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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第20話 ルーゼル=ロッヘ(3)

前回までのあらすじは、トリグゲラはゼルゲルに命じて、ゼルゲルがクローナによって倒された飲食店へと再度行くようにさせた。一方で、トリグゲラは、フードの被った一人の人物と出会い、瑠璃、李章、礼奈がどこにいるのかを探させていた。

 ゼルゲルがクローナによって倒された場所である飲食店は、今日も今日とて、客で盛り上がっていた。

 店主も今日の仕事に今まで以上の喜びを感じていた。ルーゼル=ロッヘでお店を構えた日と同じかそれ以上のうれしい気持ちを。

 そして、客は店の飲み物や食事メニューを注文していき、食事を楽しんでいた。

 しかし、この店が建っている建物での接客は、今日で終わりとなってしまった。

 そう、ゼルゲルが店に入ってきたのである。

 客の雰囲気は恐怖へと変わり、店主は冷や汗をかき、震えが止まらなかった。それでも、火を使っての調理を止めるための火を消すぐらいのことはできた。

 店主は覚えている。ゼルゲルがここに来た理由を―。

 それは、ゼルゲルがクローナに倒されたので、その腹いせにこの店を壊すために来たのだ。ルーゼル=ロッヘでゼルゲルに逆らうことがどんなことを意味するのかという見せしめのために―…。

 店主のいるカウンターへと向かい、ゼルゲルは右手をカウンターにつけて、ドーンと音をたてながら、威圧を加える。

 店主を怯えさせ、ゼルゲルに二度と逆らえなくするために―…。

 右手をカウンターにつけたままの体勢で、

 「いねぇ~みて~だな。クローナ(あの小娘)は。」

と、ニヤリとさせながらゼルゲルは言う。ゼルゲルにとってはとてもラッキーであった。クローナがこの飲食店にいなかったのだ。もし、クローナがいたならば、再度やられていた可能性が高いからだ。

 店主はすでに怯えきっていたため、まとな思考がはたらかなかった。

 はたらくはずもなかった。ゼルゲルの恐怖は一日二日で植え付けられたものではなく、もうすでに何年にわたって続いていたことによる結果なのであった。恐怖の長さと、その被害が見た数は店主に今日二度目の絶望を与えた。今度は、希望のない絶望であった。

 「じゃあ、この店は、今日、俺様によって建物ごとぶっ壊されることが決定した。」

と、ゼルゲルはこの飲食店の店主につげる。この店を壊すことで、ゼルゲルは、クローナに敗れたという事実を少しでも憂さ晴らししようとした。

 一方で、店主は、この世の絶望にすでに満ちていた。何もすることができない。自然災害のようなものが今、自らの店と自身に差し迫っていたのだ。

 しかし、少しでも自らの店を守ろうとして、ゼルゲルに、

 「そ…それだけは、・・・どうか勘弁してください。この店が潰れたら、ゼルゲル様。あなた自身が取り立てている借金の返済もできなくなります。そうすれば、ゼルゲル様。あなたのほうが困ることになります。」

と、ゼルゲルにとって店主の店を壊すのがデメリットであるとして店主は説得する。

 ゼルゲルは、

 「残念だったなぁ~。兄者からは壊してもかまわないといわれているんだ。だから、問答無用だ。」

と、希望はすでに消失し、絶望という確定的未来が来ることのみであった。


 【第20話 ルーゼル=ロッヘ(3)】


 ここはルーゼル=ロッヘの通り。

 夜の町を大勢の人々が歩いていた。

 通りには、多くの屋台や店が建ち並んでいた。そう、明るい光が夜を照らし、光がこの町の活気を表していた。

 その中を歩く四人の人物がいた。それは、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドであった。

 四人は、夕食を食べるために歩きながらある飲食店を探していた。それは、アンバイドがルーゼル=ロッヘ へ訪れたときに、よく食べに行く店であった。そこは、瑠璃、李章、礼奈のような子どもが飲むことができるジュースの類があって、飲み物の注文ができないということで困ることはないからだ。

