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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
294/748

第130話-7 種は成長し、花として咲く

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、レグニエド王暗殺事件の結果、リースにおける主導権を握ることに成功したランシュは、宰相室でラーンドル一派のアングリアと対面するのだった。そして、ランシュを殺すことができずに、逃げていくのだった。ランシュには、リースにおける問題が山積している状態だった。

 事件から翌日。

 寝不足で、判断が狂いそうな感じだ。

 「ランシュ様。自らの目標を達成したのですから、ちゃんとそれに伴って起こった結果には責任をとりませんと―…。」

 ヒルバスがまともなことを言う。

 俺も十分に理解しているんだよ。

 自分が望んでやったことに対して、最後まで責任を取らないのは無責任であり、人としておかしいと俺は思ってしまうのだ。

 だけど、それで自分というものの心を壊してしまうのであれば、逃げるのも一つの手段かもしれないが―…。

 最後は、向き合って欲しい。逃げっぱなしは何も解決には繋がらないのだから―…。

 「わかっている。昨日、ほとんど眠る時間がなかったせいで、頭が回っていないだけだ。」

 「そういうことにしておきましょう。事実でもありますし―…。」

 ヒルバスは、適当に返事をするのだった。

 本当に、俺は、ヒルバスとの約束のために、リースのことに携わっているのだが―…。

 「本当に、昨日は、ラーンドル一派のトップが去った後も大変だった。」

 そう、大変だったのだ。

 まず、各国との交易の交渉と協定、条約に関してレラグから上がってくる情報をもとに決めていった。

 だけど、すべてが時間内に決まるということはなかった。

 さらに、掌握することに成功したリース王国の兵士の将校たちの主な配置などに関しても―…、だ。

 そして、後者の方に関しては、二つほどの役職を俺とヒルバスで決めており、事前にその役職に任命しようとしている人物には、その役職に関して打診している。

 だけど、受けるという返事はもらっていないし、今日、この王執務室で決めることにしている。

 簡素な任命式とともに―…。

 「そうですね。兵のトップである総兵将軍を変えるのですか。それも、ハミルニアさんに―…。参謀総長をニナエルマさんに―…。」

 そう、俺が掌握したので、優秀な人間を兵のトップにしておく必要がある。

 ハミルニアは、いくら分かっていたとしても、俺の寝首をかいてくる可能性はかなり低い。

 さらに、ニナエルマは頭が良いし、情報収集力にも部下を含めて長けているのはわかっているので、彼を参謀総長にして、軍事力を強化しておく必要がある。

 戦争を積極的にしたいわけではない。

 良く勘違いされるだろうが、戦争を望む人間は、講和や話し合いを嫌い、相手国に対して、憎悪とも言えるようなことしか言わず、かつ、相手のことを冷静に分析していない場合も多く、そいつらにとって都合の良いような情報しかださない。

 もし、一方的な情報しかでない場合は、怪しんだ方が良いし、別のそいつらとはほとんど関係のない人から情報を仕入れた方が良い。

 人は嘘を付くことができるのだから―…。

 誰かのためにも行動できるが、誰かを貶めるための行動もまたしてくるのだから―…。

 決して、単純なパターンばかりなのではない。

 実質上のトップに立つのは、大変なことでしかないというのを俺は感じている。

 それを感じないのは、馬鹿で愚かな奴かその職を天職としている人ぐらいかもしれない。前者の方が大半だろうが―…。

 ハミルニアが前者になることはないだろう。

 「ああ、これから諸国がリースに戦争を仕掛けてこないとは限らない。ハルギアが他国へと逃亡しているのなら、確実にリースを攻めてこようとしてくるはずだ。俺としては、ハルギアが何もできないのが望ましいが、そういうわけにはいかないだろう。そうなってくると、ちゃんとした戦力が必要となる。俺に敵対しているとか、そんな小さいことに拘ることはできない。リースの愚かな政策のために、住む人々を死なすわけにはいかないしな。」

