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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
288/748

第130話-1 種は成長し、花として咲く

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国総統エルゲルダが仕掛けた戦争に、ランシュの活躍もあり、エルゲルダとシエルマスの統領が倒され、リース王国の勝利に終わるのだった。

そして―…、あの復讐の日へと近づくのだった。

第130話も内容の量が多いこともあり、分割していきます。かつ、第130話は二年前のレグニエド暗殺事件をランシュの視点から描いているので、セリフがほとんど同じになっています。セリフに関しては、いくつか修正しています。

まだ、第68話と第69話の方の修正は終わっていませんが、それに関しては、暇がある時にでもおこなっていくと思います。

 【第130話 種は成長し、花として咲く】


 あれから二年になるのか。

 そう、ミラング共和国が宣戦布告してきた戦争から―…。

 結局、俺は、復讐対象であるミラング共和国総統のエルゲルダを殺すことに成功している。

 さらに、リース王国にとっては、ミラング共和国を併合し、首都ラルネは、リース王国の直轄都市となり、七つの領地のうち五つほどは領土を安堵される結果となる。

 安堵されなかった二つの領地に関しては、リース王国のラーンドル一派の手の者が領主となって、悪政をおこなっているそうだ。

 その統治は、酷いものであり、そこの住民は何度にわたって、反乱を起こすが、リース王国の軍事力の前に鎮圧されて、余計に苦しい状況となり、逃げだす者が多いのだとか―…。

 俺としても、そのことに関しては住民の側に同情できるが、俺自身の目的を達成していないし、物理的に住民にとって都合の良い結果を現実に起こせないので、手を差し伸べることはしない。

 自業自得だとは思わないし、そこの住民だって追い詰められての選択なので、彼らのことに対して、文句を言う気はない。

 人なんてものは無力な一面や時もあり、その逆の時もあるのだから―…。

 戦争に従軍して戦った兵士や傭兵に関しては、中央軍の指揮官が一番の戦果をあげたとされ、その人物がリース王国の兵士のトップ、総兵将軍という役職に任命された。

 前のトップは、高齢であり、戦場で指揮をとれるのか不安に思われていて、このミラング共和国との戦争で、ちょうど良い後継者が見つかったのだろう。

 だけど、実際の戦場を知っている者からしたら、こんな奴をリース王国の兵士のトップするのだけは勘弁して欲しいし、兵団から追い出せよ、ってな感じだ。

 ハミルニアは、戦果をあげているので、報奨を貰ってもおかしくはないが、残念ながら、その報奨自体がハミルニアのひと月分の給料の十分の一という、見合っていないものだった。

 そのことに関して、出会ったハミルニアに、愚痴として俺は聞かされるのであった。

 まあ、ミラング共和国との戦争で、優秀な将軍クラスの兵士との人脈がしっかりとすることができたので、後々の利益になると思って、我慢して聞いていた。

 他の兵士の報酬も、ラーンドル一派と繋がりのない者は、微々たるものでしかなかった。俺とヒルバスもだが―…。

 さらに、傭兵で一番の報酬を貰ったのは、アンバイドだという。

 アンバイド自身は、ミラング共和国との戦争の戦勝記念に出席することは辞退し、報酬だけを多額に貰って、どこかへ行ってしまったのだ。

 まあ、アンバイドのような強い傭兵の報酬をケチれば、どういうことになるのか、ということがわからないリース王国ではないだろう。

 リース王国の騎士団に関しては、参謀が加わり、騎士団自体が強化されるようになった。

 そう、イルターシャがいつの間にか騎士団に入団していたのだ。

 一体、どうやって―…、っと、イルターシャに言われた時に思ったほどだ。

 フォルクス騎士団長もすぐに入団の許可を出した。

 フォルクス騎士団長によると―…。


 ―天成獣の宿っている武器を扱うことができるそうだし、軍隊を指揮した経験もあり、かつ、常時の治安維持活動にも向いている属性だ。それに―…、我々の騎士団で、騎士として指揮官としての才能があるかもしれないメルフェルドの良い教育係にもなる。ならば、騎士団にとって、イルターシャを入れないという選択肢はない―


