第129話-11 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との戦争は、リース王国が優位に進んでいた。ランシュが属する左軍はオットル領地を進軍していくが、ゲリラ攻撃に悩まされるという結果となっていて、兵力が損耗していた。その中で、オットル領地のミラング共和国軍を率いている指揮官であるイルターシャを降伏させることにランシュたちは成功するのだった。
ミラング共和国の首都ラルネ。
そこには、左軍が一番早く到着することはなかった。
中央軍が普通に進軍して、兵士の数をかなり減らしながらも、何とか一番先に到着していた。
まあ、左軍はゲリラ戦法を展開されていたミラング共和国軍と戦っていたので、時間がかかるのは当然であろう。
だけど、中央軍の指揮官は、そのことを一切理解できないようだ。
本当に馬鹿としか言いようがないし、もしも、俺が総大将なら一発でクビにしている。
こんな奴を指揮官としていたら、味方の士気が下がって、どうにもならないのだから―…。
まあ、俺も予想できることであったが、ハミルニアは中央軍の指揮官に、到着が遅いと怒鳴られたそうだ。
なぜ、俺が知っているかというと―…。
今、その愚痴を聞かされているからだ。
少しだけ時が戻る。
「聞いてくれるかい、ランシュ君。」
ハミルニアが降伏したオットルー領地で戦っていた元ミラング共和国軍の本陣に姿を現わすのだった。
それも不機嫌そうな顔をしながら―…。
「何ですか、ハミルニアさん。」
一応、というか、ハミルニアは俺の上司なので、ちゃんと聞かないといけない。
御座なりな対応をすると、どこで俺にとって不利な命令をされるか、わかったものではない。
だが、そのようなことは実際にしないとは思うが―…。
保険という意味もあるのだ。
「ランシュ君、さっきさぁ~、到着したから、中央軍の指揮官のいる本陣へと向かったのさ。そこで、来るのが遅い、とか言われてさぁ~。罵倒され続けながら言うんだよ。やっぱり俺の方が優秀だとか、ハミルニアは駄目だとか―…。一番きついところを何とかしたのに~。もしも、俺が上だったら、あいつ一発でクビだよ。指揮官として失格だし、兵士として役立たずだよ。そうだよね、ランシュ君もそう思うよね。」
言ってくるなぁ~、というか、同意を求めないで欲しい。
「わかりますから―…。」
「そうか、そうか、ランシュ君ならわかってくると思ったんだ。ありがとう、ランシュ君。」
ハミルニアの言うことは理解できるし、納得することも可能だ。
中央軍の指揮官は、俺がそいつの上司なら一発クビにしていると思う。
だって、進軍したルートの相手軍隊の実力と自分の軍隊の実力をしっかりと把握していないということを中央軍の指揮官は認めていることになるのだ。
俺らが戦っていたのは、しっかりとリース王国の左軍の実力、中央軍の実力をしっかりと把握してゲリラ戦法を選択していたイルターシャが指揮しているのだから、しつこいし、時間もかかるのは当たり前なのだよ。
むしろ、イルターシャが率いている軍隊をリース王国側の味方にすることができたのだから、ハミルニアは褒められるのが筋だと思う。
中央軍の指揮官は、自らが無能であることは理解しているというか、わかっているが、認めたくないのだろう。
認めれば、自分の優位を失ってしまうのだから―…。
自らの権威を守るために、ハミルニアを罵倒し、貶めていて、それで自らの精神を安定させているのだろう。
しょうもないプライドだが、このプライドが余計に悪い方向へと向けてしまうことがあるのだ。
人生とは、一つの考えだけで生きていくことはできない。それが完全な意味で普遍的でなく、不変的ではないのだから―…。
ふう~、こういうことで今に至る訳だ。
「ランシュ君、話を聞いてくれてありがとう。」
「いえ。」
うん、愚痴を言うだけではないと思いたいが―…。
そして、ハミルニアの表情は来た時よりも晴れやかになっている。
やっぱり、ストレスというものは、溜めるのが良くないということを示している。
「そして、本題に入るとしよう。たぶんだけど、ランシュ君は、ミラング共和国の首都ラルネでの戦いに参加したいと思っているのかな。」
ハミルニアは、俺に尋ねてくる。
答えは決まっている。
だけど、理由はしっかりと別の理由にしておかないといけない。
できてはいるが―…。
「はい!! 理由は、数年前のミラング共和国軍の侵入も関係はありますが、そのことだけでなく、これ以上ミラング共和国の総統をエルゲルダの勝手にさせておくと、確実に、リース王国の災いにもなりますし、他の地域の平和にも影響を与えることは必死です。それに、リース王国の兵士の死を少なくするには、私が天成獣を用いて戦った方が確実に実行することができるからです。」
