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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
310/748

第132話-10 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。

現在(2022年6月10日現在)、第6部の完結により投稿を休み、加筆・修正の方をおこなっています。再開は、2022年6月下旬で第7部を開始する予定です。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上です。

前回までの『水晶』のあらすじは、アングリアに絶望が訪れるのだった。そして、アングリアの計画は破綻していき、自らの破滅へと向かっていくのだった。

 少し時間を戻す。

 アングリアが四角いリングに落下してから数秒後のことだった。

 アングリアが落下したことは、誰もが気づくことであった。

 視線は貴賓席と四角いリングのいるセルティーのどちらかに向かっているからだ。

 その中で、四角いリングの中にいるギーランは、

 (つまり、そういうことか。)

と、心の中で、イルーナのやろうとしていることを理解し、アングリアのいる場所へと向かうのだった。

 ギーランの役目は、アングリアの拘束というよりも、アングリアに絶望の威圧をかけることであり、アングリアを拘束するのは―…。

 (俺の見た目は、三白眼のような人が一般的に周囲から抱かれやすい怖さと無縁のものなんだが…な。まあ、そんなことよりも、役割を果たすとするか。というか、こいつさっきの落下で喋れなくなっているのじゃないのか。)

と、ギーランは続けて心の中で言う。

 ギーランとしては、アングリアの自供ほど、どうアングリアを扱えば良いのかということを示す最高の指標は存在しない。なぜなら、アングリアは、さっきまでの一連の行動や言動から、言葉の中にある嘘というものと本音というものがあまりにもわかりやすいのだ。

 嘘を付く時には、相手に対して下手に出るような感じで、本音の時は、自分が相手よりも上であり、傲慢だと周囲に抱かせるようなことを言ってくるのだ。

 そういう意味では、アングリアの言動はギーランにとってはわかりやすく、かつ、最高の指標にもなるということだ。

 そして、さらにギーランは続ける。

 (喋られなくなっていることも考えると、圧をかけた方がいいか。)

と。

 そして、ギーランは、腰に差していた剣を抜き、アングリアから見て右側に剣を突き刺すのだった。アングリアを刺し殺すという意図ではなく、圧をかけるということによって―…。

 ここで、留めというか拘束するのは、自らの娘であるのだから―…。

 ギーランは警告、そして、アングリアの野望の終わりを告げる。

 「アングリア(お前)の野望は終わりだ。」

と、ギーランは言う。

 そして、時は今に戻る。


 アングリアは絶望している。

 それは、終わりのないことだ。

 だけど、抵抗しようとする。自らの終わりを認められずに―…。

 「お…………れ………………は………………………。」

と、アングリアは言いかける。

 言葉としては、「俺はラーンドル商会のトップにして、ラーンドル派のトップであり、リースにとって最も貢献している人間だ。こんな俺に対して、侮辱ある態度が許されるわけがない。お前らはいつか、俺の前で俺様に対してしたことを後悔させてやる」とでも言おうとしたのだ。

 だけど、それを言う事ができるはずもない。

 理由は二つある。アングリアは、さっきのイルーナに投げられ、宙を舞い、かつ、瑠璃の持っている赤の水晶によって空間移動させられたうえに、四角いリングの上に落下しており、空間移動の出口が展開されたのが四角いリングの上から高さ数十センチメートルのところであった。そこから、落下し、背筋および後頭部に四角いリングに落下した時に強い衝撃を受けている以上、すぐに言葉を話すのは不可能であった。さっきのような、一文字を時間をかけて話すことは可能であるが―…。それを話すということに分類するのは難しいかもしれないことだが―…。

 もう一つは、ギーランによる剣をアングリアの顔の右側のすぐ近くに突き刺したということであり、かつ、その突き刺しは、アングリアの頭部を指したものではない。もし、アングリアの頭部を刺したことになれば、アングリアはこの世に戻ることはできなくなるのだから―…。二度と―…。

 そう、アングリアは完全にギーランという存在にビビッてしまい、言葉を上手く発することができなくなっていたのだ。それを無理矢理に発しているような感じなのだ。

 だけど、アングリアにもう言葉を発することは認められないわけではないが、自らが悪くないと言う言葉を発しても誰も味方はしないだろう。

 そう、アングリアは―…。

 (なっ!! 黒いのは!!! って、俺を拘束するな!!!!)

