表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
278/748

第129話-8 ミラング共和国との戦い

前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国のオットル領地を進んで、ミラング共和国の首都へと向かうが、オットル領地でゲリラ戦法に苦しめられるのだった。


今回は、どうしてもミラング共和国とリース王国の戦争という関係で、戦争ではどうしても切っても切れない関係にある内容を書いていると思います。その内容はあくまでも作品内の会話やランシュの思っていることであることだけは書いておきます。

本当に、戦争というものは略奪とか女性への暴行とかがどうしても付きまとってしまうことを考えると、戦争のない状態が良い状態なのではないかと思います。作者としては―…。

戦争が起きないような世界であれば―…。この願いは難しいことかもしれない。

 夜。

 俺が属している左軍では、とにかく疲れ切っていた。

 連日のゲリラ攻撃に、神経を擦り減らしていた。

 辛い、きつい、いつになったら終わるんだ。

 そういう気持ちでいっぱいだ。

 わかる。

 だからこそ、とにかくここのオットル領地でミラング共和国を指揮している人物を倒す必要がある。

 「ランシュ君、ヒルバス君、今日もご苦労さん。それに、戦ってくれている君たちにも感謝します。ささやかですか、今日は食糧の供給が多かったので、少しだけ豪勢にしたいと思います。とにかく、落ち込んでいても意味はありませんよ。やるべきことは決まっているんですから、最大限成果をあげましょう。」

 と、ハミルニアが言う。

 ハミルニアは、俺たちや兵士の士気を取り戻そうと必死になっている。

 ハミルニアにとっても、ここまでのミラング共和国軍の兵士の行動はかなり厄介に感じているし、苦戦をしているということがわかっているのだろう。

 中央軍の指揮官がこの場にいたなら、どんな暴言を吐いて、士気を低下させていたかと思うと、恐怖としか思えなかった。

 だって、そいつがいたら確実に、リース王国の軍内で反乱が起こって、ミラング共和国軍にとっては好機としかいえない展開になっていることであろう。

 そんなことは誰もが望まないが、そうなってしまうのだ。

 リース王国の中央で権力を握っている奴らは気づいているか。

 他者がどう思っているのかを知らないと、最悪の場合の展開を知らず知らずのうちに選択していることがあるんだよ。

 分からないよな、あいつらには―…。

 ハミルニアの言葉を聞いても、兵士たちは士気を取り戻すのはできなさそうな感じがした。

 指揮官の限界なのかもしれませんが、ハミルニアは充分にやっているのだとは思いますが―…。

 ただし、オットル領地に侵入してから、左軍は略奪や強姦などは禁止されており、その時の処分は重いものとなっていて、処刑すらありえると言われている。

 まあ、そうだろうなぁ~、とわかってしまう。

 略奪や強姦は、戦争に必ずついてまわるものだ。

 これは昔からおこなわれていたとか、言われており、俺は詳しくはわからないが、その二つに少しだけ嫌悪感を俺は抱く。

 なぜなら、略奪や強姦をおこなえば、領地を占領して支配する時に、その領地に住む住民の反抗を呼ぶだけだ。

 娼館のようなものを設けるという考えもあるが、それも結局は女性を傷つけている可能性もあるので、好きにはなれないが、それでも、略奪や強姦よりもましだと思うところはあるかもしれないが、なぜ、戦争になると、兵士は凶暴化し、普段の時ならほとんどすることのないようなことをしてしまうのか。