 「そうです。」

 俺は、ハミルニアを総兵将軍に、参謀総長にニナエルマを任命する理由を説明する。

 今回は、リースの権力を掌握しているが、その基盤が決して盤石というわけではない。

 そうなると、この隙にリースに攻め入ろうとする国や領主がいてもおかしくはない。

 それに、政治の中枢に関しても、しっかりと決めていかないといけないが―…、ラーンドル一派を完全に排除することはできないだろう。

 俺が任せた奴らも何かの隙で、ラーンドル一派に鞍替えすることもあるだろうし、ラーンドル一派の人間が紛れ込むこともあるだろう。

 わずかな隙すら見せることができない状況だ。

 一つの失敗が、俺にとって最悪の結果を生み出すことがある。

 ストレスの日々だな。

 「そろそろ任命式の時間です。」

 「わかった。」

 ヒルバスが言ったことに対して、俺は返事して、気持ちを入れ替えるのだった。

 そして、ノックがなるのだった。

 「ハミルニア様とニナエルマ様を連れてきました。」

 「わかりました。入室しても構いません。」

 と、やりとりがあり、王執務室のドアが開き、中にハミルニアとニナエルマが入ってくるのだった。

 二人は、不機嫌そうな、いや、俺に対する怒りをぶつけようとしている感じだ。

 「失礼いたします。ランシュ様とかでも呼べばいいのか。」

 と、ニナエルマが言ってくる。

 これは、かなりだな。

 「公式の行事でなければ、別に様づけする必要はございません。それに、私は、レグニエドを殺した殺人犯であることには変わらない。正義という言葉で語る気も()()()があっておこなったことなどを言う必要はない。大事なのは、私はハミルニアとニナエルマの素質をかっているということです。軍事の面において―…。」

 「いけしゃあしゃあとそんなことが言えたものだ。お前のせいで、リース王国の兵は―…。」

 「それでも、殺してはいないし、彼らの怪我も軽症ですぐに部隊に復帰できるものにしています。それに、これから他国との関係で、大変になることもあるので、優秀なお二方に軍の指揮を任せたいのです。私の実力は、リース王国の騎士団に対して、示しているので、そんな輩はほとんどいないと思いますが、副宰相のハルギアが他国に逃亡している以上、何が起こるか分からないのが実情といったところです。」

 「………王殺しが―…。」

 ハミルニアは、俺を王殺しと小声で最後に言うのだった。

 俺は、ハミルニアから何と呼ばれてもそこまで気にしない。

 というか、反抗できる人間は、嫌いじゃないし、全員が同じ方向へと向かわせて、反対する意見を許さないということになると、場合によって最大の成功をおさめることは可能だが、間違うと最悪の展開となり、望んでいたことが成功しないどころか、自らの破滅をも招き寄せてしまうのだ。

 そのことを理解していない者が多い。

 というか、はっきりとした数を数えたわけではないから、本当に多いのか分からないが―…。

 「ハミルニア、そこまでランシュを侮辱するな。で、ランシュ、レグニエド王を殺した目的は―…。」

 ニナエルマは、俺の狙いを探ろうとしている。

 急に冷静になったな。

 怒りすらも利用するとは―…。

 参謀にしようとして正解という確信を抱いてしまう。

 「レグニエド王を殺した目的を話す気はない。まあ、レグニエド王は、最後の俺の一言で気づいただろうな、俺の正体を―…。だけど、俺はラーンドル一派を倒して、リースの繁栄を保障するし、俺個人の目的を達成している以上、王族を必要以上に殺す気はないし、殺したくもない。」

 ……………まあ、俺の復讐の動機を言う気はない。

 ニナエルマなら、いつか、俺のことを知る可能性はあると思っている。

 「そうか、話す気はないが、リースの繁栄をさせる気はある、と―…。うわべかどうか見させてもらう。そのために、その職を受けよう。」

 と、ニナエルマは、参謀総長の職を受けてくれるのだった。

 「それはありがたい。ニナエルマ、あなたに感謝します。」

 俺は、ニナエルマに感謝する。

 心の底から助かるのだから―…。

 「で、質問なんだが、仮にハミルニアを総兵将軍にするのなら、今の総兵将軍ファウル=イリルニーアはどうするつもりだ。」

 「解雇だ。」

 俺は、あっさりとそのように答える。

 今の、というか、ミラング共和国との戦争に貢献したという評価で総兵将軍の地位に就任したファウル=イリルニーアは、決して、世間で評価されているほどのことはしていないどころか、足を引っ張ったのは事実だ。

 むしろ、リース王国の兵を大量に死者を出す無能だ。

 それに輪をかけて、自らの権力への執着が強く、部下からの信頼はないに等しい。

 そんなことを俺の口から言わなくても、ハミルニアとニナエルマの双方とも理解していることだろう。

 あくまでも、ニナエルマの質問は確認という意味が込められていた。

 年齢以上の貫禄というものがあるのかもしれない。

 聡明であり、人間性が優れていることがトップにとって重要だ。

 そういう意味では、二人は問題ない。

 「そうですか、わかりました。」

 と、ニナエルマは、決して納得してはいないだろうが、納得したような返事をするのだった。

 「ハミルニア、俺の要請を受け入れてくれるかい。別に悪いようには扱わないし、今までであれば、実力がありながらも総兵将軍になることは難しかっただろう。今、リースにとって、他国から守れる兵のトップには、ハミルニアしかいないのだ。」

