第129話-4 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
ぜひ興味のある方は、読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国の宣戦布告によるリース王国との戦争は、リース側のランシュとヒルバスの活躍で左軍が初戦で圧倒的な活躍をするのだった。それを恨んだ中央軍は、ミラング共和国軍の本陣へと突入するのであるが―…。
「うわあああああああああああああああああ。」
逃げてくる、逃げてくる。
時間にしては、短い方か。
そこまでミラング共和国軍の数は減らせなかったというわけか。
しょうがないな。
そして、左軍と右軍の横をすり抜けるように、中央軍は敗走していくのだった。
その中で、中央軍の指揮官が叫び声をあげ、命令してくる。
「右軍、左軍ども!!! お前らは、中央軍が逃げ切って、安全な場所に後退するまで、殿としてミラング共和国軍を抑えていろ!!!! じゃあな、アホども!!!!!」
と、言いながら中央軍の指揮官は逃げていくのだった。
……………こんな馬鹿を守らないといけないのか。
やる気をなくすから、命令するな、お前は!!!
だけど、俺がやる気をなくすわけにはいかない。
たとえ、どんな馬鹿で、理不尽な命令でも言うことを聞かないといけないのだ。
これも俺のやるべきことであるレグニエド王とエルゲルダに対する復讐を果たすために―…。
「アホという奴がアホなのに、な。」
と、俺が言うと、ヒルバスが返事をする。
「そうですね。アホが他人をアホと言っているだけですね。ああいうのは自分のことに関しては詳しくわかっていたりするのですが、他人のことなんて何も理解することができないような方だと思いますから―…。さて、ランシュ君、行きますか。」
「だな。」
こうして、俺とヒルバスは、天成獣の宿っている武器に力を蓄えるのだった。
今回は、少しぐらい派手でもいいだろう。
前回は、奇襲的な方法であったが、今回は殿に近いので、かえって俺とヒルバスが目立つという選択が最高のだと思われる。
そして、中央軍は散り散りになりながら逃げていくのがわかるし、それを狙って、ミラング共和国軍が残党狩りを開始していた。
派手にやろうと思ったけど、難しいな。
「作戦変更だな。」
「ですね。」
俺の出る幕はあるが、そこまで必要とされない。
むしろ、こういう場ではヒルバスの方が役に立つ。
「ヒルバス、頼んだぞ。」
「お任せを―…。」
そう、ヒルバスが答えると、二丁拳銃を両方とも構える。
拳銃を二丁使うことは、難しいことであり、天成獣の力でそれを可能にしているとか―…。ヒルバスから聞いたことによると―…。
ヒルバスは動く的に狙いを定めながら、どんどんミラング共和国軍の兵士に向けて放つ。
その銃撃を受けたミラング共和国軍の兵士は、次々と倒れていくのだった。多くの者は頭部に当たったためであろう。
「どうなっている!!!」
「狙われているぞ!!!」
「クッ、どこ…。」
と、最後の「どこにいるのか」と言おうとしたミラング共和国軍の兵士は、ヒルバスの銃撃を受けて、倒れるのだった。
すでに、ヒルバスの銃撃で、十数人の兵士が倒されていた。どれだけの戦死者になるのだろう。死体処理が面倒くさいんだよなぁ~。
上の人はそれを理解していないから困るんだよねぇ~。
さらに、ヒルバスは天成獣から借りた力を銃の中で、銃弾になるようにしながら、銃を放つのである。
そのスピードが尋常じゃない。
どういう感覚でやっているのか不思議でならない。
それでも、俺も油断することはできない。
なぜなら、ヒルバスがいくら銃撃でミラング共和国軍の兵士を倒していっても、ヒルバス個人である以上、完全にカバーし切れるわけではない。
俺もそろそろ参戦した方がいいだろう。
ヒルバスの護衛のような感じで今はいるけど、ヒルバスなら簡単対処できるので、俺が護衛に今は必要かというと、そうでもない。
「中央軍で生きている方々は完全に私たちよりも後ろに行きましたか。」
ヒルバスが俺にこう聞いてくる。
そろそろ、俺も敵を倒して欲しいと感じているというわけだ。
そして、今度はミラング共和国軍が軍勢で突入してきた。
「逃げ切ったとか関係ないか。じゃあ~、行きますか。」
俺は、長剣に天成獣の力を纏わせ、俺から見て左側に構える。
その間にヒルバスは少しだけ、俺よりも後ろに後退する。
準備は完了だ。
俺は、長剣を横に振り、ミラング共和国軍の軍勢に向かって、斬撃を放つのだった。生の―…。
その斬撃に驚いたのか、ミラング共和国軍の軍勢は逃げようとしているが、その行動自体、軍勢でかたまっている以上、意味をなさないどころか、返って、味方の混乱を助長するだけだ。
