第129話-7 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、リース王国は、リース王国とミラング共和国の領境近くの戦いでミラング共和国に勝利するのだった。
「浮かない顔してるな、ランシュ君は―…。」
「そうですよ、ハミルニア指揮官。アウルが敵の兵に殺されたうえに、操られたのだから―…。」
「意外、ランシュ君って、仲間思いだったんだ。何というか、自分の目的のためなら、人を平気で利用するという感じ。だけど―…、根は善人だというのはわかる。」
「本当に、ハミルニア指揮官は、何でランシュ君のことをそう思ったのですか?」
「何となくだけど、勘?」
「勘って―…。」
「まあ、気にするな。俺が少し声をかけてくる。」
「ハミルニア指揮官!!」
何か、俺の性格を読まれているような―…。
まあ、気にしても仕方ないか。
それにショックを受けているのは事実だ。
泣ければどれだけ楽だろう。
泣けば、きっと気持ちは整理されて楽になれるだろうか。
確定的なことを言って、自信をなくすようなことへと―…。
「何を落ち込んでいるんだ。」
「ハミルニアさん。」
俺が一人でいるところに、ハミルニアがやってくるのだった。
俺としては、一人でいたいのだが―…。
ハミルニアの前では無理だろう、と俺は、諦めるのだった。
「ランシュ君、アウル君のことは本当に残念だった。だけど、彼からは死体特有の匂いがしていたからね。香水とか誤魔化しているような感じだったけど―…。君たちの話によると、殺された上に操られ、ランシュ君を殺すための刺客にされるなんて―…。ちなみに、ミラング共和国軍側じゃないからな、私は―…。」
「はいはい、そう言うと、余計に怪しいと思ってしまうから―…。」
本当に、この人は、用心深いというか、余計なことを言って、自分を少しだけ追い詰めようとする。
これは違うのかもしれない。
自分という存在を相手に信頼して欲しいから言っているのかもしれない。
そう思うことにしよう。
「そうか、難しいなぁ~、信頼を得るって―…。アウル君はリース王国の騎士になって二年ほどか―…。まあ、騎士や兵士である以上、戦場で死なないということを完全に保障することはできない。できるのは、せめて死なないように注意したり、有利に戦いを進めていって、戦場の死という確率を減らしてあげるだけだろう。人生なんてものは、失敗の連続だし、人が言う完全な成功なんて稀でしかない。だからこそ、失わないように必死になるんだろう。ラーンドル一派は自らの覇権のために、俺たちは、身の回りの大切な人のために―…。辛気臭くなってしまった。これは良くない。幸運が逃げるじゃないか。中央軍の馬鹿みたいに、今回ははしゃごう。私の身勝手な想像かもしれないが、亡くなった人も生きている人の笑顔を望んでいるかもしれないし―…。ということで、ランシュ君、今日は、君に何か面白いことをやってもらおうか。」
「はっ!!!」
何か感動的なことを言っていて、最後に俺にネタふり。
何、感動的にハミルニアさんと言いかけようとしていたのが台無しだ。
俺の感動返せよ。
ハミルニアは指揮官で、俺よりも上官なので、この場で言い返すのは良くないと頭が勝手に判断して、言えなくなる。
「お――――――――――――――い、みんな―――――――――――――――――。ランシュが面白いことやってくれるって!!!!!」
「ちょい、ハミルニアさ―――――――――――――――――――――――――――――ん。」
俺は、面白いネタをしなければならない運命にあるのか。
いや、そんな運命にはないと思っている。
結果、俺の持ちネタは失笑とされ、面白くないということで爆笑されるのだった。
俺は別の意味でショックを受けるのだった。
ハミルニアを心の中で恨むのだった。
その後―…。
「ランシュ君、君は普段の行動でときどき面白いことをやるけど、ネタをふると駄目なタイプかぁ~。ごめんね。だけど、これで、アウル君に対して、一人で浸っていた悲しい気分は吹き飛んだと思う。それに、面白くなかったけど、頑張っていたよ。」
「ハミルニアさん、ハミルニアさんをいつか後ろから刺してしまうんじゃないかと思いましたよ。」
「うわぁ~、それは、後ろも警戒しないとなぁ~。」
まあ、実際にそのようなことをする気はないが―…、こういう冗談を聞かれていないことを祈るが、聞かれてはいなかったようだ。後になっても、そのようなことで亀裂が生まれなかった以上―…。
