第129話-16 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュは復讐対象の一人であるミラング共和国総統のエルゲルダを殺すことに成功する。その後に、イルターシャのいる陣地へと戻ってくるのであった。ハウルラを抱えて―…。
「えっ…。」
ハウルラは驚いているな。
仕方ないよな。
実は、脅されて案内させられたが、脅した相手が二つの国の元首を殺そうとしているのだからな。
とんでもない人に当たってしまったのではないか、と―…。
まあ、そうなんだがな―…。
そして、ハウルラは、ここから抜け出すこともできない。
ここで、ハウルラは一つの重要な問題が発生することになる。
なぜなら―…。
「ハウルラ。」
俺は、ハウルラに声をかける。
重要な問題だし、これは忘れてしまいそうなので、ちゃんと確認しておかないといけない。
たぶん、話は、俺の部下になるとか、そういうことへと向かって行くと思うので―…。
後は、クルバト町と俺の復讐に関する超重大な話も加わる。
なので、重要度が他と比較すると低い話を確認しておく必要がある。
「なんですか。」
「エルゲルダは、俺が殺すことに成功している以上、確実にミラング共和国はリース王国によって滅亡しているのは確実と言ってもおかしくない。さらに、シエルマスの統領も俺との戦いで、生きていないし―…。そうなってくると、リース王国軍が城を占拠して、そこで働く人間を把握することは避けられないだろう。つまり、ハウルラの名前はリース王国側にもバレるし、かつ、兵士たちの証言で、エルゲルダを殺した可能性のある人間だと推定されるかもしれない。ミラング共和国の官僚にも、リース王国の官僚になることも難しくなる。俺としては、ハウルラの命の安全の保障を約束した以上、こっちとしては、名前を変え、俺の部下になることを勧める。」
そう、ハウルラは、どっちにしても俺の側につかないと命の保障がないのだ。
俺としても、ハウルラを殺したいわけではないが、リスクを考えるとそのような行動をとらざるをえない。
ヒルバスとか迷いもなく、やりそうだ。
忠誠心はかなりあると思えるが―…。
「私は、ランシュさんの部下になりますよ。どう~せ、リース王国からは恨まれることしかないし、しばらくの間、どこかで大人しくしておくぐらいは、難しいことじゃないからね。」
「そうか、助かる。」
イルターシャは、油断も隙もないな。
そして、素早く自分の状況を理解し、どういう選択が一番なのかを理解した上で、最善の解答を最良のタイミングで言ってくるのだ。
完全に味方になってくれるのであれば、どれほど心強いことだろうか。
だが、そうでなければ、油断も隙もなく、いつ裏切られるかを疑ってかからないといけないという精神の休まることのないという状況になり、冷静に判断を下すことが俺にはできなくなるだろう。
本当に、イルターシャという女は難しい。
それでも、助かるというのは事実だが―…。
一方のハウルラは悩むだろうなぁ~。
人生の一つの岐路と言っても過言ではないことになっているのだから―…。
しばらく、悩むだろうが、仕方ない。
が、決まったようだ。
「私も自分の命のために、ランシュさんの部下になりましょう。ランシュ様と呼んだ方がいいでしょうか。」
ランシュ様?
