第132話-12 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
現在は、第6部完結および今までの分の加筆および修正のため、投稿を休んでいます。
投稿再開および第7部の開始は、2022年6月21日午後6時30分となっています。予約投降したので、ほぼ確実だと思います。予約したのに一回だけ、投稿されなかったことがあったので、完全に保障はできないですが―…。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、アングリアの野望は失敗に終わるのだった。そして―…。
「ふむ、メルギエンダの気持ちがわかったかの~う。」
と、リーンウルネは言う。
リーンウルネは、連れてきたフロッドに、さっきの光景を見させていたのだ。
メルギエンダがどうしてラーンドル一派やアングリアを裏切ったのか。
そのことを理解したフロッドは―…、
「理解はできました。だが―…、裏切るのは―…。」
と、言葉を濁しながら言う。
フロッドとしては、主人に対して、忠誠を誓うというのが良いということの考えから抜け出すことができなかった。忠誠心は時としては、大事な事であり、それは繁栄のために必要なことだ。
「裏切ることがすべてにおいて完全に悪いとは限らない。なぜなら、社会に理不尽しか及ぼさない奴らを裏切って、社会に貢献する者たちに味方することは決して悪ではないのだから―…。それに、忠誠心というのは、自らの部下を生かし、人を生かし、社会を発展させることが本当の意味で繋がる奴に発揮させることが大事なのじゃ。アングリアのようなそれとは逆の奴に忠誠心を見せるのは、人々をただただ、不幸の沼にハマらせてしまうことでしかない。それは、忠誠心の悪用に他ならない。だからこそ、裏切ることは完全に悪ではないし、すべてにおいて悪いこととは言えない。そのことがわかっているからこそ、メルギエンダはアングリアを裏切ったのだ。ニドリアをラーンドル商会のトップにして、再度、ラーンドル商会が本当の意味で繁栄させるために―…。本当の忠臣とは、本当の意味で、組織のために行動する者のことを言うのじゃ。では、の!!」
と、リーンウルネは言って、中央の舞台の方へと向かうのだ。
最後に、今日、言わないといけない奴のために―…。
そして、リースの騎士団団長であるフォルクスとともに―…。
残されたフロッドは、
(………………。)
と、リーンウルネの言葉に対して、考えさせられるのだった。
今、この場で答えが出ることはないのかもしれない。人が考えて、ある答えを導きだすのに、どれだけの時間がかかると正確に答えることはできない。というか、そのこと自体が奇跡なのかもしれないのだ。有限的な制限時間の中で、これまでの有限的な時間で得た経験をもとに判断するから―…。
そして、フロッドもいつか、突然かどうかはわからないが、それでも、いずれ自らなりの答えに到達するのかもしれない。それが自らの人生で、本人にとっての良い方向か、それとも、逆なのかは、その時になってみなければわからないものだ。
貴賓室。
ニドリアは、観客席が見える場所にいた。
メルギエンダからは、リースの競技場の観客席や試合会場に聞こえる装置を持って、これから何を言い始めようとする。
このことは、よっぽどの覚悟というものが必要なことであることに間違いない。
ニドリアは、一回、深呼吸をして、自らの気持ちを落ち着ける。
一言一句、大事な言葉なのだから―…。
覚悟は決まった。決まっていたけど、再度、確かめたのだ。決まったかのようにして―…。
「この競技場にいらしている皆様、および、リースに住まわれている皆様、父親および兄が皆様にご迷惑をおかけしたこと申し訳ございませんでした。」
と、ニドリアは言って、頭を下げるのだった。
それは謝罪である。
ニドリアは、アングリアからラーンドル商会のトップの地位を奪った者たちによって、今日、この場で担がれたのだ。本人もそのことはわかっている。
そして、自らが先代たちが犯した罪に対して、認め、真摯な気持ちで誠意をもって、謝罪しないといけないのだ。たとえ、父親や兄であるアングリアによって惨めな扱いを受けたとしても―…。
それがトップに立つことなのだから―…。
アングリアの父親よりも、アングリアよりも、この時、自らの器の大きさをニドリアは示すことができたのだ。アングリアの父親とアングリアを比べることがまるで意味のないかのように―…。
そのニドリアの謝罪に関して、観客席にいる者たちは困惑するのだった。
そして、何人かが指摘する。
「彼は、ニドリアじゃないか!! 確か、あいつは、アングリアの弟!!! だけど、よその商会のトップの娘を襲って産ませたとか噂の!!!」
「だけど―…、俺、ニドリアと会ったことあるけど、商人としてはとても誠実で、良心的な値段で買い取ってもらえたし、良い場所に販路を拡大してもらえたんだ。」