翌日。
ハミルニアなどの指揮官は、中央軍へと呼ばれていた。
理由は、ミラング共和国の領土内への侵攻に関してであった。
ハミルニアも中央軍も、ミラング共和国の領土の中へとどんどん攻めていくつもりだ。
ミラング共和国軍の兵士には、強い傭兵がいないということがわかっているからだ。
それに、エルゲルダの性格を考慮して、ミラング共和国軍に致命的なダメージを与えておかないと、いずれ復讐のために軍をおこして、リース王国の脅威になるということが分かりきっている。
俺もエルゲルダは、復讐対象の一人なので、ここで決着をつけたい。
ベルグからも許可を貰っているのだから―…。
「ランシュ君。」
「ヒルバスか。」
「ええ、ランシュ君は、戦争は好きではないけど、別の理由で望んでいますよね。」
「だな。」
そう、ヒルバスは俺の目的を知っている。
それに、ヒルバス以外の周りは、俺が騎士団に属している本当の目的を知らない。
なぜなら、俺は自らの目的を知られたいとは思わないし、知られれば、最悪の場合、殺されてしまうだろう。リース王国の中央で権力を握っている奴らに―…。
そのために、俺の目的を言う気はないし、知られないようにする。
そして、ハミルニアが戻ってきて、指揮官たちに中央軍からの命を伝えているのだろう。
ハミルニアの顔が浮かないということは、とんでもないことなんだろうなぁ~。
話し終えると、俺たちのところへと向かってきた。
「ランシュ君、ヒルバス君。二人が一緒にいてくれてありがたいなぁ~。」
絶対嫌な予感がすることでしかなく、かつ、二人に別々に説明するのが精神的に辛いというので一緒にいてくれてありがたいと思っているのだろう。
うん、こっちもそれでいいと思う。
「ハミルニア指揮官。」
「ハミルニアさん。」
と、ハミルニアが近づいてきて、言い始めるのだった。
「今回、ミラング共和国の中へと進軍し、エルゲルダの討伐が確実になった。嫌だねぇ~。」
俺にとっては、嬉しい報告だけどな、この部分までは―…。
その後がどうなるかは―…。
「まあ、エルゲルダを討伐しないことには、リース王国にとって最悪な展開になるのは事実だしね。それに―…、エルゲルダは、自身は出陣せず、ミラング共和国の首都ラルネに居続けているようだ。リース王国の中央で権力を握っている奴らと同じ思考だね。自分から先に言い出したことなのに―…。まあ、自分が勝つ時にいればいいと思っているのだろう。そして、今回のミラング共和国のオットル領地へ左軍は進行し、そこから首都のラルネへと向かっていくことになった。そのオットル領地がミラング共和国軍の強い兵士がいっぱいいるところでね。こっちとしては―…、なるべく早めに降参させて、味方にしたいよねぇ~。リース王国の中央で権力握っている奴らは嫌な顔をするけど、強い兵士を手に入れることは、戦力の増加にも繋がるから必要なんだけどねぇ~。本当に、嫌な仕事を与えてくれる。ランシュ君、ヒルバス君、本気でミラング共和国軍を先陣を切って、倒しに行ってくれるかな。」
ミラング共和国は、いくつかの領地からなっている国家であり、領地には、中央から派遣される役人がトップになって治めるというものである。
そして、領地と呼ばれるのは、七つほどであり、その一つがオットル領地である。
領地は、ミラング共和国の首都ラルネを中心に円状に存在し、オットル領地を征服することに成功すれば、首都を攻めることも可能だ。
「はい。」
俺としては、ミラング共和国の首都ラルネにいるエルゲルダに対して、復讐できればいいので、それを最短で達成できるのであれば、問題はない。
ただし、欲をかきすぎるのは失敗のもとなので、冷静に状況を把握しながらになるが―…。
復讐を成功させるのも難しいのだ。
怒りのエネルギーが一番重要だが、それでも、その怒りと同時に冷静さも必要なので、大変なのだ。気持ちの維持とかを含めて―…。
「ありがとうね、ランシュ君。ヒルバス君は?」
俺からは許可を貰えたので、ヒルバスに聞くのだった、ハミルニアには―…。
「ええ、わかりました。」
ヒルバスは、ハミルニアの命令に賛成するのだった。
「よかったぁ~。」
これで安心したのか、ハミルニアは安堵の表情を示すのだった。
まあ、反対する理由もないからな。
その後、少しだけハミルニアの愚痴に付き合った後、ハミルニアは指揮する場所へ戻っていくのであった。
俺たちは、オットル領地への進軍を開始する。
