第131話-1 目的達成したと思っていたけど
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュ視点によるランシュの過去が語られるのだった。そして、第十回戦は瑠璃チームの勝利に終わるのであった。
第131話は、内容を5分割しています。文章の量が多くなったためです。
そして、時は現在に戻る。
ランシュから見た視点から―…。
そう、現在とは、第十回戦、最終回戦、第六試合瑠璃とランシュの試合の終了後だ。
瑠璃がランシュに勝利した―…。
(勝ったぁ~。)
と、瑠璃は心の中でほっとするのだった。
戦場においては、今の瑠璃の状態を油断と言っても差し支えないだろうし、隙が在り在りの状態と言ったとしてもおかしなことではない。それほどに、ランシュとの戦いは、瑠璃にとって、集中力を要するものであったし、これ以上戦えと言っても無理なことでしかない。
そして、歓声とともに瑠璃の勝利が祝福される。
この祝福は、別に、ランシュの支配が終わるということに対する喜びではなく、あくまでもゲームの勝者が決まったことと、試合の凄さによるものである。
それは、多くの観客が抱いている気持ちだ。そのことに、間違いはないだろう。
同時に、一部であるが、ランシュの支配が終わり、自らが支配者として再度降臨するのではないかと思う者がいた。
(クククククククク、ハーハハハハハハハハハハハハハハハハ。ランシュの野郎、無様に敗れやがって―…。これで、お前の支配は終わり、俺の時代が帰ってくる。いや、俺の時代の唯一の汚点―…。弱っている今がチャンスだ。)
と、アングリアは心の中で好機到来だと思う。
「じゃあ、ハルギアらに知らせろ。実権を取り戻す。動け、と―…。」
「かしこまりました。」
アングリアは、自らの暗部の人間を呼び、ハルギアらに伝えるように命じるのだった。
そう、ここで、リースにおける実権を自らの手中に収め、再度、ラーンドル一派が商売にも政治にも権力を持っていた時代を―…。
ここで、少しだけ現在のラーンドル一派は、政治的影響力はランシュによって、一時的な時期よりかは栄えていないが、それでも、ランシュを牽制できる実力を有しており、場合によって、自らにとって都合の良い領主を派遣することもできるほどだ。瑠璃たちがこの世界に最初によった村のように―…。
商売に関しては、国際的な貿易で、未だにリースの中の商会のどれよりも稼ぎ出しており、他の追随を許さないほどだ。主な交易相手は、リースのある大陸とは別の大陸の王国、共和国や領主であり、一番遠いのはサンバリアという国も含まれている。
特に、サンバリアからもたらされる商品は、リースのある大陸ではかなり珍しく、最先端と言ってもおかしくないほどだ。そういうのは、高貴なものや好奇な眼差しを持つ者が高く買っていくので、意外にも儲かるのだ。それでも、儲けの額においては、日用品が多数なのであるが―…。
ここまで、言っておけば、ラーンドル一派の存在も多く理解できたであろう。
そして、アングリアによって命じられた暗部の人間は、すぐに、ハルギアがいる場所へと向かうのだった。
(ここはお前の墓場となるぜ、ランシュー…。)
と、アングリアは心の中で言いながら、表情がニヤつくのだった。
アングリアは、ここで死ぬことはないだろうと、確信しているのだから―…。
他者を煽る人間なんてそんなものだ。
自分は高みの見物というか、先頭で煽りつつも、自分の命を守ることには余念がなく、かつ、損をするのは自分ではなく、自分によって煽られた者たちになるようにするのだから―…。煽りに乗せられた者も同様に損失しても構わないと思っていさえするかもしれない。
ゆえに、そのような者に乗せられているようでは、自らを守ることはできない。これはあくまでも煽りであり、引き際を認識しているのであれば、そこまでにはならないだろうが―…。
さらに、煽っている者が煽られている者の損もしくは大損、滅亡などを願うようであれば、煽っている側の破滅の可能性も存在することになる。
しっぺ返しにあうということなのであろう。
【第131話 目的達成したと思っていたけど】
四角いリング。
そこでは、瑠璃は勝利を噛みしめながら、中央の舞台へと、自らのチームのメンバーらがいる場所へと向かう。
そして、無事に中央の舞台の自チームの側に行くことができた。
「やったぁ―――――――。」
と、瑠璃は言いながら、礼奈とクローナとセルティーとハイタッチするのだった。
勝利の喜びが行動によっても、発揮されるのだ。嬉しさの気持ちが―…。
礼奈にしても、クローナにしても、セルティーにしても同じである。
「瑠璃、よく頑張ったよ。この勝利は、私たち全員で掴んだ勝利。」
と、クローナは元気溌剌に言う。
