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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第132話-5 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿をお休み中。再開は、2022年7月下旬頃。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ハルギアがいる倉庫に入って、第十回戦の勝敗を伝えたのはリーンウルネ側から派遣されたイロールという人物で、そいつの正体は、傭兵の中の倉庫で指揮を任されていた人物によれば、ランシュ側のイルターシャであるという。なぜ、イルターシャがここにいるのか。そして、ハルギアは天成獣の宿っている武器を用いて、上手くこの二年間逃げ回っていたのである。捕まることなく―…。

ハルギアとイルターシャの戦いが始まるのだった。

 イルターシャとハルギアは対峙する。

 ハルギアは、二年前のレグニエド王暗殺事件で逃亡しないといけないという時に、たまたまリースの武器倉庫の天成獣の宿っている武器から一つだけ、適合すると感じて、それだけを取り、逃亡を開始したのだ。

 ハルギアは、そいつがどういう性質のものかを知るのは、逃げていることに夢中の中で気づき、相手の視覚を誤魔化したり、相手の思考を支配することが可能であるということを―…。

 その時から、ハルギアは、その能力を使い、自らが不利だと悟れば、簡単に逃げられるように―…。

 そう、逃げるという行為で、ハルギアは自らの武器に宿っている天成獣の扱い方を覚えていったのだ。逃亡がハルギアの成長を助けることになるとは―…。ある意味で皮肉としか言いようがない。

 そんなハルギアだからこそ、自信というものをかなり持っている。自信過剰と言われてもおかしくないほどに―…。

 「私だって、天成獣の宿っている武器を扱えるのだよ―…。女ごときに負けるかよ。」

と、ハルギアは言う。

 ハルギアもラーンドル一派に属し、染まってしまっているせいか、男尊女卑の考え方が染みついているのだ。人だけでなく生物、物質というものは、自らの行動や動き、そして、他の要素の行動や動きの双方における影響で、ある時点の結果を導きだしている。

 そうである以上、自分が優れていて、他者が劣っているように思ったり、考えたりすることは、自らの結果に対して、真面目に向き合っているとは言えず、自らの今までの結果に対する否定でしかない。そのことに、ハルギアは気づくことはないだろう。一生という言葉を付け加えてもいいぐらいに―…。

 付け加えるなら、男性が女性より優れているという観念自体、一方的な見方でしかなく、女性の方が優れている場合もあるので、男性、女性という概念で比較しても意味はない。

 というか、このような男尊女卑を持ってくる者たちは、自らが劣った存在であることに対して、コンプレックスがあり、それを男尊女卑の概念をいう事で誤魔化しているに過ぎない。本当に優れている人なら、そのようなことを考えている自体、無駄な事でしかないのだから―…。その時間があるなら、自分の成長ために費やせばいいのだから、という具合に―…。

 さて、話を戻して、ハルギアは、すぐに、イルターシャに向かって、天成獣の力を行使するのである。自らの天成獣の宿っている武器である首輪に込めて―…。

 その首輪が見えないようにしているというよりも、首輪などないと周囲に思わせるようにハルギアはしているのであるが―…。理由としては、首輪をしている時点で、周囲から舐められるということを感じて、そうならないためにしているのだから―…。要は、ハルギアのプライドでしかない。

 (私の幻で、苦しめられれば良い。ランシュ側と言ったとしても、末端の部下か、天成獣の宿っている武器を扱えても初心者ぐらいでしかない。二年ほど、逃走の中で培った私の前では意味をなさない。)

と、ハルギアは心の中で言う。

 ハルギアは、イルターシャだということには気づいていないし、さらに、末端の部下程度としか思っておらず、天成獣の宿っている武器を扱うことに関しては、ほとんど不慣れな初心者としか思っていなかった。ハルギアから見る今のイルターシャの見た目は、騎士の格好をしており、イルターシャとは似ても似つかぬ女の顔しているのだから―…。

 ハルギアだってイルターシャという存在を知っている。経歴に関しても―…。そう、ミラング共和国が滅びることとなった戦争で、軍団を一つほど率いており、ハミルニアの軍との戦いで投降し、その後、リース王国の騎士団に入団したという人材だ。なぜか、メルフェルドに指揮官としての心構えや技術に教えていたようだが―…。

 そんな経歴のためなのか、ハルギアとしては忌み嫌っていた。イルターシャの方は、関わりさえ持たなければいいかぐらいの気持ちしかなかった。

 ハルギアは、イルターシャに幻をかけようとする。

 「お前は、()()()()()()()()()()()()()()()()。思()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

