第129話-3 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下のようになります。
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前回までの『水晶』は、ランシュとヒルバスの活躍で左軍は、圧倒的な勝利を得るが―…、一方で中央軍は戦死者を自らが戦ったミラング共和国軍以上に出すのだった。
翌日。
中央軍がミラング共和国軍の本陣を今日にも攻めると言ってきた。
そして、右軍と左軍は大人しく後ろを固めておけ、というものだった。
馬鹿に権力を与えてはいけない。
馬鹿だと思っている人で、謙虚になれるのなら、まだましな方だ。
だけど、中央軍を指揮しているリース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いは、自分が活躍して、自らの栄光と地位を手に入れることしか頭にないようだ。
類は友を呼ぶ。
まさに、そのように感じてしまうのは俺だけであろうか。
「馬鹿だな。」
「馬鹿ですね。」
俺とヒルバスは、中央軍に呆れるのだった。
呆れる以外の選択肢があるだろうかと思えるぐらいだ。
「ランシュ君、ヒルバス君か。中央軍は本当に馬鹿なのかねぇ~。」
と、左軍の大将で指揮官のハミルニアがやってきた。
彼は、兵士を指揮するのは、上手いと思える人だ。
貧しい平民から兵士になり、一時期は騎士団にも在籍していたが、兵の指揮関係の仕事がしたくて、騎士とは別の軍団の方に属すのだった。
リース王国は、騎士団が治安や戦争でも動員されることが多いが、騎士団の数だけではどうしようもできない。
そのため、一般の平民を雇って、兵士として育てておく必要がある。
ヒルバスも騎士団に合格する一年前から面接や体力試験などで合格した軍団の方に所属して、実力を認められて騎士団の試験を受けられたのだ。
そう思うと、俺はベルグの推薦という形だったので、騎士団ではあまり良く見られていないのも納得がいく。
そう、リース王国側の推薦する人物が大抵、騎士としての実力がどうかと思えるような怪しいものであったり、劣っていたりすることが多すぎるし、人格的に問題があるという一面もあり、騎士団内では歓迎されていなかった。
だけど、俺は、推薦という形で最初に騎士団に見習いとして入団したが、試験もその後に受けて合格することができているので、騎士団の中では珍しい経歴だし、騎士試しで天成獣の宿っている武器に選ばれたということもあり、良好な関係をほどほどに気づくことができた。
そのおかげで、王族護衛にも推薦されたし、俺も望んでいたので、叶ったという感じだ。
「ですね、ハミルニアさん。」
「そうですね、ハミルニア指揮官。」
俺、ヒルバスの順にハミルニアの意見に頷きながら、言うのだった。
「ランシュ君は、一応、最初は推薦で騎士団に入団したのだから、リース王国の中央で権力を握っている側の意見に賛成しそうなものだけど―…。」
ハミルニアは、俺がリース王国の中央で権力を握っている奴らの意見に賛成しそうなものだと思うのであった。俺はベルグの推薦だし―…。
だけど、俺が賛成することはできないだろうし、ベルグもそうかもしれない。
「いや~、騎士団に入って、勉強していけば、リース王国の中央で権力を握っている方々のやっていることが正しいとは思えなくなりますよ。それに、昔の旧アルデルダ領の領境でのミラング共和国との戦いで、たくさんの騎士が亡くなったのを知っていますし―…。」
そう、俺は、リーウォルゲ元団長が亡くなった事件とか、騎士団の中の一部の騎士の暴走とかで大変な目にあっているので、その原因であるリース王国の中央で権力を握っている奴らにはどうしても意見を同じくすることはできない。
命に関わってくるので―…。
「そうか、ランシュ君はそういう体験をしているのか~、実際に―…。なら、君は大丈夫だろうし、ヒルバス君はもちろんってな感じかな。」
「はい。」
と、ハミルニアの言葉にヒルバスが頷くのだった。
「そして、中央軍の馬鹿な行動もあるだろうけど、私は昨日は忙しくて感謝できなかったが、君たち二人には感謝するよ。それに私は、この戦いにメルフェルドを加えて、指揮とは何かを勉強させたかったよ。」
ハミルニアは、メルフェルドがいなくて、悲しく表情をするのだった。
ハミルニアは、メルフェルドとは昔からの知り合いで、歳は離れているが、小さい頃から聡明だったそうだ。
