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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
311/748

第132話-11 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

現在、第6部の完結により、修正および加筆をおこなっており、投稿は休んでいます。投稿再開および第7部の開始は、2022年6月下旬を予定しています。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、リースの実権を再度掌握しようとしたアングリアの野望はくじかれるのだった。

 「リーンウルネ姉さん。ご無事で―…。」

と、アールドが言う。

 アールドとしては、幼い頃から世話になったリーンウルネがアングリアに捕まり、人質にされたのだから心配で仕方ないのだ。

 アールドは、昔、リーンウルネに救われたことがあるのだから―…。

 今は傭兵となっているが、傭兵としての力を発揮させる精神的な土台は、リーンウルネの言葉によるものだった。

 「普通に、アングリアのような素人ごときに人質にされても簡単に脱出することができるわい。現にしておるからの~う。二年間も修道院にいて、修道女としての仕事と同時に、リースの状況および体力の強化をおこなっていたからなぁ~。攻撃方面は相変わらず駄目じゃがの~う。それに、今回の儂の要望を受け入れてくれて、感謝する。」

と、リーンウルネはアールドに感謝するのだった。

 親しき仲にも礼儀あり。

 それを疎かにしてしまえば、どこかで良好な関係にヒビが入るかもしれない。まあ、そうならないということもあるが、その可能性を減らしておくことは意味のあることなのだから―…。

 リーンウルネに感謝されたアールドは、子どもが母親に頑張ったことを褒められた時のような表情になるのだった。そこに双方における恋愛感情はない。

 「ありがとうございます。リーンウルネ姉さんの役に立てて光栄です。謝礼もしっかりと支払ってください。」

と、アールドは言う。

 アールドは嬉しい。

 だが、ちゃんと謝礼の報酬の支払いに関しても言うのだから、仕事と私事をちゃんと区別することはできる。報酬をしっかりと得ないと、部下の傭兵を食わせていくことができないし、給料なしで傭兵をやるものはよっぽどの馬鹿か、何か別の良くない要因もしくは忠誠心が高すぎるのではないかと思われる。

 忠誠心が高すぎる傭兵は、返って損でしかない。傭兵は、金によって雇われるため、よりよい報酬を求めるのは当たり前のことであり、傭兵隊の中でも待遇の悪いところには優秀な傭兵は集まらない。ゆえに、忠誠心よりも現実的な自らの利益を優先するし、忠誠心が高すぎる奴らは雇い主から甘く見られて、働きに対する相当の成果をしっかりと貰うことができないのだ。

 アールドは、別に忠誠心の高さを部下に求めないし、報酬はしっかりと働いた分だけ支払うようにしている。それこそが、強い傭兵を作るに欠かせない要素だと思っている。忠誠心は便利ではあるが、忠誠心の高い奴に依存して、その人物を失った時に、傭兵隊組織そのものが崩壊してしまう。アールドにとっては、周りから聞いた話だし、その傭兵たちが実感を込めて言っており、嘘を付いているようには感じなかった。

 そして、アールドは、その話を聞いているし、他者の経験を上手く自分の中に役立てるようにできているのだ。どういうことが必要なのかを考えながら―…。

 「わかっている。報酬をケチったり、払わないような奴は、返って、酷い仕打ちをされてしまうものじゃから―…。さらに、何も見返りを求めない傭兵の方が、何か良からぬことを企んでいそうで怖いの~う。そういう面では、報酬をしっかりと請求してくる傭兵は相手がしやすい。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネとしては、謝礼の請求をしてこず、支払おうとすると支払わなくても良いと言われれば、アールドのことを疑っていただろう。傭兵は、ある事に対して、武力で対抗するために、金銭などの報酬を支払って雇われる兵士のことである。つまり、報酬を求めることは傭兵にとって正当な権利である。

 これを行使しないのは、雇った国家を自分達が乗っ取ろうとしているかもしれないという最悪の事態をも想定しておかないといけなくなることを意味する。そう、雇った側から金銭以外の何を有無を言わせずに略奪しようとしているのだ。

 だからこそ、報酬を請求してきたアールドに関しては、安心できるし、相手として信頼できるのだ。金銭を少しでも高く請求してくることで嫌われている傭兵だが、金銭を請求してくることが傭兵の信頼に繋がることなのだから、皮肉なことでしかない。

