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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
308/748

第132話-8 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿(現在第6部完結にともない、投稿は休んでいます。再開は2022年6月下旬から―…)。

興味のある方は、ぜひ読んで見てください。加筆と修正をおこなっています。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、リーンウルネとアングリアが対峙するが、アングリアは窮地に陥るのだった。信頼していたメルギエンダが裏切り者であった事実を知って―…。

 中央の舞台。

 瑠璃チームの側。

 (リーンウルネか。前のミラング共和国との戦争で、俺が傭兵として参戦していた時に、裏で、ミラング共和国の領主の数人を動かしていたみたいだな。あの女がセルティーの母親かよ。セルティーとは違って、どんだけ先に、それも正確に手をうってくるんだ。未来予知の能力でもあるんじゃないのか。それにしても、アングリアも悲惨だったな。まあ、お前のこれまでの行動や言動から考えて、このような運命になるのは致し方ないことだ。当然の報いだな。むしろ、お前の行動が裁かれるのだ、気づかれないよりかはましな方なのかもしれないな。それよりも不幸なのは、本当の意味で何かの物事に貢献した人物の功績が広まらないことだからなぁ~。)

と、アンバイドは心の中で言う。

 アンバイドは、リーンウルネの能力を、この異世界でも数が少ない能力者の類のものではないかと思うのだった。それぐらいに、リーンウルネの行動は、先を読んでおり、かつ、正確なのである。完璧と表現してもおかしくはないぐらいに―…。

 しかし、リーンウルネは能力者ではない。先を読むことに長けており、人が何を求めているのかを理解する能力を身に付けているからだ。能力者みたいに生まれた時から備わっているわけではなく、リーンウルネの人生の中での先生とリーンウルネ自身が読んでおかしくない人との出会いと別れ、そして、人と関わってきたからこそ、その中で手に入れることができたにすぎない。

 そうではあっても、アンバイドが能力者だと思うぐらいには、リーンウルネの事態を先読みするということ自体が優れているのだということにすぎない。

 さらに、アンバイドは、アングリアにとっては悲惨なものであるとも感じた。なぜなら、リーンウルネに先読みされ、雇った傭兵は悉く裏切られ、かつ、リーンウルネ側の味方であった。追い打ちは、メルギエンダがリーンウルネと通じていたということだ。ラーンドル一派および商会の裏切りの筆頭であったということだ。

 こうなってくると、アングリアのような人物ではどうしようもできないし、事態の好転はまずないと、アンバイドが考える至極当然のことである。

 さらに、アンバイドには、アングリアがこのような悲惨な目にあって当然だという認識だ。アングリアがリースの中でおこなった非道なことは、噂ではあるが、アンバイドにも漏れていた。興味や関心はなかったが、それでも、リースでの仕事の時には気を付けておくに越したことはないと判断して、頭の中の情報に加えていたのだった。

 ゆえに、アングリアが受けるべき当然の報いを受けているのだとアンバイドは感じており、アングリアを助ける気も、擁護する気もない。興味も関心もないが、さっさとアングリアが降伏して、ランシュにベルグの居場所を聞くことにしたいのだ。

 そう、アンバイドは、ローがランシュの治療を終えたのに気付いているし、ちゃんと見ているのだった。

 また、アングリアの計画が明るみにでたことは良いことであるし、悪い事なので、それが表に出て、潰れるのは社会にとって良い事である。社会や他者のために頑張っていて、社会や他者を良い方面に成果が出ているのに、それをおこなっている人もしくは人々、集団が評価されないということに比べれば―…。

 アンバイドは、ゆっくりとランシュの方へ向かおうとするが、しばらく動くのは、ギーランやらミランに気づかれそうに感じて、動くのを躊躇するのだった。

 一方で、礼奈は、

 (うわ~、諦め悪いなぁ~、アングリア(あの人)は―…。いい加減に降参して欲しいし、こういうのは人に迷惑をかけない場所でして欲しい。けど、そんなことはないか。)

と、心の中で思う。

 礼奈としては、もう第十回戦が終わって、自分たちの勝利で気持ち良く終わり、歓喜に浸っていてもおかしくない。今の事態も冷静に理解しているからこそ、さっさと終わって欲しいと思うのだった。

 だけど、同時に、まだ終わりそうにないとも感じるし、人に迷惑をかけていることに気づいて欲しいと思っている。それも、アングリアには無理だろうと理解していながらも―…。

 本当に溜息をつけるのなら、つきたいものだ。

 礼奈は、視線を貴賓席の方に向け続ける。

 (とにかく、最悪の事態は、セルティー王女に拒否されたアングリアとか言う人が暴走して、さっきのような爆発物にみたいなものを出して、事態を混乱させるか道連れにしてくれること。焦って行動することはできない。)

