第130話-2 種は成長し、花として咲く
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』は、二年前、リース王国で起こったレグニエド王暗殺事件をランシュの視点から語られるのであった。
食堂部屋に到着して中に入る。
そこには、セルティーのメイドの一人であるロメがいた。
まあ、セルティー付きのメイドはニーグとロメの二人である。
そして、リース城の食堂は、王族とその客人が使う食堂部屋と呼ばれるものと、城の中の使用人たちが使う食堂が別々にある。
まあ、王族とそれ以外で区別をつけるためであろうが―…。
理由を深く考えたとしても意味はない。
そして、護衛騎士の食事は交替でとることとなっており、俺はセルティーが入浴している時間となっている。
まあ、使用人が使う食堂で楽しく食事をとらせてもらいますけど―…。
護衛に集中だ。
「セルティー、久々だ。調子のほうはどうだ?」
レグニエドがセルティーに向かって尋ねる。
相変わらず俺の好きになれない姿をしているなぁ~。
人の良さそうな顔をしていないわけではないが、何というか、我が儘で素直というか、そういう面はセルティーに似ているかもしれない。
だけど、セルティーとは違って、人の善意というものを消失し、何かを諦めて、開き直ったという感じだ。
この親子の雰囲気は、決して良いものではないだろう。
「ええ~。剣術、天成獣での戦闘に関する訓練は、順調です。」
最近の成果の会話か。
セルティーとしては、何かレグニエドとの会話の糸口でも探っているような―…。
ほとんど会えていないから仕方ないことか。
「そうか。」
素っ気ない返事だな。
まあ、どうでもいいが―…。
「セルティー、………………気兼ねなく話せる人は…おるのか?」
緊張しながら言っているのか―…。
レグニエドの方も会話の糸口を探っているのか。
お前の家庭も幸せではないようだな。
そのことが、俺のイラつきの心を少しだけ和らげてくれるのだがな。
「ええ、いますよ。お父様と話せないのは悲しいですが、護衛のランシュがいますので、平気です。」
冷たい口調でセルティーは、レグニエドへ向かって言う。
あ~あ、完全に冷え切っているのかな。
まあ、ざまぁみろだな。
心の中で笑ってやることにするか。
言葉にも、表情にもだす気はないが―…。
それぐらいの感情のコントロールはできるぜ。
後、セルティーは、俺の名前をあげるな。
余計な恨みをかってしまうだろ。
というか、うわぁ~、ショックを受けた後に、俺への殺意をとばすなよ。
気づいているからな。
「そうか、そうか。ハハハハハハハ、でもそれだと私も少し辛いが、ランシュが―…、セルティーの話し相手になってくれて、とても感謝している。ありがとうのう~、ランシュ。」
表情と言葉が一致していないな。
だけど、ここはあくまでも仕事として、仮面をかぶった解答だな。
「はっ、お褒めにあずかり、ありがたき幸せです!!」
その後、俺はレグニエドへと向けて、頭を下げて、礼をするのだった。
これも、レグニエドへの復讐を果たせば二度としなくてもよいのだから―…。
そのための我慢だ。
俺は必死に耐えるのだった。
そんな中、空気を読まない言葉を言ってくる人がいる。
「ランシュ!! そなたがそんな恭しく礼をするほどの男ではない。頭を上げろ。むしろ、ランシュとセルティーの仲に嫉妬しているだけじゃ。本当、心を広く振る舞おうとも、その人の心は狭いものじゃのう。」
言ったのは、レグニエドの妻であり、王妃のリーンウルネだ。
リーンウルネの言っていることは、あまりにも正確な指摘であり、周囲にいる者たちにとっては、誰もが理解していることである。
単に、レグニエドに対し、そのことを指摘すれば、最悪なことになる可能性もある以上、リーンウルネが指摘するのは、ありがたいと思ってしまうのだ。
このリーンウルネが、リース王国の政治を掌握してくれると助かるが、王妃である立場上、俺がレグニエドを殺した場合、対立することは避けられないだろうが、完全に敵に回すことは俺たちにとって損でしかなく、ラーンドル一派にとっての得でしかない。
本当に難しい。
「そういうことは、一ミリ足りとも思っていないぞ。」
嘘だな。
これは、レグニエドとセルティー以外は確実に同じような意見になっていることだろう。
声も上擦っているし、レグニエドが―…。
嘘をつくのが下手だな。
「はいはい。アホなのはわかったから―…。今は、反省として黙っていなさい。五月蠅いから―…。」