 だが、わかるのは、優越性と支配欲がそれをさせているのかもしれない。

 普段は、法などによって抑えられている欲望に、ストッパーがなくなって暴走しているのだろう。

 まあ、考えすぎても良くないか。

 それにしても、娼館を設置する金があるのなら、リース王国の中央で権力を握っている奴らは自らの懐を豊かにするだろう。

 それにしても、欲を出すのは仕方ないとしても、それを上手く自身の中でコントロールして欲しいものだ。

 無理だから、起こるのか。

 今回は、ハミルニアやその部下が上手くやってくれているおかげで、何とか、略奪や強姦をしている奴らはいなかった。

 それでも、いつ起こってもおかしくない状況ではあるが―…。

 人というのは、道徳的に過ごそうとする面もあれば、それに反することによって快楽を満たしたいという二つの相反する気持ちがあるのだろう。

 「ランシュ君、考え事?」

 話をした後、俺に話しかけてくるのだった、ハミルニアは―…。

 「このままだと左軍内で、略奪や強姦などが起きるじゃないかと―…。」

 今、考えていることを少しだけ言ってみる。

 「そうなんだよねぇ~。男という生き物は、どうしても他者よりも自分が優れているのかということを示そうとする癖があるんだよ。食欲、睡眠欲、性欲。その中でも性欲というのは厄介だよ。どんなに女性を無理矢理に合意もないのに襲うのはいけないとしても、一定数は出てしまうからねぇ~。国内であれば、法律にそのことをいけないと定め、捕まえて、罰せばいいし、未遂でも可能だ。だけど―…、こういう戦争状態である場合、どうしても、いろいろとゴタゴタがあって、管理が行き届かないことがある。そのせいで、優越感に溺れた奴らが、占領した住民を殺す、略奪する、女性を襲うなどのことをするのだよ。そうすれば、支配する時に嫌なしこりを残すことは間違いない。それをさせないために娼館を設置したりすることもある。貧困の女性の最後の逃げ場という面もあるけど、その環境は千差万別としか言いようがないし、女性側の気持ちを踏みにじっていることに変わりない。それとは逆も存在するかもしれないが、個別個別のケースになってしまうだろう。本当に、欲とは怖いものであり、逃れられないものだ。本当、人の欲ってのは底なし沼だよねぇ~。そう思うと、良い解決案が示せればいいが、無理だろうなぁ~。人生、そのことを考えても良い答えはでないし―…。ということで、俺は、自分ができることを最大限やるしかない。そして、自分のやったことに正当性あることだと言って、自分の罪から逃れないで、受け止めること。そして、自分の感情と向き合うしかないし、社会に対してもそうだとしかいえない。」

 というか、長いなぁ~、毎回、ハミルニアは―…。

 それでも、すごく良いことを言っていることは理解できる。

 要は、戦争における略奪やら強姦は完全になくなる方法は存在しないということ―…。俺としては、なくなった方が良いと思っているのは事実だし、できる限り被害を被る人がでないのが良いと思っている。

 まあ、人の心が自分の思っているものと完全に同じにはならない以上、うまく調整するしかないが―…。本心というものを理解した上でだが―…。

 「まあ、娼婦全員が娼館のことを本心でどう思っているのかわからないし、娼婦であることに誇りを持っている人もいるかもしれません。だけど、そう思っていない人もいます。後者の方が多いのかな。本当に大事なのは、その人たちの意向を汲んでいるかどうかが一番大事なんですよ。ランシュ君―…。そして、戦争というものは、人の欲望面を最大化させますので―…。それでも、ランシュ君がやれることを最大限すればいいんです、未来に向けて―…。人の歴史なんて失敗でしか成り立っていないんですから―…。なくなる、滅びるという結末を迎えているように―…。成功と言っているのは、一時的な期間のことでしかないのだから―…。」

 と、そこにヒルバスが俺とハミルニアの会話に加わってくるのだった。

 「そうだな。深く考えるべきではないな、今は―…。だけど、事件が起これば、確実に対処する。二度と悪い事が起こらないように―…。前提としては、起こらないのが一番なんですが―…。」

