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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
309/748

第132話-9 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿しています。

(今現在は、第6部完結により、修正および加筆中であり、投稿は休んでいます。再開は、2022年6月下旬頃となっています。)

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、アングリアは窮地に追い込まれるのだった。そして、アングリアのリースの実権を再掌握するという野望は、どうなるのか?

 アングリアは身震いを感じてしまった。

 しない方がおかしいと思えるほどだ。

 後ろに、傭兵隊長であり、傭兵の中でも実力者とされるアールドがいるのだ。

 「リーンウルネ姉さんを人質にとるとはなぁ~。良い度胸ではあるが、残念ながら意味のないことだ。さらに、リーンウルネ姉さんにナイフを向けて、殺すことはできないぜ。だから、リーンウルネ姉さんから離れて、大人しく倒されるのだな。」

と、アールドは言うと、アングリアの足下を土を覆うのだった。

 アングリアは、足元の方に何か重く、冷たい感触がしたので、すぐに視線を向けて、自身の足が土で覆われようとしていることに気づくのだった。

 そう、アールドの天成獣の属性は地であり、土の操作性にはかなり長けていた。傭兵の中でも、斥候や防御および足止めなどのフィールドの変化を組み合わせ、味方を有利にし、相手の優勢を崩すことで勝利に導いてきたのだ。

 リーンウルネもその方面の力を評価しており、かつ、アングリアとの対峙は、数対数になることが想定されたので、アールドのような存在が上手く立ち回る事ができるし、相手の初撃を無効にしたり、同様に動きを止めたりすることができるのが必要であったからだ。

 結果としては、数対数になることはなかったので、その意味でのリーンウルネの想定は外れることになったが、アールドが活躍したので、アールドを選んだのは正解であったということになる。

 アールドも自らがどういう役割であるのかをしっかりと理解できているし、状況判断力はしっかりとしている。そうでなければ、傭兵の中で、生き残ることはできないし、隊長など務めるのはかなり難しいことでしかない。

 (チッ!! 動きを封じられた!!!)

と、アングリアは心の中で言いながら、実際に舌打ちする。

 アングリアにとっては、折角の優位が台無しにされたのだと思った。それでも、何とかしようと藻掻き始める。

 (クソッ!! クソッ!!! クソッ!!!!)

と、アングリアは焦り始める。

 心の中で言葉を発するが、表情は完全に見える者がいるのであれば、焦っていることがバレバレなぐらいに―…。

 そして、アングリアの焦りというものをリーンウルネやアールドはすぐに気づくのだった。

 ゆえに、リーンウルネは、

 (さて、ナイフで切りつけようとしても、儂の服を含め全身に防御を覆っている以上、刺し殺すのは不可能なのじゃよ。では、脱出…っと。)

と、心の中で言いながら、力づくで脱出するのだった。

 そう、アングリアが右手に持っているナイフに生身では切られること関係なく、しゃがんで脱出し、アングリアのナイフを振り回せる範囲から脱出する。

 (アールドのおかげで、アングリアに隙というものが生じた。そして、すでに、アングリアの足下にある土の固さも関係なく吹っ飛ばしそうな感じの人が登ってくるのじゃろう。)

と、リーンウルネは心の中で思う。

 リーンウルネとしては、こういう予感がしていたわけではない。が、実力者がこのリースの競技場に多くいたということには気づいている。魔術師ローとその付き人であるギーラン、他には傭兵の中でかなりの実力の持ち主であるアンバイド、そしてイルーナという存在にもかなりの実力があると感じていた。

 別に戦闘経験がリーンウルネに多くあるわけではない。むしろ、少ない方でしかない。

 それに、リーンウルネの持っている武器に宿っている天成獣は、攻撃することは全く駄目であるが、その一方で、防御することに優れて過ぎている。そのことが戦闘経験の少なさの要因にもなっていたりする。

 それでも、相手の強さを見抜けないというわけではなく、政治の闘争の中で、人を見抜く力を身に付けていき、相手の戦闘力を見るということにも十分に上手く応用できているのだ。経験というものをある程度、多く面で適用できるように抽象化した上で、当て嵌めているのだ。

 それは、簡単にできることではなく、そのために、苦労したこともある。だからこそ、リーンウルネという人物の一要素をなしているのだ。

 リーンウルネは、すぐに、アングリアへの攻撃の邪魔にならないように移動をする。

 そして、アングリアはアールドとは違う嫌な予感を感じるのだった。

 (俺が一発、殴ってやろうと思ったのに、ここに来て、俺よりも攻撃力のありそうなのが来るのかよ。部下の話によると、アンバイドを殴り飛ばすほどの―…。)

