第130話-6 種は成長し、花として咲く
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、レグニエド暗殺に成功し、リース王国の騎士団団長のフォルクスを倒すランシュ。一方で、宰相であるメタグニキア、リーンウルネを脅していたミドールをヒルバスが暗殺するのだった。
悲鳴が響きわたる。
まあ、仕方のないことか。
悲鳴というものは、どうしてでるのか、感情の高ぶりか、人の死を辛いと思っているのか。
そんなところであろう。
まあ、もしここで弁明ができるのであれば、俺は人の死などを見せたいとは思わない。
特に、殺されるという場面は―…。
済まないという気持ちがあるが、必要だからした。
そう、レグニエドが殺され、リース王国における政権が変わったということを印象付ける必要があるからだ。
証人という存在で―…。
さて、ここで宣言をしないといけないな。
「これで、もう殺さなければならない者はいなくなった。後は、リース王国の実権は俺がしばらくの間もらうことにする。安心するがいい。さっきも言ったが、リース王国の領土に攻めなければ、他国や他領に関しては、こちらからは侵攻しないことを約束する。ただし、リース王国に攻めてきた場合は、お前らの領土に対して、こちらからも攻めようと思う。その領土のすべてを―…、な。貿易、交易に関しては、その国と領とリース王国の慣例を踏襲するものとする。その中で、変更したいところがあれば、別途交渉していくこととする。リース王国に関しては、しばらくの間、王位を空白とし、私、ランシュが臨時で代行することにする。王位は適格ありとされる王族がその地位に相応しいとされた時に、その者を王位につける。以上だ。そして、それを飲んでもらうぞ、リーンウルネ王妃。いや、元王妃。」
これで、リース王国の王家が、滅ぼされることはないし、俺が握っていれば、王家にラーンドル一派の介入もなかなか上手くはできないだろう。
奴らを完全に潰せるかはわからないが、それでも、一定程度のダメージを与えることには成功したのではないかと思えるが―…。
情勢が分かるまでは、油断すべきではないな。
そして、ここで、リーンウルネが徹底抗戦にでるということは考えられない。
というか、リーンウルネと戦うような事態になってしまえば、確実に、ラーンドル一派の利益にしかならず、かえって、ラーンドル一派の勢力をより増長させる結果が導かれるのは予測というよりかそれ以上の確実性というものがでてしまう。
リーンウルネは、ラーンドル一派にとって利益になることを望みはしないのだから―…。
「……、わかった。」
やっぱり、この元王妃はトップとしての器であることは事実だが、王に俺が任命すれば、確実に俺との権力闘争となり、ラーンドル一派が得することになるから、王位にしばらくの間就けることはできないし、かつ、リーンウルネでは純粋に王家の血が流れていないので、一部からの猛反発を避けることはできない。
それも王家の血が流れていない者は、一切、王になってはいけない。
ラーンドル一派の中にそういう勢力がいて、その勢力は血の純粋性にしか権力の正統性というか権威を感じないのだ。
だが、政治的権威を血の純粋性だけに求めるのはどうかと思うが―…。
妥協も時には必要かもしれない。
だけど、彼らは、この事件で完全にラーンドル一派に回った可能性が高い。
ラーンドル一派のトップとその取り巻きに良いように利用されなければいいが―…。気にしてもしょうがない。
そして、リーンウルネは、俺の要求を受け入れたということはここで、レグニエド暗殺事件は俺の勝利ということになる。
セルティーに関しては、リーンウルネの方に預けるのだった。
「お主は―…。」
「知る必要はない。このことが終わったとしても、まだ権力闘争は続く。ラーンドル一派とな。」
俺は冷静に冷たく言う。
その時、リーンウルネの表情は、絶望し切っている感じだ。
脆いのかもしれないな、自信満々な表情だったから―…。
いや、自信満々の裏返し、不安が付きまとっていたのだろう。
俺は再度、言葉を発する。
「今回の誕生日会が凄惨なものになって申し訳ない。だが、これはリース王国…、いや、リースにとって、および、この地域の国々とって必要なことであった。平和のために―…。そして、あなたがたの使節に対する帰国の安全は、私が保障しましょう。誕生日会は終わりです。」