 そして、なぜ、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドが外で夕食をとるようにしたのか。ルーゼル=ロッヘという町は港町であることから、人が集まる場所である。だから、町にあちこちに飲食店が建ち並んでおり、大商人や貴族などを満足させるための料理店だけでなく、一般庶民から交易で訪れた一般の商人がここに来たら行ってみたいと思える飲食店もあるのだ。

 アンバイドは後者のほうに入る料理店へと瑠璃、李章、礼奈を誘ったのだ。目的は親睦を図るためであった。そうすることで、戦闘になったとしても、味方がどう動くのかがわかることと、どうして、ベルグを探しているのかという真の意味を瑠璃、李章、礼奈から少しでも正確な答えを得るために―…。

 「アンバイドさん。食事に誘っていただきありがとうございます。」

と、礼奈がアンバイドに食事に誘ってもらったことに対する感謝を言う。

 「あ~あ、気にすることはない。それに、瑠璃、李章、礼奈(お前ら)との親睦を深めておきたかったからな。これから一緒に旅をしていくのだし。それに、せっかくのルーゼル=ロッヘだ、俺の知っているいい店で食事して、英気を養っておくにかぎる。これからの旅に備えてな。」

と、アンバイドは言う。以上での言った、本当の理由を瑠璃、李章、礼奈には言わずに…。

 しばらくして、 

 「おっと、そろそろだ。」

と、アンバイドは言って、目的の飲食店を見つける。

 「あの店だ。」

と、アンバイドが目的の場所である飲食店を指でさすと、ドーンという音をたてて、飲食店は壊れた。

 その衝撃映像に瑠璃、李章、礼奈は、そこに視線を向け、ただ茫然とするしかなかった。

 そして、その音を聞いたアンバイドもただ呆けるしかなかった。

 アンバイドの心の中では、

 (えっ。)

と、という言葉が頭に横切って、思考停止を数十秒してしまったのである。


 一方で、こっちも飲食店を探していたクローナとロー。ルーゼル=ロッヘの瑠璃、礼奈、李章、アンバイドが歩いているのとは別の通りを歩いている。

 「ふむ、どこにするかのう~。ここは少し奮発して、貴族様御用達のお店でもするかのう~。」

と、ローは言う。飲食店による外食が久々であったため、楽しくて仕方なく、高いお店でもしようと思っていた。結局は、クローナのいるところで、見栄をはりたかっただけなのだ。

 「ダメですよ。ローさん。旅の途中なんです。お金は大事に使ってください。ここは安くて、おいしいお店にしてください。」

と、クローナが口調を強くして言う。旅をしているので、これから大変なことがあって、お金を使わないといけないことがあるかもしれないと考えて、今は節約しようとしていた。

 「けち~じゃのう~。それじゃ大金持ちになれんぞう。」

と、ローは拗ねながらクローナに言う。

 「はいはい。」

と、クローナはローの言葉を受け流す。

 そして、クローナとローは、ルーゼル=ロッヘの町の中央にある噴水広場に辿り着く。

 「しかし、なぜか、あの通りはお店がすべて閉まっていましたねぇ~。」

と、クローナが不思議そうに言う。

 「そうじゃのう~。ルーゼル=ロッヘでは、こんなことはまずない。何か目を付けられることをしたのかのう~。」

と、ローは言う。そのとき、ローは、何かこのルーゼル=ロッヘの町の裏側に繋がる勢力にでも目を付けられることをどこかでしたのではないかと思った。それも知らず知らずのうちに…。ロー自身そのことに関して、心当たりはなかった。ローは一日中、情報集めと散策をしていただけだから。

 一方で、クローナは、すでにゼルゲルを倒したが、それは些細な事に過ぎなかったので完全に忘れてしまっていた。だから、特に目を付けられることはしていないとクローナ自身、そう思っていた。