と、心の中でアングリアは叫ぶし、抵抗しながら、誰かに助けを求める。

 だけど、アングリアの助けてという動作に反応する者は誰もいなかった。

 それはそうだろう。アングリアを今、助けたとして、一体、何か自分達にとって良い事はあるのだろうか。あるわけがないと、リースの競技場にいる誰もが理解していることであった。

 別に、このようなことで、全員がアングリアを助けないと選択するわけではない。だが、助けたとして、良いことがないだけでなく、返って、アングリアからは助けた奴が文句を言われるということもある。折角、助けたのに、こんなことを言われれば、誰だって嫌な気分になるのは当たり前のことだ。

 そういうことがわかっているから、助けないし、リースの人々にとっては、結構酷い諸悪の根源のような感じであるからなおさらだ。

 自ら蒔いた負の種は、自らに向かって返ってきた。ただそれだけだ。

 何を思う必要があろうか。

 そして、アングリアは、黒い闇の物体によって手足を拘束されるのだった。最後は、気絶するほどのダメージを与えられるのだった。

 これをしているのが―…。

 (やることが酷いな、ミラン。)

と、ギーランは、アングリアを気絶させたのがミランであることを心の中で言う。

 もし、この言葉を発してしまえば、ギーランがアングリアのような目にあうのではないか、と思ってしまったからだ。

 現に、ミランに向かって言ったとしても、ミランが黒い闇の物体でギーランを気絶するようなことはしてくることはない。もしも、ミランを怒らせれば、直接素手によって攻撃を加えてくることには変わりないが―…。

 一方で、中央の舞台にいるミランは、

 (お母さんは、無茶しすぎよ。折角、瑠璃に会えたからと言って、というか、絶対に、張り切っているのだと思う。家族共同作業だと思って―…。)

と、心の中で思うのだった。

 ミランとしては、自らの母親であるイルーナの行動ですぐに、何をしようとしているのか理解することができた。特に、アングリアを宙へ舞わせた時点で―…。

 そこから、瑠璃が赤の水晶を使い、リースの競技場の中にいる観客の誰もがアングリアの野望が終わり、これからリースはラーンドル一派の支配から解放され、リーンウルネの時代が来るのだと―…。そこにランシュがいるのかどうかは別だとしても―…。

 そして、イルーナは、そのことを考えて行動していたのを理解したミランは、自分がアングリアを拘束する役目であることを認識し、行動するのだった。気絶を含めて―…。

 ミランの天成獣の属性は闇であり、相手を拘束したりもできるし、汎用性や応用がかなり効くものであり、天成獣の宿っている武器が柄だけであり、そこに剣の形をさせたり、自由に頭の中で武器を創造して、闇を用いてその形にすることもできる。つまり、拘束用の武器にすることも可能であるということだ。

 現に、ミランは、柄の部分から四つのほどの伸びるような感じにして、伸縮可能な武器にしているのだ。殺傷力よりも、相手を拘束することに長けた―…。

 ミランは、

 (後は、リースの騎士団が何とかしてくれるでしょう。)

と、心の中で思うのだった。


 貴賓室。

 そこでは、イルーナが瑠璃やギーラン、ミランの行動を見ていた。

 (うむ、私の家族は十分に最高の結果をもたらしてくれる。家族共同の初の作業は成功ってことね。)

と、イルーナは満足するのだった。

 えっへん、腕を組んで満足そうな表情をして―…。

 そして、アングリアに向けては、

 (家族に甘やかされた―…。違うね、アングリアという存在は―…。両親もそうだけど、自らの家や周りの存在がアングリアに意味のない慢心を抱かせた。こればかりは、人との巡り合わせ、アングリア自身の責任もあるが、それ以外の責任もある。後は―…、これ以上はよそう。意味のないことなのだから―…。)