 との、ことだ。

 それを言っていたのが、勝利の祝いを宿舎でやっていた時に聞いたのだ。

 根回しが早いな。

 まあ、その後、イルターシャは、メルフェルドに対する軍隊の指揮の仕方の教育や治安維持活動においても活躍しているそうだ。

 イルターシャの持っている武器に宿っている天成獣の属性は幻であり、相手に幻を見せることによって、人質を安全に解放させることができ、相手に抵抗させる可能性を低くして、騎士が命の危険に晒されることも少なくなっており、騎士団では重宝されていたりする。

 完全に、リース王国の騎士団に溶け込んでしまっている。

 レラグに関しては、リース王国の文官の方に就職したが、その時に俺の意見で、騎士でもないのに「騎士試し」をやらせると、天成獣の宿っている武器に選ばれてしまったのだ。

 俺としては、戦力強化という意味合いでおこない、ミラング共和国との戦争で恨んでいる人間が何をしてくるかわからないので、文官の中にも天成獣の宿っている武器を扱える者がいた方が時間を稼ぐことができるという表の理由を、武器倉庫の管理人に理由として言っている。

 まあ、気づかれにくいだろうが、怪しまれるのは避けられそうにないだろう。

 だけど、今のところはそれもないようだ。

 ヒルバスは、一年前ほどにメタグニキアというリース王国の現宰相の部隊へと移籍した。

 俺としても、王族護衛以外で宰相というルートを確保することで、レグニエドへの暗殺成功の可能性を広げておく必要があると判断して―…、というわけだ。

 それに、ヒルバスの武器や能力は、隠密や暗殺という面でしっかりと実力を発揮すると思っているし、ミラング共和国との戦争でもその能力が大いに役立っている以上、その能力を生かせる場をもらえるチャンスがあるのに、不意にするのはもったないと思う。

 それに能力を発揮させることは、社会に貢献することを簡単にさせてくれるのだから―…。

 で、俺はというと―…。

 リース城の中の護衛対象の部屋の中にいて―…。 

 「ふう~、きつい~。剣術以外のことをしたいよぉ~。買い物とか、買い物とか。」

 文句言ってきやがるよ、この女は―…。

 それもぐで~っと椅子に座り、机に向かいながら―…。

 しょうがない。ちゃんと言わないとな。

 「それは許されません。セルティー様、あなたが外で買い物をするだけで多くの護衛を必要とします。それに、セルティー様はレグニエド様の愛娘でありますがゆえに、他の王位候補者の刺客によってお命が狙われるかもしれません。私たちにとって、セルティー様は無事に女王の位に即位してもらわないと困ります。外への買い物などは、引退されてからで十分にできます。」

 そう、王族の面倒くさいところだ。

 もし、このセルティーをラーンドル一派の宰相の許可もなく、勝手に城の外に出せば、俺は最悪、何かセルティーの身に危険な目にあえば、それだけで俺の命はないと思った方がいい。

 それぐらいに、セルティーを外に出すことを嫌うのだ、ラーンドル一派は―…。

 リーンウルネのことがあるのだろう。

 そして、俺としては、セルティーを仕事としては守るが、そうでなければ、どうでも良いというか、レグニエドに対して、復讐するために利用できれば良いと思っている。

 だけど、なるべく無罪なセルティーを傷つけようとは思わない。

 そして、性格は我が儘なところがあるが、リース王国、いや、この地域で特に信仰されている宗教の熱心な信仰者である。

 何も知らないという無知というか、素直というか―…。

 もう少し思慮深くなって欲しいものだ。

 「はい、はい、うるさいねぇ~。ランシュは、私の母上か。それにね、(いえ)の中にずっといるのは、退屈なのよ。わかる、刺激が欲しくなるのを―…。ランシュ、あなたにはわからないだろうね。」

 溜息をつきながらセルティーは言うが、溜息をつきたいのは俺だ。

 剣術の稽古が嫌いだからって、俺に向かって文句を言わないで欲しい。

 セルティーの武器は、長剣であり、武器としても大きいので、剣術の稽古がどうしても必要なのだ。

 その武器には、天成獣が宿っており、過去にはリース王国の建国者の伴侶が扱っていたものであり、セルティーがその天成獣に選ばれたということを知ったラーンドル一派は歓喜したほどだ。

