の中で言う。

 そう、すでに、三人組に対する時間稼ぎという名の新たな作戦は、始まっているのだ。


 【第133話 後始末】


第133話-2 後始末 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


あらすじは長くなりましたが、完全にリースの章のエピローグであり、かつ、大きな新たな章のプロローグという感じになっていくと思います。

新作を昨日、設定を纏め始めました。

次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだいこの部分で、報告すると思います。

では―…。


2022年6月30日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年7月1日頃を予定しています。


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