すでに、アンバイド以外は、今日の試合に出場した瑠璃チームのメンバーは、倒れていたとしてもおかしくないほどに消耗しているが、それでも、勝利したという嬉しさが体力へと変換されているのではないかと思えるほどに、元気に動けるような気がしたし、現にそうである。
ただし、これはドーピングのようなものでしかないし、いつまでもそのような状態であることは保障されることはないが―…。さらに、疲れも人一倍に膨れ上がるだろうが―…。
それでも、嬉しさという感情がそうさせるし、止められるものではない。
一方で、ここで冷静であった人物は、アンバイドであった。
(やっとのことで勝利したか。なら、約束を実行させてもらうことにするか。)
と、アンバイドは、心の中で言いながら、四角いリングの方へと向かう。
狙いは決まっている。
そう、ランシュの方へと行き、ランシュからベルグの居場所を聞き出すことだ。アンバイドの復讐対象であるベルグを見つけるために―…。
アンバイドは歩き出す。
タン、タン、と歩くごとに音がなる。
(ランシュからベルグの居場所を聞き出せば、後はその場所へと向かうだけだ。そうして、ベルグを殺せば―…。)
と、心の中でさらにアンバイドは呟く。
アンバイドの復讐は、長い、長い、と言った方がいいのか、短いとした方がいいのかはわからないが、ただ言えることは、復讐という目的は、人を不幸から一時的に立ち直らせることはできたとしても、根本な解決にはならないということだ。
目的を達成し、次の目標を探して向かう。
人の人生とは、ある意味でそのようなものでしかない。
アンバイドは、四角いリングの中へと入ろうとする。
その様子に、ローとギーランが気づくのであった。
(ふむ。アンバイドは、まだ復讐に囚われているようじゃの~う。まあ、最愛の人が殺されている以上、このようになったとしても仕方ない。じゃがの~う、復讐の先に、何があるというのじゃ。良いことも悪いことも結局は、正義と悪の概念と同じものでしかない。そう、主観というものにの~う。だが、アンバイドを止めることは物理的にはできても、精神的にはできないのが人との関係で難しいところじゃの~う。進むしかないのか。)
と、ローは心の中で、悲しそうに言う。
ローとて、恨みの一つや二つはあったし、衝動的に恨みでの復讐のようなものを咄嗟に達成したこともある。
まあ、あの時のことを復讐というのは、違うかもしれない場合もあるが―…。
そして、復讐という目的を持つエネルギーは、止めるためには物理的な方法もあるが、それは、決して、精神的に止められたということにはならない。なぜなら、復讐者の存在をこの世から消すという方法も含まれ、他者の気持ちを完全に人は理解できない以上、止められたと確認する方法は本人の口が真実かどうかを確認するしかないのだ。雰囲気でも可能な場合もあるかもしれないが―…。
要は、そのエネルギーは、目的を達成されるまで進んでしまうし、最悪の場合、復讐を終えることでしかなくなることはないのだから―…。
本当に、そうなのかと言われれば、完全にそうだと言い切るのは危険なことでしかない。
そう、アンバイドは止まらない。復讐を達成するその日まで―…。
それをローは理解している。ローという人間のこれまでの経験を語るのは、今はできないが、人が生きる人生の中で最も多いのではないかというのは、比較が不可能なので完璧に言う事はできないが、それでも多いというのは何となくそう思えるほどにあるというものだ。
そして、ローの経験の中に、復讐と近い感情というものは存在していたのであり、その気持ちを完全ではないにしても、多くの面で理解することは可能である。
ゆえに、アンバイドの復讐を止めるのが難しいこともわかっているし、どうにもならないことも歯痒いを抱くのだ。
一方で、ギーランは、
(アンバイドの奴、まだ、復讐をしようと―…。しょうもないことだ。さっさと止めて、今いる子ども二人ところへ謝って、家族でゆっくりと過ごして欲しいものだ。望んでいないだろ、殺された人間は―…、復讐なんか。)
と、心の中で言う。
表情は、アンバイドをどうしようもない奴を見る目で見ているのだった。
ギーランは、復讐がどうしようもない結果になることはわかっている。というか、ランシュにしても決して復讐を達成したから、幸せの人生を送っているわけではない。復讐を達成したとしてもその行動によって与えた他への影響というものが付きまとってくることになる。
そのせいか、おかげかはわからないが、その結果として、ランシュはリースの実権を握って、リースの繁栄というヒルバスとの約束を果たすことで、国を維持するための苦労というものを背負う羽目になっている。