 まあ、対外的にセルティーの扱う武器を宣伝すれば、やりたい放題に自らの有利なことすることができるのだから―…。

 本当に、自らの欲求には素直だな。

 まあ、この間に、俺はセルティーの筆頭護衛騎士ということになり、側付きという感じになっている。

 セルティーの護衛になって三年かぁ~。

 そして、俺が側付きになっているのは、年齢が近いという理由らしい。

 いや、それなりに離れていると思うのだが、王族護衛になるのはそれなりの歳を経てからというのが多いので、若い年齢でなるような人は数年に一人いればいいほどだ。

 ということで、王族護衛の騎士の中で一番若い俺が、セルティーの護衛となっているわけなのだ。

 間違いを犯す気はさらさらないしな。

 「王族であろう人が溜息とは―…、呆れます。しかし、セルティー様の気持ちもわからないわけではございません。辛い気持ちはわかります。それでも、あなた様が王族で王様の愛娘である以上、あなた様の安全が第一です。これだけは、何としても譲れません。」

 はっきり言ってやった。

 そして、俺はセルティーの方へと視線を向けると、悲しい表情をしていた。

 俺がセルティーを城の外に出せるわけがないだろ。

 俺は王族の護衛騎士の一人でしかなく、レグニエドへの復讐を達成するまでは、なるべく大きな問題を起こすわけにはいかないのだから―…。

 「わかったよ。ランシュの言う通り、城の外には出ないから―…。」

 ぶっきらぼうに言ってるよ。

 まだ、心の中で納得していないようだ、セルティーは―…。

 あっ、そういえば借りていたものがあったんだ。

 読み終えたし、返さないとな。ここはセルティーの部屋なのだから―…。

 これで、少しは機嫌を直してくれれば―…。

 「セルティー様。」

 と、俺は、声をかける。

 「何!! 機嫌悪いんだけど―…、ランシュのせいで―…。」

 機嫌悪い表情で、俺に向かって、セルティーは言ってくる。

 はあ~、面倒くさいが返却しないといけない物があるし―…、ここは耐えて―…。

 「ありがとうございました。天成獣のことが書かれた本を貸していただき―…。」

 俺は、セルティーに天成獣の本を数日前に借りていた。

 俺も天成獣に関する情報はそれなりに知っているとしても、基本的なことを忘れているかもしれないし、かつ、知らないことが書かれているのではないかと思い、セルティーとの間のコミュニケーションをとっていきやすいようにするという理由もあって―…。

 本自体は、かなり役立つものであったというのは、言うまでもない。

 理論的に書かれていたので、そこが良かったが、少し難しかった。

 そして、俺は、セルティーに感謝の言葉と深々と一礼する。

 これで、話を逸らせるかもしれない。

 その言葉を聞いたセルティーは―…。

 「そうか、よかった。役に立ったか。」

 満面の笑みで返事をしてくるのだった。

 「はい。」

 と、俺は返事をする。

 この時は、笑顔でいた方が良いだろう。

 相手の好意に対しては、ちゃんとそういうことをしておかないと―…。

 本心半分、嘘半分と―…。

 「そうか、そうか。よかった。もしも、この城えから自由に外に出られるようになったら、その時は―…、誰かとデートでもしたいなぁ~。」

 俺を見ながら、セルティーは何か変なことを言うのだった。

 まあ、妄想の類であろう。

 リース王国の王族が自由に恋愛して、結婚なんてできるわけがない。

 現に、レグニエドとリーンウルネの双方ともに、ラーンドル一派が自らの都合にとって良い娘を選んだのだろうが、その娘がとんでもないぐらいに人望があり、かつ、リース王国に貢献し、ラーンドル一派に反抗するほどの実力を有することが可能だったのだから、ラーンドル一派にとっては大失敗でしかなかっただろう。

 そのことを考えれば、セルティーの旦那というのは、ラーンドル一派の中でも有力者で、かつ、忠実な者、もしくは、ラーンドル一派のトップ自らとの結婚という可能性も出てくるというわけだな。

 俺には関係のないことだ。ご勝手に…としか言いようがない。

 「誰かとは言いませんが、その時には、すでに、年を召されているか、亡くなっているかどちらかですね。」

 たとえ、その誰かというのが俺だとしても、すでに、仮にセルティーが王女の人を全うしたとしても、セルティーはおばあちゃんと言われていてもおかしくない年齢や見た目になっていることは間違いないし、生涯を全うしていることもかなりあり得ることだ。