「はあああああああああああああああああ。」
と、俺の放った攻撃と、ヒルバスの銃撃により、オットル領地にいたミラング共和国軍の兵士を倒していくのであった。
ミラング共和国軍に会えば、戦いという状態であった。
ミラング共和国軍にとっても、これ以上、自らの領地を失うのは、危険であると判断しているからであろう。必死の抵抗をしてくる。
ミラング共和国軍の兵士も領境の戦いとは異なり、ゲリラ戦なども駆使してくるので、倒すのが大変だった。
まあ、俺とヒルバスはそんなのをされても意味はないが、俺とヒルバスのいない場所でゲリラ作戦をおこなうものだから、左軍の兵士の死者も出ていた。
左軍の全体の五パーセントであったが、それでも、心を痛めない日はない。
勝利はしているので、それで何とか味方の士気を保っている状態なのだ。
そして、今日もそんなゲリラ攻撃に苦しめられているのだった。
「本当に、厄介ですねぇ~。こんなのが中央軍と戦えば、中央軍は簡単に崩壊していたに違いないと言えてしまう私はおかしいことでしょうか。」
と、ヒルバスは、余裕な気持ちもあるが、このようにイラつく戦法をとられることにストレスが溜まっているようだ。
かく言う、俺もだ。
「そうだな。だけど、俺としては、感心するぜ。ゲリラ戦法をとって、こちらの兵士を一人でも多く殺す。戦争なら、まともな選択だし、ここはミラング共和国の国内だ。そうなると、地の利はミラング共和国側にあるのは間違いないしな。」
俺も言いながらも、ヒルバスは攻撃することを止めない。
バン、バン。
そう、音をさせながら、ミラング共和国兵士を打っていく。
この作戦を考えた指揮官は、かなり優秀とみてもいいし、リース王国の兵士で囲っておきたいものだと思ってしまう。
もし、俺がリース王国の中央で権力を握っていれば…な。
残念ながら、俺はリース王国における騎士で、王族の護衛でしかないのだ。そんなことできるわけもない。
俺は、隠れていた敵に対して、高速で移動して、素早く、攻撃して、一人、死体を作っていくのだった。
本当に余裕があるのであれば、生かしておいた方が良いのだろうが、それができるほどではない。
イライラは左軍の中で蔓延を始めており、冷静を失いつつあるからだ。
冷静さを失うことイコール戦争での敗北へと向かう道へと入り込んだということになる。
だからこそ、落ち着かないといけないと思うも、それが難しいのもまた事実。
「はあああああああ。」
と、叫びながら、俺はまた一人を斬る。
思考する暇を与えられたとしても、のんびりと長くというわけではなく、短くしてくる。
要は、隙があればすぐにでも狙っているということだ。
「ランシュ君、油断してはいけません。本当に、日に日にこっちの方が神経を擦り減らしているとしか思えません。」
「ああ。」
そう俺と、ヒルバスは言いながらも、ミラング共和国軍の兵士を斬っていくのだった。
そして、オットル領地に入ってから、シエルマスを見ていないということだ。
それでも、今は、そんなことに関して考えている暇はない。
ミラング共和国軍の領土内である以上、ミラング共和国軍の兵士の士気が高いのは事実だ。
恩賞が士気に繋っている俺らよりもはるかにある。
だけど、ミラング共和国軍の兵士の方が多く戦死者を出している以上、俺らより兵士の消耗は多いのは事実だ。
そうこうしている間に、オットル領地を突き進みながらも、夜には夜襲を警戒するという神経を擦り減らし、左軍は疲弊していくのであった。
俺もだいぶ冷静さを失っている。
「ミラング共和国軍の兵士が撤退していくぞ―――――――――――――――――――――。」
何とか、今日も戦いが終わるのだった。
夕方に―…。
そして、危険と隣り合わせの夜となる。
第129話-8 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
次回が重要じゃないところを重くしてしまっているなぁ~、制作途中で思っています。
そして、『水晶』の第129話がなかなか進まず、完成するに至っていないということに対して、反省の日々(?)なのかと思っていますが、何とか進めていきます。
次回の投稿は、完成次第、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年2月17日 次回の投稿が完成しました。次回の投稿は、2022年2月18日頃を予定しています。