第128話-10 復讐のための準備
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
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前回までの『水晶』は、アルデルダ領の侵入してきたミラング共和国軍に対し、領境で見張ることになったリース王国の騎士団。そんな中、ランシュ、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマは、ミラング共和国軍と遭遇することとなり、ランシュとヒルバスが天成獣の力を借りて戦うのだった。
そこは、黒一色。
黒だというが、そこに沈められているのは、人と馬と植物だ。
そこに光が差せば、たちまちに人と馬の姿を現わし、動かないだろう。
動くのは流れる、赤―…、そう、血だ。
動くのことのできない人と馬は、ランシュとヒルバスの攻撃によって、そのようにさせられたのだ。
彼らが自らの意識を持ったうえでこの世界を視界にすることはないだろう。
二度とだ。
もしも、三人称で書いたなら、このような文章になるだろうと今になって思ってしまう。
この時は、そんなことを考えている暇なんてなかったのだが―…。
あったら、どんだけ油断しているのかと思ってしまうが―…。
松明のせいで、森が燃え上がりそうになるので、俺は水をこそっと出して、消化するのだった。
燃えれば、そこで何かあったのかを勘づかれる可能性が存在したからだ。
「初めて人を殺すことになるとはなぁ~。感触が残るが、それでも、そうしないと俺らの方が殺されていた。」
俺は、少しだけ感傷的になっていたし、あまり人を殺すことは好きではないのだろう。
だけど、いつかはしないといけない。
俺には二人ほど、復讐しないといけない相手がいる以上―…。
「そうですね。まあ、お互いが死ぬ覚悟はできています。なぜなら、ミラング共和国軍の兵士もそれを理解したうえで―…、でも、無理矢理、強制的に戦わされている人もいるとなると、悲しくはなりますが、これは私たちが殺されないようにするためには、仕方のないことです。正当化かする気はありませんが―…。」
ヒルバスは、殺す理由を正当化する気はないが、必要であったという認識であるようだ。
まあ、ヒルバスも好き好んで人を殺したいわけではない。
騎士と兵士の―…、いや、戦争の兵士とはそういうものかもしれない。
これを素直に喜べるのは、この戦争を指導し、自分から戦場にいかないような奴らだけなのかもしれない。
まあ、戦いを美学にしている人もいるので、限定するのは良くないか。
「ランシュにヒルバス。まあ、これだけの数を倒すとは―…。天成獣の力というのは恐ろしいものだ。」
と、先輩が言う。
その言葉に対して、ニナエルマも言ってくるのだ。
「だけど―…、その天成獣の力で救われたのも事実だ。ランシュとヒルバスがいてくれなかったら、俺らは命がなかったのは事実だ。感謝する。」
ニナエルマは頭を下げるのだった。
礼儀正しい人だ。
「いえいえ、こちらは迫っている敵に対処しただけですから―…。それにしても、ミラング共和国軍が何でこちらへと―…。」
ヒルバスは、どうしてミラング共和国軍がリース王国の騎士団を攻めてきたのだろうか?
ニナエルマの言っていることは、推測でしかないが、かなり正確なものだと俺には感じられるが、それでも、相手側からしっかりと情報を得ておきたい。
だけど、俺とヒルバスで、攻めてきたミラング共和国軍の兵士を殺している以上、聞ける人間がいるとは―…。
「まさか…、天成獣を―…。」
俺とも、ヒルバスとも、先輩とも、ニナエルマとも違う声。
俺はすぐに、声のした方へと移動する。
まだ、天成獣のトビマルから借りている力を解除していない。
ゆえに、瞬間移動に見えるかもしれないスピードで移動することができ、一人の逃げている兵士に追いつくのだった。
「!!!」
その一人の兵士は驚く。
「さて、どうして、攻めてきたのか話してもらおうか。」
俺が言うと、兵士は、隠れるように逃げ始めようとする。
だけど、そんな行動は意味のなさないことだ。
俺はその兵士の首根っこを掴み、すぐにヒルバスや先輩、ニナエルマのいる場所へと運ぶのだった。
こいつからちゃんと聞いておく必要がある。
そこには一つの死体が付け加えられていた。
もちろん運んだ兵士のだ。
別に望んで殺そうとしたわけではない。