と、心の中で言う。

 礼奈は、この事態を迷惑に思いながらも、冷静さを発揮して、最悪の事態を想定する。そうなると、アングリアが周囲を巻き込んできて、被害を出すということだ。そうなってしまうと、折角の勝利の余韻に悪いものが加わってしまい、台無しになってしまうし、最悪の思い出となってしまう。

 ランシュの企画したゲーム自体が良い終わり方をすることに興味はないが、それでも、勝利の中に嫌なことが入ってしまうのはどうしても感情的に良い印象をこの出来事に与えはしない。終わりよければ総て良しとも言うように―…。


 貴賓席。

 アングリアは叫びをあげていた。

 その叫び声の理由は、メルギエンダがリーンウルネと通じていたからだ。

 ラーンドル一派の裏切り者とはメルギエンダだったのだ。

 アングリアにとってメルギエンダは、かなり信頼できる存在であり、いつもアングリアを助け、困っているアングリアに良きアドバイスを送ったりもする人であった。

 (メルギエンダが俺を裏切っていたのは分かった。だから、俺にできることは―…。もうこれしかない。)

と、アングリアは心の中で言う。

 アングリアはすでに、絶望を通り越して、何をするのか分からない状況であった。たとえ、それが多くの犠牲をともなうことであったとしても―…。

 追い詰められた人間は、何が何でも自らの優位を確立しようとして、狭くなっている視野で偶然見つけたものにメリット、デメリットを考えずにすぐに実行するのである。今回の場合は、成功確率は天文学的な数字になるほどに低いのであるが―…。

 そして、アングリアは行動に出る。

 そう、リーンウルネに向かって―…。

 四角いリングからは、

 「お母さま、危ないです!!!」

と、セルティーは言うのだった。

 セルティーにとっては、本当に、自らの母親であるリーンウルネが危険な目にあうことに気づいて言っていることであるが、同時に、そのように思わせるように言っている。

 なぜなら、アングリアに自らの優位を確立に成功していると思わせる必要があるからだ。セルティーがリーンウルネの天成獣の力について、この場、この時に忘れているわけではない。忘れるわけがないだろう。天成獣の宿っている武器を用いて戦うことがあり、その中で実力をつけてきている以上、周囲の状況を理解できないことは完全にないとは言えないが、それでも、その確率はかなり低いものであることに違いない。当たり前のことだ。

 ゆえに、今、セルティーが言っていることは演技であり、アングリアはそれを受けて、自らの優位を確信する。

 (リーンウルネを人質にすれば、俺の要求は簡単に通るはずだ。)

と、アングリアが心の中で言う。

 アングリアは、セルティーの言葉で確信し、自信をもって行動する。

 アングリアはポケットから護身用に持っていたナイフを取り出して、鞘を外して、鞘を抜き、リーンウルネの後ろに回り、ナイフをリーンウルネの首筋につけるのだった。

 「ガハハハハハハハハハ。リーンウルネを人質に取ることに成功した!!! リーンウルネを殺されたくなったら、ランシュをこの場で殺せ!! セルティー。」

と、アングリアは言う。

 アングリアはすでに、リースの王族に対する礼儀もなければ、そのような気持ちもなくなっていた。最初からあるわけないのであるが―…。

 アングリアにとって、リース王国の王族など、自らのリース王国およびリースにおける自らの権力のための道具にすぎないし、むしろ、自身は王よりも上の存在と思っているのだ。心の中で、特に―…。

 そして、自らの勝利を確信し、それもピンチからの勝利である以上、緊張というものが完全に緩んでしまい、素の自分というものを出してしまっているのだ。今の状態では、不敬罪に問われることはないが、それでも国家転覆罪ぐらいには問われるだろう。むしろ、後者なので、罪が重いことは当たり前だろう。

 不敬罪に関しては、セルティー自身も、リーンウルネ自身もこの罪がある事自体が王族が人々に敬われていないということを示しており、王族が人々に敬われたければ、人々のための事をなし、人々にとって心の底から必要なことをするのが大事なことであるし、人々からそのことをしたとしても、敬われるどころか、罵倒されることさえある。

 そのため、たとえ、人々のためにしたことであったとしても、王族はその罵倒のせいで、返って、やる気をなくすことさえある。人々のためにしてやったのに!!