「あの人は―…、ラーンドル商会のトップに就いた以上、アングリアのように―…。」
「いや、ニドリアは確か、アングリアからも忌避されていたし、ラーンドル商会でも閑職の方に追いやられていて、あまり儲かりそうもないとされる地域の貿易の仕事をさせられているとか。その地域との貿易を成功させて、アングリアに恨まれていて、予算を削られていたりとか―…。」
「息子は、ニドリアの部下だが、あの人は良い人を待遇良くしてくれるって―…。」
このような評価が、ニドリアに対するものである。
ニドリアの評価は、良い人であり、ラーンドル商会の閑職であったとしても、そこから何か新たなものはないかと部下ととも探り、成功させて、多くの利益をラーンドル商会にもたらしていた。それに直営店をリースの商会本店とは別のところにも出店して、高級路線の本店とは違う、一般向けの商売もおこなっていた。高級品とともに、一般の人々が買う事ができる値段のものを輸入して―…。
同時に、輸出もしっかりとおこなっており、リースの小さなお店でも素晴らしい物を自分が担当している地域の商売人に見せたりして、気に入られたものを販売するようにもなったのだ。需要を創造して―…。
その成果によって、ラーンドル商会でも評価されているだけでなく、他の商会でも評価はアングリアよりも高い。そこに、ニドリアの母親の一族の商会も含まれているのは事実だ。
そして、ニドリアがラーンドル商会を継ぐということはプラスのことでしかないのだ。販路と同時に、商会が所有している船を双方で共有して、貿易をおこなうことができるのだから―…。
そして、ニドリアに関する評価はすべてにおいて良いというわけではない。
ニドリアは、そのことを理解しているし、全員が全員、自分に対して良い評価をするわけがない。もし、それであるのならば、返って危険な尊敬を抱かれているということになり、ニドリアの存在が危ないということになる。
良いということは、悪いという評価があるということでも良い。嫉妬の類ならば、気にしないというわけにはできないが、警戒しておくだけで十分だし、何かニドリアに対して命を奪うなどのような行為をしようとしているのであれば、牽制および上手く対処すればよい。
そして、ニドリアは頭を上げるのだった。どんなに毅然とした気持ちであり、申し訳ないという気持ちを抱いていたとしても、観客席にいる人たちの反応は気になるというものだ。許されたかどうか。
だけど、ここで許されなくても、批判を向けられたとしても、それは今まで、ラーンドル商会のトップがしてきたことなのだから―…。受け入れていくしかない。たとえ、それがニドリアの受け入れられる要領を超えるものであったとしても―…。
観客席の方は静かになるということはないが、ヒソヒソとした感じになり、それが重なりあっているために、大きな波のように響き合っている。
…………ざわざわ。
そして、しだいに一つの声が聞こえる。
「ラーンドル商会を許す気はない!!! ニドリアさんが俺らの生活を良くしてくれている努力は知ってる!!! ニドリアさんの顔に免じて、ここでは批判しない!!!!! だけど、もし、アングリアのようなことをするようになれば、俺らは、今度こそお前らに牙をむいてやる!!!!」
その声は、この場にいる者たちの気持ちを代弁していた。
ラーンドル商会は嫌いだし、入れば将来の安寧が保障されるが、彼らの一派がリースの政治の実権を握ってしまったために、リースの税金が上昇するようになり、生活が苦しくなったのだ。そのせいで、時々の贅沢の機会が減少してしまったのだ。
だけど、ニドリアに関しては、生まれを知っている者も多いし、商売もしっかりとやったり、かつ、横暴な面もなく、好青年と言ってもおかしくない風貌であり、人と人を結びつけて他者を輝かせることをしてきた。ゆえに、信頼を築きあげることに成功していた。
この二つの面で、複雑な気持ちを抱く者も多く、ニドリアにはアングリアのようなトップにはなって欲しくないと思っているのだ。
そして、アングリアがトップのラーンドル一派の政治に対し、反抗はしてきていたが、どうしても強い力でラーンドル一派を倒したり、牽制したりできなかったことを悔やむ者もいて、このような屈辱を二度と受けたくなかったし、できなかったことに対する気持ちが今度こそ、自分達で自分達の利益を守ろうと思い、自らの気持ちに誓うこともあって、一つの声に気持ちを込めるのだった。
人は、自らの命を大切することもあるし、誰かのために自らの命を危険に晒すこともある。この二つの相反する行動をその時の気持ちによって、使い分けるのだ。
つまり、過去には自らの命を大切にして、アングリアらの力のあるラーンドル一派の行動に反抗をほとんどとれなかったが、今度の未来においてニドリアが暴走した場合には、未来の誰かの平穏のために自らの命を使おうとしているということだ。