と、イルーナは、心の中で続けて言う。

 イルーナは、アングリアがどうして、このように傲慢で歪んでしまったのかを考えてみたりもした。だけど、それをいくら考えたとしても、意味のないことだ。人は変われる可能性をもった柔軟性を持つこともできる生物であるが、同時に、それは自らの選択によって生きていることができる時間の中で起きれば当てはまることでしかない。

 そして、アングリアはそれに当てはまることはないだろうとイルーナは頭の中でよぎってしまい、考えることをやめるのだった。結局は、他者の言葉と同時に、自身の気持ちが合致しないと変わることはできないのだから―…。持続性も重要な要素を占めることがあり―…。

 「ふむ、アングリアを捕らえるのに協力してくれて感謝する。名前は聞いたことがないので、名前は?」

と、リーンウルネがイルーナのいる方へと近づき尋ねるのだった。

 リーンウルネとイルーナに今まで、接点があったわけではないので、リーンウルネがイルーナの名前を知らなくても不思議ではないし、知っていたのなら、何らかの情報を知っていることになる。イルーナに関しての―…。

 だけど、そのようなことはこの場では決してなかった。

 「名前はイルーナ。ローの近くにいた男の妻かな。そして、あそこにいる赤髪の少女で、今回のランシュを倒した瑠璃の母親というべきかな。まあ、十数年、瑠璃はどこかの組織に連れ去られていて、会えずじまいだったけど、前の回戦でやっと会えたから―…。」

と、イルーナは言う。

 イルーナは、リーンウルネという存在を知っている。この地域に住んでいる人が知っている情報ぐらいには―…。そう、リース王国のレグニエド王の王妃であり、城の中で大人しくしていることが重要な王妃とは全く異なっており、良く、王国の中を駆け巡り、諸問題を解決しているという型破りな人であり、二年前のレグニエド王暗殺事件以後、教会で隠棲しているという人だということを―…。

 そして、イルーナは、自分の存在を伝えるために、瑠璃の母親であることを伝えるのであるが、瑠璃とは生まれた日に別の世界を探す実験をしていた研究所に瑠璃が連れ去られて以来会う事ができず、やっと、第九回戦の終わりに瑠璃に再会することができたのだ。

 瑠璃が連れ去られて以後、イルーナはミランの前では強気に振舞っていたけど、夜な夜な心配で、心の中で何度も、何度も涙を流していたし、時には、本当に涙を流していたほどだ。夫であるギーランは、ローとともに瑠璃の手がかりを探してくれていた。そのせいで、ギーランもあまり家に帰ってくることはなかった。そのせいで、さらに、涙を流すことと、家族一緒にいられないことに寂しさを感じるのであった。

 それをミランに見られてしまい、ミランの瑠璃に対する復讐を生んでしまうことになるのであるが―…。

 「そうか―…。会えないからこそ愛しいと思えるのは当たり前のことかもしれぬの。私の方も、セルティーが成長していくと接触を禁じられたりしたものじゃ。ラーンドル一派どもがセルティーを立派な王女にするためという理由で―…。実際は、セルティーをラーンドル一派にとって都合の良い傀儡人形にするためのだったのだろう。現に、セルティーは、城の外に出されることはなかった。私の夫と同じように―…。自分達の意見だけを聞かせ続ければ、他の意見を知る機会もなく、傀儡人形というものにできるのじゃからの~う。本当に、愚かとしか言いようがない。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネにとって、ラーンドル一派のセルティーを城の外に出さずに、自分達の意見ばかりを聞かせ続け、ラーンドル一派の考えと同じにすることは合理的だと思っていた。そう、人は適応性の高いという性質をもっていて、環境に適応していくことで生き残っている一面もあるのだから―…。それならば、その性質を利用して、周囲の環境を自分達の都合の良い状態にしてしまえば、自然とセルティーを傀儡にすることは可能だし、純粋にそのような考えに染まりかけていたのだ。