……………場の空気が、一瞬で凍り付いた。
間違っても、レグニエドよりもリーンウルネの方が、怒らせてはいけないと感じたのだ。
レグニエドがリース王国の王様という地位がなければだけど―…。
「セルティー、お前には政略結婚などはさせはしないが、好きな者がいれば、さっさと結婚するのも一つの手ではあるぞ。特に、王族というのは、立派な男に出会う確率は、かなり低いのじゃから。例えば、ランシュとか―…。」
妖艶な表情で、俺へとリーンウルネは視線を向ける。
俺は、王族との結婚は嫌だからな。
それも、明らかにリーンウルネの方が、セルティーの気持ちを理解しているのではないかと思えるほどのことを言う。
セルティーが俺を好きだということはどうだっていい。
それよりも、俺はセルティーのことが好きではないからな。
まあ、セルティーの気持ちを炙り出すためのカマなのだろうが―…。
「いやいやいや、それは―…。王族と騎士では身分の差が―…。」
まあ、否定するのが正しいだろう。
セルティーの言っているように、王族と騎士の結婚には身分の差というものがあり、その身分の差をこえるというのは、難しいことでしかない。
それをわかっているのは、セルティーの良い所であるが―…。
それに加えて、俺はそこの目の前でショックを受けて、固まってしまっているレグニエドに対して、復讐しようとしているのだからな。
勘弁して欲しい。
「そうか、身分の差は貴族や王族の世界では大きなことだが、むしろ、大きなことを変えるぐらいのことをやると思っていたのだがなぁ~、セルティーは―…。」
残念そうにリーンウルネは言う。
わざとらしいな―…、本当―…。
そして、リーンウルネは、固まっていたレグニエドが起動して、怒りの言葉を言おうとしたのを、無理矢理に圧をかけて黙らせた。
夫婦関係というものがああいうのであるのならば、時には必要だが、俺としては嫌だなぁ~、と思ってしまう。
そして、再度、レグニエドは固まってしまうのか。仕方ない。
何もしないに限る。
「すまんのう。このアホを黙らせようとしたので、聞いていなかった。もう一度とは、いわん。だけど―…、これだけは言っておくぞ。ランシュも含めてなぁ~。」
真剣な表情になって―…、何を言う気ですか。
それに、リーンウルネの一言で、この場に緊張感が生まれ、俺でさえも背筋がより伸びているのではないかと思わせるほどだ。
明らかに、トップとしての器は、レグニエドよりもリーンウルネの方が確実にあると言った方がいい。
差がありすぎる。
レグニエドでは、一生頑張ったとしても、追いつくことはできない。
天性のものだ。
そして、リーンウルネは、重要なことを言い始める。
俺にとって、興味のないことだが―…。
「お主の未来は、お主が決めるものだ。他者の意思は、他者の意思でしかない。そうしないで、他者の意見に流されて生きることは、簡単じゃし、考えなくていいから楽に生きられる。と、同時に、他者に自らの未来を預けるのと同義じゃ。それは、この国で、王族として王位に就こうとするものであるのなら、その考えを捨てることじゃな。お主が決めたことの方が、責任も取りやすい。まあ、責任を取ろうとしない本当の弱き者もいるじゃろうがな。それでも、責任を取るには、自分で考え、判断する必要がある。悪しき結果になるとしてもな。」
リーンウルネは、ここで、一息を入れ、
「そして、心から信頼する人間の話しは、聞きなさい。そのためには、いろんな人に出会いなさい。人との出会い、会話し、経験することでしか、本当の意味で信頼できるかどうかという能力は身に付かない。人の話しを聞いてからは、その話が真実かどうか考えなさい。繰り返しのようになってしまったのじゃがな―…。考える時に苦しいこともあるし、悩むこともあるじゃろう。それは、人として生きる以上は避けられることではない。悩めることは幸せなことじゃ。だから、大いに悩みなさい。悩んで下した判断には、堂々としない。そうすれば、きっと、自らが幸福だと思える人生が送れるじゃろう。それを成すために必要なことじゃ。」
長いな、言っていることが―…。
要は、自分で考えて、自分で判断し、その結果に対して責任を取れということであり、人の話を聞きながらも、その人の言っていることが正しいかどうかを考えなさいということであり、考える時に悩むことがあるが、悩むこと自体は良いことであり、悩んで下した判断には堂々としろということであろう。
それが幸せな人生に繋がると―…。
深いが、リーンウルネ自体は幸せになっているのだろうか?