現に、ミラング共和国軍の軍勢は、そのような結果になっているし―…。
「逃げろ―――――――――――――――――――――ッ!!!。」
と、叫ぶ、前の指揮官の声も空しく、斬撃はミラング共和国軍に当たり、兵士も馬も関係なく斬っていくのだった。
死体処理は嫌だが、自らが殺されては意味がないので、多くのミラング共和国軍を倒す。
まあ、ミラング共和国の総統は、俺の復讐対象だからなぁ~。
結局、俺の斬撃が派手な一撃となり、ミラング共和国軍は引き上げていった。
まあ~、あの斬撃で、百を超える数の兵士を倒すことができたし、それ以上の結果を得られたのだ。
それでも、ミラング共和国軍の数を大量に減らせたわけではなかった。
一方で、右軍の方も、大きな衝撃音があり、派手にやっているのがわかる。
要は、中央軍の尻拭いを左軍と右軍が上手くやったというわけだ。
能力もないのに、欲をかいて手柄を取ろうとするから失敗するのだ。
まあ、リース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いに反省という文字はないだろうなぁ~。
「ランシュ君、追い払うことができましたね。」
ヒルバスがそう言うと、俺はヒルバスに返事をする。
「そうだな。中央軍の馬鹿どもの失敗の尻拭いはできたけど、この尻拭いさえも中央軍の嫉妬へと繋がるんだろうなぁ~。妙なプライドのせいで―…。少しぐらいは自分が無能であることを素直に受け入れれば成功する可能性も高いのに―…。人を扱う才能があるかもしれないのに、な。」
そう思うのだ。
戦の才能はなくても、人を適宜、その人が才能を発揮しやすい場所や役職の配置すれば、それだけでも良い結果になったかもしれないのに―…。
そういう才能があれば、いや、気づくことができれば、あそこまで悲惨なことにならなかっただろうし、かつ、あのような性格にはならなかったであろう、と俺は思うのだった。
そういうのができないから、ああいう性格になってしまっているのだろう。
まあ、俺の思っていることが正しいかなんて結局のところは、本人から直接聞いて、その本人が正直に答えなければわからないことだけど―…。
「彼らに今のところ、何を言ったとしても駄目でしょうね。優秀な人なら簡単に逃げて、どこかへと行ってしまうと思います。優秀な人は、どこへ行っても上手くやっていけますから―…。そのことに最後に気づくのか、気づかないのか、見物ではありますが、見たいとは思いませんが―…。」
「だな。」
「ということで、戦いが一時的に終わったので、この近くにある死体の処理を昨日に続けてしないといけませんね。」
「これがあるから戦争は嫌になるんだよ。」
文句をたれても解決されることはないので、地道に死体処理をしますか。
死体を集めて、燃やすという―…。
これも騎士になった定めか―…。
数時間後。
夕暮れも近くづく頃、俺とヒルバスは死体処理を終えるのだった。
あくまでも、今日の戦いで亡くなった人のな。
「あ~、辛かった。で、中央軍の奴らは、負けたことを悔しみながらも、俺らのいる方向に向かって睨みつけているんだろうな。」
と、俺は言葉にする。
「そうだな。ランシュ君にヒルバス君。」
ハミルニアが俺たちに話かけてくるのだった。
「ハミルニア指揮官。」
ヒルバスは、ハミルニアを見つけ、そういう。
これでも、俺とヒルバスのこのミラング共和国との戦争における上官になるのだから、敬意を示す態度をとる。
ハミルニアは、俺とヒルバスにある程度のミラング共和国との戦争での裁量を与えてくれるので、敬意は示せる。
「今日もご活躍だったねぇ~、ランシュ君、ヒルバス君。君たちのおかげで、左軍の評価は絶賛うなぎ上りだ。嫉妬も同時にだけど―…。それでも、君たち二人の活躍には感謝するよ。そして、さっきまで中央軍の指揮官とこれからのことで話し合いとなったわけだよ。」
あ~、これ、相当、嫌な事を言われたんだろうなぁ~。
そう俺が思ってしまう以上に、ハミルニアの機嫌が悪いのだ。
俺とヒルバスの活躍に恨めしいことは思っていないけど、中央軍の指揮官に対しては、結構思っているんだろうねぇ~。
「どういう内容だったんですか。」
ヒルバスは聞かないという選択ができない以上、聞くことを選び、なるべく早めに終わらせようとするのだった。