 だけど、イレギュラーとしては、ランシュの存在と瑠璃の存在である。ランシュは、レグニエドを暗殺するということによって、セルティーに復讐心を掻き立てることで、強くなろうとする気持ちと同時に、ランシュへの復讐という目的を与えた。

 これは、ラーンドル一派にとっては、都合の良いことであるように思えるが、ランシュを倒すには確実に天成獣の宿っている武器を扱い、かつ、実力をあげていく必要があり、そのために、個人の武力というものが強化されることになった。それは、ラーンドル一派を一掃することが武力できるようにすることを可能にした。天成獣の宿っている武器と同時に、少しだけ頭を使えば簡単なことである。

 そして、瑠璃は、たまたまであるが、セルティーの気持ちを知る機会、ランシュへの復讐心を持っていることを聞いて、ランシュがどうしてレグニエドを暗殺しようとしたのか、その背景は何なんのかを考える機会を与えた。

 その二つの存在によってセルティーは、城の中でラーンドル一派の意見だけしかないという状態から少し抜け出すことができ、リーンウルネからランシュの復讐の動機としてのクルバト町の虐殺を聞くことになったことが、セルティーの自らの多様な意見を吸収するための動機となったのだ。

 それは、ラーンドル一派にとっての誤算でしかなく、アングリアにとっての計画の失敗の一つの原因となったのだ。

 「そうね。閉じ込めればきっと自分の意見通りにすることはできても、それが本人とっても、閉じ込めた奴らにとっても本当の意味での最善の選択になることはない。今回の件で、良く分かるわぁ~、そして、このようにして、滅んでいくしかない。」

と、イルーナは言う。

 イルーナは、ラーンドル一派およびそのトップのアングリアの終わりを見ていると、リーンウルネがさっき言ったセルティーを傀儡にして、自分達にとって都合の良いようにしようとするのは、余りにも身勝手で、双方にとっても得にならないことを示しているのではないかさえ思ってしまうのだ。

 「そうじゃの~う。そして、儂は、さらにいろいろと話さないといけないことがあるから、何人かと話して四角いリング(ぶたい)の方に向かって行くことにするかの~う。」

と、リーンウルネは言いながら、今度はメルギエンダの方へと向かって行くのだった。

 一方で、イルーナは、貴賓席から飛んで、四角いリングのセルティーのいる場所へと向かうのだった。その動きはまるで、アクロバットと思わせるほどに身軽な身のこなしであった。

 観客の中にいる子どもが、自分でもできるのではないかと思うぐらいに思わせ、その両親に注意されるほどであった。


第132話-11 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『水晶』の目標PV数に関しては、最終回までに100億というアホなことを目標としていますが、何億回、何千万回という投稿が現時点で必要なことだと認識しています。それでも、それぐらいの目標が達成されなくても、なるべく最終回までは書いていきたいと思っています。構想というか頭の中で考え始めたのが十数年前とかそんな感じなので―…。前にも100億を目標にするということは書いたような気がします。

『水晶』のネームの方は第一編の最終章あたりであり、いろんな意味で、第一編の総まとめな状態で、どれぐらいになるかはわかりませんが―…。

新作に関しては、何も取り組めていない状態です。2022年6月10日現在で―…。ある程度、方向というか初期の世界観というものやタイトルに関しては、決まっているのですが―…。『ウィザーズ コンダクター』のプロットが第14部に突入していく状態となり、最後の神との戦いあたりに入ってきたので、早くければ、7月ぐらいから、より細かく、結末も含めて新作のことを考えていけるかもしれないと思います。当初の予定よりだいぶ、遅くなっていますが―…。『水晶』を含めて―…。

最後に、次回の投稿分に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年6月11日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月12日頃を予定しています。

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