その疑問点は出てしまうほどだ。
まあ、俺にとってはどうでもいいことだが―…。
そうこうしているうちに、食堂部屋のドアからノックがなる。
「お食事をお持ちいたしました。」
「入れ。」
レグニエドの付きの執事長が言うと、食事が食堂部屋に入り込まれ、セルティー、レグニエド、リーンウルネの所に食事が並べ終わると、食事をとるのだった。
俺は、騎士として護衛に徹するのだった。
それから、しばらく時が経つ。
レグニエドの誕生日式典が始まる二日前。
この式典は、各国や領主たちが集まって、レグニエドの誕生日を祝うというものである。
要は、リース王国の国王としての権威を示して、レグニエド本人も目立とうとしているというわけだ。
俺は、その日、王族護衛とは別の仕事をする予定となっている。
事前に、セルティーの護衛は別の人間にしている。
彼らは、俺の目的を知っているわけではない、というか普通の騎士でしかない。
そして、今、俺は、真夜中であり、リース城の中庭であり、見張りの視界から免れることができる場所にいる。
俺はある人物と待ち合わせをしている。
昨日、そいつからヒルバスの方へと手紙が届き、文官のレラグから伝えられた。
まあ、内容はセルティーやその付きメイドたちに聞こえないようにして聞いた。
俺が手紙を読んでいると、こそっと覗く王女やその侍女がいるし、ほとんど時間が護衛である以上、手紙よりも内容を聞く方がバレにくいのだ。悲しいかな。
っと、そこに一つの影が現れる。
待ち人か?
「お前か。」
何となく、雰囲気から俺の待ち人であることがわかる。
そいつは―…。
「ランシュ、久しぶりだ。リースの城の中にはもう慣れたかな。特に、姫様の護衛は―…。」
そう、そいつは、俺の復讐への協力者であり、危険な感じのあるかつてのリース王国の宰相であった…ベルグだ。
「十分、ここには慣れているつもりだ。つ~か、何年もここにいれば、嫌でも慣れるわ。それに―…、ベルグー…、お前の方がこっちの城に俺よりも長くいたんだから堂々と入ってきてもよかったのではないか。」
今でも姿を現せれば、顔パスで簡単にリース城の中に入れるだろうに―…。
どうしてまた、このようにコソコソと城の中に入ってくるのだろうか。
まあ、知られたくないということでもあるのだろうか?
それよりも、ベルグって、俺よりも長くリース王国にいたのか?
