第129話-14 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュはついにミラング共和国の首都ラルネの城の中で復讐対象であるエルゲルダと対峙するのだった。
エルゲルダは動揺する。
俺がクルバト町の出身だと言ったのだから―…。
そのせいで、エルゲルダは言葉を発することができなかった。
俺は、エルゲルダの部屋にいた女たちに向かって言う。
「俺がクルバト町の出身であることは言わないでもらおうか。俺は、お前らの命を奪う気はないし、どことへも行けばいい。俺の用事は、エルゲルダ様だからなぁ~。」
女達は震えて、一か所に集まっているようだ。
なら、守りやすいというものだが、エルゲルダの女を殺すとは思えないが、エルゲルダが不利になれば、そのようなことをしかねないのは、可能性としてかなり確実性の高いものとして考えることができる。俺よりもエルゲルダやその護衛たちが―…。
本当に、何で復讐者の俺が守らないといけないのか。
しょうがない。俺が自発的に復讐をしている以上、余計な恨みを抑えるためには仕方のないことだし、それぐらいの配慮をしないと、俺にとっても最悪の展開になるし―…。
そして、ようやく、エルゲルダは話し始めるのだった。
「クルバト町だと―…。あそこは、俺の言うことを聞かずに、反対しやがったから~その見せしめに―…。」
ここで本音を出すとは―…。
オドオドした喋りをしながらも言えるとは―…、何というか、色に溺れて頭が弱くなったのだろうか。元々なのか。
そんなことをいくら推測したところで、エルゲルダ本人にしかどうやってなったのかわからないことであろう。
いや、本人もわかっていない可能性も存在するか。
まあ、そんなことを考えても仕方ないか。
「ああ、エルゲルダ様がクルバト町の税を増やすと示したことに対して、クルバト町の町長は反対し、町長との交渉も平行線で終了し、その帰りで町長は何者かによって殺され、埋められた。そいつに命じたのは、エルゲルダ様だという。そして、エルゲルダ様は見せしめにクルバト町を攻め、エルゲルダ様に繋がっていたクルバト町の一部の勢力と結託するも、そいつらも殺し、町で殺人をおこない、クルバト町を燃やし尽くすのだった。そのエルゲルダ様の遠征で俺の妹と母親は殺された。俺はその二人の死体をこの目で見ている。俺は、家族を殺したエルゲルダ様に復讐しに来たんです。エルゲルダ様―…、こんな呼び方は面倒くさいな…、お前を殺しに―…な。」
「儂を愚弄しおって~。それに、どこでそのような情報を手に入れた。まあ、考えても仕方ないか。だがなぁ~、お前は俺の部屋に入った瞬間に殺せば良かったぁ~。もう遅いがな―…。俺はミラング共和国の総統。絶大な権力を持っており、俺を裏切ったリース王国なんかよりもはるかに強い権力を…な。」
なるほど、最初から気づいていたけどな。
この部屋には、侵入者がエルゲルダしかいないと感じて、油断している隙に、護衛が素早く殺すということか。
まあ、殺そうとしても無駄だけどな。
威圧で動けないようにしているしな―…。
だけど、一人だけ、俺の決定的な隙というものを狙っているのがいるが―…な。
そいつが、護衛の中で一番強いのか。
何となくだけど―…。
天成獣の宿っている武器でも扱えるのか―…。
いや、数年前に俺が戦ったグルゼン親方は、天成獣の宿っている武器を持っていないのに、俺を倒すほどの実力を有している人物さえいると、その類なのかもしれない。
そうなると、かなり厄介なことになるが、俺としては、数年前よりも確実に強くなっている以上、対抗できないということにはならないはずだ。
だが、グルゼン親方よりも強いとは思えない。俺の決定的な隙を窺っている奴は―…。
ふう~。それよりも先に、雑魚を片付けるか。
〈トビマル。準備はいいか。〉
〈大丈夫だ。いつでも、本気を出して構わない。〉
と、俺はトビマルと念話をする。
トビマルは、すでに、俺がエルゲルダのいる部屋に入ったあたりから、再度、俺が使うことができる力の量をうまく練ってくれていたようだ。
練るという表現が正しいか分からないが、使える状態にしていたのは確かだ。
「だから―…、貴様は終わりなんだよ!! クルバト町の生き残りは、あの馬鹿な町長の一派にすぎないんだよ。殺せ、殺せ!!!!」
そういうと、護衛の中で一番強い奴以外が姿を現わし、攻撃を開始してくる。
それを、天成獣の生の属性の力を纏って、高速移動して、長剣を素早く構えながら、護衛の中の一人とエルゲルダとエルゲルダの女たち以外のこの部屋の中にいる人間を斬るのだった。
即、生を終えていたとしてもおかしくないどころか、自身を守ることができずに、そうなってしまっているんだがな。
たぶんだが、エルゲルダの中にいる護衛は、シエルマスでかためられているだろう。
「……………俺の護衛を一人だけ残して、あっさりと―…。ありえない。俺は逃げるのみ!!」