 嫌われ者でも必要な存在である以上、嫌われる要素が信頼の要素に繋がることもあるということでまとめた方が良いのかもしれない。

 「そうですか。リーンウルネ姉さんは、相変わらずということだ。では―…、私は傭兵たちの方へと向かうとします。」

と、アールドは言うと観客席の方へと向かって行くのだった。

 一方で、リーンウルネは、メルギエンダの所へと向かい終える。

 「ふむ、これで満足か、メルギエンダ。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネとしては、今回、アングリアのラーンドル一派によるリースの再掌握計画を阻止して欲しいと頼んできたのは、メルギエンダだからだ。そのための情報を最初に提供したのも―…。

 「ええ、これで、私の友人も浮かばれよう。それに、アングリアはリーンウルネ様も言う通り、人として、商人としての経験を積むことができなかった可哀想な人であり、自らもそれをせずに、自らを過信した人にすぎません。何を保つ、もしくは何の功績をあげるためには、そのなそうとしていることに対して、必要な経験を積むことができ、時代が何を求めているのかということを考え、一致させること、そのような様々な要因を奇跡的になすことによって、達成されるものです。ラーンドル商会もそのようにして初代様から築き上げていったにすぎません。だからこそ、保つためには、自らのためだけに生きているアングリア様ではなく、自らの生まれに対してもほとんど捻くれることなく、自らに必要な経験や体験を積み、人脈を独自に築き上げていくことに成功したニドリア様の方がラーンドル商会のトップに相応しい。そして、今日、ここにラーンドル商会のトップとなられるお方が来られています。ニドリア様。」

と、メルギエンダは言う。

 メルギエンダは、リーンウルネの言っているアングリアの人間として駄目な理由を理解することができる。そして、メルギエンダ自身、商人としてラーンドル商会のトップを率いるのに一番優れている人物として、ニドリアが頭に浮かんだのだ。

 メルギエンダは、ニドリアに関する情報と商人としての能力を自らの友人から聞いていたのだ。幼い頃に身分の差こそあったが、それでも、友人の両親がいろんな人と付き合うことで、信頼できるかそうでないかを判断することができる力を身に付けるためだと言って、半分放置していて育てられたようだ。ちゃんと影から護衛のような存在はいたらしいが―…。

 その中で、メルギエンダは知り合うこととなり、身分の差とか環境の違いとか関係なく親しくなり、メルギエンダはラーンドル商会へと入社できることになり、連絡はあまりとることはなくなったが、あの日、アングリアの父親が仕出かして、その友人が怒りの形相で来た時には驚きしかなく、その後、裏で理由を聞いた。

 その時の言葉は、メルギエンダの中に今も記憶に鮮明に残っている。


 ―これが許せるか!!! 俺の娘がお前のところのトップに襲われたんだよ!!! そして、子どもまで身籠らされやがった!!! これから産まれてくる子ども、そして、娘には罪はねぇ!!! だからこそ、奴には、責任をとってもらわなければ気が済まない!!!―


 その今にでも復讐しようとしている友人の目は、まるで、常軌を逸したと言ったとしてもおかしくはない。

 メルギエンダにとっては、その時、かける言葉が見当たらなかった。

 そして、友人の娘は、そのせいで、塞ぎ込んでしまい、人との関係を一時的に絶つようになったという。

 だけど、リーンウルネが、友人の娘を立ち直らせることに成功しただけでなく、友人の恨みを消え去ることできなかったが、それをより良い方向へと持っていったのだ。

 その話を友人から聞いてメルギエンダは、リーンウルネと協力すれば、腐ってしまったラーンドル一派およびアングリアからラーンドル商会を解放することができるのではないか。そう思ったからこそ、リーンウルネと通じることになった。いつの日か、この苦痛で理不尽なことが一人の我が儘のためによって起こり、周囲が苦しまなくて済むようなことを―…。

 ニドリアの父親は、リーンウルネによって、復讐心の中から重要な要素を切り出し、そこに私だけでなく、社会における人々が陥ることのあることによって公にしたように―…。

 そして、この場にある人物がいることを知っていた。

 そう、メルギエンダがラーンドル商会のトップに座って欲しいと思っている人物が―…。

 アールドを呼びにいったとされる人物、黒い服で覆われ、姿も見えなかった人物が顔を誰もがわかるように見せるのだった。

 その人物こそがニドリアだったのだ。

 「初めまして、リーンウルネ様。私がニドリアです。以後、何か外国から輸入したい商品があれば我が商会に依頼してくださいませ。そすれば、お望みの品を販売いたしましょう。」

と、リーンウルネに向かって挨拶をするのだった。

 ニドリアは、リーンウルネに直に会うのはこれが初めてであった。直ということは、間接的にもリーンウルネを見たことがあるということだ。

 実際、ニドリアは、かつてのレグニエド王の誕生パーティーの日に、リースの市場に来て、土下座のようなことをして、リースを良くすることができなかったことを謝罪しに来ているリーンウルネを見たことあるのだ。それも何度も、である。その時は、リーンウルネにとって、ニドリアは群衆の中の誰か名前のわからない人の一人にすぎない。

