第129話-1 ミラング共和国との戦い
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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前回までの『水晶』のあらすじは、現実世界である日人々が石化する事件が起きた。その黒い生物から逃げていた松長瑠璃、松長李章、山梨礼奈は、そこで黒い生物を倒すギーランに助けられる。ギーランによって、異世界へと送られた三人は、魔術師ローと出会い、ローからこの異世界で戦うために、天成獣の宿っている武器が必要だと言われる。ローの持っている中から、三人は天成獣に選ばれ、旅立つのであった。
その後、アンバイドという男性が一行に加わり、ルーゼル=ロッヘではローに頼まれて瑠璃たちに加わることになったクローナととも旅をし、リースという一つの国の首都に辿り着く。
そこでは、現実世界を石化させたとされるベルグの仲間であるランシュが有力者となっており、旅の中にあった瑠璃たちに刺客を放っていた。そして、そのランシュによるゲームに瑠璃は参加を意思表示するのだった。そこに瑠璃と同じチームにリースの王家の王女セルティーも加わり、ゲームが始まる。
そして、紆余曲折あって、瑠璃は第十回戦第六試合でランシュに勝利するのであった。ランシュは意識を失い、自らの過去を見るのであった。
その中で、クルバト町を含む領地を支配していたアルデルダ領の領主エルゲルダによって、クルバト町は燃やされ、その時に妹と母親を殺されたランシュはベルグによってリース王国の騎士団に見習いとして入団し、試験に合格して騎士となり、騎士試しでトビマルという天成獣に選ばれるのだった。
その後、アルデルダ領に侵入したミラング共和国軍との戦いで、グルゼン親方に敗れたランシュは、強くなりたいと思うのだった。
そして、数年もしくは十数年の時が経つ―…。ランシュは立派に成人し、騎士としての実力をつけていたのであった。
第1部分からまとめるとこんな感じになると思います。あらすじは―…。
第129話は長くなるので、分割します。
第128話よりは長くならないとは思いますが―…。
【第129話 ミラング共和国との戦い】
俺がレグニエド王を暗殺する二年前。
この日は、ある悲しい出来事を聞くことになった。
いや、祝福ということの方が正しいだろう。
俺にとってもそうであるが、やっぱり別れるということに悲しみも存在するか複雑だ。
「ランシュ、ヒルバス、メルフェルド、アガランダ、俺は結婚することになった。そして、リース王国の騎士団を辞めないといけない。それも、理由は実家の商家を継がないといけない。これは俺にもどうすることはできない。まあ、俺の結婚相手は、俺自身も好きだからな。あの俺に立派にものが言えるのが良い。ビビッときたものだ。後はニナエルマに任せることにする。」
先輩は騎士団を辞める。
先輩からは、いろいろと教えてもらった。適当でガサツだったけど―…。
それでも、先輩からいろいろ騎士として教えてもらったという恩を忘れることはない。
戦いの前に士気を上げるための言葉「行くぞ!!」とか、騎士としての心構えと守るべき者は誰か、うん、いろいろだな。
だからこそ、先輩が騎士団を辞めざるをえないのは悲しいことである。
だけど、先輩の結婚に関しては、遅すぎるぐらいなので、さっさとして欲しいと思っていた。
リース王国の騎士団は、結婚すると、宿舎ではなく、騎士団の外の近くに家を貸与され、格安で住むことができる。
だけど、先輩はその権利を使うことなく、リース王国の騎士団を辞めて、結婚し、実家の商売を継ぐことになった。つまり、先輩は今の年齢になるまで結婚とご縁がなかったのである。
なぜか、それは、リース王国の騎士団はたいてい、宿舎と騎士団の敷地の中で過ごしていればいいので、あまり出会いというものがないとうことになるからだ。
「はいはい、わかりました。ラウナウが育てた後輩たちは、ラウナウよりも強いのだから、安心して騎士を辞めることができるだろう。そして、私も前線ではなく、後方の方が主になっていますから―…。歳には勝てないものです。むしろ、ラウナウは実家の商売を傾かせないようにしてください。」
ニナエルマは、毒舌を混ぜながらも、大丈夫だと言うのだった。
それほどに、俺たちの実力がついたということだろう。
「ガハハハハハハハハハハハハハハ、そうだな。だけど、実家の商売の方は大丈夫だろ。俺の婚約者は、商才が凄くてなぁ~、俺が実家にいなくてもいいのではないかと思うほどだが、一族の者が当主じゃないと纏まらないとか言われてなぁ~。」
先輩―…、一応は重要な神輿ではあるけど、それ以外には期待されていないということか。
まあ、先輩が商売とかいうのが得意そうには見えないからなぁ~、見た目とか性格とかで―…。
「先輩~、それで良いんですか?」
俺は一応だけど、言ってみた。
「良いんだよ。だって、それで商売が上手くいくのなら、十分じゃないか。商家であるからこそ、その本業が上手くいくのが一番大切なんだ。そのために、置物とかになれと言われれば、なってしまってもいいと思っている。ガハハハハハハハハハ、扱き使われそうだがな。」
先輩、当主ってなんですか?
