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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第132話-14 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、アングリアの計画は阻止され、かつ、リースの権力はリーンウルネの方に転がり込んでくるのだった。そして、リーンウルネはランシュを起こすのだった。

 全員が驚愕する。

 リースの競技場に来ている者たちみんなが―…。

 観客は、

 (えええええええええええええええええええええええええええええええ、そんな起こし方ある――――――――――――――――――――――――――――――。)

と、心の中で言いながら、目玉が飛び出しそうな感じになるぐらい、目を見開くのだった。

 それほどまでに、リーンウルネの行動があり得なかったのである。漫画などではあり得そうなことであるが、この異世界のリースのある地域には漫画というものが存在しないので、観客にはわからないであろうが―…。

 一方、

 (お母様!!)

と、セルティーは心の中で驚く。

 その時のセルティーの表情は、目が点になっていた。

 セルティーとしては、いきなり治療をし終えたばかりの人を力目一杯に(はた)くのは良くない。

 だって、病み上がりのような感じと変わらないのだから、傷が再度できることを容認できるわけがない。

 それでも、セルティーは動くことができなかった。

 リーンウルネにランシュを傷つけようという意図がないことは、何となく理解できているからだ。

 それでも、驚かざるにはおえない。

 そして、ランシュが目を覚ますのだった。

 「ここは―…。」

 (ああ―…、そうか。俺は、敗北して―…。そして、なぜか目の前に二年前に対峙したリーンウルネがなぜいる。)

と、ランシュは、意識を取り戻し、目の前にいる、リーンウルネに対して、疑問に思うのだった。

 ランシュとしては、自らが第十回戦第六試合で瑠璃に敗北したことは覚えている。そして、瑠璃が勝者なのは確実であることを―…。正確なことは、後でリークにでも聞けば良いだろう。ヒルバスが起きていないとランシュは、この時点で思っている以上、その判断になる当たり前のことでしかない。

 「うん、起きたようだな。ということで、そろそろ話そうかの~う。今後について―…。」

と、リーンウルネが言う。

 そして、リーンウルネは、ローのいる方へと視線を向け、ここに来るように促す。

 なぜ、ここでローを呼び寄せるのか。理由は、簡単で、ローという存在がこの異世界において特殊であるからだ。

 ローは、リーンウルネのしようとしていることを完全には理解できていないが、それでも、言う通りにした方が良いと結論付けて、向かうのだった。

 「リーンウルネよ。ランシュがどこまで知っているのかわからんのだから、事実を説明すべきではないかの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、リーンウルネ側ではないし、ランシュ側でもない以上、第三者の立場から見ることができる。ゆえに、真面な判断を下すこともできる。そう、ランシュが瑠璃に負けたということを知っているはずがなく、その経緯をちゃんと説明するということが話し合いを進めていく上では重要なのではないかということを―…。

 リーンウルネもローの言っていたことがわかったので、ランシュに対して説明を開始するのだった。

 「ふむ、そうじゃったの~う。というか、それなら、ローの方が説明した方が良いのではないか。」

と、リーンウルネが質問するというか、ローの方が詳しく説明できるだろということで言うのだった。

 そう、リーンウルネがリースの競技場に到着したのは、第十回戦第六試合が完全に終了しており、アングリアが競技場ごと破壊しようとする数分前ぐらいのことであったのだ。ゆえに、正確なことをこの目で確かめていない。

 一方で、ローは、第十回戦の最初からリースの競技場におり、第一試合から第六試合を見ている以上、はっきりとこの目で見ているのだから、説明することが苦手でない限り、可能である。

 「ふむ、そうじゃの~う。ランシュとやら、お主は瑠璃との試合に敗北して、お主の率いるチームはチームとして敗北している。お主のチームで確認しても、同じことを言うであろうがの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、ここで嘘を付く意味はない。嘘を付いたとしても、ランシュが味方チームのメンバーに確認してくる可能性が高く、そこで嘘がバレることは間違いないと思っていた。

 ゆえに、嘘ではなく、事実を言う。事実を言えば、ランシュから報復される可能性を減少させることができる。

 「そうか、流れ的には何となくそうだろうとは思った。そして、敗北した以上、俺はリース王族に対する反逆罪の罪として処刑か?」

と、ランシュは言う。

 ランシュとしては、レグニエド王を暗殺している以上、リーンウルネおよびセルティーがリースの実権を掌握したということになるので、すぐに、暗殺者であるランシュを処刑するのは当たり前のことだ。