と、ハルギアは言う。

 これが、ハルギアにおける幻のかけ方である。

 そう、言葉を使うことによって、相手の心の中にはたらきかけ、相手に自分にとって都合の良い行動をするように仕向けるのだ。この効果は、絶大で、天成獣の宿っている武器を扱うことができる人物だったとしても、ハルギアの前ではその力をハルギアに向けることすらできない。できるわけがない。そのように暗示をかけられているのだから―…。

 イルターシャもその例外ではないのかもしれない。ハルギアにとっては、絶対に効く技でしかない。

 (…………。)

と、イルターシャは、急に、ハルギアに向けて、突きつけていた剣を下げるのだった。

 それを見ていた傭兵隊で、この港湾労働現場の倉庫においてハルギアの護衛と、その傭兵隊の指揮を任されている人物は、

 (イルターシャ、ここは私が倒さないといけないのか。でも、ハルギアを倒そうとしていることから、私たちの味方、一体どうなっている。)

と、心の中で思いながら、イルターシャとハルギアのいる方へと視線を向ける。

 今でも、動こうとすれば動けるという感じではない。なぜなら、ハルギアを捕らえることを暗示によってできなくなっており、さらに、イルターシャの言葉で混乱していて、体が動けなくなっているのだ。

 それでも、無理矢理思考をはたらかせ、イルターシャとハルギアの方へと注視して、動けるようになった時、自らの手で対処できるように―…。イルターシャとハルギアの双方に対して―…。

 で、イルターシャの方は、

 (なるほどね、暗示を用いるのか。このようなタイプの幻の対処の仕方は、二つしかないんだよねぇ~。第一に、それを理解している時は、相手の話している言葉を聞かない。対策としては有効だけど、それだと相手の弱点を探ることが難しくなるのよねぇ~。第二の方法か~。)

と、心の中で冷静にハルギアの天成獣の力を分析するのだった。

 イルターシャは、ハルギアの暗示にはすでにかかっていると判断していた。ハルギアが暗示という方法を用いている以上、ハルギアの話を聞かないというのが一番真面で、かつ、安全な選択である。

 だけど、そのような方法は、もう選択することができない。すでに、イルターシャは、ハルギアの暗示を聞いてしまっているのだから―…。

 そうなってくると、やるべきことは決まってくる。

 この暗示をどうやって破るのか―…。その方法は、すでに一つしかない。

 「ハルギア様は、てっきり天成獣の宿っている武器を持っていないのかと話すまでは思っていましたが、持っているのよね~。このように、私に暗示をかけるのですから―…。」

と、イルターシャは言う。

 イルターシャは、ハルギアが天成獣の宿っている武器を扱っているということを知っているというか、倉庫の中に入って、会話する時から気づいており、少し前に指摘している。

 それでも、似たようなことをイルターシャが言っているのは、確認である。状況の整理と言っても過言ではない。口に出してするほどのものではないと思われるかもしれないが、今はこのようなことが重要なのである。

 「クククククククククク、私を舐めているのは結構だが、私はお前らに捕まるほどに弱くはない。私はアングリア様がリースの実権を取り戻せば、私はリースの宰相となり、アングリア様をも洗脳して、私のため国にしてしまえば良い。セルティー王女を私の妻にするのも良い。一夫多妻制でも良いのか。そうすれば、私に逆らえる者は誰もいない。私のための世の中になる。これほど素晴らしいものはない、ない、ない!!!」

と、ハルギアは最後に叫び出す。

 これは喜びだ。ハルギアの首輪の中に宿っている天成獣の属性は幻であり、相手を洗脳することや幻を見せたりすることに長けており、自分の意のままに操ることができるのだ。

 つまり、自分の思い通りに動かし、リースおよびリースに住んでいる者たちをハルギアのために、奉仕させることも可能ということになり、誰もハルギアに逆らえることがなくなるし、そうする気持ちも湧かなくなる。本当に恐ろしいことだ。

 ハルギアは、自らの欲望のままに動きたいという気持ちをさっきの言葉で露わにし、その興奮のために声が大きくなる。

 それに対する傭兵たちの反応は、決して良いものではなく、ハルギアを危険視するようになるが、捕まえてはならないという気持ちもあり、すぐに抑えられるのだった。

 (馬鹿ね。)

と、イルターシャは心の中で思う。

 イルターシャからしたら、ハルギアは馬鹿としか思えなかったのだ。自らの思い通りにするということを望んでいる人間は、不幸なことでしかない。

 仮に、リースの宰相になれば、宰相としての職務や責任というものがともない、部下からの上申に対する裁可を下さないといけない。その量は、膨大なものであり、官僚組織というものは、こういう運命と言っても過言ではないものから逃れることはできない。本当に真面目に職務をこなせば―…。