 そして、ローとクローナは、う~んと考え込んでしまっていた。

 ローとクローナの結論は、考えて仕方ないので、別の通りの飲食店でも探すこととなった。

 「別の通りでも行ってみるかのう~。」

と、ローが言う。

 「うん、そうですね。」

と、クローナは返事をする。

 ローとクローナが歩き始めようとした瞬間、二人は気配を感じた。敵意の籠った気配を―…。

 ゆえに、二人は気配のする後ろを向く。

 そこには、一人のずる賢そうな男が立っていった。そう、トリグゲラである。

 「やっと、見つけましたよ。はじめまして。」

と、トリグゲラは落ち着きのある紳士のように礼儀正しい動作をするのでかと思わせるように言った。

 「あなたは一体何者?」

と、クローナは言う。クローナはトリグゲラがこの敵意の気配の正体ではないかと思っていたからである。

 このクローナの質問に対してトリグゲラは、

 「そうでしたね。申し訳ございません。私の名前は、トリグゲラと申します。まあ、ルーゼル=ロッヘ(ここ)では貸金業でもやっているものです。」

と、丁寧な口調で言う。しかし、心の奥底では、ゼルゲルの敵を今でもとろうしたい気持ちでいっぱいであった。

 「で、貸金業を営んでいるトリグゲラ(あなた)が私たちに一体、何の用ですか?」

と、さらにクローナは質問を重ねる。クローナ自身、この人物からお金を借りたことなど一度としてない。ローにいたっても、同様だ。

 「用ですか? 決まっているではないですか。今日、私の可愛いお気に入りの部下、ゼルゲルが取り立ての最中に何者かによって倒され、ルーゼル=ロッヘの郊外へと飛ばされたのですよ。」

と、トリグゲラはなぜ自分がここにいるのかという理由を話し始める。

 クローナは、ゼルゲルという単語を聞き、思い出す。クローナは、実際に、ゼルゲルという人物を倒したから。それは、ゼルゲルに脅されていたのを見て、たまたま脅されていた人を助けたにすぎないから。

 「聞けば―……、そこにいるようなクローナ(お嬢さん)のような人物だったと聞きます。さらに、ゼルゲルが倒されたのを私の部下に見させたところ、クローナ(お嬢さん)だとはっきりと言ってくれましたよ。ねぇ~、ここまでくると、記憶にあるはずですよねぇ~。」

と、トリグゲラは自らの言っていることが、今日あった事実であり、クローナがゼルゲルを倒した人物であることの証拠であった。

 ローは、そのことに少し驚いていた。ローも知っている。大きな都市や港町などには、その裏を牛耳るような組織や社会があり、彼らを敵に回してしまうと、都市や港町を離れたとしてもその組織や社会の刺客の地の果てまで追い、目的を殺すまでそれが続く。ゆえに、ロー自身も、裏を牛耳る組織や社会を黙らせることは可能であるが、極力は避けたかった。特に、有力な情報を手に入れるのには、うってつけの所であるから―…。

 だから、

 「クローナ…。お主……、裏社会の人間と騒動を起こしてしまったのか?」

と、ローは呆れるように尋ねる。

 「何か、脅されている人がいるので、助けただけです。」

と、クローナはそう答える。

 ローは少し後悔していた。裏を牛耳る組織や社会とは、関わるな、と教えるべきであった。特に、脅迫や暴力の場面では、決して脅されている側や暴力を受けている側を助けてはならない。助ければ今度は、その対象となってしまうから。

 ローには、今はそういう人たちを助けている余裕などなかった。ベルグという人物の野望など、この異世界(せかい)に関わる一大事がすでに起こりつつ、もしくは起こってき始めているからである。

 (クローナ~…、お主…なんてことしてくるんじゃ。)

と、ローは心の中で思っていた。

 「そうですか。助けただけですか。頭にきます。正義の味方のようなことをやるために、私の部下を倒すとは、クローナ(お前)を痛めつけるだけでは気がすまなくなりました。クローナ(お前)は殺して、その死体を町のこの場所に晒す。」

と、トリグゲラが怒りを爆発させる。言葉を少しずつ乱暴になりながら―…。そして、トリグゲラはたとえ子どもであったとしても、報復するときは容赦をすることはしない。自らの権威を示し続けるために―…。