 これは、俺の本当の気持ちだ。

 兵と接する機会はこれまで少ないが、それでもハミルニアが優秀な指揮官であるのはわかっている。

 ゆえに、リースの兵のすべてを任せる。

 信頼ゆえに―…。

 「メルフェルドが傷を負ったのだが―…。お前が連れてきたイルターシャによって―…。」

 ああ~、そういう報告も上がっていたな。イルターシャから―…。

 そう、イルターシャは、騎士団の掌握のために、騎士団の宿舎で戦闘になって、メルフェルドと戦うことになったそうだ。

 そして、イルターシャが勝利したものの、メルフェルドがかなり手強かったとイルターシャが愚痴っていたなぁ~。

 その結果、イルターシャは負傷することになったのだ。

 そりゃ、ハミルニアが怒るわけだ。

 「すみません。」

 と、俺は謝ってしまうのだった。

 だって、昨日の途中までは、ハミルニアの方が上司という立場であり、何度も一緒になる機会があったのだ。

 主に、ハミルニアの愚痴の方で―…。

 いい加減、別の人に愚痴を吐けよ、と思うぐらいには―…。

 そして、ミラング共和国との戦争では、上官というのもあり、というかハミルニアが偉い人という俺の中のイメージがさらに、謝らせるように仕向けるし、申し訳ない気持ちも同時に出てしまう。

 イルターシャ、本気出すなのよ、と言ってもそんな余裕のある戦いはできそうにないだろうし―…。

 ニナエルマが同情かどうかわからないが、あ~、とか心の中で思ってそうな視線を向けてくるのだった。

 「謝って済む話ではないということぐらいはわかっているな。総兵将軍の職には就くが、これ以上、馬鹿なことをすれば―…、どうなるかは理解しておいた方がいい。リース王国を繫栄させるとか言っているけど―…。」

 あ~、これは、警告だな。

 「わかりました。」

 俺だって、リースを衰退させたいと思っているわけではないし、むしろ、その逆なのである。

 それに―…、ラーンドル一派を倒さない限りは、真の意味でリースにとっての繁栄は訪れないと思えるのだから―…。

 他国との関係も平和であり、互いに交流できるのが一番であるが、すべての国がそのような戦略をとってくるわけではないし、対立することを選択する国や領主もいるだろう。

 人は、決して、本当の意味ですべてを理解することができないし、同様にすべてを理解できないということはないのである。

 部分解のように人は、他を理解しているにすぎないのだ。

 部分の大小はあろうが―…。

 そして、俺は言葉を続ける。

 「ニナエルマ、ハミルニア。参謀総長と総兵将軍の職を受けていただきありがとうございます。これから、二人の働きに期待しています。リースの繁栄のために―…。」

 社交辞令のようなセリフを俺は言っているが、それでも、二人には期待しているし、絶対に成果をあげてくれる。

 彼らの賢さと同時に、人としての良さはリース兵の中の練度の上昇をも期待することができる。

 常備軍をある程度強くできれば、他国との争いで苦戦する可能性はかなり低くなる。

 予想外という可能性に関しては、どのようなことを想定したとしても、俺の頭の想像を軽く越えてくるものだ。

 起こると思っているぐらいがいいだろう。

 「「はっ。」」

 と、ニナエルマとハミルニアの二人が言うと、これで、就任式は終わることになった。

 リース兵の重要な役職の再編成は、二つの職が決まったので、二人が上手く話し合ってやってくれるだろう。

 俺がリースの兵の中の能力の優れている人をほとんど知っているはずがないので、二人にそこをしてもらうのはかなり助かるということであるし、彼らに裁量を与えていた方が、やりやすいし、結果を上げやすくもなるだろう。

 そして、ニナエルマとハミルニアが退出していくのだった。

 「ランシュ様。リース兵に関しては、これで何とかなるでしょうが、騎士団、文官の方も進めていかないといけないので、なるべく上の職は早めに決めておいた方がいいでしょう。」

 と、ヒルバスが言うのだった。

 それに、俺の側近というか、天成獣の宿っている武器を扱えるのを騎士として、対外的にも宣伝しておかないとな。

 他国から侵略されないための牽制の材料として―…。

 やることが多い。


第130話-8 種は成長し、花として咲く に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


そろそろ、第130話が完成すると思います。第131話、第132話は、ネームの時よりも大きな面でストーリーが追加と変更が大量に発生しそうです。それが終わっても、そこそこ文量があって、番外編、次の章という感じです。

次の章は、ネームの段階ではすでに完成しており、どういうことになるかは決まっています。それが終わると第1編における最終章です。

長いなぁ~。

最後に、次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。

では―…。


2022年4月19日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿日は、2022年4月20日頃を予定しています。

次回の投稿分で、第130話は完成します。第131話は、2022年5月中旬より投稿を再開いたします。理由は、書き溜めたいからです。そろそろ、ゴールデンウィークも近いし、ちょうど良い所で区切りがつくので―…。それでも、投稿していない間も書き溜めていると思います。

『ウィザーズ コンダクター』の方は、普通に投稿していると思います。

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