 だけど―…。

 「間接的には知っておるぞ。名前も知っておる。重要な商会の子どもであり、かつ、ラーンドル商会の前トップの男が無理矢理に襲って、その被害にあった女性から生まれた子どもじゃ。生まれた時から辛かろう。アングリアなんかよりも。それでも、人として立派に育ったものじゃ。商人としての才能も経験もある。立派に自らの商会を発展させるのじゃよ。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネは知っている。ニドリアの存在のことも―…。直接話しかけたことはないが、それでも、ニドリアの爺さんが経営している商会はリースでも有名であり、ラーンドル商会に次いで有力な商会なのである。さらに、その商会は有力な人材も多く、将来的にはラーンドル商会と肩を並べ、リースの発展により多くの面で寄与することができると思っている。

 そして、ランドリアの娘の事件について知っている。そう、メルギエンダの友人とはランドリアのことである。

 その娘が襲われた原因は、リーンウルネに直接的にはないにしても、ラーンドル一派を倒せなかったことがそのような結果を招いたのは事実なのだ。そして、被害者は被害者のままにしておくことはできないし、その結果、産まれた子どもには罪はなく、アングリアの父親のような人物になって欲しくないし、自らの出生を知って、世界に対して絶望して欲しくない。世界は絶望と同時に希望があるのだから―…。不幸があり、同時に幸福があるように―…。

 結果として、ニドリアは立派に育っている。さらに、商人として、人として必要な経験を積むことができたのだ。その裏にランドリアらの教えや経験を積むための機会が与えられたのも事実である。環境と同時に、自らの意思というものが良い方向に組み合わさった結果という他にない。

 リーンウルネは、そのような結果となったニドリアに良かったという気持ちと同時に、これからのラーンドル商会の発展の可能性を感じていたのだ。

 「感謝いたします。リーンウルネ様。」

と、ニドリアは頭を下げるのだった。

 「時間も惜しいのでの~う。先を行かせてもらう。それに、ニドリア。宣言すると良い。」

と、リーンウルネは言いながら、今度こそ、貴賓席から離れていくのであった。

 「ニドリア様。では、あなたが今やるべきことはわかっておられますので、私から言うべきことは一つだけでございます。恥もかいてでも、頭を下げるべき時に下げられない人は、決して人の上に立つべきではない。トップになれば、余計にそのことを守らねばならないのです。」

と、メルギエンダが言う。

 トップだからこそ偉ぶっていれば良いというわけではない。偉く見せることが重要なこともある。偉く見せることで権威というものを確立させることができる。

 だけど、それだけに囚われ、傲慢になってはいけない。

 大事なのは、その場その場に応じて、どういう役割を演じないといけないかということである。そのためには、勉学も必要であるし、駆け引きも重要であるし、相手の話を聞いたり、自らの意見を確立していたりということなど様々である。

 すべてを完璧にすることはできないし、不可能でしかない。だからこそ、周りの支えや自らを鍛えるということをしていって、少しでも完璧に近づく必要があるのだ。それこそ、自信というものに繋がる。

 そして、自らを客観視し、自らのミスに対して、起こってしまった問題にはちゃんと周りに謝罪する。最初は批判されるけど、その誤りに対して謝ることが後々気づく人に気づかれ、信頼回復に重要なことになる。ただし、ちゃんとミスを修正して、誠実にミスを犯さないことを実行する必要ということを満たさないといけないのであるが―…。

 そして、ニドリアは、

 「ええ、わかっています。メルギエンダ。だから、私はこの先代と先々代が犯して愚行に対してケリをつけるためのきっかけをおこなってきます。」

と、言って、観客の見えるような場所へと向かうのだった。


第132話-12 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第132話が予想以上にさらに長くなっています。アングリアの野望が終わったので、一回で、第132話が終わると思っていましたら、なぜか地文が長くなるし、説教じみたことになっていて、上手くスパッと進んでいません。だけど、私としては、書き尽くせるかどうかはわかりませんが、しっかりと内容を良くできているのではないかと、個人的には思っていますが―…。

そして、『水晶』は想定よりもだいぶ、進行ペースが遅くなったり、文章量が増加していますが、2022年7月になるまでには、第133話の内容には入ると思います。次の大きな戦いまでの伏線を含めて―…。

とにかく、2022年までにリースの章を終わらせるように頑張ります。2021年に宣言しておいて、できなかったので―…。二度目の正直になるだろうか?

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年6月16日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月17日頃を予定しています。

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