まあ、その時になってみなければ、わからないことでしかないが―…。結果というものは―…。
「その言葉に偽りがないのなら、私は、リースのために、いや…、リースに住む人々と共に歩んでいくことを誓いたい。今後とも、ラーンドル商会のことをよろしくお願いいたします。」
と、顔をあげたニドリアは、再度言いながら、「いや…」の部分で間をあけ、宣言し、言い終えると礼をするのだった。
ニドリアは、この場にいる観客がリースに住んでいるすべてだと思ってはいない。競技場の外にも多くの人々がおり、リースの国家の勢力範囲にも人が住んでいる以上、彼ら、彼女らに向かって、誓うように言っているのだ。それは、聞こえない人の方が多いが、そういう細かい所ではなく、気持ちなのだ。
リースに暮らしていて、国際的な貿易を生業としており、貿易によって利益をあげ、リースの社会に貢献しているのである。そのことを見失わないようにするために―…。言った言葉に言霊が宿るかもしれないという信仰を知らなくても―…。
そして、ニドリアの言葉は一言二言で終わり、ニドリアはラーンドル商会の本店へと向かうのであった。
これから、ラーンドル商会の立て直しおよび商会における発展への方法の模索と、商会員およびラーンドル一派の政治家における汚職などがないかということを調べるために―…。
そこに、メルギエンダも自らがニドリアの執事であるかのようについていくのであった。
ラーンドル商会が、ニドリアの代で繁栄を享受するようになるのは、この物語では関係のないことでしかない。いや、関係はするのかもしれないのだろうか? それは、ここで語られることではない。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる側。
「終わったみたい―…。」
と、瑠璃は言う。
瑠璃としては、ランシュに勝利し、ランシュの企画したゲームに勝ったのであるが、その後の出来事のせいで、その勝利を忘れるほどではないが、喜びというものが簡単になくなってしまったのだ。
そして、何か無事に悪いことが終わって、安心することしかできなかった。
そう、アングリアらのラーンドル一派における野望は終わったが、それでも、この場における重要なことは最後の一つが終わっていないのだ。そのことを理解しているが上に、リーンウルネはここに向かっているのであるが―…。
「そうだと思いたいですが―…。」
と、李章は言いながら、緑の水晶を使うのだった。
緑の水晶の能力は、危機察知であり、危機に対して察知し、安全だと思われる考えを使っている本人が思考した時には安全だと教える。緊急の場合は、使用者の思考に危険と同時に、その解決を知らせるのだ。だけど、使用者本人が避けらない場合は、知らせないこともあるが―…。ある意味では、効率的な水晶なのかもしれないが―…。
緑の水晶を使った結果―…、
「大丈夫です。危険は完全に去ったようです。」
と、李章は告げる。
李章もここで、安心するのだった。李章としても、今は、ヒルバスとの戦いで消耗しており、もう一戦をおこなう体力は残っておらず、簡単に敗北し、瑠璃を守ることができないということを理解しているのだから―…。
そして―…、
「ありがとう、李章君。」
と、瑠璃は、李章に感謝するのだった。
その時、中央の舞台にリーンウルネが姿を現わすのだった。
それも、ランシュが率いているチームが今日、入場したところから―…。
第132話-13 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
そろそろ第132話も完成しそうな気がします。次回、その次の次で可能かもしれません。まだ、132話-13が仕上がっていないので、確定的に言うことはできません。
『水晶』の執筆スペースが少し落ち気味になってきましたが、まだ書くことができているので、何とか大丈夫だと思います。少しだけ気力が注入されているのよりも、出ていってしまっているのが多いだけだと思います。
そろそろ、『ウィザーズ コンダクター』も執筆している時のペースに戻していかないと、第3部の途中までしか、加筆および修正が終わっていないという予定よりも異常に遅くなっていますが―…。第7部以降は毎日投稿ではなく、1日おきに投稿していくと思います。
そして、話を『水晶』に戻すと、そろそろ、次の大きな面での足がかりを第133話から第135話ぐらいのあたりで示せると思います。そして、リースの章の終了後の旅を進めていくメンバーの変更があるかもしれませんが―…。予想はしやすいと思いますが―…。
最後に、次回の投稿分が完成次第、この部分で次回の投稿日時を報告すると思います。
では―…。
2022年6月20日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月21日頃を予定しています。