とか、言いながら、エルゲルダは逃げ始めるのだった。
自らの女たちを盾にしながら―…。
自分の命は大切だもんなぁ~。
権力者にそんなことを言われたら、これまで従わざるをえないか従っている女たちにとって、今までの恐怖によって、エルゲルダの言う通りにしないといけないという感覚がしみ込んでいるせいか体が勝手に反応するよなぁ~。
だけど、お前の肥え太った体形と日頃の運動不足のせいで、動きが鈍いし、走るよりも歩いた方が速いのではないかと思えるほどだ。
そして、俺がエルゲルダに復讐を果たすためには、護衛の中で一番強い奴を戦闘不能もしくはそれ以上の状態にしないといけない。
エルゲルダを襲えば、確実に俺へと攻撃してくるのははっきりとわかっている。
エルゲルダへの復讐を果たすことが確実になりかける辺りが、俺を殺すのに最高なタイミングだもんな。
なら―…。
「出て来いよ。俺は最初から気づいているんだよ。もう一人護衛がいるということを―…。」
と、俺は、護衛の中で一番強い奴がいる場所へと視線を向ける。
そこは、エルゲルダのいたベットの真上である。
そこは、天井と同じ色をしているが、明らかに直感的な感覚にすぎないが、そこに何かいるということがわかっていて、俺が指摘すると、色が黒色に変化し始めると同時に、消えるのだった。
こいつ、天成獣に選ばれた奴なのか!!
「ジ・エンド。」
俺の後ろから声がすると、俺は殺気を感じて、距離を素早く取るのだった。
そのおかげで、後ろからの攻撃を免れることができた。
そして、俺は、護衛の中で一番強い奴の姿を見るのだった。
「私の攻撃を避けるとは―…。まあ、ここで死ぬのは、あなたですよ、ランシュ。私は、ミラング共和国特殊諜報及び謀略部隊シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレでございます。まあ、ランシュには、私と同じかそれ以上の実力があるのではないかと思い、名乗った次第ですよ。」
いや、諜報や謀略部隊の隊長がここで名前を名乗るのはおかしい。
何となく想像がつくがな。
「そうか、俺はお前に名前を教えたわけではないが、シエルマスとやらには独自の情報網があるということだな。ということは、リース王国とミラング共和国の境での戦いで、俺の知り合いに殺されることを逃れた奴でもいたのか。後で、そいつに言っておかないとな。」
ヒルバス、何をしくじってやがるんだよ。
「まあ、そういうことにしておきましょう。それに―…、イルターシャがランシュ側に降伏して、ついてしまうとは―…。まあ、それは、今、暗殺部隊を仕向けているので、成功することでしょう。彼女は天成獣の宿っている武器を扱うことができないのですから―…。私と違って―…。」
あ~、なるほど。
この護衛の中で一番強い奴は、暗殺の実力はあるようだが、天成獣の属性に関しては知らないというか、イルターシャのことを完全に理解していないどころか、幻を見せられている状態なのか。
イルターシャは、このラウナン何たらよりかなり優秀な部類に入るということになるか。
まあ、部下にしておくのもいいな。
「そうか、まあ、俺の部下も優秀だから、そのイルターシャって奴は暗殺されないかもな。」
まあ、確実にイルターシャの暗殺はないだろう。
この部屋の中にいるエルゲルダの護衛の力を考えると、俺よりも弱いことは確かだろうが、ヒルバスの方がこういう場では俺よりも強いので、あっという間に終わってしまうだろう。ヒルバスの勝利によって―…。
「そうですか。まあ、その言葉が強く見せるだけの発言でしかないことを証明しますよ。」
と、シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレが言うと、姿を消し始めるのだった。
俺ではなくて、ラウナン=アルディエーレが―…。
だが、そんなものは、対したものではない。
ラウナン=アルディエーレは、イルターシャよりも天成獣の扱う才能はないようだし、圧倒的に差がある。
そして、シエルマスの統領である以上、こいつに生き残るという選択肢を取らせるということはできない。
後顧の憂いをなくすためにも―…。
さて、ラウナン=アルディエーレが透明になっておこなうことを考えると、二つに絞られるだろう。
まず第一に、俺の隙を探ろうとすること―…。
そして、第二に、エルゲルダを何らかの方法で逃がすために、自らが触れてエルゲルダを透明にするかもしくは時間稼ぎとして俺に襲いかかって、接戦を演じるか。
だが、後者の中のエルゲルダを逃がすためなら、無理に透明化する必要もない以上、一番の可能性が高いのは、同じく後者の中のエルゲルダを透明化させようとすると考えた方が良い。
ああ~、本当につまらんな。
そして、俺から逃れられると思うなよ。
ラウナン=アルディエーレ。
