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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
270/747

第128話-11 復讐のための準備

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは、以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュはグルゼン親方と戦うが―…。

今回で、第128話は完成します。長かったですが、何とか仕上げることができました。

 「はあ…はあ………はあ。クソ!!」

 俺の呼吸は乱れている。

 そりゃそうか。

 俺は、天成獣の宿っている武器の力を用いても―…、倒せなかっただけでなく、倒されたのだから―…。

 「良く粘った。だが、まだ、鍛錬が足りないな。強くなるためには、休むことも大事だが、人一倍密の濃い鍛錬を積み重ね、誰もを近寄らせない雰囲気を鍛錬中に相手に思わせることだな。」

 そして、グルゼン親方は、剣をおさめる音をさせて、ここから立ち去るのだった。

 クソ、クソッ!!!

 グルゼン親方とは、戦場で会うことはないのかもしれない。

 まあ、将来どうなるかはわからない以上、考えても仕方ない。

 だけど、これで俺は分かった。

 「もっと、俺は―…、強くなりたい。」

 俺の目的の達成のためにも―…。

 その後の人生のためにも―…。

 そして、俺は一つ決心をするが、同時にもう一つの決心を後にすることになる。


 それから、数分で起き上がり、騎士を探すのだったが―…。

 その時―…。

 「ランシュ、敵は撤退していった。」

 先輩と合流し、先輩はそう言うが、表情は冴えたものではない。

 冴えない理由は何となく予想ができてしまう―…。

 だけど、俺はそれを言葉にすることはない。

 先輩が言うと思うから―…。

 「そうですか。わかりました。」

 と、俺が言うと、先輩は重い表情をさらに重くして、言い始める。

 「騎士の四割が亡くなった。今回の戦いで、な。ミラング共和国軍へと強襲をした奴らと、この本陣での戦闘に当たった奴らも、関係なく―…。この騎士の数を補うのは相当な時間がかかる。」

 その後のことは、何となく予想できる。

 「リース王国の中央で権力を握っている方々が推薦する人間を騎士団に大量に送ってくるということですか。リーウォルゲ団長に責任を擦り付けた後に―…。」

 そう、狙いは何となく理解でき始めていた。

 リース王国の中央で権力を握っている奴らは、今回のアルデルダ領へのミラング共和国軍の侵入を利用して、騎士の中でリースの中央で権力を握っている奴らに反対するかもしれない勢力の削減とリーウォルゲ団長へのその責任の擦り付け、それから戦死者が発生したことによる騎士団員の数を奴らの推薦で補うということだ。

 要は、リース王国の中央で権力を握っている奴らがやりたいことは、リース王国における自らの権力の完全掌握と、反対勢力の一掃。

 そうすれば、奴らは完全にリース王国をわが物にできるというわけだ。

 そのせいで、俺らはこんな危険な目にも会わされることになったし、リース王国の領土を失うことになったのだ。

 彼らはリース王国のことを思っている愛国者とか言うが、実態は自分たちの権力にしか興味がなく、自らの権力によってしないといけないことをはき違えている存在でしかない。

 俺は、別に愛国者じゃないが、こんなことを思ってしまう。

 本当に国を滅ぼすのは、私欲だけしか興味がなく、周りが不幸になることを厭わないような奴らなのだ、と―…。

 だから、俺は心から強くして、一つの決心を言葉にして、言いたくなる。

 「先輩、俺は強くなって、王族の護衛を受けるようになるほどの実力を身に付ける。ならなくちゃいけない。弱い存在のままじゃいられない。帰ったら、より鍛錬の時間が欲しい。」