「まあ、呼び方に関しては、自由だが―…。そして、名前に関しては―…。」
その後、ハウルラは自らの名前をこれからは、レラグとするようになった。
そして、少しだけ時間が経過。
話は、俺のことへと戻る。
「ランシュさんの目的は、エルゲルダとレグニエド王への復讐。そのうち、エルゲルダに関しては復讐を達成しており、残るはレグニエド王ということになりますね。レグニエド王に関しては、ランシュさんが王族の護衛である以上、殺すことは簡単だと思いますよ。ランシュさんほどの実力は、リース王国でもかなり珍しいではないですか。」
イルターシャは、正論を言う。
現に、レグニエドを殺すこと自体はそこまで難しいことではない。
いくらでもチャンスがあったし、殺したとしても逃げることは可能だ。
だが、ベルグはレグニエドの暗殺に対して、許可を出してはこない。
ベルグにとって、何かあるのは確かだろうし―…。
それに―…、ヒルバスの約束もある以上、自らの勢力を築くことが可能な状態になる前に、レグニエドの暗殺をしてしまうと、返ってラーンドル一派によって、俺たちの方が利用されるもしくは抹殺されてもおかしくはない。
ラーンドル一派が、凄腕の天成獣の宿っている武器を扱う人を雇って―…。
リース王国は、この地域における領主国家や王国の中で、トップクラスと言ってもいいほどの実力を誇っている。
理由は、首都のリースが交易の中継地および内陸交易を繋ぐ重要な場所にあり、多くの船や商人が集まるからだ。
ゆえに、勝手にその中間貿易による収入をしっかりと税金として設けていれば、入ってくるのである。
これ以上、経済面について心の中で思考していても、ここでは意味がない。
要は、リース王国は、交易都市リースを抱えていることにより、豊かであり、そこから得られる税収が多く、その資金がラーンドル一派に流れていることから、そういう強い奴を雇って、俺たちを殺すことは簡単なのだ。
だからこそ、レグニエド暗殺には、慎重を期さなければならなくなる。ヒルバスの約束のおかげで―…。
ヒルバスの約束以外に関しては、イルターシャは俺の思っていることをすぐに理解しているだろう。
「まあ、俺の天成獣のトビマルの宿っている武器が、昔、リース王国を建国した王様が扱っていたものなんだ。それゆえに、レグニエドを暗殺して逃げ切る事は可能だが、その後ろにいるラーンドル一派を倒すのはかなり難しいし、雇われたりすると対抗できない可能性もある。さらに、ヒルバスとの約束で、レグニエド暗殺後のリース王国の運営をすることになっているし、ラーンドル一派を排除しないといけなくなっている。だから、俺は、しばらくの間、レグニエドを暗殺しようとしても、暗殺はできないというわけだ。」
というか、ベルグ、そろそろレグニエドの暗殺を許可してくれよ。マジで―…。
まあ、気まぐれかもしれないが、約束を破って行動すれば、何をしてくるか分からない。
というか、俺がいくら強くなったとしても、ベルグに勝てるという気持ちにはならない。
なれるわけがない。
何かベルグには、根本的に、人とは思えない、絶対に逆らうことができないと思わせるほどの、圧? みたいなものを感じてしまう。
まあ、二人にはベルグの存在を言う気はないが―…。
ヒルバスは、実際に会ったことがあるから知っているだろうが―…。
「そうですか、わかりました。」
イルターシャは、納得したような表情をして言う。
だけど、これ以上、俺の復讐に関して、聞くことはできないと判断して、会話を終わらせたようだ。
「………すごいことに巻き込まれた―…。」
ハウルラ…いや、レラグが怯えながら言う。
まあ、レラグがこのような実力者の中にいたら、びっくりするのも、オドオドするのも当たり前のことか。
「話は終わったようですね、ランシュ様。」
「ヒルバスさん、ランシュ君ではなく、ランシュ様と言うのですね。」
「ええ、主従関係にあるので―…。」
「ふ~ん。」
何か、イルターシャが面白いネタができたとでも思った表情をしている。
……何か弱みを握られたような―…。
気にしすぎかもしれない。
それに、緊張することが一日続いたのだから、頭を使いたくな~い。
そう思っていると、イルターシャは、幻の世界を解除するのだった。
それから、夕方の頃合いになる。
そうなってくると、首都ラルネの方の声が昼間の頃よりも小さくなっていた。
昼間は、戦っていたのだから、武器の音やら、天成獣の宿っている武器の衝突する音や攻撃音がいたるところから響いていた。
それも止んでいるのだろう。
首都決戦の勝敗は完全には分からないが、エルゲルダとシエルマスの統領は俺によって殺されている以上、指揮系統は乱れており、まともに戦いにはなっていないだろう。
だが、中央軍の指揮官で総大将がどうしようもないので、なかなか上手く戦いを進められていない可能性もある。
そう思えてしまう。というか、反対のことになりそうにないと思ってしまう。
「やあ、ランシュ君。」
ハミルニアが俺のいる場所へとやってきた。
幕の中にハミルニアが入ると、護衛の兵士はより警戒するのだった。ハミルニアの…、であるが―…。
「ハミルニアさん。何の御用でしょうか。」
「用がないのに来てはいけないのでしょうか。それは悲しいなぁ~。」
はいはい。本当にハミルニアも油断も隙もあったものではない。