と、アールドは心の中で言う。

 アールドとしては、自らの右腕に土で覆って、アングリアに向かってパンチ攻撃をしようとしていた。リーンウルネという姉のような存在を馬鹿にしたことと、往生際の悪さがこれ以上、状況における全体においてマイナスの結果しかもたらさないということを理解した上で―…。

 ここに心の中の熱さと同時に、冷静さという双方を上手く調和させながら―…。

 だけど、そのようなパンチ攻撃が必要ないと感じた。というか、自分の役目は、アールドのパンチ攻撃すら嘲笑うかのような感じの威力を発揮するのではないかという攻撃をするほどに感じさせる威圧を感じたからだ。

 そして、アールドはそのことができる可能性のある人物を噂ではあるが、推測することができた。

 そう、第九回戦終了後に、アンバイドをぶっ飛ばした一人の人物―…、アンバイドと血縁関係のある―…。

 「折角、娘が勝利したのに、何でお前のようなクソどうでもいい奴の野望に付き合わされないといけないのよ。失敗して当然。というか、さっさと捕まって、処罰を受けろ。」

と、四角いリングから中央の舞台、そして、ジャンプして、観客席から貴賓席へとやってきた人物が言う。

 そう、イルーナである。

 そして、イルーナはすぐにアングリアの目の前に移動するのだった。

 (いつの間に!!! だけど!!!)

と、アングリアは心の中で言いながら、何ができるかと思うのだった。

 アングリアは、イルーナという存在に対して恐怖を感じているが、同時に、イルーナの見た目というか事実、性別が女性であることから非力と勝手に解釈し、登ってきたのも通路を使ってであろうと思ったのだ。

 だが、実際に、イルーナは、以上で述べたように、天成獣の力量を使って、通路を使わず、ショートカットで貴賓席、アングリアの目の前にやってきたのだ。それも、一分という時間をかけずに―…。

 アングリアは、侮るということによって、自らの精神を安寧を保とうとしているのだ。

 だけど、現実がそんなことを許してくれるほどに甘くはない。

 現実は、優しく、非常だ。純粋な子どもそのものだと言った方が正しい。

 ゆえに、純粋によって、さも当然のように絶望を突きつけられるのだ。

 イルーナは、アングリアを抱え、中央の舞台の見える方へと運び、そこに到達すると上空に放り投げるのだった。

 その間、恐怖のためでもあったが、最悪のことが想像できたので、何とか叶わぬことでも実行しなければ意味がないと無意識のうちにアングリアは思い、言い始めるのだった。

 「俺を抱えてどこに向かおうとしている。ふざけるな!! ふざけるな!!! 女ごときが俺に逆らうなんて、許されるはずがない。……だけど、俺を助けてくれるのであれば、ラーンドル商会におけるナンバー二の地位とリースの宰相の地位を与えるぞ。俺は、それぐらいにリースに対して、権力を持っている。どうだ、すごいだろ。だから―…、俺を―……。」

と、アングリアは言う。

 アングリアにとって、この言葉でイルーナが言う事を聞いてくれるのではないかという淡い期待と同時に、聞かれないという大きな気持ちがあった。それでも、大きな気持ちとは真逆の方にでも無理矢理もっていかないとアングリアの精神は崩壊してしまいそうな感じであった。

 まあ、アングリアの大きな気持ちの方が叶うのは、ここで見ている者たちなら誰も理解できることであろう。アングリア以外は―…。

 イルーナは無言で、中央の舞台の方に向けて、まるで、砲丸投げのようにして、アングリアを投げる。

 イルーナがアングリアを投げることができるのは、自らの武器に宿っている天成獣の力を用いているからに他ならない。イルーナは、アングリアをぶっ飛ばすことができるほどの実力があるのだ。ゆえに、アングリアなんて存在を中央の舞台の方へと投げることは、朝飯前ぐらいのことでしかない。

 そして、イルーナは、

 (お前のラーンドル商会やリースの宰相の地位なんか欲しくない。)

と、心の中で言いながら、

 「瑠璃、水晶を使いなさい!!」

と、瑠璃に向かって叫ぶように言うのだった。

 イルーナとしては、すでに、このアングリアによる計画を完全に終わらせるために、アングリアをノックアウトさせるもしくは捕まえる方法はすでに決まっている。

 だからこそ、瑠璃に向かって、聞こえるように叫ぶのだ。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる側。

 イルーナの声が聞こえる。

 その言葉は、瑠璃にも聞こえた。

 そして、瑠璃はイルーナの言っていることを意味を完全に理解することはできないが、なんとなく自分がしないといけないことはわかっている。

 だからこそ、

 「赤の水晶(すいしょう)。」

と、瑠璃は、赤の水晶を発動させるのだった。


 中央の舞台の上空。

 イルーナに投げ飛ばされたアングリアが浮いている。

 いや、宙に舞っている方が表現としては正しい。

 (クソッ!! 覚えていろよ!!! 俺が死んだら、リースのすべてを呪い尽くしてやる!!!! 俺は、俺は―…、誰もから敬われるべきラーンドル商会のトップ、アングリア様なのだから―…。)