 そう、王族の護衛となり、レグニエド王に対して復讐し、次にリース王国の権力の掌握は嫌いだが、必要とあれば、掌握しようと思う。

 あくまでも、リース王国の中央で権力を握っている勢力の動き次第であるが―…。

 俺は、この時、本当の意味で、自らの目的を見出すのだった。

 「そうか、俺の鍛錬はさらに厳しいぞ。弱音を吐くなよ。」

 「はい!!!」

 そうして、俺と先輩は本陣に戻るのだった。


 本陣に戻ると―…。

 「リーウォルゲ団長―…。」

 先輩は心配そうな表情をしながら声をかける。

 先輩もリーウォルゲ団長の気持ちを察しているからであろう、いつものような言い方や調子で話かけることができなかった。

 先輩でも心配することはあるんだな。空気…読めたのか。

 「すまない。まさか、騎士団が暴走するとは―…。完全に俺の読み違いだった。少し一人にさせてくれ。」

 そうリーウォルゲ団長は、そのままどこかへと行くのだった。

 だけど、この状態では、誰もリーウォルゲ団長の護衛に向かうことはできなかった。

 もし、誰かが向かうことができたとしていたなら―…。


 それから数時間が経過する。

 俺と先輩は、戦死者の処理と兵と騎士の数を確認する。

 その途中でヒルバスと合流し、一緒に作業をするのだった。

 正直言って、戦争や紛争というものは避けたいと思ってしまう。

 それぐらい、戦死者の処理はきついものでしかなく、この数が敵も味方も関係ないと言った以上、辛いとしかいえない。

 こういうことを戦争や紛争を仕掛けたりする人は、頭の中にはないのだろうなぁ~、と思いながら―…。

 本当に、戦争というのは、金とかいろんな意味で、自分たちの属している者の国の富を減らすだけでしかないと思ってしまうのだ。

 たとえ、略奪したとしても略奪された方から恨まれるだろうし、占領した土地もしっかりと再建するのであれば、その費用も掛かってしまうのだ。

 そのことを考えて欲しいというものだ。

 そういう苦労を知ろうともせずに、いや、関係ないからこそできるのだろう。

 こんな例も一部でしかないだろうし、被害を受けた者たちにとっては苦痛でしかないだろう。

 「これで最後か。」

 俺は完全に疲れ切っていた。

 たぶん、集中力なんて、ないと言った方がいい。

 「大丈夫ですか、ランシュ君。本当に、今回の戦いは悲惨としか言いようがありません。」

 ヒルバスも、今回のことが悲惨なものであるということを認識しているのだろう。

 まあ、俺らはリース王国の住民をアルデルダ領以外を含めて守ったとしか言いようがない。

 だけど、アルデルダ領は―…、守れなかった、結果はどうなるかもわからないが―…。

 そんなことを話していると、生き残った騎士の一人が―…。

 「大変です!! フォルクス副騎士団長!!!」

 と、フォルクス副団長を呼ぶのだった。

 「どうした!!!」

 と、フォルクス副団長が返事をする。

 さっき、フォルクス副団長を呼んだ騎士が、副団長の前に着くと衝撃的なことを言うのだった。

 「リーウォルゲ団長が―…、死んでいます。この森の奥で!!!」

 それは、リース王国の騎士団にとって、最悪の知らせでしかなかった。

 「何だと!!!!」

 フォルクス副団長は焦りの表情と動揺を見せる。

 「とにかく、案内を!!!」

 フォルクス副団長の叫び声に驚き、知らせてきた一人の兵士を怯えながらも、すぐに騎士としての冷静さを取り戻し、案内をするのだった。

 「こちらです。」

 と、言いながら―…。

 リーウォルゲ団長が死ぬなんて―…。

 あの時、先輩に言うべきだったし、リーウォルゲ団長に進言すべきだった。

 どういう理由で、死んだのかは今ここで判断することはできない。

 それに―…、とにかく、冷静になるべきだな。


 その後、リーウォルゲ団長が本当に死んだことをフォルクス副団長から聞くことになった。

 全員涙を浮かべようとしているが、泣く者はいなかった。

 適当な人ではあったが、騎士として、人として尊敬を集めていた人だから―…。

 俺だって、自らの復讐という目的がなければ、心の奥底から空虚な自分ということになっていただろう。

 俺は知っている。

 大切な人を失うということが、空虚になって、それを埋めるためには物凄いエネルギーが必要なのだ。

 俺の復讐という物凄いエネルギーのようなものが―…。

 復讐以外にもあるだろうが、俺の中でこの時に思い浮かぶものはそれしかなかった。

 そして、リーウォルゲ団長の死体をも処理し、遺品だけを持ってリース王国へと帰還することになった。

 ちなみに、帰還命令は出されており、この時にはすでにミラング共和国とリース王国双方で講和の話し合いがおこなわれていた。

 どれくらいの期間がかかるかはわからないが、講和はなされるだろう。

 だけど、今のリース王国の騎士団にそんなことを余裕をもって考えることはできないだろう。俺とヒルバス以外は―…。