騎士としての才能、軍の指揮官としての才能があるのは、ハミルニアもすぐにわかったそうだ。
だからこそ、指揮官としてリース王国に貢献させることができれば、これほどリース王国の利益になることはないであろう。
「まあ、性格的には―…。」
と、ヒルバスが言うが―…。
「確かに、メルフェルドは、性格的に優しいですが、それでも騎士である以上、時には冷徹とも見られてもおかしくない判断をすべきことは理解していると思います。彼女もそろそろ指揮官として実践を経験させて、将来、騎士団に所属しながらも、指揮ができるようになれば、いろいろとリース王国にとっても利益になるだろうに―…。リース王国の中央で権力を握っているラーンドル一派は、悲しいけど駄目だね。」
最後の方は、ヒソヒソとさせた声で言うハミルニアであった。
まあ、リース王国の中央で権力を握っている奴らを公然と批判する指揮官なんて、それだけで左遷の対象でしかなく、最悪の場合は、二度と兵士として活動できないような傷を負わされることもあるだろうから―…。
ハミルニアには、指揮官でいてくれるほうが俺とヒルバスにとってはありがたい。
だって、ハミルニアは、俺とヒルバスの行動をある程度、ちゃんと考えてくれるし、ある程度自由に行動してくれることを許してくれるのだから―…。
そういう意味では、ハミルニアには良い成果というもので箔をつけて、リース王国の指揮官として生き残ってもらいたいと思ってしまう。
性格も、他人に気を遣えるし、自分の意見もしっかりともっているし、言うべき時にはしっかりと言うことができる。
メルフェルドの指揮の勉強には、ハミルニアは良い先生なのかもしれない。
リース王国の今は、そういう意味で損をしているのは確実だ。
ラーンドル一派は、いつになったら反省して、まともなことをしてくれるのだろうか?
ないかもな。
「そうですねぇ~。ハミルニア指揮官は、中央軍の動向から察して、どのように軍事行動をとる考えですか?」
ヒルバスがハミルニアにどういう行動をこれからとるのか聞くのであった。
「軍事行動―…、というか、昨日怒られたんだ。なぜ、左軍が中央軍よりも圧勝しているのか。それなら、助けに来てもいいだろう、とか言われて―…。それなら、援軍要請をして欲しいものだし、こっちは、ミラング共和国の一つの軍が中央軍のいる方に向かわないようにしていたのに―…。それに、傭兵たちにも戦果をあげさせておく必要があるし―…。そうすれば、これからの戦いで士気をあげることができるし、やる気と自信があって良い結果になると思うし、それに―…、町で略奪とかはしてほしくないからね。」
と、ハミルニアは愚痴を俺たちに言いながらも、ヒルバスの質問の意図は理解できていたようだ。
続けて言う。
「今回は、中央軍がミラング共和国軍に先陣を切って、そのミラング共和国軍の本陣を攻めるみたい。何度も言っているような気がするけど、馬鹿だね。他のことを考えてもしょうがないから、正直に言うと、後ろにいながらも殿に近いことをしようかな…と。ランシュ君とヒルバス君がいるし―…。君たち二人にはある程度、昨日みたいに自由にできる裁量を与えておくよ。二人がいなければこんなことはしないが、確実に中央軍は敗れて敗走してくれるだろうから、それを利用して、追撃してきたミラング共和国に手痛い一撃を与える。右軍の指揮官にもそう言っているし、アンバイドが私の意見に賛成してくれたので、上手くいく可能性はあると思う。それでも、不測の事態には備えて欲しい、ランシュ君、ヒルバス君。」
要は、俺とヒルバスでどうにかして欲しいとのこと。
そのために必要な裁量は俺とヒルバスに与えてくれるようだ。
人任せなような感じもするが、間違っている策ではない。
中央軍が敗れることは確実だろうし、敗走することにも中央軍はなるであろう。
だからこそ、その時に、ミラング共和国軍の方が昨日の左軍のように追撃をかけてくるかもしれないということだ。
そこをついて、俺とヒルバスで欲をかいたミラング共和国軍にダメージを与えようとしているのだ。
今度は、右軍とともに―…。
ハミルニアは、どうすればミラング共和国軍に大きなダメージを与えることができるか、自分たちの軍勢の被害を最小限にしながらそれを達成できるか、考えているのだろう。
本当に、戦いたくはないわぁ~、敵としては―…。