まあ、関わり始めてからというのが俺より長いかもしれないということにしておこう。
俺の覚え違いだったとしても―…。
「まあ、あまりここに表から堂々と入りたいとは思っていなんだ。それに―…、俺はもう、ただの一般人と変わらないし、リースとは縁をランシュとの繋がり以外は完全に切っているのだよ。今は、ゆっくりと研究中さ。十数年前に俺のライバルみたいなのが異世界へ行き来させることができる方法を確立していたみたいなんだよ。それをさ―…、数日前に知ってさ驚いたんだ。」
「そんなことは今は、どうでもいいんだよ。で、用件は何だ。ただ、俺と喋りたいがためにここに来たわけじゃないよなぁ?」
こうやってコソコソと長く話すと、いろんな意味でこの会話がバレる可能性が高くなるだろうに―…。
本当に、お喋り好きだなぁ~。
そして、ベルグは、本題に入るのだった。
「そろそろ、いいんじゃないかな。レグニエドを殺しても―…。彼にはよくさせてもらったよ。いろんな意味でね。だけど、ランシュの復讐の方が俺的には興味があるんだよ。そのために協力するのなら、かつての主君など取るに足らない存在さ。時代が変わるように、同じものは一切ない。過去に飲み込まれた男など、この世から消えることがリース王国のためになるさ。そして、それは、僕にとっても動きやすい。もう、二、三年したら動けるようになるんだよ。僕の予定では―…。異世界渡行ができるようになるんだよ。まあ、最初は、一人や一物質ぐらいしかできないだろうけど―…。そうすれば、ローに少しだけ差を縮められるからねぇ~。」
興奮しすぎだろ。バレるだろうが―…。
まあ、ベルグは馬鹿とは正反対にいるような奴であり、対策ぐらいはしている。
俺が来て、すぐに結界を張っていたのだから―…。
本当に、俺では追いつけないと思えるほどの強さだ。
「ベルグ、お前の研究自慢はほどほどにしてくれ。で、もう殺していいのか。俺のレグニエドを―…。」
研究自慢は、俺には興味のないことだ。
自分とお仲間で進めていって欲しい。
それに過去に言っていたよな。
―リースへと仕えて、レグニエドに対する評価を得るべきだろうね。ただの暗殺じゃ意味がないよ。そんなの。レグニエドの評価を得れれば、重要な役職を任されるようになるし、暗殺しやすくなるよ。そして、ここからが重要だよ。それは、レグニエドを殺して、ランシュ、君自らがリースの民の誰もからお前を王と思わせるようにしないとね。そうすれば、きっと君に起こった悲劇で死んだ家族も報われるだろう―
俺はレグニエドの姿を見ながら、感情を抑えつつも、嫌悪感と吐き気を何度感じたことか。
今回のレグニエドと関係しているのであれば、ついに、エルゲルダに続いて、復讐の許可が下りるのだろう。
これは、俺にとってやっとかという気持ちにさせるものだ。
「ランシュは、鋭いねぇ~。そうだよ。本当の理由は、二、三年後に異世界渡行がある程度完成したら、実験をしようと思うんだ。世界を支配するためのね。それには―…、リース王国内のある場所にコツコツと造っているものがあってね。それを稼働させると、リースとその周辺の国に気づかれてしまうんだよ。それでもいいんだけど。その間、ローの足止めとかしないといけないんだ。この周辺で大きな国であるリース王国に対処されるような状態では困るんだ。だから、レグニエドを殺し、しばらくの間、リース王国の王位を空白にしておく必要がある。そうすると、王位を狙って、内側は混乱するだろうし。ローも迂闊に動くことはできないしね。だから、だよ、ランシュ。」
ベルグの目的も、俺の復讐によって都合よく動くというわけか。
まあ、ベルグの目的は、俺にとって関係のないことだな。
俺がやらなければならないことは、クルバト町で母と妹の命を奪うことになったことに対して、主要な役割を担ったレグニエドへの復讐なのだから―…。
「わかった。たとえ、ベルグに利用されようとも、俺は、俺の復讐を達成する。俺が生きるために―…。」
そして、ベルグは俺の言葉を言い終えると―…。
「では、今日はこれで行くよ。僕も実験で忙しいからね。後、フェーナの方では、サンバリアの民主革命を成功させたみたいだよ。」
フェーナか。
あいつとも、しばらくの間、会ってはいないし、そんな砂漠の向こうにある国で革命とか起こしていたのか。
まあ、俺にとってはどうでもいいことでしかないが―…。
ベルグがどこかへと消えるのだった。
本当、どうやって消えているのか。
これで、ようやく、できる。
この我慢の日々から解放される。
レグニエドに褒められるなんてなぁ~。
吐き気以外に何も感じなかったよ。