そう思うぐらい、当主の扱いが雑だなぁ~、と思う。
だけど、それは先輩の奥さんがそのように扱うからなのだろう。
まあ、先輩の実家について考えたとしても意味はないだろうし―…。
「先輩、お元気で―…。」
「ラウナウ先輩、実家の方に遊びに行けたら、行きます。」
「ラウナウ、実家に迷惑をかけないようにしてください。」
と、俺、メルフェルド、ニナエルマが言うと―…。
「ガハハハハハハハハハハハハハハ。」
と、言いながら、先輩は騎士団を辞めていった。
あの先輩のことだから、元気にやっていけると思う。
俺はそう思うことにした。
そして、先輩が騎士団を辞めて三カ月が経過した。
それより、二週間前、隣のミラング共和国がリース王国に対して、宣戦布告してきた。
ミラング共和国のトップ、総統は、旧アルデルダ領の領主であるエルゲルダが就いていた。
どうやって、その地位に就任したのか。
それは、ミラング共和国軍に降伏した後、ミラング共和国の対外強硬派に取り入り、政府内での地位を詐術と詭弁でみるみるうちに出世し、数年でトップの地位となり、対外強硬派の主要人物たちを排除して、確固たる地位にしたという。
対外強硬派の主要人物たちは、その多くが殺されて、この世から消えてしまった。
そして、ミラング共和国の裏部隊は、完全にエルゲルダが抑えてしまっているようだ。
シエルマスは、完全にエルゲルダのものというわけだ。
そのせいで、俺たちはミラング共和国との戦争へと駆り出されることになった。メルフェルドはお留守番になってしまう。
メルフェルドは、騎士団の中で、騎士としての力は純粋に強いし、ミラング共和国との戦争でも活躍するのは間違いないであろう。
だけど、リース王国の中央で権力を握っている奴らは、メルフェルドのような女性が戦争で活躍することを嫌うし、自分の子飼いの騎士が戦争で活躍して、自分たちのやっていることが正しいと証明しないと気が済まないらしい。
そして、俺は、騎士団からは離れていた。
俺が望んでいた王族護衛になっていた。
俺が護衛するのは、セルティーというリーンウルネ王妃とレグニエド王の一人娘である。
性格は、父親のレグニエド王のような自分という人間の存在をどんなことにおいても誇示したいタイプではないが、世間知らずのような一面があり、良く言えば素直、悪く言えば従順ということであろう。
まあ、セルティーの護衛に就いたメリットはかなりデカい。
王族の情報を探れるようになったし、セルティーの持っている天成獣に関する本を読ませてもらえたからだ。
まあ、始めて会った時は―…。
―初めまして、今日からセルティー王女を護衛することになったランシュです。よろしくお願いいたします―
―はい、話は伺っております。よろしく―
まあ、こんな感じで素っ気なかったけどな。
それで良い。
話してみれば、悪い感じの人ではなかったので、そこは良い面であるが―…。
そして、俺は、セルティーの護衛から一時外れることになった。
俺のことを自らの手駒だとリース王国の中央で権力を握っている奴らは認識したのか。
いや、自分たちの手駒の騎士が活躍できなかった時に、俺を使って勝利し、それを手駒の騎士の手柄にでもしようしているのだろう。
だが、それで良い。
俺がレグニエド王へと復讐する時に、俺の戦果の情報が乏しいのは良いことだ。
実力を知られていない方が有利だからな。
そして、俺は騎士団の騎士たちに交じるのであった。
「ランシュ君、久しぶり。護衛の方はどう?」
久々に会ったヒルバスと話しを少しだけ始めるのだった。