ハミルニアに俺は、俺が生まれ育ったクルバト町を燃やし、家族を殺したということへの復讐であることは言わなかった。
そう勘ぐられる可能性のある言葉も一切言っていないはずだ。
「うん、止めても意味がなさそうだね。ランシュ君、頭は悪くないけど、目的のためなら、味方すら反対を許さないような感じだし―…。それに―…、ランシュ君。一つだけ覚えておいた方がいいよ。君はもう少し視野を広げるべきだし、自らの目的のために不幸になってしまう人もいるぐらいだから―…。ランシュ君は、これから自らが謝った時のストッパーになる人物を見つけておく必要があるよ。で、ランシュ君は、ミラング共和国の首都ラルネにおける戦闘に参加。わかった。じゃあ。」
と、ハミルニアは言うと、近くにいたイルターシャとも話し、すぐに自らの陣地へと戻っていくのだった。
ハミルニアは油断ならない。
だけど、こちらへと深く踏み込むわけではないので、今すぐ対処しておく必要もないし、イルターシャと同様に俺の目的を妨害してくることはないだろう。
ハミルニアが大切だと思っている人たちを巻き込むのであれば、確実に関わってきそうだが―…。
まあ、今は、これからのミラング共和国の首都ラルネにおける対決の時、単独行動をし、エルゲルダを討つために、必要な情報をイルターシャから聞くことにしよう。
「イルターシャ、ラルネに関する情報を教えて欲しい。」
「そう。一人で行動するのなら、知っておいて損はないね。ラルネは円形の都市で、中央に城があって、そこにエルゲルダはいるわ。エルゲルダは外に出ることはなく、城内で自らの部下とともに毎日と言っても過言ではないほどに、遊び惚けているわ。自分の気に入った女を侍らせて―…。まあ、私は、天成獣の宿っている武器を扱っているから、行ったとしても、エルゲルダたちとそのような関係になったことはない。確かめてみる、ランシュ。」
「馬鹿なことは言わなくてもいい。で、エルゲルダが城の中にいるということはわかった。じゃあ、多くはどこにいるんだ。」
「それは、執務室もしくは…いや、戦闘となるとどこかに隠れているかもしれないし、逃げる可能性もあると思う。エルゲルダがどこにいるかは、城の中を探しながら、かつ、使用人もしくは側近を捕まえて、案内させた方が一番いいかもしれないわね。」
そうだな。イルターシャの言っていることは、実際に想定されることであるし、聞いていて損はない。
油断はならないが―…。
エルゲルダが逃げる可能性もあるのか―…。
まあ、領主の時代から領主の館…城と言った方がいいかもしれないが、籠っていたりして、外には滅多にでていなかったようだし―…。これは、後に俺が集めたエルゲルダに関する情報からであるが―…。
そして、こういう臆病な奴は、自分の危険というものに本当に敏感なのかもしれない。
だから、俺が攻めてきたら、逃げる可能性も存在するというわけか―…。
まあ、部下や側仕えさえ捕まえて案内させるというイルターシャの言葉は、確実にそうなるのだと思えてしまう。
まあ、ラルネから逃がす気はないが……な。
「そうだな。参考になる意見だ。」
「まあ、普通に考えればそうなるだろうし―…。相手の基本的な思考を理解すれば、すぐに思いつくもの。」
いや、相手の側になって考えることは意外に難しいだろ。
相手の立場を理解するのには共感性を持っておく必要があるし、そういう人間はかなり少ないと、俺の経験上では思ってしまう。
理由を詳しく説明しろと言っても、俺にはできるものではない。
そして、それをこんなふうに簡単にさもできるように言っているイルターシャは、相手の気持ちを先天的に理解することが得意なのかもしれない。
もしくは、後天的要因もあったのだろう。
イルターシャの言動から、ミラング共和国軍の中で出世していくために、上司や有力者な部下の気持ちを理解して、自分がどういうふうに振舞う必要があったのか、ということが俺にはわかってしまう。本人から確証を得られていないので、推測の域はでないのだが―…。
本当に、生きるということは、人との関係において、大変なことだ。
それでも、ここに生きている以上、避けることはできないし、逃げ続けることはできない。
割り切るしかないのだろう。
「そうか。」
「意外に自分の重要な情報以外は、興味ないのね。」
「だな、嘘をついても意味がないから、そこだけは正直に言っておく。」
「人生なんて、辛い事の方が多いけど、世間なんてものは広く、狭い所に自らの心を満たしてくれるものがあるものだわ。まあ、それを見つけるのがあまりにも大変なことでしかないし―…。」