このように考えるのなら、復讐が本当に意味があるものなのかはわからないが、復讐に囚われた者たちにとって、復讐後のことなんて、わかるわけもないし、復讐というのが第一であり、唯一な状態なのであるので、復讐後なんて考える可能性の方が低い。
要は、復讐後を考えている者はいるかもしれないが、少ないというのが実態なのではないか。
そして、アンバイドは、殺された人間が望んでいないということも心の中で言っているが、実際に、殺された人間が復讐をしないで欲しいと思っているのかはわからない。殺された人から本当に復讐を望んでいないかどうかをこの異世界においても、聞き出すことなんてできやしない。今のところは―…、を付け加えた方がいいかもしれないことであるが―…。
未来の一部はこうなると推測することができるかもしれないが、それでも、未来を完全にわかるわけでもないし、時の流れを固定化することはできない。そうである以上、未来において、死者の望みを聞ける能力者が現れないということを保証することはできない。
アンバイドは、四角いリングへ上っていく。
(さあ、聞かせてもらうぜ。)
歩みを進めながら、ランシュの元へと向かう。
そこに―…。
「アンバイド、お前の用件は、ちゃんと後で聞くことにする。今は、ランシュ様のダメージを回復させることにする。」
と、クローマが言う。
クローマは、ランシュと瑠璃の第十回戦第六試合が終了した後に、ランシュの許へと向かうのであった。その途中で、アンバイドが向かって来たことにより、すぐに、ランシュを守るかのようにアンバイドの前に素早く移動するのであった。
「さっさとしろ。こっちは、ベルグの居場所を知りたいだけだ。別に、ランシュを殺すことが目的ではない。」
アンバイドにとって、復讐対象はベルグであり、ランシュではない。
相手を殺すことに関しては、必要以上にやりたいと言われると否定である。
アンバイドが人を殺すのは、戦争中に相手側と戦っている時や、命を狙われている時などのように、自らの命が奪われる可能性がある時など、限定的であり、依頼を受けての暗殺は基本的におこなっていない。
ゆえに、アンバイドがクローマによるランシュのダメージを回復させるとしても、そこまで気にしないし、許さないという選択肢をするつもりもない。
早く回復させて、ランシュと会話できるような状態にしろ、と思っていさえする。
「恩に着る。」
と、クローマが言うと、すぐに、今回の回戦のために用意した医療班を呼んでいたのであった。
この医療班は、このランシュの企画したゲームが盛り上がってくるので、観客に怪我が出た時に備えて、配置させていたのだ。
あくまでも、有志の者たちであるが、ちゃんとリース側、特に、ランシュの自腹でちゃんと報酬が支払われているのだ。
無料で奉仕をするにしては、きつい可能性もあるので、有志とは言ってもちゃんと報酬を支払った方が良いと、ランシュおよびヒルバスの提案で実際になされているのだ。
そして、ランシュは、医療班が直接にその場へと来て、治療がなされるのであった。
ランシュのダメージは、外傷が主であり、見た目からは生死を及ぼすほどの怪我ではなかった。
そこに、一人の老婆がやってきて―…。
「ふむ、儂の技で回復させることができるようじゃの~う。酷いが、天成獣の宿っている武器を扱っている以上、命に影響はないじゃろう。」
と、ローは、そう言うと、球体を発生させ、その中に、ランシュを入れるのだった。
いや、正確に言うのならば、ランシュを中心として、球体を発生させて、その中に入れると言った方が正しい。
「感謝する。」
と、クローマが言う。
これは、素直な感謝の意味だ。
「別にいいわい。それに、ベルグに関しては、儂としても居場所を知っておく必要がある。ベルグの後ろにいる存在は、どうしても倒しておかないといけないのじゃからの~う。儂の過ちのために―…。」
と、ローは、これまで以上に、真剣に言うのだった。
ローの目的は、ベルグの後ろにいる存在だ。
ローと、ベルグの後ろにいる存在は、双方にとって因縁でしかない。
その因縁は、まだ終わらない。
第131話-2 目的達成したと思っていたけど に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
久々の『水晶』の更新です。
第131話から―…。後もう少しなのかはわかりませんが、もう数話ぐらいでリースの章は完成すると思います。ここからは、当初のネームからはない内容が主になっていくので、次の章との整合性をとるのが難しいと思っています。が、何とかなると思います。できなかったら、ごめんなさい。
次に、2022年5月13日中に、もう一部分か二部分を投稿するかもしれません。できれば、という範囲になるでしょうが―…。
では―…。