俺は、お前よりも実力が上であり、かつ、透明化させるという幻の属性を見破ることができるんだよ。
俺は集中し、ラウナン=アルディエーレの気配を探す。
いた。
そして、俺はすぐに自分の入ってきた入口ではなく、テラスに出る方へ出る扉の方へと高速移動して、長剣を構え、何もない空間を斬るのだった。
そうすると、体を右肩から斜めに腹部を通って斬られるエルゲルダの姿が見えるのだった。
エルゲルダは、この時、わずかに目を動いているようだが、ほんの数秒で動かなくなり、斬られたエルゲルダの体は真っ二つになって、倒れるのだった。
それを見たエルゲルダの女たちは、
『きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。』
と、叫び出すのだった。
叫ばない理由はないが、こうなってくると、この部屋へと兵士が来てしまいそうだ。
そして、俺は、
「お前らは自由だ。どこかへと行けばいいし―…。それに、俺のことを決して、誰にも話すなよ。俺も必要以上に人を殺したくはないのでな。」
と、強圧的に言う。
そうすると、エルゲルダの執務室にいる女たちは、服を覆い、部屋を出て、どこかへと消えていくのだった。
まあ、これ以上、会うことはほぼないだろう。
そして、エルゲルダの女たちが慌てながら部屋の外に出ようとしているどさくさに紛れて、俺の後ろにラウナン=アルディエーレが姿を現わすのだった。
「隙あり。」
と、言いながら、俺を刺そうと短剣を俺の方へと伸ばすのだった。
なぜ俺が知っているかって―…。
すでに、向きを変え、ラウナン=アルディエーレから距離を取り始めており、次の攻撃の準備をしていた。
長剣なんてお飾りでしかないので、長剣を手放して、土を展開して、自らの右手に覆わせていくのだった。
それも、鋭い形にするために、水分を含めませて―…、その後に火の属性を用いて乾燥させて―…。
「チッ!! 攻撃を外してしまいましたが、自ら武器を捨てるとは―…、馬鹿にもほどがあるな。隙ありです。」
と、ラウナン=アルディエーレは、俺へと向かおうとするが、俺は土で右手を覆って、形は、鋭い槍の先のようにして―…。
すぐに、足の方に光の力を纏い、ラウナン=アルディエーレに向かって、光速移動を開始して、一突きする。
「ガァ!!!」
そして、俺の一撃は、ラウナン=アルディエーレの心臓部に突き刺さり、そこにある骨を砕き、背中を突き抜けるのだった。
光速移動の結果、ラウナン=アルディエーレの体と俺の槍の先のような形をして右手を覆った土は、部屋の壁へと衝突するほどだった。
そして、覆った土ごと、ラウナン=アルディエーレから離すと、土の部分からラウナンの体を循環していた血がポタ、ポタと床へと水滴のように落ちていっていた。
俺は、覆っていた土の展開を解除し消滅させると、目の前にはラウナン=アルディエーレが倒れていた。
やったのは俺だ。
エルゲルダは斬られ、ラウナン=アルディエーレは突かれたのか。
さらに、ラウナン=アルディエーレがエルゲルダを先に犠牲にさせた理由は、本人を俺が殺した以上、確定的な答えは分からないだろう。
だけど、実際の理由は、主君よりも自分の命が大事というあたりなのだろう。
また、この部屋へとは、確実に衛兵が来ることが事実だろう。
そうなると、俺の正体がバレかねないので、俺の武器である長剣を回収して、すぐに部屋を出て、ハウルラの命の安全を保障するために、覆っていた土壁を解除する。
「何してくれているんですか!!!」
と、ハウルラが俺に向かってきて、怒りながら言う。
ハウルラが怒っている理由はわかっている。
なので―…。
「俺の目的は終わったが、そのことに関しては知らない方がいいというか、確実に後でわかる。それよりも、このままここにいると、ハウルラー…。お前の命はないぞ。」
と、俺が言うと、ハウルラは言葉を発することができなくなる。
別に、俺がハウルラの言葉を発せないようにしているわけではなく、俺の言葉に対して、頭の処理が追いついていないのだろう。
だから―…。
「じゃ、お前は俺とともに逃走するか。」
俺は、ハウルラを抱え、逃走するのであった。
エルゲルダの執務室に再度入り、そこのテラスから飛び立つのだった。
第129話-15 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
長引いている第129話だけど、重要なところは今回で終わったので、後もう少しというところまで来ました。そして、何とか2022年の3月31日までの第130話に突入できればいいなと思います。
次回の投稿は、次回の投稿分が完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年3月20日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年3月21日頃を予定しています。