何を言っているんだ。
難しいこと…か。
まあ、自分を満たしてくれるものがあったとしても、それは短期的なものになると思うんだよな。
一つを満たすと、別のものが欲しくなるように―…。
そんなことを考えても意味ないか。
「参考程度には受け取っておく。」
「そう。」
その後、会話を続けることもなく、イルターシャの護衛をするのだった。
しばらくして、ヒルバスが戻ってくる。
「ランシュ君、コミュニケーションを私のようにしっかりと、とった方が良いと思いますよ。」
いや、少しだけ会話していたわ。
「何を言っていると思ったら、俺はイルターシャの護衛をするのが仕事だから、必要以上に会話などすることはない。それに、イルターシャは元はミラング共和国軍の一軍団を指揮していた以上、信用して話をし続ければ、返ってリース王国の弱点を晒すことになるだけだと思うが―…。」
俺は正論を言う。
イルターシャとしては、俺の言葉が癪に触ってしまうかもしれないが、現状はイルターシャが置かれている立場は、いつミラング共和国側に寝返るのか、もしくはミラング共和国軍とまだ内通しているのではないかという可能性が存在し、警戒しておかなければならないというものだ。
そのことについては、理解してもらわないとな。
「ヒルバスさん、酷いですよねぇ~。自分と関係あることしか話してこないし、それ以外は興味ありません~とかの表情するのですよ。こういう人を彼氏に持つと、彼女の方が不憫でならないわ。ホント、女性の気持ちを理解した方がいいと思うわ。」
「ですねぇ~。私もランシュ君に最初に会った時は、あまり話かけてもらえなかったですし、今も、必要なこと以外はなかなか話そうとしないのですよぉ~。面白キャラな側面があると思うんですが―…。」
何、イルターシャの肩をもっていやがる、ヒルバス~。
俺はヒルバスに対する怒りの感情はあるが、心の中に抑えるようにする。
たぶん―…、いや、絶対に俺が声を荒げれば、ヒルバスにイジられるのは確実だ。
俺だって、自分の面子というものがあるんだよ。
そこを理解しろよ。
「そうなのかしら―…。会話がなくて気まずい雰囲気になって、周りの緊張を促進してしまって良くないと思っていたのよぉ~。どういうネタでランシュさんを弄るといいのかしら―…、ヒルバスさん。」
「そうですねぇ~。意外にもランシュ君は、時々、昔に私も騎士として指導受けた先輩の影響で、ごにょごにょ…。」
あ~、絶対に俺にとって良くないことを教えているなぁ~、ヒルバスの奴が―…。
俺の部下なはずなのに、部下から弄られている上司って―…。上司の威厳もないが―…。
完全に勝てないことを理解しているがために、俺はここの会話を聞かないようにした―…。
聞けるわけがないだろ!!
「へぇ~、面白いですわねぇ~。これをリース王国のセルティー王女に教えておけば、さらに面白いことになりそうわねぇ~。ランシュさんがセルティー王女の護衛職にある以上は―…。」
俺への嫌がらせも大概にしろよ。
これから後、ヒルバスだけでなく、イルターシャからも弄られる可能性を考えると俺は、心の中で、しょんぼりと気持ちを落としてしまうのだった。
これから、ミラング共和国の首都ラルネの包囲があるのに―…。
先が思いやられる。
第129話-12 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
ランシュ視点のランシュの過去は長くなっていますが、第129話の終わりは見えてきたような気がします。それでも、ここまで長くなってしまったことに関しては反省していますが、次の章も長くなるんだろうなぁ~、と。大きな章であれば―…。
何か変な話になってしまいましたが、執筆意欲は完全に回復したわけではありませんが、何とか書ける状態にはなっています。だけど、以前より少しだけスピードが落ちたように感じます。『ウィザーズ コンダクター』の方で特に―…。第6部の執筆がもうそろそろで終えられそうなのに―…。
一方で『水晶』は、これからミラング共和国の首都ラルネでの決戦の執筆へとなっていくと思います。
ネームの方は、ここしばらくできていないですが、第1編の最終章の方を何とか書ければ、進めていくと思います。
最後になりますが、次回の投稿は、次回の投稿分が完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年3月7日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年3月8日頃の予定です。