「はい、とは言いませんが、それでも、戦時中である以上、用事がないのに上官が私のようなところに来るのは、ハミルニアさんの部下から依怙贔屓されているのではないかと見られてしまい、私の方が立場上辛くなるのですが―…。」
本当だ。
俺は、ただの王族護衛の一人でしかなく、リース軍の中でも上位で指揮官をすることができるハミルニアとの地位の差は歴然だ。
ゆえに、ハミルニアの部下よりも目をかけられるのは、余計な衝突にしかならないので、止めて欲しい。
どんな聖人君子な人だとしても、自分が相手よりも優れていたいという気持ちを完全に抑えることはできないし、ハミルニアへの忠誠心のない俺なんか、ハミルニアの部下にとっては気に食わないことでしかないだろう、と俺は勝手に思ってしまう。
「ハハハハハハハハハ、それぐらいでランシュ君を疎むような人なら、俺はそいつを出世させる気はないよ。だって、自分より能力がある者だって弱点がないわけではないし、能力がある者ができないことをすれば良い。人の優劣なんてものは、ある基準の中で上か下としか言っていないのだから―…。それに、能力のある者と仲良くなっておくことは、自分の考えの引き出しを増やすことになるしね。良い意味かは使い方しだいだけど―…。さて、用を済ませるとしますか~。ちゃんと、用事はあるんだよ。」
用事はあるのか。
うん、そうじゃないとハミルニアはこないしな。
「リース王国軍が首都ラルネを陥落させて、ミラング共和国軍の総指揮官を降伏させることに成功した。」
おお、一日で―…、何とかなったのか。
ハミルニアは続ける。
「今回の首都決戦では、リース王国軍の右軍と左軍が上手く、ラルネの中央へと向かうことができたが、後一歩のところで、中央軍の指揮官が乱入して、ラルネ城の中を一部の部下とともに城の中を確認したんだって―…。そうすると、エルゲルダの死体とシエルマスと思われる者たちの死体が見つかっている。俺も実際に見たが―…。何者かによって殺されたんだが、その何者かがわからないんだけど―…。」
ハミルニアは俺を疑っているのか?
ここで迂闊に言葉を出すのは良くない。
沈黙が正解だ。
「そこで考えられるのは、ミラング共和国の中でエルゲルダに恨みを持っていた勢力もしくは人物が、傭兵を雇って、この戦いの隙に殺させたか。そうなってくると、その傭兵の数が限られることになる。で、今回の傭兵でそのことが可能なのは、アンバイドだけであろう。だけど、アンバイドの武器は、特殊で斬るということをするとは考えられない。エルゲルダは斬り殺されていたのだからなぁ~。それにアンバイドは、今回リース王国側での参戦となっているので、最初の条件からあり得ないということになる。まあ、裏でミラング共和国の反エルゲルダ派に雇われていれば、別だけど―…。傭兵以外となると、ギーランという男が有名だな。そいつは剣を持っているが、リース王国とミラング共和国との間で、開戦した時からずっと、リーンウルネ様のところで滞在しているようだ。リーンウルネ様が何を考えているかは不明だが―…。そして、最後だが、リース王国の中でエルゲルダに恨みがある者が何かしらの方法で、ラルネ城へと侵入し、エルゲルダとシエルマスと思われる人物を殺した。この場合、空を飛べるランシュ君が怪しくなるんだ。もちろん、ランシュ君、君はそんなことをしていなよな。」
「ええ、していませんよ。ずっと、イルターシャの護衛をしていたのですから―…。」
やっぱり、油断することすらできない。
ハミルニアは指揮官として、リース王国軍のラルネへと攻撃した指揮官たちの中で、一番厄介だし、それに向いているとしか思えない。
俺は、ハミルニアに向かって嘘をつく。
この人は、俺の味方にすることはできないが、敵にして戦って、殺していいような人物ではない。
これが厄介なんだよなぁ~。本当に―…。
「うん、分かりました。」
ハミルニアが言う。
だけど、その表情は俺でもわかる。
俺は、エルゲルダを殺したということで疑われている。犯人だから、本当は疑われる対象にならないのは可笑しいとしか言えないが―…。
明らかに、どうやって侵入したのかは、空からということで攻めてくるだろうけど―…、俺の服装でリース王国軍の人間であるかどうかなんて分かりはしないはずだ。
そして、ハミルニアはこれ以上、エルゲルダを俺が殺したのではないかということに関する追及をしてくることはなかった。
「じゃあ、ゆっくりとした愚痴を聞いてくれるか。」
あ~、そうですか。
俺は、ハミルニアの愚痴を一時間ほど聞かされるのだった。
第129話-17 ミラング共和国との戦い へ続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正したいと思います。
あと、もうちょっとで第129話は完成すると思います。
無理しない程度に頑張ります。
次回の投稿に関しては、次回の投稿が完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年3月29日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は2022年3月30日頃を予定しています。内容は少なくなりますが、第129話は完成すると思います。