俺が運んだ兵士は、隙を突いて、ヒルバスを殺そうとするが、かえって、反撃にあい、その後、兵士は痙攣を起こし、その後、ピタっと動きを止め、倒れるのだった。
ニナエルマが見た感じでは、毒みたいなもので自殺したのだと―…。
だけど、ニナエルマはその考えは、あくまでも考えられることでしかなく、天成獣の宿っている武器を扱ったものである場合になると、ニナエルマもどういったものかわからなくなるそうだ。
天成獣に詳しい専門家というのは、この地域においては、いるかいないかと言われるほどであり、一生に一度、その専門家に会えば、幸運だともいわれているそうだ。
「結局、情報は手に入らずじまいか。」
「そうですね。とにかくどこかで本部と合流しないといけないでしょうが―…、本部の方が襲撃されて、占拠されているかもしれませんし―…。」
と、先輩とニナエルマは会話をする。
俺たちもどうすればいいかはわからないが、ただこれだけはわかっている。
目の前に現れるミラング共和国軍を倒しておく必要はあるし、一人を生かして、どうしてミラング共和国軍がいるのかという理由を吐かせないといけない。
「あの兵士の遺体からは、ミラング共和国軍の諜報部隊を示す、刻印が見つかりました。」
ニナエルマの言う言葉に、先輩は驚きながらも返事するのだった。
「まさか、シエルマスか!!! なら、いざってときに、毒による自殺を考えてもおかしくはないか。そして、シエルマスから情報を得るのは難しい。あの部隊は、リース王国の騎士団の方でもほとんど情報が掴めていない。」
先輩がシエルマスに関することを言い始める。
だけど、シエルマスの情報のほとんどがわかっていない。
わかっているのは、ミラング共和国における諜報と裏の活動をおこなっているということだけだ。
それ以上のことはわかっていないし、ミラング共和国側からも情報を公開されていない。
リース王国の裏を扱う部隊と同じ系統ということか。
「そうですね―…。う~ん。」
と、ニナエルマは考え始める。
俺とヒルバスは、辺りに敵がいないか見張る。
一応、周囲には敵っぽいというか、人がいるような感じはしない。
だけど、油断することはできない。気配を消すような人物もいると教えられたことがある。
こういうのは、生死に関わるので、実感というものがなくても、しっかりと聞き、覚えている。
だけど、見落とす可能性も否めないので、警戒を強める。
「シエルマスになると―…、あいつらの中には完全に気配を消すことができるのもいるという噂があるぐらいだ。くぅ~、本当、面倒なことになったな。」
と、先輩が言い終えると―…。
何かの気配を感じた。
「誰か来ます。」
と、俺が言うと、先輩、ニナエルマ、ヒルバスは一気に警戒度を高め、いつでも戦うことができる準備をするのだった。
そして、一人の騎士が近づいてくるのだった。
その騎士は―…。
「フォルクス副騎士団長。」
「ランシュか―…、それと、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマいるな。重要な話がある。ここを移動しながらしよう。」
フォルクス副団長が登場し、すぐに警戒を解きながらも、偽物の可能性もある完全ではないが、フォルクス副団長の言うことを聞き移動を開始する。
その移動をしながら、フォルクス副団長が話し始めるのだった。
「今回のミラング共和国軍の侵攻の理由は、アルデルダ領の外国に対する関税を増税することが原因で、それを怒ったミラング共和国が軍を率いてアルデルダ領に侵入したというものだ。しばらくの間は、ミラング共和国軍もアルデルダ領での領兵との戦いで、騎士の方に回せる兵力はなかった。昨日になって、アルデルダ領のエルゲルダが突然の降伏、そして、すぐその後に、うちの騎士団の団長の命令を破った騎士がミラング共和国軍を強襲して、その報復で、今、領境にいる我々騎士団の軍が攻められることになった。それで、何とか応戦しているが、不利な状況には変わらない。撤退も視野に入れている。」
フォルクス副団長は、このミラング共和国軍がなぜ攻めてくるのかを説明してくれた。
「フォルクス副団長、つまり、我々騎士団から戦死者が出ているですか?」
ニナエルマの質問に、歯を食いしばりながら答える。
「そうだ。」
フォルクス副団長は悔しそうにする。
「マジかよ。どうなっていやがる。つ~か、王国の命令を無視して、領内に入った挙句、反撃を喰らうなんて―…。もう少し慎重に事を進めろ。」
先輩が珍しく余裕のない表情をしながら、怒りを露わにするのだった。
これは、先輩かなり怒っているな。絶対に!!
