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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
272/748

第129話-2 ミラング共和国との戦い

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国がリース王国に宣戦布告し、ランシュはその戦争に巻き込まれるのだった。

 「今回の作戦は、リース王国の兵士を三分割して、それぞれをミラング共和国軍にあてることにする予定です。」

 と、伝令の兵士が俺とヒルバスにそう伝えてくる。

 これは、今回の作戦だ。

 単純であり、難しいことを言っているわけではない。

 だけど、作戦にしては杜撰すぎるものだし、これを考えた奴は馬鹿だと思う。

 作戦通りになんて上手くことはほとんどないのが、世の常とか言えばいいのだろう。

 人の考えるところに完璧というものがないために、欠陥が生じるし、それを補うこともまた可能なのだ。

 そして、伝令の兵士は去って行く。

 「三分割ですか。まあ、妥当な作戦ではありますが―…。その分割方法は、やっぱり―…。」

 と、ヒルバスは、どうなるかが予想できているのだ。

 「だな。均等というよりか、リース王国の騎士団の中で、リース王国の中央で権力を握っている奴らの息のかかった者たちと一般の将校の中でリース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いの軍とそれ以外という感じになりそうだな。そして、それ以外というのに、ミラング共和国軍の強いところをあて、苦戦している間に、リース王国の中央で権力を握っている奴らの言いなりになっている軍隊で勝利を手に入れようというわけか。本当に、こんな場でも私欲まみれかよ。」

 俺としては、呆れるしかなかった。

 もう少し、まともな思考はないのかよ。

 だけど、自分たちが成果をあげて、リース王国の実権を完全に握ることにしか興味がないのだろう。

 それも、他人の活躍を嫌って―…。

 本当に、こういうことばかりしていると、国の力を衰えさせるだけだ。

 「ランシュ君、そういうのは、あまり表立って言うことではないですが、気持ちとしてはわかりますし、賛成します。」

 ヒルバスはそう言うのだった。

 「そうだな。まあ、王族さえも鳥籠に閉じ込めるような奴らだし―…。これ以上は言う気もない。俺たちにできることはただ一つ。どんな馬鹿で、理不尽な命令も達成するしかない。僕が考えた最高の軍事作戦とやらに―…。」

 俺は、心の中で、悪態をつきながらも、表情に出さないように、皮肉を込めて言う。

 大きい声でなく、ヒルバスに聞こえる程度の大きさであるが―…。

 「そうですね。」

 そうして、二日ほど、ゆっくりとすることができた。


 二日が過ぎて、ミラング共和国軍と睨み合って三日目になる。

 その日、ミラング共和国軍が三方からリース王国軍を攻めてきた。

 こちらも三つに軍を分けて、戦うことになった。

 俺とヒルバスは同じ軍に編入され、先頭を歩いていた。

 すでに、俺は長剣に天成獣の力を纏わせて、すぐに攻撃ができるようにしていた。

 ここ数年の修練で、トビマルをある程度使いこなせるようになっていた。

 ヒルバスも実力をつけてきているので、奇襲的な戦いがここでは有効になろう。

 「俺は空から攻撃する。ヒルバスは―…。」

 「わかっていますよ。楽しみにしていてください。」

 そう、俺らは会話すると、俺は、羽を形成し、空へと飛ぶのだった。

 トビマルは、羽を作り出すことができるし、いろいろと便利だ。

 空の移動も慣れており、素早く移動するのも簡単だ。

 そして、俺とヒルバスが編入されている軍に敵が近づいてきた。

 命令があるまで攻めないが、たぶんだが、後ろへと戦っていいかということを司令官に伝える前にミラング共和国軍は攻撃してくるだろう。

 予想であるが、ミラング共和国軍は、リース王国軍を見つけ次第、攻撃せよ、というような感じの命令が発せられているだろう。

 一直線に向かいながらも、弓で攻撃をミラング共和国軍が開始しようとしてくるのだった。

 だが、その命令は発せられない。

 こちらには、ヒルバスがいるのだから―…。

 「じゃ、先手はこっちから打たせてもらいます。」

 ヒルバスは、二丁拳銃のうちの一つを構え、放つ。

 その放たれた銃撃は、先頭の兵士を貫通し、前の攻撃を命令する指揮官へと達するのだった。

 そのため、命令を完全に言い終える前に、指揮官は銃撃を受け、倒れる!!