と、アングリアが心の中で思う。

 こんな不利な状況においてでも、自らがトップであり、支配する側であるという気持ちを切らすことはなかった。

 ある意味では、素晴らしい才能と言ってもおかしくはないだろう。だけど、だけど―…、どんなに素晴らしいものであったとしても、使い方を間違えてしまえば、自分をも、それ以外の他者をも苦しませることになる。そのことをしっかりと理解しておかないといけないが、アングリアがそのことを理解できるはずもない。何か、その方向に向く印象に強い出来事がなければ―…。

 そして、アングリアのいる場所に、空間と別の空間を繋ぐための円状のものが展開され、重力が地上に向かってはたらいていることを利用して、その空間を繋ぐものに吸い込まれるように落下していくのだった。

 これは、瑠璃が赤の水晶に言って、展開させたものである。

 そして、アングリアを空間移動させる目的地はすでに決まっている。


 四角いリング。

 ローやセルティーたちがいる場所ではないところ。

 ちょうど瑠璃チーム側から四角いリングの方へと入る方が近い場所。

 そこから数十センチほど上にさっき、アングリアを飲み込んだと思われる空間移動のための狭間が形成される。

 そこから、アングリアが落下していって、地面に背中をぶつけるのであった。

 その反動で、後頭部をぶつけるのだった。

 まあ、死ぬほどの怪我を負うことはないが、気絶ぐらいはしてしまいそうな感じではあるが―…。

 その時間はなく、かなり短いうちに意識を取り戻し―…。

 (痛てぇ~。ふざけんなよ。俺は…俺は……、だけど、何か知らないものに巻き込まれたが意識はあるし、もう少しすれば動けるようになるはずだ。ふん、俺は運が良い。ここから逃げ切って、今度こそ、リースの実権を掌握して、俺様のために良いリースを築き上げてやる。そして、俺をこんな目に合わせた奴全員に復讐をしてやる。リーンウルネ、セルティー、メルギエンダ―…。)

と、アングリアは心の中で思う。

 今のアングリアは体を動かすことができない。痛みのせいで―…。

 アングリアは背中の方と後頭部の痛みを抱きつつも、その痛みがどのくらいであるかと表現するのであれば、痛いであり、そのこと以外に抱くことはない。決して、心地よい感覚を抱くような感じではない。治療されていないところから考えると、生の終わりがまじかに迫っているわけではない。近づいていないということを完全に肯定することはできないであろうが―…。

 そして、アングリアは、自らの計画が失敗したこと自体には悔しさを滲ませているし、そのような結果を導いた奴らのことを恨んでいる。リーンウルネ、セルティー、メルギエンダ、付け加えて、アールド、イルーナ、ロー、ギーランなどを―…。

 アングリアは、これまでの人生で、自分の思い通りに出来たことがほとんどであり、思い通りにならないことを嫌ってきた。そう、思い通りにならないことは無理矢理思い通りにしてしまえばいいし、思い通りならない奴らを排除してくれば良かった。それだけを成すだけの権力というものを持っていた。

 だけど、それは終わりを告げた。

 アングリア本人は、決して認めたくはないだろうが―…。

 現実が純粋であり、純粋であるがゆえに、起こっている出来事をそのまま当事者たちに認識させるのだ。ゆえに、優しく、残酷なのだ。

 そして、アングリアにとって残酷なことはまだ終わっていない。

 ブサッ!!

 (!!!)

と、アングリアは驚く。

 体に新たな痛み、いや、何かが刺さったのではないかと思い―…。

 だけど、新たな痛みはない。

 ゆえに、刺されていないと思い、頭を少しだけ動かそうとすると、右頬に何かが当たるような感じがした。

 ………………。

 そして、そこには、剣と思われるものがあった。

 いや、それは、剣なのだ。

 「アングリア(お前)の野望は終わりだ。」

と、ギーランが言うのだった。


第132話-10 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


何とか、『水晶』の執筆を進めています。一方でカクヨムの方は修正と加筆を最初から見ているせいか、続きを書けていない状況です。ごめんなさい。

『水晶』に関しては、次の章までにはどれくらい部分数が残り必要なのか確実には言えませんが、あともう少しという段階には入っています。そして、予想以上に、第132話は長引いているような気がします。セリフ数よりもそれ以外の文章が増えに増えていると思っています。簡単にまとめるようにできれば―…。

まあ、そう思っても勢いというものが執筆の時にはあるので、難しいですが、それでも、気持ちを込めて書いていくことができたらと思います。

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年6月8日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月10日頃を予定しています。2022年6月9日はいつもの時間の投稿ができないからです。

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