何、自らの娘と俺との冗談としていわれた結婚の話に対して、嫉妬かよ。
するかよ~、馬鹿が―…。
俺にはいらないものだ。
たとえ、心の奥底で、望んでいたとしてもなぁ。
俺はあの日から決めたんだ。リースに復讐するために生きるんだと。
俺は、セルティーの部屋の横にある王女侍従室へと向かうのだった。
護衛を続けないといけないからな。
俺は、リース城の中の廊下を歩いている。
中庭の方から部屋へと向かって―…。
そこに―…、護衛対象の姿が―…。
「眠れないのですか、セルティー様。」
「ランシュか。」
俺の声に気づいたのだろうか、セルティーは俺の方へと視線を向けてくる。
「はい、ランシュです。どこかへと行かれるのであれば、護衛しましょう。」
セルティーのことだ。
眠れなくて、夜風にでもあたろうとしているのだろう。
ということは、俺のすべきことは決まっている。
「一人で行きたかったのだが―…。」
少し不満そうに文句をセルティーから言われるが、護衛対象に何かあったら困るのはこちらなので、一人で行かせたりしません。
一人行こうとしても無駄だからな。
「一人で行かせられるわけがありません。もしものことがあれば、護衛の者たちに責任が降りかかってきます。たとえ、セルティー様が良いと思っていても、あなた様の行動は多くの者に影響を与えるのです。そこのところをご理解ください。」
「わかった。なら、しっかりと護衛をしなさい。そして、話の相手になってもらうよ。」
納得してもらったようだな。
本当の意味で納得したのかはわからないが―…。
話し相手かぁ~。
まあいいか。
聞くだけだろうし―…。
「わかりました。お供いたします。」
そして、俺とセルティーは、中庭へと向かうのだった。
俺に関しては、戻るというのが正しいことなのだが―…。
「きれいだ。」
セルティーが中庭へ出て、星を見るとこのようなことを言う。
お世辞抜きで空を見上げると、そこには綺麗な星々が、さまざまな光を放っていた。
光が強いものもあれば、弱いものもある。
そこに、個性を感じられるほどに―…。
だからなのか―…、心の中で言葉にしてしまう。
……いつぐらいだろう。
こんなにもしっかりと星空を眺めたのは―…、たぶん、まだ―…、いや、よそう。
今ここには、セルティーがいる。
弱みは見せるわけにはいかないし、感傷に浸っているわけにはいかない。
気を引き締めないとな―…。
ここで、自分の本当の感情を、復讐に関することを漏らしてしまえば、すべて無に帰してしまう。
だけど、思い出は俺の中で少しだけ侵食して、回想のように、記憶という映像に映されていく。
―星が綺麗だな―
―うん、兄さんとこんな星を見られるなんて―
―そうか、一緒にこれてよかった。見せたかったからな―
―うん、兄さん―
これは、夜、ヒーナと抜け出して星空を眺めた日の場面だ。
―夜の星空を見てみたい―
という、ヒーナの要望を受け入れて―…。
―しょうがないなぁ~。母さんには秘密だぞ―
―うん―
この時のヒーナの表情は、満面の笑みだった。
もう戻れないことだけど―…。
―こんなきれいなお星さまがみられるなら、また、今度来たいなぁ~―
その今度は、来なかった。
―そうか、わかった。今度は母さんの許可を取って一緒に来るか―
―うん―
俺は、復讐者だ。
きっと、レグニエドに対する復讐を果たせば、この記憶も綺麗になるだろうか。
本当にそうなのならば、頑張って復讐を遂げる。
「ランシュ、なぜに泣いているのだ。」
泣いている? 俺が?
「えっ、いや、泣いていません。目にゴミが入っただけでしょう。もういい加減いいでしょう。さっさとお戻りしましょう、セルティー様。」
そんなわけないだろ。
だけど、何か顔の方に何かが流れているような感覚が急に―…。川のような感じの―…。
泣いているわけない。
「そうね。」
何で、ニヤつくんだよ。
ムカつくな、本当に―…。
そして、俺とセルティーは、中庭から城の中へと戻っていくのだった。
第130話-3 種は成長し、花として咲く に続く。
誤字・脱字に関しては、気づいた時に修正していると思います。
そろそろ、第68話と第69話で書かなかったランシュの動向の描写も入れていきたいと思います。できれば―…、というような感じになると思いますが―…。
次回の投稿は、次回の投稿分が完成した後、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年4月8日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年4月9日頃を予定しています。