 そして、その指揮官より前にいたミラング共和国軍の兵士たちも倒れていく。

 結果、ミラング共和国軍に動揺がはしる。

 そうなれば、後はこっちのものだ。

 俺は空中から、羽を羽ばたかせ、攻撃を放つ。

 風の攻撃だ。

 この攻撃は、かまいたちのように切れる風を作って、何発もミラング共和国軍の方へと放つのだった。

 俺の攻撃によって、ミラング共和国軍の多くが切り裂かれ、瀕死の重傷を負う者たち、軽傷で済む者たち、最悪の場合、俺の攻撃で即死する者たち―…。

 空中に俺はいるので、倒れていく兵士しかわからないが―…。

 ヒルバスの攻撃によってはしった動揺は、俺の攻撃で混乱へと変わり、後ろへ走り出そうとするものが出始めるのだった。

 まあ、最初の戦いだからこそ奇襲という戦法を使って、味方の戦死者の数を少なくしておく必要がある。数は重要な面を持っている。

 だけど、ここで勘違いして欲しくないのは、一人や二人とかそういう差ではなく、大きな意味での数の差のことであり、かつ、練度、技術力などの諸々の要素を含めて考える必要があるということを認識したうえで言っている。

 ただ数が多ければいいというわけでもない。それ以外の部分が重要な役割を占めているのも事実だ。それを総合的に検討して初めて、判断を下すことが可能だ。

 その具体性を提示したうえでの比較をなさない上で、総合的に判断するとか言う奴らがいるのなら、そいつらの言葉は信憑性は皆無と言った方が良い。

 俺は、軍事について勉強していくなかで、特に軍史においては、運の要素、相手の行動による要素も存在するが、負けるのは大抵は周囲の言う冷静な言葉を無視して、自分の見たいものしか見ていなくて、気合いで何とかなるとか、神が我々についているのだから負けないとか、そんなことを平然と言う上官やトップのいる場所だ。

 そんなで勝てるなら、誰も苦労はしない、参謀も必要はないだろ。

 だから、俺は、上に立つことは目指していないが、少しでも自分の戦いの中で生き残る必要があるために軍事や戦争についても勉強した。

 一番良い作戦は、戦わずして勝つ。

 俺はそう思っている。

 そして、俺は、まだ、このミラング共和国軍との戦いに勝ったとは思っていないが、優勢に進んでいると判断できる。

 後は、指揮官が追撃をかけるだろう。

 俺の役割は、後ろでミラング共和国軍が罠を仕掛けていないかを空中から確かめることだ。

 俺は罠ないかを確かめ、なかったので、ゆっくりとヒルバスの方へと戻るのだった。


 「おつかれさま、ランシュ君。」

 戻ると、ヒルバスは追撃には参加せず、俺を待っていたようだ。

 「ああ、ヒルバス、射撃の腕、大分上がっているな。それに、メルフェルドがいれば、指揮させる経験を積ませられたのにな。」

 そう、メルフェルドは、俺とヒルバスよりもはるかに指揮官としての能力もあり、俺やヒルバスよりもより効率よく勝てる策を提示してくれるだろう。

 女で優秀なのは男にとって敵でしかないとか言うリース王国の中央で権力を握っている奴らの思考の馬鹿さ加減に呆れるのだった。

 指揮の優秀さに男も女も関係ないと思う。重要なのは、策を練る力、相手の実力と行動を正確に予測する力、人間関係をしっかりと良好に築ける人であるか、どうかだ。

 戦や戦争は、味方の命がかかっている以上、それに大きな役目を果たす指揮官は優秀な人間でないといけない、優秀じゃなくてもその部下が優秀である必要があるのだ。

 そのことを理解せずに戦争なんて言っている奴らは、味方の兵士を悲惨な目に合わせるし、さらに、自分の属している国を守ることなどできるはずもない。

 優秀という概念に男女なんてものはあまり関係ないし、軍事では一ミリも関係と思った方がいい。

 「ランシュ君、また少しだけ考えているのですか? まあ、メルフェルドさんは優秀な指揮官になるとは思いますが、経験を積ませてもらえないのであれば、優秀な指揮官にもなりようはありません。それでも、メルフェルドさんの性格を考えると、こういう場には出したくはありませんが―…。」

 そう、メルフェルドは、人として優しすぎるところがあるので、こういう人を殺す場にはあまり関わらせたくないのだ。

 まあ、人を殺せないというわけではないので、必要以上に過保護になるのもなぁ~。

 そう、メルフェルドは、暴動ではないが、裏組織の構想を鎮圧している際、関係のない住民を巻き込もうとした裏組織の人間を実際に殺している。

 その時も、完全はないが平然としていたし、気持ちの整理ができるとわかっていたので、戦場でも大丈夫という気持ちなるが、普段の人に優しく、敬うように接するのを知っているので、戦場へと連れていくべきではないという気持ちが強くなってしまうのだが―…。