 事実なので、真顔で言った。

 この俺の言葉に対して、セルティーの表情が怒っているような感じになる。

 いや、本当になっているのか。

 「ランシュ、よく言うなぁ~、その口は―…。」

 腹を立てられてしまったようだ。

 セルティーの内面のことを知りたいとは思わない。

 俺は復讐者なのだから―…。

 「ランシュの分からずや!!」

 怒鳴られた。

 この話、どうやって終わらせる。

 そんな俺の願いを聞いてくれたのだろうか―…。

 「あの~、セルティー様。お部屋にお入りしてもよろしいでしょうか。」

 良かったぁ~。

 「ああ、入ってかまわない。」

 セルティーが入室してもいいと言うと、部屋の中に一人の女性が入ってくるのだった。

 この女性は、セルティーに側仕えするメイドの一人であるニーグだ。

 セルティーとは、かなり長いのかどうかはわからないが、俺がセルティー付きの護衛騎士になるよりも前からセルティーの側にいた。

 ニーグは、部屋の中に入った後、部屋のドアを閉める。

 「セルティー様。そろそろお夕食の準備が完了します。食堂部屋へと―…。さらに、今日はレグニエド様も同席される予定となっております。」

 今日の夕食は、レグニエドも参加するのか。

 暗殺する機会としては、絶好かのように思われるかもしれないが、周囲にはレグニエドの護衛もいるので、暗殺をするのはなるべく避けた方が良い。

 できないわけではないし、逃げ切れる自信もある。

 だけど、ベルグからレグニエド暗殺の許可を貰っていないし、かつ、逃げ切ったとしても、逃亡生活というのはかなりストレスになる可能性もあり、裏切りも多く、危険なことでしかない。

 ゆえに、今回、レグニエドの顔を見ても、暗殺という愚行に出る気はない。

 何事にもタイミングが重要というがことだ。

 「そうか、わかった。では、参ろうか。」

 セルティーは悲しそうに言う。

 まあ、悲しい気持ちを俺が理解する気はないがな。

 「さっさと、ランシュに告白して、駆け落ちもしくは、レグニエド様に結婚の許可でももらってください、セルティー様。」

 おい、そんなこと、冗談半分でも言うべきことではないだろ。

 ラーンドル一派がそんなことを許すと思っているのか。

 ラーンドル一派は、リーンウルネのような反抗する人を二度と出さないために、ラーンドル一派のトップ自体がセルティーとの結婚を狙っていると噂されているぐらいだぞ。

 俺という田舎者の存在との結婚を許すほどのことをするわけがない。

 それに、俺の方としても迷惑だ。

 なぜなら、レグニエドの関係者と結婚とか!!

 というか、レグニエドへの復讐がしづらくなるだろ!!!

 本当に、このメイドは、何てことを言ってくれるんだ。

 「ニーグ、何を言っているのだ。そんなことはありえないのだ。ありえるわけがないだろう。私は王族だ、王族が騎士と…、け…結婚とかありえない!! 身分が違いすぎる!!! 互いに不幸になるだけだ!!!!」

 セルティーは、慌てながら否定する。

 常識的に考えてそうだろ。

 偉いぞ、セルティー。

 この面に関しては、俺は心の底から味方になることができる。

 まあ、それ以外はなぁ~。

 うん、それ以外は見なかったことにするべきか?

 「そうですね。」

 ニーグが心の中で絶対に笑っているな、絶対に―…。

 「う―――。」

 あ~、セルティーが唸り始めちまった。

 本当に、どうでもいい会話だ。

 まあ、平常心を保つぐらいはできるのだがな。

 こういう表情をする方が愛嬌があって、親しみを持たれるのだろうなぁ~。

 再度言うが、どうでもいいが―…。

 決して、セルティーとの結婚の噂になったことに対して、少しだけ心の中で照れていたという気持ちなんぞないからな。

 「食堂に行くぞ。」

 セルティーがこれ以上、揶揄われるのが嫌だったのか、怒りながら言い、自室を出ていくのだった。

 護衛騎士である以上、主人についていくのは当たり前のことなのだから―…。

 ニーグとともにセルティーを追って、一緒に食堂部屋へと向かうのだった。


第130話-2 種は成長し、花として咲く に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第130話に入りましたが、どのぐらいの分割になるかは、今現時点では、わかっておりません(2022年4月3日現在)。なので、できるだけ長くならないようには気を付けますが、長くなってしまったらごめんなさい。第68話と第69話の合計なので、長いという思いますが―…。

次回の投稿に関しては、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。文量も多くなるのかな?

では―…。


2022年4月6日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年4月7日頃を予定しています。

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