俺は、使節にレグニエドの誕生日会が終わったことを宣言する。
そして、彼らの帰国の安全を言い、解散する流れとなった。
俺は、これからかなりやらないといけないことがある。
そして、俺は宰相室の方へと向かいながら、付いてきたヒルバスに対して、命じるのであった。
「ヒルバス、兵の掌握と騎士の掌握の具合を確認してきて欲しい。」
「わかりました。ランシュ様。」
ヒルバスは、すぐに、確認しにいくのだった。
クローマ、ニードがリース王国軍の兵士の方の掌握するために、実力を示すというようなことをしているはずだ。
そして、俺は宰相室に到着し、その中に入ると、そこにはお呼びでない奴が護衛を付けて、その場にいた。
「はじめまして―…、私はアングリアだ。お前か、レグニエドを殺った奴は―…。折角の俺の人形を殺すんじゃねぇ―――――――――!!!」
アングリアという奴が急に名を名乗り、怒鳴るのだった。
アングリア―…、リース王国の人間なら知らない人間は小さい子どもぐらいのものであろう。
ラーンドル一派、いや、ラーンドル商会の現トップであり、歴代の中であまりにも自分勝手と陰口を言われている奴だ。
そんな陰口を表で言えば、ラーンドル一派の刺客によって、最悪の場合、殺されることがあるぐらいだ。
本当に、ろくでもない奴だな。
急に、怒鳴るというあたりが―…。
「そうですか、俺としては、目的を果たしましたが、友であり、部下である奴の約束によりリース王国の領域における全権を掌握することになっています。そのためには、ラーンドル一派は邪魔でしかないので、さっさと商売だけに専念されていただけないでしょうか。その方が、あなたたちのためだと思いますが―…。ああ~、後、慈善事業や税金、雇用なども保証してくれるとさらに、ありがたいのですが―…。」
貨幣経済で景気を良くしたいのであれば、貨幣をサイクルさせて回していく必要がある。その貨幣の回る量が段々と多くなっていくように―…。
これが正しいかどうかはわからないが、それでも、俺はそのように信じたい。
まあ、こいつらが一度手に入れた権力という名の果実を手放すとは思えないが―…。
「なぜ、俺が損するようなことをしないといけない。お前は馬鹿なのか。俺に何かをして欲しければ、俺に対して得になることを差し出す。お前らが得をする三倍、俺が得するようにな―…。いや、それ以上に俺が得をするようなことであれば、それがもっと良い。」
自らの欲というか、自らの益というものに溺れてしまっているな。
哀れとしか言いようがない。
そして、馬鹿に権力を与えるな、典型例だな。
「わかるよなぁ~。ラーンドル商会というのは、これまでどれほどリース王国にとって貢献したことか。リース王国の繁栄は、我々なくしては成り立たないといっても過言ではない。それを理解できないわけではあるまいなぁ~。一介の騎士程度だ。教養すらもないに決まっている。」
馬鹿はここに極まれりだな。
俺だって、リース王国の騎士団に見習いとして入団した時、教養というか知識というものがないのを自覚していたから、騎士団の敷地内にある騎士団専用の図書館を利用して勉強ぐらいしているわ。
今は、王族護衛で、その時間がなかなか取れなくなっているのが悲しいが―…。
こんな馬鹿に馬鹿呼ばわりされる気はない。
「そうですか、私のような一介の騎士が教養すらないのなら、あなたはそれよりも下だということです。」
挑発をかけておくか。
こいつ、かなりの短気なのがわかるわぁ~。
「あ~、ふざけたことを抜かんじゃねぇ――――――――――――――――――――。俺は、ラーンドル商会の当主アングリア様だ!!! テメーごときの一介の騎士は俺に大人しく従うんだよ。俺がやることがすべてにおいて正しい。これは世の理なんだ。理解しろ!!!」
ラーンドル一派のトップが喚き散らす。
こいつ―…、本当に馬鹿だな。
言葉が通じない。
言語は同じはずなのに、なぜか異国の人よりも通じないのではないかと思えるほどだ。
こいつの通訳できる人は、むしろ、世間からもっと評価されてもいいのではないだろうか。