「うん、悪くはない。いろんな情報が仕入れられたし、天成獣に関する本を読むことができたから―…。」
俺は素直に言う。
だけど、俺の復讐のことがわからないようにして、であるが―…。
「ほお~、セルティー王女は読書家でもありますし、天成獣の宿っている武器を扱うことができるのだとか―…。」
ヒルバス…、さすがに耳が早いなぁ~。
「ああ、大剣の方で、武器倉庫の一室に厳重保管されていた方だ。」
「ああ~、あれですか。かつて、リース王国の建国者の妻が持っていたと言われる大剣で、太さもかなりある剣ですか―…。幻を操るとされる、武器の見た目とはギャップのある―…。」
「そうだな。」
俺は、セルティーの騎士試しにも護衛として参加している。
この騎士試しは、三週間前におこなわれた。
そして、セルティーが扱うことができる武器は、リース王国の建国者のパートナーであるライナウナが実際に使っていたとされる大剣だ。
文献にも詳細に記されており、天成獣としての属性は幻という武器の見た目からは考えられないような属性である。
その武器を扱うことができたため、セルティーは騎士としても前から心構えだけでも訓練をしていたが、より騎士として強くすべきだろうということになって、本格的な訓練がなされている。
リース王国の中央で権力を握っている奴らによって、セルティーの強さに笠を着て、周辺諸国に圧力をかけて、自らの利益を拡大しようとしている。
それも、周辺諸国が嫌うやり方で―…。
どこまで最低なんだか―…。
まあ、周辺諸国は張り合っていく以上、ある程度は仕方のないことであるが、やりすぎるのは良くない。
「ということは、セルティー王女とも、いずれは―…。」
「だろうなぁ~。」
殺しはしないが―…。
それでも、俺の目的のためには、不幸を背負ってもらうがな。
「じゃあ、そろそろ始まりますか。団長の演説が―…。」
そう、フォルクス騎士団長の演説が始まり、リース王国とミラング共和国への遠征の作戦が知らされる。
「皆の者、揃ったな。今回、我々騎士団の任務は、宣戦布告をしてきたミラング共和国を撃退することだ。その過程でミラング共和国の領土を併合しても構わない。むしろ、そうして欲しいとレグニエド王の命が下っている。だから、存分に戦うが良い。前のアルデルダ領の境での大きな屈辱を今回こそ晴らすのだ!!!」
フォルクス騎士団長は、最後に叫ぶように言う。
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。』
と、騎士団員が叫ぶ。
俺も叫ぶ。
久々だ。
このような感覚は―…。
俺は騎士としての実力を王族の護衛で鈍らせてはいない。
いや、むしろ、過信は禁物だが、強くなっている。
そして、昨日の夜のことを思い出す。
昨日の夜、俺は護衛の仕事は休みであり、城の外から郊外へとやってきていた。
そこに偶然というよりも狙っていたのか、ベルグが俺の目の前に現れるのだった。
―ランシュ君、久しぶり。元気そうで何よりだ―
―ベルグの方こそ、久しぶりだ。用は何だ―
―それはねぇ~、ランシュ君。リース王国とミラング共和国が戦争状態になるんだよねぇ~。それにランシュ君も騎士として派遣されるようだし、だから、あることを許可しようと思っているんだ。レグニエドを殺すことは駄目だけど、ミラング共和国の総統、元アルデルダ領の領主エルゲルダを殺すことを許可するよ。ランシュ君の復讐相手の一人を―…。それぐらいはできる実力はあるようだし―
―そうか、ありがとう、ベルグ―
―どういたしまして、では、ランシュ君の活躍に期待しているよ―
