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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第19話-1 ルーゼル=ロッヘ(2)

第19話は、あまりにも描写やセリフが長くなり、かつ、当初の予定以上に付け加えが生じたことにより第18話に続いて分割することになりました。

前回までは、脅迫していたゼルゲルをクローナが倒しました。そして、店長からお礼をされる。


 【第19話 ルーゼル=ロッヘ(2)】


 店のカウンターで一人の少女が飲み物を飲む。

 この店は、特に、夜にバーとして盛り上がる。その客の大半は、大人である。

 つまり、夜にこの店に注文されるのが多い酒が多く扱われている。

 今、まさにクローナという一人の少女が飲んでいるのは、グラスに氷の入った酒ではなく、グラスに氷の入ったただの果実入り炭酸ジュースであった。ちなみに、アンコールの類は一切入っていない。

 なぜなら、店主自身も子どもに酒を強制的に飲ませるほどの倫理感の欠如はないし、子どもに理性的に何をしたらいけないかを十分に理解していた。

 「はあ~、美味しい~~。」

と、言いながら、幸せそうな顔をするクローナであった。

 「始めてか。こっちは商売の関係上、クローナ(嬢ちゃん)が飲んじゃいけない酒類が多いが、たまにお客さんの中に子連れで来るもんがいるんでよ。酒類以外にも果実を炭酸で割ったジュース(もん)を置いているわけよ。」

と、店主が喜びながら言う。理由はもちろん、美味しそうに飲むクローナの姿を見てである。

 「こちらこそ、すいません。こんなに美味しいのタダでいただいて。」

と、クローナが金を支払わずに果実入り炭酸ジュースを飲むことに申し訳なく感じていた。クローナはここがバーや飲食などを提供する店であることは理解していた。ゆえに、他の客が金を支払って飲食しているのに自分だけタダで飲み物を飲むことに罪悪感を感じていた。

 しかし、店主は、クローナの気持ちを汲みながら、

 「いや、いいんだよ。あのゼルゲルをやっつけてくれたんだからよぉ~。それにゼルゲルに絡まれた男もあれで真っ当に人生を送ってくれたいいのだが…。まあ~、それは本人次第か…。それよりも、クローナ(嬢ちゃん)が絡まれていた男を助けてくれなきゃ、この俺の店ごと壊されていたからな。だから、ゼルゲルによって店が損壊された被害を比べれば、クローナ(嬢ちゃん)に飲み物をタダで提供するのは全然こっちにとっては痛くもかゆくもないのだよ。それに、店を損壊されなくてすんだというお礼もできるからな。」

と、クローナにタダで果実入り炭酸ジュースを提供する理由を説明する。それに店主自身もクローナに言った言葉であらわしていたように、店が損壊されなくてすんだこと。そして、言葉では言わなかったが、クローナがゼルゲルらからこのルーゼル=ロッヘという町を救ってくれるということを期待を抱いていたからだ。

 「はい、ありがとうございます。さっき、店主(マスター)の店で絡んでいた人たちっていったい、何者なんですか?」

と、クローナが疑問を尋ねる。それは、店で脅迫していたゼルゲルとは、いったい何者で、どうしてルーゼル=ロッヘの町の人から恐れられているのかということである。

 店主は、少しの間をあけて、静かに、それでもクローナに聞こえるように、

 「ゼルゲル(あいつ)らは、ルーゼル=ロッヘ(この町)のチンピラだよ。あいつらはルーゼル=ロッヘのお偉方たちの用心棒なんだよ。さらに、金貸しなんてもんやっていて、悪徳な方法で金貸した奴に法外な利子を取り立てるんだ。それに、私だって、金を借りることほどでもないのに無理矢理に借りさせられ、その利子の支払いに苦労してんだ。おかげで、従業員すら雇えやしない。」

と、ゼルゲルらのことについて説明した。

 その言葉を、クローナは真剣に自らのことだと思って聴いていた。

 しかし、クローナはこの町を助けることはできない。今は、とにかく魔術師ローとともに瑠璃、李章、礼奈と合流しないといけない。それが(この)世界の存亡に関わるかもしれないことだから―…。