 だけど、ハルギアは真面目に公務をこなすことはないとしかいいようがない。勿論、メタグニキアと同じくらいの仕事はすることであろう。重要なこと、自分にとって利益になるような判断を下すことはあるだろうが、それでも、自分にとってもどうでも良いか、都合の悪い事に関して無視するかもしれない。というか、そうしそうだ。

 だから、ハルギアが宰相の時代になってしまえば、リースの運営にとって必要だけど、ハルギアにとって都合の悪いことは何もなされず、放置されることになり、返って、リースの衰退を招くことになるかもしれないのだ。

 地位が上昇したからと言って、何でもかんでも自分の思い通りにできるわけではないのだから―…。そうしている人々は二つの側面でのことが成り立っているのだ。

 そう、支配者にとって、本当のリースのために必要なことをしているという自覚を持っており、かつ、リースに住んでいる人々が求めており、リースが本当の意味で繁栄する結果になるということに繋がるという作用が存在している、三つがちゃんと良い位置で交わっているからである。

 もう一つは、自分のしたいことだけれども、それがリースの繁栄とは逆の結果になるということ、かつ、リースに住んでいる人々が求めていないということが、一つでも成り立っているということだ。

 要は、良い方向というのは、必ずしも簡単なことではないし、自分の思い通りにして、良い方向になるのはかなり難しいか、奇跡のような状態だと言っても過言ではないということだ。

 だからこそ、イルターシャは、このような馬鹿な夢を抱いているハルギアをさっさと捕らえて、二度と権力を握るようなことができないようにしないといけない。ランシュやヒルバスの敵でしかないのだから―…。

 「そう思うだろ。思えるよな。()()()()()()()()()()()()()、人として―…。」

と、ハルギアはさらに、暗示をかけるのだった。

 ハルギアの言っていることは正しい。

 間違っていることなんてありえない。あり得るはずがないのだ。

 ハルギア自身もそう思っているし、港湾労働現場の倉庫の中にある一人以外は、確実に、ハルギアの暗示の通りに思っているのだから―…。

 同時に、ハルギアは、新たに心の中で考えるのだった。

 (ここまで、この女を攻撃していなかったのは、良くなかったなぁ~。ランシュ側とか言っているのだから、確実に殺しておくことが重要だな。傭兵どもに始末させれば、少しは心の底から私に従うだろう。共犯という意識が刷り込まれるのだからなぁ~。)

と。

 ハルギアは、この傭兵たちを自らの味方にして、かつ、ハルギア自身の身の安全を確保しようとしていた。なぜなら、ハルギアだって、重要な要職に就任する以上、自身を恨んでくる者たちがいないわけではない。だからこそ、そんな奴らをも簡単に対処できてしまう強い護衛を欲するのだった。まあ、そこに、そんな奴らの命や要望への配慮があるわけではないのだが―…。

 そして、ハルギアは実行しようとするのだった。

 が―…。

 「もう、お遊びはここまででいいかしら―…。」

と、イルターシャが言うと、続けて―…、

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

と。

 そして、ハルギアは、

 「()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、私は―…。」

と、言いながら、気絶するのだった。

 イルターシャは、気絶するハルギアを見ながら、

 (私の方が長いのよ。ハルギアよりも長く、天成獣の宿っている武器を扱っているのだから―…。)

と、心の中で呟くのだった。

 第二の方法は、相手がかけた幻よりも強い幻もしくは力をぶつけるということである。それは、強者にしかできないことであることに変わりはない。

 イルターシャは、ハルギアよりも天成獣の宿っている武器を扱っている実力は圧倒的に上なのだから―…。当たり前の結果にしかならない。

 この時、イルターシャの感情は、倒せる相手をただ倒しただけの感情しかなかった。


第132話-6 生きるという道に終わりがあるのだとすれば、この世の生を終える時だ。だけど、今ではないはずだ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ハルギアとイルターシャの戦いは、作者自身とっても想定外です。本来は、想定しておらず、すぐにハルギアが捕まるようにしていたのですが、頭の中にイルターシャとの対決も浮かび、ハルギアの方も天成獣の宿っている武器で幻だと今までのハルギアが上手く逃げまれたことに都合がつくので、そのようにしてみました。今回の話は、予定外でしたが、自分なりには良い感じの展開なのではないかと思っています。

そして、『水晶』の第1編だけでもかなり長さになっているので、完結するの十数年ぐらいはかかりそうです。もっと延びるかもしれません。最初に書いた作品がここまでの量になるとは―…。

ネームからずれていっていることを日々感じています。それでも、リースの章が終われば―…、というかしばらく無理かもしれません。ネームの所にもどるには、数十話ぐらいかかりそうです。

でも、話が上手くまとまってくれることを祈りながら―…。

では―…。

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