第130話-5 種は成長し、花として咲く
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
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前回までの『水晶』のあらすじは、二年前の事件をランシュ視点で話が進んでいくのであった。そして、リース王国の騎士団団長フォルクスがランシュの前に敗北するのであった。
「ガ…ハッ!!」
フォルクスは、自らの体を俺の攻撃によってぶっ飛ばされて、謁見の間の入り口の向こうにある壁にぶつけるのだった。
一応、死なないようにしたのだがな―…。
フォルクスを殺したとしても、これからのことを考えると、損失はかなりデカいとしか言いようないし―…。
気絶が一番、俺にとっては良い結果なのだけどなぁ~。
絶望して、使い物にならないようになってしまっても困るしなぁ~。
それは運としか言いようがないな。
それよりも、言わないとな。
「騎士たちよ。フォルクス騎士団団長は俺が倒した。もうこうなっては、数を利用しても俺にあっという間に倒されてしまうぜ。ここは、さっさと俺に降伏したほうがいい。俺は、何度も言うが、騎士を殺したいわけではない。お前たちのような、ただただ職務に忠実で、利権をほぼ貪ろうとせず生きているものを殺すのはこっちとしても忍びない。」
降伏してくれるのがありがたい。
だけど、フォルクスを倒したとしても、宰相側の人間がどう動いてくるかはわからないが―…。
「リース王国最強騎士がこんな圧倒的に倒されることはない!!! きっとランシュがフォルクスの弱みを握ったに違いない!!!! 騎士たちよ囲めば、簡単に倒せるはずだ!!!!! ヒルバス、隙を突いてやってしまえ!!!!!!」
何か、宰相が命令しているし、宰相の名前は確かメタグニキアとか言っていたな。
そして、さらに、ヒルバスに対して、命令しているし―…。
ヒルバスもこの宰相の裏の部隊に入ってから、大分、頭角を現したようだな。
良きかな、良きかな。
だけどさぁ~、メタグニキアよ。
肝心なことを忘れているんじゃないか。
ヒルバスは―…、俺の部下ということを―…。
「はい、メタグニキア様。」
ヒルバスは命令を受けるようだ。
ヒルバスの対応は、決まっている。
裏切るようなことは、百パーセントないということはできないが、ほとんどないと言っても過言ではない。
さて、どう転ぶだろうなぁ~。
「少しだけ時間をください。大丈夫です。」
「時間などかけるでない!! さっさと倒してしまわねば、逃げられてしまう!!!」
メタグニキアがヒルバスに向かって怒る。
そりゃそうだろうなぁ~。
そして、騎士たちは、宰相という上の人間の命令があれば、どんな不利な状況であったとしても、それを実行しないといけない。
軍隊と同じだ。
まあ、それは必要なことだから、そこを変えろという気はないが―…。
勘違いしてはいけないだろ。
宰相という上の人間の命令が、本当にそいつにとって、一番良い選択肢であることも場合によってはあり得るが、その逆も存在し、今のメタグニキアの言葉がまさにそうだっていうのがなぁ~。
さて、余計な犠牲者を出したくはないので、威圧でもかけるか。
そして、俺は威圧をかけて、騎士たちを動けないようにする。
効果はてき面ということだ。
これで、さらに、メタグニキアは焦るだろう。
「何をしている!!! さっさとレグニエド王殺しのランシュを始末せんか!!!! この能無しどもが―――!!!!!!」
メタグニキアが怒声をあげる。
というか、焦っているのだな。
まあ、俺の威圧に気づいていない宰相では、なぜ騎士たちが動かないのかというのを理解できないだろう。
やっぱり、軍事の面では、リース王国の騎士はそれなり使えるだろう。
そして、メタグニキアは、文官としての才能はどうかはわからないが、性格から考えて、上に立つべき人間ではなく、上に立てば、必ず下の人間にとって、働きづらい環境を提供することになり、優秀な人材がリース王国からいなくなり、衰退を導くことになる。自分の思い通りにしたいのだろう。
そう思えば、文官としても優秀ではないな。
それに五月蠅いし―…。
周りは―…、あ~、そういうことか。
少しだけ、俺は間をおく。
ああ~、今までは、リース王国の中で信頼を得る必要があったから、見逃していたが―…。
ここまで、今の状態が見えていないとなると、よっぽどの馬鹿だな。
ハルギアの方は、俺がフォルクスを倒した後に、さっさと逃げていきやがった。
まあ、いい。
たぶん、他国への亡命だろう。
そんなことは後でどうにでもできる。折角、生き残るチャンスがあったのに、それを自分の愚かさで無にしてしまうとは―…。