 クローナはゆっくりと立ち上がって、

 「私はたぶん、このルーゼル=ロッヘの町を救うことはできません。ゼルゲルっていう人を倒す前に私にはやらなければならないことがあります。すいません。」

と、クローナは言うと、財布から果実入りのジュースの代金を出し、

 「私と共にここに来ている人がいるので、これで…。」

と、言い終わると、クローナは店から出ていった。

 その様子をただ黙って見ることしか店長にはできなかった。

 (そうか、残念だかこればかりは―……、クローナ(嬢ちゃん)に無理矢理救ってもらうわけにはいなかい。ルーゼル=ロッヘ(私たちの町)はもうしばらくゼルゲル(やつ)らに耐えながら生きていくしかない。)

と、店長は覚悟を少しだけ決めるのだった。


 フードを被った一人の人物がルーゼル=ロッヘの町の中を歩く。

 歩く速度は決して、人の波に逆らうことのないものだった。

 この人物が目指すのはルーゼル=ロッヘにある情報屋だ。

 人を探しているのだ。この人物は、ランシュの部下で、ランシュからもかなり将来を有望とされていた。たぶん、年齢は10代後半から20代前半ぐらいに相当すると考えられるが、フードを被っているので、実際のところどうなのかわからない。

 ランシュの命令によれば、瑠璃、李章、礼奈という三人の行方を捜すことである。そして、あわよくばその三人を討伐してもよい、とランシュからの許可ももらっている。

 本当のところは、さっさと瑠璃、李章、礼奈の三人を自らの実力によって、殺してしまいたいし、倒したいと思っていた。

 そして、瑠璃、李章、礼奈の移っている写真みたいなものを持っていた。この写真みたいなものは、ランシュから手渡されていた。この写真みたいするのには時間がかかるため、このフードを被っている人物がリースが出発する日にちになってやっと出来上がったのだ。

 

 (ここか。)

と、フードを被った一人の人物が心の中で言い、情報屋に到着した。そして、歩くことを一時的に止めた。

 情報屋と書かれた看板を見る。その看板は、屋根に大きく掲げられていた。看板自体も大きく、字もそれにあわせて大きいものであった。そのことから、ここが情報屋であることをフードを被った一人の人物は簡単に理解することができた。

 情報屋に入るために歩きだした。被っているフードの中にある素顔を見せないようにしながら―…。


 ここは情報屋の中。

 フードを被った一人の人物が入ってきた。それをみた周りの人々は、もの珍しそうにしながら見る。

 そして、フードを被った一人の人物は奥のほうにあるカウンターへと向かっていった。

 カウンターに着くと、写真のようなものを出して、

 「瑠璃、李章、礼奈(この三人組)を情報を何か知らないか。」

と、カウンターにいた受付の人に尋ねる。フードを被った一人の人物に対応したのは、若い20代前半の女性で、たぶんだがルーゼル=ロッヘで三本の指に入るくらいに人気があり、容姿のおかげで、多くの男性に求婚されてもいた。

 「う~ん、いいえ。見たことがありません。」

と、対応している受付嬢は言う。実際に、瑠璃、李章、礼奈の姿を一回も見たことはなかった。ゆえに、すぐに、考えながらも答えることができた。

 「そうか。わかった。」

と、フードを火被った一人の人物が言い終わり、写真みたいなものを持とうとした。そのとき、写真みたいなものに影が現れ、それにフードを被った一人の人物が気づく。

 その影は、

 「どうして、こいつらのことを探してんだ。」

と、フードを被った一人の人物に対して質問してくる人物がいた。その人物の気配にただならぬものを感じたフードを被った一人の人物がすぐに写真みたいなものを手にしながら後ろを向く。