 これから、騎士団はリース王国の中央で権力を握っている奴らの推薦の者たちが大量に入団してくるだろう。

 そして、上のポストを独占したり―…、とか。

 このリース王国は衰退するのだろう。衰退を最小限にするかもしれないが―…。

 「ランシュ君、しばらくは大人しくとなりそうです。」

 「そうだな。」

 俺とヒルバスは、リース王国の帰還後の最初の夕食で、大人しく、一言ずつ会話するだけにとどめた。

 これは、リース王国の騎士団にとっては大きな敗北だけでは済みそうにない。

 俺の復讐にも影響を与えるのではないかと思えるぐらいに―…。

 その日の夜は、少しだけ眠れなかったが、それでも疲れていたので、ぐっすりと眠った。


 リース王国へ帰還後から、一週間が経過した。

 「新たな騎士団長として就任することになったフォルクスだ。リーウォルゲ団長の後を継ぎ、騎士団を守ろうと思う。どうか、力を貸してください。」

 と、フォルクス副団長…いや、もう騎士団長がそう就任の挨拶をするのだった。

 ここまでにかなりの暗闘があったそうだ。

 リース王国の中央で権力を握っている奴らは、ミドールを推薦していたようだ。

 ミドールは天成獣の宿っている武器の扱い手であるが、フォルクス騎士団長よりも強いわけでもないし、人望があるわけではない。

 確か―…、メタグニキアとか言う宰相の推薦で入ったそうだ。

 俺のような存在を真似て、推薦とか―…。

 それでも俺は騎士見習いからであったし、ミドールは騎士からであった。

 なぜ、騎士団の反発―…、いや、あえて、騎士団を分裂させたかったのだろう。

 どうしようもない奴らだ。

 それでも、リーンウルネとか言う王妃が反対してくれたおかげで、フォルクス副団長が騎士団長に昇格するという結果になった。

 だけど、リース王国の中央で権力を握っている奴らは、フォルクス騎士団長の悪い噂を流すのではないかと思えるくらいだ。

 やりかねない。

 そして、フォルクス騎士団長の就任の挨拶が終わると、拍手が起こるのだった。

 「あいつが―…、騎士団長かぁ~。まあ、これが妥当としか言えないだろう。騎士団の分裂は最小限に回避できそうだからなぁ~。」

 横にいる先輩は、少しだけ安心の表情を浮かべるが、それでも、これからの騎士団を思えば、不安な気持ちは消えてないだろう。

 「そうですか、騎士団が分裂するのは俺も好きではないですから―…。だけど―…、今回のアルデルダ領境での出来事は―…、騎士団にとって大きな痛手であったことには変わらないでしょうが―…。」

 俺は言う。

 俺としては、この痛手はリースの中央で権力を握っている奴らにとっては好都合である。自らの権力をさらに強化することができるまたとないチャンスなのだから―…。

 だけど、リーンウルネが立ちはだかることができるような状態である以上、上手くいくのは難しいだろう。

 まだ、姿をほとんど見たことはないが、強い女性という感じのイメージがする。

 噂では、市中や国中を回っていたりするほどの行動派だ。

 その人物がしばらくの間、王城にいる以上、なかなかリース王国の中央で権力を握っている奴らは動きにくい。リーンウルネの監視の目があるのだから―…。

 「まあ、なくなってしまったものはしゃあない。だから、俺らは次を守るために、頑張っていくだけだ。」

 先輩はそう言うと、今日の訓練へと向かって行った。

 俺も強くなりたいと思っているからこそ、騎士以上に自分の腕を磨く。気持ちはさらに強く固まったので、後は、最大限やるだけだ。

 「ランシュ君、私も強くなりたいので、一緒に頑張りましょ。」

 「そうだな。」

 と、ヒルバスも合流するのだった。

 そして、リース王国はしばらくの間、大きな事件はほとんどなく、時が流れるのだった。


 【第128話 Fin】


次回、ランシュ無双…開幕!!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。


グルゼン親方に関しては、しばらく登場しません。元々、ここで出てくるキャラクターではなかったのですが―…。ランシュ視点の過去の話は、やけに当初のネームよりだいぶ異なっています。そのせいで、長くなったと思いますが―…。

次回辺りから、ランシュが関わってくるミラング共和国との戦いを執筆していくと思います。アルデルダ領をリース王国が失ってから数年という月日もしくは十数年ぐらいの月日が経過すると思います。要は、瑠璃たちがランシュの企画したゲームに勝利した時点から四年前ほどの話になります。

次回の投稿は、完成しだいこの部分で報告すると思います。

では―…。


2022年2月2日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年2月3日頃を予定しています。

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