まあ、俺には、天成獣の宿っている武器を扱えるから関係はないかもしれないが、どこで足元をすくわれるかわからないので、避けるもの避けたいのだ。
だから、俺もヒルバスも返事は決まっている。
「「はい!!」」
ハミルニアの命を受けるのであった。
「ありがとう。今回は、俺らが頑張っても中央軍の手柄にされてしまうけど―…。まあ、アンバイドにそのようなことをすればどうなるかは、リース王国の中央で権力を握っている奴らも理解ぐらいはしているだろう。理解できずにそのような報酬をケチるようなことをすれば、返って、リース王国に甚大な被害が出かねないからね。財政悪化は見えているから―…。」
ハミルニアは、俺とヒルバスの活躍も中央軍に横取りされることを事前に言ってくるのであった。
それでも構わない。
だって、俺の復讐のためには、俺が挙げた成果は、邪魔になってしまう場合があるのだ。
成果という名の栄光は、リース王国の中央で権力を握っている奴らに余計な警戒心を生んでしまって、王族護衛が続けられなくなる場合がある。
本当に面倒くさいというのが俺の正直な感想だが、これも復讐を果たすための苦難だと思って受け入れることにする。
ハミルニアは続ける。
「では、任せた。ランシュ君とヒルバス君の二人には期待しているよ。」
そう、言い終えると、ハミルニアは自らの指揮する場所に戻っていくのであった。
「ハミルニア指揮官は、かなり気を遣えるし、人遣いは荒いところもあるけど、指揮官としては優秀な方で、性格も気さくなのでやりやすいです。私としては―…。」
ヒルバスがハミルニア指揮官を褒めるのだった。
「そうだな。ハミルニアさんが総大将だったら、あのようなミラング共和国軍と同じような軍の分割しての攻めをおこなわなかったし、ここの森を利用しながら、相手を混乱させた後に、総攻撃を仕掛けてくるだろう。相手に冷静に判断させる時間を与えずに―…。」
そう、ハミルニアの戦い方は、ズルいとかいうよりも、嫌だと思えてしまうのだ。
味方なら最高、敵なら嫌ってほどだ。
「さて、私たちも持ち場へと向かいましょうか、ランシュ君。」
「そうだな。」
俺とヒルバスは、持ち場へと向かうのだった。
その後、左軍は進軍し、俺とヒルバスは中央軍の後ろから少し離れた待機することになった。
二時間後。
伝令が知らせてきた。
「中央軍がミラング共和国軍の本陣で戦闘を開始!!」
そう、中央軍がミラング共和国軍の本陣へと攻撃を仕掛けたのだ。
まあ、突っ込むだけという単純なものでしかなく、そのなかで、ミラング共和国側がどのようなことをしてくるかということは、一切頭の中にないだろう。
彼らの思考の中にあるのは、左軍や右軍の奴らに手柄を取られてたまるかという気持ちでしかない。
その気持ちが上手く良い方向に働けばいいのだが、彼らは自らを向上させようという気持ちはなく、人を落とすことでしか自らの能力を強く見せられないので、それを無視することができる者たちには簡単に敗れてしまうし、ボロが出てしまうものだ。
俺とヒルバス、いや、左軍も右軍も中央軍が敗れて、敗走してくるのは予想済みだ。
そうなれば、その隙を突いて、手柄を挙げることができる。
それに、どうせ、手柄は中央軍が自分がしたように報告もしくは偽装すると思うので、俺とヒルバス以外の奴らにちゃんと報酬が渡ることを祈るのみだ。
ミラング共和国側がリース王国へ宣戦布告しているし、その中で、エルゲルダがリース王国を滅ぼすことを明言しているので、リース王国はミラング共和国に敗れれば、リース王国が滅亡するのは目に見えている。
俺とヒルバスにとってもそれは望んでいない。
「ヒルバス、待つのは暇だなぁ~。」
「そうですね、ランシュ君。だけど、中央軍が粘ってくれることは、こちらとしてもありがたいことだと思います。それに―…、ミラング共和国軍の数が減ってくれれば、追撃がなくなるのは残念ですが、余計な死者を右軍と私たちの左軍から出さなくて良いじゃないですか。」
「そうだな。生き残ってこそ、挽回のチャンスが与えられるのだから―…。」
それでも、リース王国の騎士として、最大限戦いますが―…。
俺とヒルバスが話し合っている途中で、中央軍の兵士が逃げてくるのだった。
いよいよ、作戦開始ですか。
第129話-4 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
ミラング共和国との戦いが、なかなか進みませんが、何とか進めていこうと思います。
では―…。