 そう言って、その後、普通に他愛のない問題へと移っていくのだった。

 こういう問題は、難しく、完全な解決ができないというものだし、俺の気持ちとしてはもどかしいものでしかない。

 本当に、そこに人の限界というものを思わせる。


 翌日。

 昨日の夜は、暗いけど、向き合わないといけない問題に関して、ハミルニアとヒルバスと話した。

 それでも、戦いが終わるというわけではなく、進軍しながら、ミラング共和国軍のゲリラ戦法に対処する。

 これをいち早く終わらせないといけない以上、どうにもならない。

 というか、オットル領地の中にいる軍の指揮のトップはどこだ。

 軍全体ではなく、一分団の指揮官であるが―…。

 そして、ここ数日で、オットル領地の半分ぐらいは来ている。後ろには、リース王国の兵士が国境を守っているために、ミラング共和国軍がリース王国に侵入する可能性は低い。

 それに、エルゲルダは、自分の守りだけはしっかりとしてくるはずだ。

 自分の命が最優先であり、ミラング共和国の住民の命など考えているとは思えない。

 ならば、余計に軍を進めても大丈夫が、後方へと引き返すことができなくなるのは心配だ。

 本当に、神経を擦り減らしている。

 「はあああああああああ。」

 と、叫びながら、ミラング共和国軍の兵を斬っていく。

 どれだけの数を斬ったかは、もう完全に忘れてしまった。

 数を覚えるよりも、敵を斬って、生き残ることで精一杯だ。まあ、エルゲルダの復讐が重要な位置を占めるのであるが―…。

 俺は、本気を出すことができない。

 俺の天成獣トビマルは、かつて、リース王国の建国者ラーガル大王が扱っていたという。

 俺がトビマルに選ばれている以上、リース王国の中央で権力を握っている奴らにこのことを知られれば、良いように利用されることは先輩から聞かされて、理解している。

 つまり、俺はこの場であったとしても本気を出すことは不可能であり、よっぽど、危険ということでもない限り、ルールを破って、本気になることはできないということだ。

 それでも無双できているので、良かったと思えている。

 だけど、そろそろ、ミラング共和国軍の指揮官のいる場所が見つかって欲しいか、それとも、ミラング共和国の首都の方へと撤退して欲しい。

 このゲリラ戦を受ける身としては、本気でそう思えてしまうのだ。


 夕方。

 今日も終わったぁ~。

 だけど、今日は俺、見張りをしないといけないのか。

 神経~磨り減るわぁ~。

 だけど、やらなければならないことなので、手を抜かずに頑張りますが―…。

 「ランシュ君、今日もお疲れ様。」

 「そうだな、ヒルバスの方も連日、戦いばかりで大丈夫か?」

 ヒルバスが俺の方へと近づいてきて、話かけるのだった。

 「大丈夫ですよ、左軍の状況から考えると私の状態なんて大したことはないですよ。」

 「そうだな。」

 「少しぐらいは心配してもいいじゃないですかぁ~。」

 ヒルバスは、余裕があるが、それでも、油断できないのはわかる。

 それにしても、オットル領地で指揮しているミラング共和国の指揮官は一体どこに隠れて―…。

 「ランシュ君とヒルバス君、二人ともいるね。」

 ハミルニアが声をかけてくるのだった。

 ハミルニアは少しだけ表情が緩んでいた。

 何か良いことでもあったのかな。

 「ヒルバス君とランシュ君には別行動をしてもらうよ。ついに見つけた。オットル領地でミラング共和国軍の指揮をしている人物を―…。彼女は優秀であるが、すでに不利だと悟っているって情報が―…。なら、君たち二人で、その指揮官を倒してくれるとありがたい。それに―…、その指揮官はなるべく生かしてくれるとありがたいなぁ~。」