そう言うと、ベルグはどこかへと消え去るのだった。
相変わらず、どうなっているのかわからんなぁ~。
まあ、昨日、そんなことがあったのだ。
そして、俺は、確実にやることができた。できるようになった。
ミラング共和国の総統のエルゲルダに対して、復讐することを―…。
俺の生まれ育ったクルバト町で虐殺を主導し、俺の妹のヒーナと母さんを殺した相手だ。
「ランシュ君、顔を綻ばせていますが、良いことでもあったのですか?」
ヒルバスが俺に聞いてくる。
「ああ、一つのことが許可されたのだから―…。」
「そうですか。」
こうして、俺、ヒルバスは、ミラング共和国との戦争へと巻き込まれていくのだった。
これは、俺にとって、苦難ではない、勝利のための戦いになるのだった。復讐の一つを果たすための―…。
リース王国とミラング共和国の国境。
そこでは、すでに、ミラング共和国の軍が陣を敷いて、リース王国の領内への侵入の準備をしているのだろう。
これは、推測でしかない。
すでに、陣を敷いているのはミラング共和国軍の旗と人の数を見て理解できる。
「すごい数だな。」
「そうですね。」
俺とヒルバスは、ミラング共和国軍の数の多さに驚くのだった。
だけど、それは数が多いことに関してであって、その軍勢に敗れるということは一切考えていない。
まあ、リース王国の方がどう考えているのかはわからないが―…。
ここで懸念すると言えば、天成獣の宿っている武器を扱うことができる者がどれだけいて、強いのがどれくらいいるのか、有名な傭兵がいるのかということが未知数なので、どうなるかを完全に決めるのは危険だ。
ふう~、気持ちを落ち着け、視野を広くする。
視野を狭めれば、この戦いにおける勝利などはない。
ほんのわずかなものが勝敗を決定することもあるのだから―…。
「ランシュ君、君が敗れるようなことは―…。」
「俺に関してはない。まあ、強い奴がいればわからんが、それでもグルゼン親方がいないということは前の戦いで本人の口から実際に言っていたからな。」
そう、俺は前のあの戦いで、グルゼン親方という兵士に敗れた。
グルゼン親方は、ミラング共和国の軍隊の中でも天成獣の宿っている武器を扱うことができなくても戦え、実際に倒しているのだから、実力は相当なものであり、俺が敗れて以後、すぐにミラング共和国の軍隊を辞職し、どこかへと消えたという。
ベルグという言葉があったので、ベルグのところにでもいるのだろう。
ゆえに、グルゼン親方はこの場にはいないだろうが、同時に、グルゼン親方と同じぐらいの実力がある人がいても不思議ではないと考えた方が良い。
「グルゼン親方!! あの伝説に近いほどの最強兵士で将軍のことですよね。ランシュ君、戦ったことがあるんですか?」
「ああ、リース王国の騎士団の兵士が四割ほど亡くなったなの戦いでな。リーウォルゲ元騎士団長が亡くなった―…。」
「良く生き残れましたね。」
ヒルバスが、俺の言葉に驚くのだった。
グルゼン親方とは、それほどに強いのだ。
「ああ、まあな。」
こうして、ヒルバスが驚くのを少しだけ見た後、本陣から作戦が伝えられるのだった。
第129話-2 ミラング共和国との戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿分は、完成しだいこの部分で報告すると思います。
では―…。
2022年2月4日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年2月5日頃になる予定です。