 そこには、40代と思われるような男性がいた。おっさんだとフードを被った一人の人物が感じる人物である。

 「ああ~、すまねぇ~。名は名乗らないが、少し気になってな。お前みたいなフードで被った姿を見せないのに何か関係があるのか、と思って。」

と、40代と思われる男性、アンバイドが尋ねる。

 「アンバイド(お前)に答える義理はないが、俺の知り合いに頼まれたからだ。アンバイド(お前)は知っているのか? 瑠璃、李章、礼奈(あの三人組)を。」

と、フードを被った一人の人物は答える。

 「知っているはいるが、今だと…たぶん…このルーゼル=ロッヘにいると思うが、その均衡にいるのかもしれない。あくまでも見かけたってぐらいだからなぁ。」

と、アンバイドは答える。あえて情報を曖昧にして、フードを被った一人の人物の真意について見定める必要があったからだ。

 「詳しく教えてくれ。」

と、フードを被った一人の人物はアンバイドに言う。その表情は何か真剣さを感じるものであった。

 しかし、あの写真みたいなものから推測してアンバイドは、フードを被った一人の人物がナンゼルらの襲撃者のように瑠璃、李章、礼奈を狙っているのではないかと考える。

 ゆえに、

 「詳しいことはちょっと忘れてしまったなぁ~。すまない。」

と、アンバイドは胸の辺りで手のひらを合わせて、ごめんと頭を下げる。こうして、情報をあやふやにして、なるべく早くルーゼル=ロッヘを出発するための時間を稼ごうとした。

 アンバイドのあやふやな言葉に怪しさを、フードを被った一人の人物は感じていた。

 (……)

と、考えながら、自らはどうすべきかとフードを被った一人の人物は集中する。

 そして、結論をだし、

 「ありがとう。感謝する。」

と、言って、情報屋から歩いて出ていった。


 一方で、フードを被った一人の人物が歩いて去った後。

 アンバイドは、フードを被った一人の人物の質問に対応した受付嬢に対して、

 「リースの今の現状について教えてくれないか。支払額はいくらだ。」

と、尋ねる。

 「リースの情報に関しては、50万となっております。」

と、先に支払う金額について受付嬢は言った。

 「そうか、わかった。」

と、アンバイドは言った。そして、財布からちょうど50万を出した。

 「ちょうど50万ですね。では、リースの情報は―………。」

と、受付嬢はリースに関する現時点でわかっている情報を含め、アンバイドに言った。


 ここはルーゼル=ロッヘにある宿屋の一つ。

 この宿屋には、瑠璃、李章、礼奈がいた。

 「李章君!! ボォ~っとするな!!!」

と、瑠璃が怒りながら言う。瑠璃は、李章がアンバイドに何かを言われてからずっと考え事をしているのような様子であった。何か気を張りつめたような雰囲気を李章が漂わせていた。

 李章は瑠璃の声で、はっとして、

 「大丈夫ですよ。ただの考え事です。」

と、瑠璃に返答する。

 「考え事って、これからの事?」

と、瑠璃は尋ねる。

 「はい、そんなところです。」

と、李章は考え事に対して瑠璃に嘘を言う。それは、瑠璃を心配させたくなかったからだ。

 李章は考え続けていた。アンバイドから、

 (「李章、お前―……、天成獣の力の宿った自らの武器を使って、なぜ戦わないんだ。」)

とか、

 (「それは、李章―…お前自身の甘えだ。その武器をくれた人間が何を言ったかは知らないが、これからは天成獣の宿った武器を用いて闘わなければ、天成獣の力を十分に発揮することができない。」)

などのように、自らの天成獣の力の宿った武器を使わずに戦っていないことを指摘されたことと、

 (「李章―…、よく聴いておけ!! ナンゼルらのあのような襲撃者の強さなど、この世界では弱・い・ぐらい分類したほうがいいくらいだ。それに、ナンゼルあいつらの襲撃者より強い実力をもつのは、この世界に多くいる。これは、俺自身も経験しているから確信をもっていえる。李章―…、お前のような戦い方をしていけば、いつか敵を倒すこともできなくなり、むしろ、命を落とすぞ。」)

と、言われた言葉が正確に李章に反復された。そして、李章ずっとアンバイドの警告に対して考え続けていた。いや、むしろ悩み続けているのである。

 そして、

 (天成獣の力を半分しか発揮していないことを気づかれた。)

と、李章は動揺もしていた。

 そして、瑠璃、李章、礼奈は、それぞれの宿屋における部屋へと向かって行った。


第19話-2 ルーゼル=ロッヘ(2)へと続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


あと、もう少しすれば、たぶん分割する話も減るかもしれません。あくまでも予定ですが…。

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