 トリグゲラは銃をポケットからだし、クローナに向けて構える。

 そして、すぐに銃をクローナに向けて放つ。パァン、と。

 銃から出てきた弾丸はクローナ目掛けて、ただ真っすぐに突き進む。人が決してできないような速さで―…。

 クローナはこのまま何もしなければ、胸を貫かれ、出血多量で亡くなることになるだろう。

 しかし、それは起こるはずもない未来の出来事であった。

 「白の水晶」

と、クローナが静かに唱える。そうすると、クローナのいる付近には、防御用テント(バリア)が展開される。その防御用テント(バリア)は、透明で、若干白みがかっていた。形は、現実世界におけるゲルような移動式テントのような形をしている。

 防御用テント(バリア)に弾丸が当たるが、弾丸は弾かれ、威力をなくし、地面にぽとっと落ちて、動きを止めた。

 その様子を見た、トリグゲラはあることを確信する。

 (弾丸がバリアで効かない。こうなってくると、俺の天成獣の武器の力を借りることにするか。)

と。そして、トリグゲラは、自らの両方の足に武器を装着する。その武器は刀の刃のような形状をしている武器である。

 武器を装着し終えたトリグゲラは、クローナに向かって移動しようとする。

 しかし、それはできなかった。すでに、クローナはトリグゲラの後ろをとっており、攻撃態勢に移行し終えていたから。

 クローナは自らの武器を振り落とし、風の攻撃をする。


 一方、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドの側では―…。

 アンバイドが瑠璃たちとともに夕食をしようと誘った飲食店が、到着少し前、店に差し掛かろうするあたりで、ドンと音がして、建物が崩壊したのである。

 アンバイドは呆けるしかなく、思考停止を数十秒することになってしまった。

 思考を巡らせるになると、アンバイドはただただ怒りが湧いてきていた。一方で、冷静さを兼ね備えていて、どうして、飲食店が破壊されたのかの原因を探ろうとした。

 そのとき、崩壊した建物から一人の人が、崩壊した建物の瓦礫の中から、それを跳ね除けて現れる。

 「お前ら、よく聴け!!! 俺らに逆らい反逆しようとした奴らは、こうなると覚えておけ。そして、二度と逆らうんじゃねぇ。お前らルーゼル=ロッヘは、俺らの言うことだけを聞いて大人しく怯えているがいい!!!!」

と、怒りを露わにさせながらゼルゲルが言う。ゼルゲルは飲食店を壊すことには成功したが、それだけで怒りは治まるはずがなかった。ゼルゲルを倒したクローナをトリグゲラによって痛めつけられた傷を見るまでは―…。

 ゼルゲルという人物を見たアンバイドは、瑠璃たちに言う。

 「あいつとは関わるな。仕入れた情報によると、あいつに目を付けられるとこのルーゼル=ロッヘを出ても追われる続けることになる。朝に俺が言った類の奴だ。」

と、アンバイドはゼルゲルという人物がどういうのかを理解していた。情報屋でルーゼル=ロッヘの情報を手に入れたときに、社会の裏にいる危険な勢力について聞かされたときに、ゼルゲルとトリグゲラの話しがでてきたからだ。ゆえに、喋りや特徴が一致することから、瑠璃、李章、礼奈に今朝話したを絡めて警告した。

 それを、李章は理解した。今、下手に手を出せば、今度は自分達に災厄のようなものが降りかかってくると。一方で、瑠璃も気持ちを抑えていた。瓦礫の中にいる人を助けたい気持ちであったが、今自分たちは石化した人たちを元に戻すためにベルグという人を探しているのだから。余計な事に関わっている時間もなかった。

 アンバイドは、怒りを抑えて、冷静にゼルゲルとは関わらないように、衆人の一人とかすようにした。

 このとき、礼奈は別の考えを抱いていた。

 (うまくいけば、バレずに何とかなるかもしれない。)

と。


 【第20話 Fin】


次回、ゼルゲルの破壊を阻止するのは誰か。そして、フードを被った一人の人物が動きだす。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


予定だと第27話あたりでルーゼル=ロッヘのところは終わると思います。あくまでも予定です。変更される可能性があります。

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