ここまで、自分のことしか考えることができなくなるとは―…、。俺もメタグニキアのことは言えんが―…。
心の中で俺は思い、覚悟を決めた。
「ヒルバス。もういいぞ。その何もわかっていないメタグニキアを殺してしまって―…。後、リーンウルネ王妃を人質にしているのもついでにやっておいて―…。セルティー王女の上にあるものも処理したうえで―…。」
俺はヒルバスに命令する。
「はい。ランシュ様。」
俺とヒルバスの間の会話を、メタグニキアは理解できなかったのだろう。
顔が動揺しているのが見て取れる。
「えっ…ど…。」
誰がお前に言わせるをやると言った。
そんな感じで、ヒルバスは、メタグニキアの首から上と下を真っ二つにするように斬るのだった。
暗殺用の鋭いブレイドで―…。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
この光景を見た、幾人は叫び出すのだった。
人の死というものをあまり見慣れていないのだろう。
それは、幸せなことかもしれない。
決して、人の死を見たことではない。
人の死を今まで、見なかったことに対することである。
俺は悲しく感じなかった。
一人の五月蠅いという人間であり、これからの体制で確実に邪魔になり、足を引っ張って余計にリースの衰退に繋がりかねないのを殺しただけだ。
罪悪感はあっても、悲しく感じることがあろうか。
まあ、これで殺人鬼になる気もない。
殺人なんて、したくてするのは、この社会においては危険な存在でしかない。
追い詰められて、選択肢をなくした人が選んでいるにしかすぎないのかもしれない。
殺人を肯定する気もないし、俺も断罪されてもおかしくないし、それが当たり前だと思っている。
さて、俺に対抗できるのは、いなくなったところで、俺はやるべきことを片付け、政権掌握といきますか。
まず、俺の護衛を決めないとな。
「ヒルバス、今日からは俺の専属の守護者にする。」
守護者という表現は違うかもしれないが、護衛は必要だ。
俺一人でも、俺自身の命を守ることは確実にできるが、もし、万が一のことがあるので、ちゃんとして護衛を付けておくことに越したことはない。
用心深いと言われても仕方ないし、卑怯の誹りぐらいは受けよう。
俺はヒルバスのいる方へと視線を向ける。
「はい、その言葉に感謝いたします。これから、ランシュ様の盾となり、剣となり、リース王国のために仕事をさせていただきます。」
ヒルバスは言い終えると、俺に向かって跪き、頭を下げるのだった。
忠誠の誓いだな。
まあ、忠誠を誓ったのは、かなり前のことだし、今更する必要もないだろうが、それでも、対外的にも示しておくために必要なことだとしてやっているのか。
なるほどな。
さて、このヒルバスの行動で、俺に対する恭順を誓うのは数が少ないと思っていてもいいだろう。
「ランシュ―――――――――――――――――――――――――――――――。」
セルティーが叫びながら、俺の方へと向かってくる。
長剣を構えていることから、俺へと斬りかかろうとしているのか。
そして、俺は、セルティーがどうして俺の方へと斬りかかろうとしているのかという理由もすぐに理解することができた。
そう、セルティーは父親であるレグニエドが俺によって、殺されて、その復讐をしようとしているのだ。
理解してしまえば、こういう結論になる。
「知らないほうが幸せか。復讐心は生きる力となるから―…。今のままの認識にさせておくか。」
小さな声で言っているが、確信できることだ。
俺もそうだったのだから―…。
復讐というものは、果たしたとしても意味がないというが、俺には意味があったと思える。
何、目標を達成した時と同じように、燃え尽きることができるのだから―…。
でも、俺は約束がある。
レグニエドへの復讐後、リース王国を掌握して、善政をおこなうという跪いて、忠誠の誓いを示した奴のためにも―…。
その約束を考えれば、復讐はまだ終わっていないのかもしれないがな。
そして、セルティーは、長剣で俺に傷を負わせるほどの範囲内に接近すると、すぐに自らの長剣を上へ振り上げる。
が、そんなことをしても遅すぎる。
「ガッ。」
手とうで十分だな。
手加減付きの―…。
セルティーが倒れていくので、俺はそれを支えるのだった。
まあ、付け加えるなら、俺は十年ぐらい前から天成獣に選ばれて、トビマルの宿っているブレスレットを用いて、戦っているのだから―…。
戦場も、戦闘も数多く経験している。
まだ、武器を扱うようになった初心者に負ける気などない。
俺に復讐したければ、生きて、強くなるのだな。
俺は、あまり、自らの復讐に関係のない人間を殺したくないので、生かす。悪いけどな。