 なるほどねぇ~。

 今回のゲリラ戦を仕掛けてくるぐらいだから、優秀なのは分かるし、俺らを苦しめるほどだ。

 普通なら、敵になる可能性を考えて、降伏ではなく、さっさと殺してしまうほうが良いかもしれない。

 だけど、ハミルニアは、その人物の能力を高く評価しており、その人物を味方にすれば、リース王国にとって利益が大きいのがわかっているようだ。

 そんなことがなければ、俺とヒルバスにこんなことは言ってくるはずがない。

 俺とヒルバスがいなければ、確実にその指揮官を全滅させるもしくは指揮官を殺すという選択をとっていたであろう。

 なので、俺とヒルバスがいることをハミルニアは、絶好の機会ととらえたのだろう。

 まあ、左軍の士気にとってはマイナスなのではないかという気持ちがないわけではない。

 なぜなら、ここまで左軍を苦しめている相手を倒すのだけど、指揮官の命は生きて捕らえてくれば、確実に、殺せ、という気持ちが充満してしまうはずだ。

 「それは可能ですが、生かして捕らえると、味方の方が―…。」

 俺はハミルニアにおずおずと聞いてみる。

 「大丈夫だと思うよ。こういう敵を苦しめる兵士というのは、味方にしやすいからね。それに、ミラング共和国軍の指揮官の情報はちゃんと伝わってきてる。その情報によると、オットル領地において一番上の指揮官は、今のミラング共和国の体制には懐疑的な感じなんだ。まあ、リース王国に属したとしても裏切られないという不安はないかというと嘘になってしまうが―…。そこは私たちやランシュ君の腕しだいだよ。」

 俺もかよ。

 ガックリしたくなってきた。

 「わかりました。」

 俺が上官であるハミルニアの命令に逆らえるわけがない。

 なぜなら、軍隊である以上、秩序を乱すことはできないのだ。

 どんな馬鹿な指揮官の言葉であったとしても―…。

 まあ、そんな馬鹿な指揮官はたいてい不利になると味方に裏切られることがあるので、完全に逆らえないというわけではない。

 だけど、ハミルニアは優秀な方だし、利用できる人はとにかく利用するし―…。

 はあ~、俺の仕事量が増えてない?

 「そうか、良かった。ヒルバス君もランシュ君のことをしっかりとサポートして欲しいな。」

 「わかりました。」

 ヒルバスは頷くのだった。


第129話-9 ミラング共和国との戦い に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。


ミラング共和国とリース王国との物語開始前の四年前の戦争の結末は用意はしていますが、なかなかそこに到達しません。

到達すれば、第130話へと入れるのに―…。

想定以上に長くなりすぎているような―…。

最後に、次回の投稿は、完成しだいこの部分で報告すると思います。

戦争とは悲惨だ。特に、この現代において命を落とすのは、普通の人々と呼ばれている人々であり、煽られるのもまた彼らだ。煽るのは、特に、文明が築かれて以後、戦争で利益を得られると思っている一部の人間だけだ。

では―…。


2022年2月22日 次回の投稿分ができました。次回の投稿は、2022年2月23日頃に投稿予定です。あ~、切り抜き動画にハマってしまい、進行が遅くなってごめんなさい。反省します。


2024年2月15日

①「ヒルバス君とランシュ君には別行動をしてもらうよ。ついに見つけた。オットル領地でミラング共和国軍の指揮をしている人物を―…。彼は優秀であるが、すでに不利だと悟っているって情報が―…。なら、君たち二人で、その指揮官を倒してくれるとありがたい。それに―…、その指揮官はなるべく生かしてくれるとありがたいなぁ~。」

「ヒルバス君とランシュ君には別行動をしてもらうよ。ついに見つけた。オットル領地でミラング共和国軍の指揮をしている人物を―…。彼女は優秀であるが、すでに不利だと悟っているって情報が―…。なら、君たち二人で、その指揮官を倒してくれるとありがたい。それに―…、その指揮官はなるべく生かしてくれるとありがたいなぁ~。」

と、修正いたします。

 その理由は、後にイルターシャに関する情報がここでは、ハミルニアが分かっているので、「彼」の部分を「彼女」に変更いたします。

 この次の回は、そのような理由から、すでに修正済みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