 だけど、それこそが勘違いでしかない。人々のためなのかどうか判断するのは、人々の側であり、そのことをちゃんと理解しておかないといけない。何かが成功し、報われるのは、自らの行動や頑張ったことのようなもののと同時に、自分以外の影響というものが良い方向に組み合わさってなされているからである。だからこそ、自分からの行動であったとしても、自分以外の影響がかみ合わなければ結局満足のいく結果はでないし、報われることもない。

 そして、不敬罪を必要とする者は、自らの努力とか、行動とか、人のためにして欲しいことを、無理矢理周りから褒めて欲しい人や、権威や権力に溺れ、自分のすごさを周囲に示そうとしている人などである。結局は、自らが他者よりも優位であることを無理矢理他者に思わせようとしているにすぎないのだ。

 結局、自らが他者よりも優位というか、他者に本当の意味で敬われる人は、そんな小さなことにこだわりはないし、他者から罵倒されようとも、自らの道を信じて歩むことができ、罪状とかにしなくても、できると思っている人なのだ。

 ゆえに、不敬罪などは元々必要はないのだ。

 さて、話を進めて、不敬罪も国家転覆罪もリースには存在する。ランシュも不敬罪に関しては廃止していない。というか、そのようなことをする時間がなかったのが理由である。不敬罪による刑期は、リース王国においては最悪の刑は死刑であるが、それでも多くは短い懲役刑で終わることが多い。

 一方で、国家転覆罪は、無期懲役もしくは死刑以外の選択以外存在しない。なぜなら、不敬罪よりも国家転覆罪の方が、国としての体裁というか、国そのものを滅ぼそうとしているのだから、合理的に考えて、罪が重くなるのだ。

 まあ、世界のすべてで、そうなのかを完全に言う事はできないが―…。

 そして、アングリアの今の行動を見て、周りにいる天成獣の宿っている武器を扱うことができる者たちは呆れかえっているのだ。リーンウルネという存在を知っている者たちにとっては―…。

 「ふむ、アングリアよ。良く、私の後ろをとったものだ。その勇気は褒めないことはないが、行動の前後を考えると褒められたものではない。それに、こういうことをしたとしても、無意味じゃぞ。」

と、リーンウルネは冷静に言う。

 リーンウルネは、すでに、自らの勝利に関して確信しているどころか、確実に勝っていると思っている。今のアングリアの行動自体も、自らの勝利に対して変化をもたらすものではないと―…。観客席にいる多くの観客が心配そうに見つめているのであるが―…。

 「何を言うんだ。お前を人質に取れば、俺の要求は―…。」

と、アングリアが言いかけたところで、リーンウルネは言い始めるのだった。

 「お主は、人として、商人として、大事な経験を積ませては貰えなかったのだろう。お主の父は、商人としての才覚はまるでなかったし、お主の爺さんに厳しく育てられたせいか、お主の爺さんが大事にしていた優秀な人材を失った後に、ラーンドル商会は少しずつ、リース王国の政治で私腹を過度に肥やすようになっていた。それでも、その優秀な人材が残した者たちによって、何とか上手くやっておられたが、その優秀な人材が残した者たちはかなりの不満をラーンドル商会に抱き、多くが辞めていき、残った者たちもいつの日か、ラーンドル商会を元に戻して、良き商会にしようとしていたようじゃ。お主は、そのことに気づくこともできずに、自分勝手に振舞った。その報いじゃ。メルギエンダの裏切り、そして、アングリアおよびラーンドル一派の破滅は…の~う。早く気づいておれば、こういう運命にはならなかったのだが―…。アングリア…破滅の時じゃ。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネは、これからどうなるかを完全に理解できているわけではないが、どういう展開になるか予想することができる。すでに、アングリアの終わりを引き連れてくるのがリーンウルネの元に近づきつつあることを―…。

 「やっぱり、ボケてしまったのか、リーンウルネ。」

と、アングリアは、リーンウルネに対して言う。

 アングリアは、リーンウルネの考えなどわかるわけもないし、自らの優位を確立したと思っているので、リーンウルネがボケてしまったのだと思っている。

 「ボケるどころか、数分前の出来事も理解できないアングリアよりは、ましな方だと思うがの~う。ほら、来たぞ。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネは分かっていた。

 アングリアの真後ろに、あの傭兵隊長アールドがいるのだった。

第132話-9 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


久々の投稿です。というか、長時間用の動画を見てしまったことが原因です。すみません。正直に反省します。

『水晶』における第132話もそろそろ完成に近づいていっており、2022年6月中には第133話に入ると思います。予定は変更される可能性も存在しますので、完全にそうなるとは自信をもっては言えませんが―…。

『水晶』の方もかなりの追加とか変更とかしてしまったため、ネームには書かれていない展開になっていて、悩まないまでも、調整していくのが大変です。それでも、光明は見えてきているので、何とかなりそうな気がします。根拠はありませんが―…。

一応、今年中に、リースの章は終わらせていきたいです。

次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成した後、この部分で次回の投稿日を報告すると思います。

では―…。


2022年6月6日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年6月7日頃を予定しています。予定は急遽変更される可能性がございますので、そのことに関しては了解していただけるとありがたいです。


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