 理由は、ランシュを生かしておけば、また、いつ王族が暗殺されるのか、怯えながら過ごさないといけないし、ランシュがリースの中で一番実力がある以上、ランシュを抑えるのは不可能に近いことでしかない。

 ランシュはそのことをちゃんと理解している以上、死という運命を避けられないと認識しているのだった。

 ランシュが死に対して、恐怖がないという言えば、嘘になるが、それでも、自らの目的が達成されている以上、そこまで、この世界における未練というものは何もない。

 だからこそ、自らの生の終わりが早まろうがそこまで、気にしていない。

 そのランシュの言葉を聞いたリーンウルネは、

 「何を言っておるのじゃ。お主を殺して何か意味があるのか。まあ、私の夫が殺されたのは悲しい出来事でしかないが、恨みばかりで生きられるほど、この世界は優しくはないし、恨みを終えたとしても、命ある限り、生きるということは続いていくのじゃ。それにお主―…、リース王国の初代王ラーガルが使ったとされるブレスレットを扱っているようじゃの~う。見えておるぞ。」

と、言う。

 リーンウルネは、ランシュを殺す気はないことを言葉にして示す。すでに、周囲には、ランシュを起こす前に示しているのであるが、聞いていない本人が知る訳がないので、言っておくことにする。

 そして、ランシュが、リース王国の建国者であり、初代王となったラーガルの扱っていた天成獣の宿っている武器を使用していることに関しても、知っているのだと示しておくのだった。

 リーンウルネは、自らの情報の優位性と同時に、対等に交渉するには、それに自らを強く見せておく必要がある。過剰に強く見せればランシュに見透かされた時に、マウントを逆にとられかねない。そして、その逆は、返って、ランシュに舐められるというのは確実であろう。ゆえに、自らの力量をしっかりと理解した上で、上手く対等に交渉するかが大事なのだ。かなり難しいことであるが―…。

 「チッ!! 気づいているのかよ。まあ~、リーンウルネ様が先読みして行動してくることは四年前の時からわかっていた。そして、俺を殺す気はない。リースの王を暗殺した人間を処刑しなければ、王族としての威信に関わるのではないか?」

と、ランシュは言う。

 ランシュにとっては疑問でしかない。ランシュはリース王国の王レグニエドを暗殺しているのだから―…。それもレグニエド王の誕生日であり、かつ、各国、各地域からの要人がいる目の前で―…。

 そうであるならば、リーンウルネやセルティーの方にリースの実権が転がり込んできた以上、王族に泥を塗ったランシュを処刑して、権威を示さなければ、王族としての威信に関わるのは確実だ。どうして、それをしないのか。

 リーンウルネの行動には、理解できなくてもランシュとしては当たり前のことだ。

 リーンウルネを一般的な行動ばかりで当て嵌めても意味がない。あえて、自らもしくは自らの属している集団および組織を一時的ではあるが、評価を落とすことをすることがあるのだ。別に、ずっと評判を落とすのではなく、評判が良いままでは得られないような上の評価と信頼を得るためでしかない。そして、それが社会的な利益になるということを考えた上で―…。

 人は、自らの周囲による評価および地位というものが下がることを恐れるし、今まで、築き上げてきたものを手放したくはない。

 だけど、それは、時として、目先のことしか考えていないということを意味する時がある。ゆえに、損をしてでも、本当の意味での自らにとっての利益をとるということが重要になる。自らの面子を傷つけられることがあったとしても―…。

 「ふむ、そういう選択肢もあるが、一応、王族としてリースの中のトップに立っている以上、全体の利益というものをちゃんと考えないといけない。儂の面子なんて些細なものでしかないし、王族の威信など再度、ゆっくりと築き上げていけば良い。人は、合理的に生きられているように見えて、その判断方法に本当の意味での合理性など存在するわけがない。ミスをするし、完全になることはできない。だからこそ、自らを成長させていくことができるし、退化させていくこともできる。それにの―…。」

と、リーンウルネは一呼吸をおき、

 「さっきも言ったがの~う、恨みなんてものがあったとして、復讐を終えてしまっても、死んでいない以上、生きているということになる。自らの命があるからの~う。要は、生きるという道に終わりがあるとすれば、この世から自らの生を終える時でしかない。そして、リースの今後のことを考えれば、ランシュ、お主の命の終わりは今ではないはずじゃ。ともに、儂と手を組んで歩んでみないか。折角、リース王国の初代王が使っていた天成獣の宿っている武器を扱うことができているのだから―…。」