「それがなぁ~。中央軍の指揮官がさ、今度は、左軍と右軍に相手の強い部隊と戦って、俺らが勝利するまで時間を稼げとさ―…。自分の兵が多く減ったからと言って、それはないだろ。それに、俺らの軍に対して、「右軍、左軍ども!!! お前らは、中央軍が逃げ切って、安全な場所に後退するまで、殿としてミラング共和国軍を抑えていろ!!!! じゃあな、アホども!!!!!」とか言ってさぁ~。頭くるわぁ~。誰のせいでこっちは苦労してんだと思ってんだ!! と、言い返してやりたい気分さ。まあ、やんわりと言ったが、あれは完全に反省していないどころか、左軍の活躍した騎士、ランシュ君とヒルバス君のことを相当、根に持っているみたい。その恨みで、危険な事をさせられる。ランシュ君とヒルバス君なら可能であろうが、ここで無理させたくないのに―…。すまないが、次の戦いはかなり無理をすることになるし、裁量も前の戦いと同様に与えるから、味方の犠牲なんて考えずに戦って欲しい。ランシュ君、ヒルバス君のおかげで十分に休めたであろう。今度は、君たち二人の力に私たちの軍勢の力を本当の意味で繋げて、最大限の戦果にしよう。左軍の兵士も雑魚ではないのだから―…。」
ハミルニアは言いたいことを言うが、次回の作戦も俺とヒルバスに自由に動けるようにしてくれるのだった。
この人は、俺とヒルバスと話すことでストレスを解消しながらも、ちゃんとこちらに作戦を伝えてくれるし、次の戦いは総力戦になると見ているのだろう。
このハミルニアは、指揮官としてはやっぱり優秀なのだと改めて感じさせる。
「また、俺とヒルバスに裁量を与えても大丈夫なのですか?」
そう、俺とヒルバスに指揮権を与えることは、また、中央軍の指揮官に恨まれることになるし、それを助長することになるのではないか、と俺は思うのだ。
「大丈夫、どうせ、俺らが勝てば、中央軍の奴らは何にしても恨むものだ。あいつらはそういう思考しかできない。ならば、堂々とやってあげればいい。あんなのは、どうせ俺らがいなければボロクソに負けて、恥しかかかないのだから―…。」
「ぶっちゃけますね、ハミルニアさん。」
「ぶっちゃけても問題ないしね。中央軍の指揮官の撤退していくときに、俺らに向けた発言のせいで、左軍の結束力はかえって高まったからね。あいつ、許せねぇ~、で―…。」
うわ~、中央軍の指揮官って、侮辱で、侮辱された方を結束させる才能があるようだ。
俺は欲しくないけど―…。
「そうなんですか、確かに共通の敵がいると、味方が纏まりやすいといいますが―…。」
実際には、敵ではなくて、味方なのだが―…。
本当に、何なんだろうな、中央軍の指揮官は―…。
やっぱり、リース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いだけのことはあるか。
もう少し、味方のために言えば言いのに―…。
無理か。
「そうだな、俺らは敵ではなく、味方なんだけど―…。そろそろ夕飯の支度もできるだろうから、食べに行こうか~。やっぱり、戦場では部下も指揮官も関係なく、同じ飯を食うのが一番。同じ釜の飯を食う、味方の結束には一番重要なことだ。行こうぜ、ランシュ君にヒルバス君。」
ハミルニアがそう言うので、俺とヒルバスは一緒に夕食を食べるのだった。
ハミルニアは、部下を緊張させずに、楽しく夕飯を食べようとしてくれた。
メリハリをしっかりさせているので、指揮官に向いているのだなぁ~、と俺は思うのだった。
夜。
交代で見張りをしながら、次の戦いに備えて休むのであった。
今日は俺と数百人の兵士が、二時間ほど、同じ時間に見張りをするのだった。
「ランシュ先輩、今日もご活躍だなんて羨ましい限りです。」
アウルが俺に向かって言ってくるのだった。
「そうだな。ヒルバスとの協力がなければ難しかっただろう。次の戦いは、お前も活躍してもらわないこと困るからな、アウル。」
俺は、次の戦いでは、重要な役割を果たすが、それでも総力戦である以上、左軍の兵士を助けることはかなり難しい。
つまり、自分の身は自分で守れ、ということだ。
「わかっています!! 油断すれば、あの場で死を迎えるのは確実です。だからこそ、油断なんてできません。」
アウルは、覚悟を決めようとしているかのように、言葉を震わせながら言う。
冷静に状況を判断できるのは、良い能力であるが、少しだけ不安になってしまう。
だからこそ―…。
「命は大事にしろよ。」
「はい。」
そう、俺は言うのだった。
俺が後輩を心配してしまうとはな。
まあ、情はないな。
その後、二時間ほど見張りをして、就寝するのだった。
第129話―5 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿に関しては、完成しだいこの部分で報告すると思います。
では―…。
2022年2月11日 遅れましたが、次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年2月13日頃を予定しています。2月12日はいつも通りの時間に投稿ができないので、その日に投稿はしないつもりです。