 「そうだな。ここでは、リース王国の中央で権力を握っている奴らと悔しいけど、同じになってしまうか。」

 そして、俺とヒルバスが編入されていた軍隊は、圧倒的な勝利をあげるのだった。


 本陣にて―…。

 「乾杯(かんぱーい)。」

 カン、カン、カン。

 と、あらゆる場所でコップやグラスが触れる時にでる音がなる。

 「がは~ぁ。勝利した後の一杯は最高だぜ~。ランシュ先輩、ヒルバス先輩、ありがとうございます!! 今日の最高の一杯は二人のおかげです。」

 リース王国の騎士団の中で、二年ほど前に試験に合格して入団してきたアウルという男が言うのだった。

 アウルは、騎士としては、まだまだなところもあるが、腕っぷしはあるし、リース王国の中央で権力を握っている奴らと違い、性格がサバサバしていて、可愛い後輩だ。

 まあ、俺とヒルバスの目的を言う気はないけど―…。

 「そうか、飲んでもいいが、相手がどう行動してくるかわからない以上、酒はほどほどにしておけよ。」

 俺は、アウルに忠告する。

 アウルは、サバサバしているが、酒に関しては駄目な方かもしれない。

 だけど、今が戦争状態であるので、飲みすぎるということはないと思う。

 「アウル、君は状況における分別はできるほうだから気にしないけど、他の人を酔い潰さないように―…。」

 ヒルバスも注意するようだ。

 ヒルバスの方が、俺の言うのよりは的確であるため、アウルの方も理解できるだろう。

 「あいさ~。」

 アウルは返事し、他の騎士と酒を飲みかわすのだった。

 俺とヒルバスは、酒を飲む気はなかった。

 たとえ、俺とヒルバスが編入された三つにわけられた軍の一つが大勝したとしても、ミラング共和国軍の方も態勢を整えてくるだろう。

 そうなると、俺とヒルバスがやったような奇襲は使えなくなる可能性も存在する。

 なぜなら、俺とヒルバスのおこなった攻撃方法、天成獣の宿っている武器を扱っている者がいるという情報が伝わっている可能性の方が高いと考えた方が良いからだ。

 それがまともな軍ということなら、なおさらであろう。ミラング共和国軍がまともかどうかは軍の中の人とその関係次第であろう。

 ゆえに、次の手を打ちながらも、失敗した場合の保険的な行動をも考えないといけない。

 「策はどこまで考えたとしても、できる範囲が変わるわけではありません。今日は、私とランシュ君の左軍は大勝でしたが、右軍はギリギリでの勝利で、中央軍は二割以上の戦死者が出て、大変ですけど―…。」

 ヒルバスが今日の戦いの結果を言い始める。

 「そうだな。右軍は、傭兵にアンバイドという伝説に近いほどの奴がいて、そいつのおかげでギリギリ勝利したようだ。」

 そう、右軍は、傭兵を中心とした軍で、その軍の中にいたアンバイドという奴が上手く、ミラング共和国軍に対して、立ち回ったことによりギリギリで勝利することができた。

 アンバイドはここ十数年で有名になってきた傭兵であり、天成獣の宿っている武器を扱う人間であり、一昔前のグルゼン親方と同等か、それ以上の実力を有している。

 アンバイドは、天成獣の宿っている武器を扱って戦う者としての実力があるので、グルゼン親方でも倒すことはできない。

 このアンバイドが、ミラング共和国軍との戦争において、リース王国軍の傭兵といてくれたことに感謝したいほどだ。

 まあ、後に、アンバイドが敵となってゲームをするとは思ってもいなかったが―…。

 「アンバイドの噂は聞いているから驚かないが、リース王国の右軍の指揮者は指揮官としての能力がないということになるな。」

 「ですね。だけど、傭兵ばっかりの軍を指揮されているので、可愛そうという一面はあるのですが―…。それでも、どんな練度や寄せ集めの軍でも指揮をして見せての指揮官なので、無能なのには変わりありません。」

 まあ、俺もヒルバスのように同情しないわけではないが、それでも、このリース王国で暮らす人々の命に関わりかねないことなので、しっかりと結果に対して、厳しくしないといけない。しょうがないことだ。

 右軍の指揮官は、ちゃんと処分を受けないといけない。

 「最悪なのが、中央軍の方か―…。」

 「ええ、中央軍が、ミラング共和国軍の戦った軍勢の戦死者以上に死者を出しているということです。指揮官は、右軍の指揮官より劣っているというか、もしくは戦争中に殺されても文句は言えません。そして、その指揮官がリース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いと言ったところですか。」

 「ああ。」

 そうなのだ。中央軍の構成は、リース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いと彼らに従う兵士で成り立っているのだ。

 大丈夫かと、戦いの前に思ったぐらいだ。

 そして、俺は言葉を続ける。

 「で、結局、ただ突っ込んでいくだけ、数で押し切ろうとするだけで、簡単に倒されていったみたいだな。相手が対応しておこなわれた反撃に対応しきれず―…。」

 そう、中央軍はただ突っ込んでいくだけで、ミラング共和国軍が態勢を立て直し、横から左右から中央軍を攻撃したのだ。そのせいで、混乱した中央軍は、負けてしまったというわけだ。

 情けないというよりも、もう少し相手のやることを想像して欲しいものだ。

 「中央は、完全に俺らの勝利を恨んでいて、余計な暴走をしそうな感じだな。」

 「そうですね。」

 懸念が一つ増えるのだった。

 自らの面子でしか判断することのできない奴らの判断が想像できてしまい、悲しくなってしまったのだった。


第129話-3 ミラング共和国との戦い に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ランシュ無双が開始されると思います。まあ、この戦いは、話としてはランシュ視点で今のところは進んでいきますが、番外編で第三者の視点や、アンバイドとかも登場させられれば―…、と思っていたりもします。

次回の投稿分は、完成しだいこの部分で報告すると思います。

では―…。


2022年2月6日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年2月7日頃を予定しています。

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