と、言う。

 リーンウルネとしては、ランシュがあまりにも馬鹿で愚かな人物であったなら、今回、この場で処刑することも(やぶさ)かではなかったであろう。これ以上、リースの未来において、繁栄を獲得していくために、愚か者であり、中央で権力を握ることができるような者たちは迷惑であり、邪魔でしかないのだから―…。

 力による支配がすべてにおいて正しいわけではない。人が考えるものや作るものが完全でない以上、必ずどこかで、最悪の効果を発揮することがある。そうである以上、完全にこれが正しいということを信じ込んで、何も変えていかないのはかえって危険なことでしかない。

 リーンウルネには、そんなことがわかっているからこそ、最初は損になるかもしれないが、後に得になるという選択肢を冷静に見つめ、選択することができ、自らができるなかで最高の結果を出すことができるのだ。ただし、邪魔されれば、最高の結果から差し引かれていくことになるのであるが―…。

 一方で、リーンウルネの言葉を聞いたランシュは、

 (………………。)

と、考え始める。

 (…俺は負けている以上、ここで反抗するのは得策ではないし、負けが確定している以上、約束は守らないといけない。約束を守ってはならない時もあるが、今回はそのような例に該当しない。正直に教えるのが当たりとしか言いようがないな。)

と、ランシュは、心の中で言う。

 ランシュとしては、今回、自らが企画したゲームで瑠璃チームが勝利した場合、ベルグの居場所を教えるということになっている。その約束はランシュとしても守るつもりだ。忘れたでは許されることではない。

 ベルグの居場所を教えれば消されるということは、ないと完全には言えないが、勘としてはそうはならないと思っていた。それに、ベルグの居場所を知ったからと言って、対処できるという感じではない。なぜなら、ベルグのいる場所には、ベルグを守る直属の部下がおり、彼らの実力はランシュと同等かそれ以上だと言われる。ランシュとて、全員とは会ったことはないが、何人かは顔を合わせたこともある。

 暗殺に長けたアババ、マッドサイエンティストの元サンバリアの重鎮とその孫、そして、グルゼン親方だ―…。

 彼らがリースの兵力を恐れることはない。その直属の部下だけで、リースの二倍の兵力分の実力はあるのだから―…。

 そして、同時に、リーンウルネと手を組むべきか。これに関しては、敗北していて、ここでリーンウルネが権力を手にしていると判断される以上、ランシュの判断は決まってしまっているのだ。

 その選択肢しか残っていない。

 「組まないと言ったとしても無駄なのだろう。俺は敗者だ。言う事を聞こう。」

と、ランシュは降伏する。

 自らが企画したゲームで瑠璃チームに敗北し、そのメンバーの中にリースの王族であるセルティーが含まれている以上、勝者側であるリーンウルネには従わざるをえなくなる。

 「ほ~お、ということは、決まりじゃの~う。」

と、リーンウルネが悪企みをしていそうなニタァ~、とした表情をする。

 ランシュは、ものすごく嫌な予感がする。逃れることのできない嫌な予感が―…。

 「ということで、セルティー、お主の婚約者が決まったからの~う。」

と、リーンウルネは言うのだった。

 「えっ、お母様!!! いきなりそういうことは、結婚などというまだ私には早い気がします。心の準備というものが―…。」

と、セルティーは、リーンウルネに向かって言うが、最後の方はぼそぼそ声になるのだった。

 そして、観客は、どう反応していいのか分からず、歓声がなかったのである。だけど、それもほんの数秒でなぜか、盛り上がりの歓声をあげるのだった。祭りだという認識で―…。

 そう、この日、セルティーに婚約者が決まるのだった。そのことにランシュは、はい以外の返事は残されていなかった。

 (俺は、リースから逃れられないのか。)

と、ランシュは、心の中で呟くことになった。

 そして、一つの大きな出来事に幕が下ろされていくのだった。

 だけど、まだ、完全に幕が下ろされていくわけではないのであるが―…。


 【第132話 Fin】


次回、後始末されるのは?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


何とか、無理矢理な感じですが、第132話を完成させることができました。そして、『水晶』は、後数話ぐらいで、一応リースの章は完結という感じになります。番外編もありますが、それは、休んでいる間にコツコツと仕上げていくことにして、次の章へ進んでいきたいと思います。まあ、いろいろ第133話と第134話ぐらい伏線をしっかりと張らないといけないのだけど―…。

最後に、次回の投稿分に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年6月27日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月28日頃を予定しています。


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