「済まんが何を言っているのかわかりません。ただ、私としては、リース王国の権力は私が掌握したので、ラーンドル一派は、大人しく商売に精を出していてください。別に、あなたがたから取った税金をあなたがたにとって悪いように使わないことだけ約束できるので―…。私としては、リース王国の領土を含め、全体の経済の活性化および住んでいる人々の収入の増加をさせていきたいと思っております。それは、結局はラーンドル商会にとっても収入を増やすことに結果に繋がり、商会のより良い繁栄に繋がるか―…、と。」
そう、自分ばかりに貨幣を集めて、他に支出しないというのはかえって、人々を貧しくさせることとなり、最後は自らに跳ね返ってくるのだ。
因果応報としか言えない結果になるだろう。
それに、自分だけが得をしようとすると、その得は長く続かないものだ。
繁栄に永遠という言葉が、寄り添ってこないように―…。
「一介の騎士が俺に意見してんじゃねぇ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!! 俺の操り人形を殺した、こいつを殺せぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!」
アングリアの護衛が俺へと目掛けて、武器であるブレイドを構えて攻撃してくるのであった。
ふう~、本当に馬鹿にも程がある。
俺は、何も守る気もない。
だって、俺を殺すことはできないのだから―…。
「何を、急に動きを止めていやがる―…。」
アングリアは、急に、俺へと向かわせて、殺そうとしていた護衛が止めるのであった。
アングリアは、そのことに苛立ちの表情を隠すこともなく、表に素直に出すのだった。
たぶんだが、アングリア自身を本当の意味で諫める人がいなかったことが原因であり、駆け引きをせずとも勝手に優位に立てるという状況が存在したせいで、感情を隠すことができないのだろう。
こういうのがいると、今までの行動が通用しない存在に遭遇すると、足を引っ張って、簡単に敗北するどころか、最悪の場合、破滅という事態にいたるのだ。
アングリアの場合は、ラーンドル商会の破産という未来が最悪の場合に該当するだろう。
「さて、ラーンドル商会のアングリア。今日のところは、というか、一生、リースの城の中や、俺のいる場所に姿を見せないでいただけないだろうか。そうしてくれると、こっちとしても、あなたとしても、お互いに得なのではないだろうか。」
つ~か、俺は、アングリア以外のラーンドル商会の後継者を見つけられていない。
後継者さえ見つけることができれば、すぐにでも、アングリアから俺の見つけた後継者に変えてやりたい。
これは、アングリア商会にとっても、リースにとってもプラスのことでしかない。
まあ、アングリアは大きなマイナスを被ってしまうだろうが、しょうがない。
今まで、散々、酷いことをやってきたのだから、その報いを受ける時が来たのだ。
「くっ、クソ―――――――――――――――――――――――――。いつか、ランシュ、テメーを殺してやる。」
せいぜい、頑張ってくれ。
そうすると、アングリアは宰相室を出ていき、さらに、アングリアの護衛もその後を追うのだった。
「イルターシャ、感謝だな。」
と、俺は、アングリアの護衛の動きを封じたイルターシャに感謝するのだった。
もし、イルターシャがアングリアの護衛の動きを封じていなければ、その護衛は完全に俺によってこの世から葬り去られていただろう。
アングリアも最悪の場合は―…。
ラーンドル商会の後継者が見つかるまでは、しばらくの間、ラーンドル商会を潰さないために、トップでいてくれ。
暴走すれば、確実に潰しにいくがな。
「そうですか、ランシュ様。私としては、ランシュ様の命令されたことを守っただけですわ。まさか、ラーンドル一派から命を狙われるから、私を―…。それだけではないのですね。」
イルターシャは、鋭いな。
俺が、今日、寝ることができるようになる時には、すでに、夜も遅く、朝になってもおかしくない時間になっていた。
俺が復讐をした結果、伴ってきたことなのだから、潔く引き受けるのが筋というものだ。
第130話-7 種は成長し、花として咲く に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
第68話と第69話では、書いていないシーンが追加されていくと思います。ちなみに、第130話-7の方はすでにほぼ完成していて、2022年4月18日頃にも投稿は可能です。
では―…。