「いくら、起こってしまったことを批判しても、今は意味がない。それに今は、事態に対処しないといけない。俺以外の天成獣の宿っている武器を扱っている者たちが応戦して、何とか凌いでいるのが現状だ。そして、俺らの場所には、ランシュとヒルバスがいる。二人とも本陣に着いたからすぐにでも戦ってもらう。わかったな。」
フォルクス副団長は、俺とヒルバスがリーウォルゲ団長のいる場所に着いたら、すぐにでも前線で戦うことになる。
やってやるさ。
そして、数時間後に本陣に到着するのだった。
俺とヒルバスは、すぐに自らの武器を構え、相手のいる場所へと向かっていくのだった。
「ヒルバス、上手く二手で攻めていくぞ。」
「はい、ランシュ君。」
そして、俺とヒルバスは、二手に分かれて、ミラング共和国軍と戦うことになった。
俺は、ミラング共和国軍のいる近くにいると―…、足に再度、力を纏わせ、高速移動でミラング共和国軍の兵士を斬っていく。
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああ。」
「何だ、何が起こっている。」
「ビビるな…逃ッ!!!」
そして、悲鳴を上げた兵士たちとその指揮官とされる中隊規模の隊長を長剣で斬るのだった。
まあ、俺が斬った兵士は生きていないだろう。
そして、その数を増やしていくのだった。
斬れる数だけ斬って、兵士の数を減らしておくことで、味方の負担を減らすことができる。
そして、数を数えることもできないほどの時になった―…、その時!!
キーン!!!
「ほお~、ベルグの言っている面白い奴がいるとは聞いていたが―…。後、俺の最後の仕事としては、骨のある相手だ。」
俺の攻撃を防ぐなんて!!!
こいつはヤバい。
まるで、頑固職人のような厳つい表情しているが、こいつの力はとんでもない。
俺は後ろへとジャンプする。
それに、ベルグと言っていた。ベルグはミラング共和国とも関係があるのか?
「安心しろ。ベルグは俺と個人的に仲は良いが、ミラング共和国に干渉していない。俺も一兵士として名乗りたいが、今は名乗らない。」
「グルゼン親方!!! そんな奴倒してください!!!!」
グルゼン親方ね。
何かそう思えてしまうわ。
タン、と俺は地面に足を付け、構える。
「何、俺の名前を言ってんだ!!! まあ、そのことはいい。お前らは、こいつ以外を倒せ。こいつは俺の獲物だ。楽しませてくれよ、ベルグに気に入られた奴なら実力は十分にあるだろ。」
その言葉に冷や汗を感じるのだった。
こいつは、俺でも勝てるかわからない。
武人…、そのものだ。
武というものを極めた人間が到るとされる領域に達しているのではないか。
「俺を脅威と見て、他の兵士を目にもくれず、俺に剣を構えるか。見たところ騎士と言った感じか。なら、正解だな。だが、兵士として不正解としか言いようがない。俺を楽しませてくれよ!!」
グルゼン親方が消えるように移動する。
いや、天成獣の能力を扱ったものではない。
「生憎よ~、俺は、まだ、天成獣の力の宿っている武器に選ばれていないんだよ。ベルグも探してはくれているのだがよぉ~。それでも、天成獣の力の宿っている武器を扱っている者には負けないほどの膂力はある。技術で…な。」
!!!
俺は避ける。
後ろへと―…。
喋っている言葉さえも意識をそこへと惹きつける。
とんでもない奴だ。
一瞬でしゃがんで、素早く移動し、攻撃してくるとは―…。
接近戦じゃないといけないし、距離を取っても意味がない。
グルゼン親方というのは、俺が今まで見た中でベルグに次ぐ強者であることに間違いはない。
俺は思考する。
右!!
俺は視線を右に向けると、グルゼン親方がいて、俺に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
キーン。
俺はすぐに長剣で防御の構えをするが、グルゼン親方の剣の威力が強すぎて―…。
自らの武器である長剣を弾き飛ばされそうになる。
だけど、何とか持ちこたえ、グルゼン親方へと視線を向け続けるのだった。
「なかなかやるねぇ~。まあ、ベルグの知り合いで期待されているようだから、殺すようなことはしないさ。そして、お前に言っておく必要があるな。お前は、強くなるだろうな。騎士としてよりも、天成獣の扱っている武器の扱い手の一人として―…。だけど、知っておかないといけない。天成獣に選ばれたからと言って、それだけで最強になれるわけがないということを―…。」
グルゼン親方の言葉には、俺も賛成する。
「俺もグルゼン親方の言うことには賛成する。だけど、俺も天成獣の宿っている武器を扱えるからと言って、慢心していたわけではない。俺は、俺の目的のために強くなる!!!」
これが俺の気持ちだ。
こいつが、ベルグの知り合いであったとしても、俺の目的のために―…。
「ガハハハハハハハハハハハハハハ、気に入ったぜ。少しだけ俺の本気を出してやるよ。」
グルゼン親方は笑いあげ、本気で俺を攻めてくるのだった。
こうして、俺とグルゼン親方との対決は数分ほどで決着が着くことになった。
第128話-11 復讐のための準備 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
そろそろ第128話も完成するかな、という感じです。次回で完成するかもしれません。書き終えてみないとわかりませんが―…。
次回の投稿は完成しだい、この部分で報告すると思います。
では―…。
2022年1月30日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年1月31日頃を予定しています。第128話は次回の投稿で完成します。