そして、俺は自らの影の形がおかしいなぁ~と思い、セルティーを支えながら、見上げるのだった。
上に何か、石のような感じの土? みたいなものがあった。
いや、土色ではないし、透明かぁ~。
「やめろ!!」
リーンウルネが叫び声をあげる。
というか、おかしいよな。
レグニエドへ俺が近づくことに対して、無抵抗にそれを許すはずがない。
リーンウルネは、自らの天成獣を扱うことができる武器を持っているはずだ。
それも、攻撃はできなくても、守りに特化しすぎた。
レグニエドを殺しをおこなおうとしているとは考えずらい。
それに、レグニエドへの殺しを許すはずがない。
透明な石? の落下してくる。
そうなると、リーンウルネは脅され、力を使うことができなかった。
レグニエドが殺される時に、何もしなかったのは、俺の動きのおかしさに気づかなかったからか。
で、今、セルティーを殺すぞと脅されているのか。
確か、あいつはミドールだったな。
その笑顔が明らかに気持ち悪いし、このような状況で、よく笑っていられるな。
これは、ミドールの持っている天成獣の宿っている武器の能力か。
「この程度で、殺せると思ったのか。ミドール。お前は浅はかだ。消えろ。」
そう、こんな程度の攻撃で俺を殺せるとでも、思ったのか。
これで、俺を殺して、リース王国の権力を掌握できるとおもっているのか。
アホとしか言いようがない。
俺は、左手を前に出し、大きな透明な石? が左手に触れた時に、闇の属性を使って、重力を発生させて、消滅させる。
「なぜ、なぜ効かない…。」
まあ、動揺するしかないな。
ミドール、俺の力を甘く見積もったことが大誤算だったな。
俺は、このミドールに呆れるしかなかった。
「それでよく、リース王国の騎士という役職ができるなぁ~。確か、ミドールだったか。ミドール、お前のような欲に目がいき、騎士としての誇りを捨てたのなら、もうその騎士である職を辞めたほうがいい。これ以上、俺を怒らせるのなら、次はない。」
俺は、ミドールにリース王国の騎士を辞職するように言う。
こういう奴を扱いこなしてこそ、トップであるというが、それでも、足を引っ張られてしまえば、かえって、自らの基盤をも危うくしかねいのは事実だ。
そうなると、仕方ないが、排除という選択肢をしないといけない。
相応しい対応なのだと思うしかないだろう。現に、そうだし―…。
ちなみ、この俺のミドールに対しての要求は、お願いではない。
命令だ。
「ふん、貴様など、この俺が倒せしてやる。今すぐにな!!!」
ミドールは言い終えると、俺へと攻撃しようとする。
まあ、それしか方法がないだろう。
だけど、その選択肢を選んだとしても、ミドールの命が寿命を全うするという結果をともなうわけではない。
「時間がかかりすぎだ。ヒルバス。」
俺は、ヒルバスにミドールを殺すように命じる。
恨みというものは、必要以上にかいたくはないものだ。
恨みのすべてに対処できるわけではないのだから―…。
「はい、かしこまりました。ランシュ様。」
俺の言葉を聞いたヒルバスは、返事をし、すぐにミドールに向かって高速で移動する。
俺は、ミドールに対してこう思う。
実力差をしっかりと理解しろ、愚か者。
「ヒルバス、一緒に仕事をしていて、メタグニキア様を裏切るとは―…。」
ミドールは言いながら、ヒルバスが向かってくる方に視線を向け、構えるがこの時すでにヒルバスがいるはずもない。
お前なんかの実力で、ヒルバスに一攻撃を入れようとすることすらできはしない。
それほどに実力差があるのだよ。
そして、ミドールは恐怖を感じている表情をするのだった。
「ミドールごときの動きなど簡単に読めます。」
ヒルバスが言うと、ヒルバスはミドールの真後ろにいて、ブレイドをすでに構え終え、いつでも攻撃することができる状態となっていた。
そして、ヒルバスは、躊躇なく、ミドールの首をブレイドで斬り裂くのだった。
哀れな存在がまた、一人死んでいったか。
第130話―6 種は成長し、花として咲く に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回あたりから、内容の追加がありそうです。三人称の時には書いていなかったシーンなどが多くなると思います。
次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年4月15日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年4月17日頃を予定しています。2022年4月16日は午前中に更新できない可能性が高いので、2022年4月17日頃にさせていただきます。