第128話-6 復讐のための準備
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュは自らの復讐の後に何をするのかの仮の答えを決め、ヒルバスに言いに行くのだった。
「ランシュ君、用件は?」
ヒルバスが聞いてくる。
「ヒルバスが言っていた、復讐の後に何をするのか? ということの答えを―…。と、言うか、仮の答えでしかないのを言いに来た。」
「そうですか、わかりました。どういう仮の答えになりましたか?」
ヒルバスは興味を持っているようだ。
俺がまだ答えていない以上、どういう答えになるのかということに対して…だろうが―…。
じゃあ、答えるとしよう。
「俺は、復讐をやり遂げた後は、リース王国の発展に尽力をしようと思う。復讐の過程で、ある程度欠員もでてしまうだろうしなぁ~。復讐の目的はこの王国の首都では一人しかいないが、場合によっては、しないといけないだろうからな。」
俺としては、リース王国の権力を掌握する可能性があるから、そのようになるだろうと思う。
まあ、リース王国の権力が欲しいわけではないんだが―…。
「そうですか、まあ、仮の答えですが―…、いいんじゃないですか―…。私はランシュ君の仲間と言うよりも、家臣なのかな。だから、これからはランシュ様とお呼びいたします。」
何か、仲間ではなく、家臣が増えたんですが―…。
家臣とかいらないからな!!
「というか、ランシュ様という呼び方は他の人の前では絶対にするなよ。」
絶対にランシュ様という呼び方を変えることはないだろうなぁ~。こっちから言ったとしても―…。
「わかりました。」
「じゃ、用件は終わったので、失礼する。」
「ええ。」
俺は、ヒルバスの部屋を出るのだった。
これで、気分が少しだけすっきりしたので、楽になるのだった。
つ~か、ヒルバスは騎士団の団員で、俺はまだ騎士団の騎士見習いなんだが―…。
まあ、気にしてもどうしようもないか―…。
俺は自分の部屋へと戻るのだった。
それから一年近くが経過し、騎士団試験日。
筆記試験は、そんな難しくなく、全問解くことができた。
なぜ、俺が騎士団の試験を受けているのか。
別に騎士団をクビになったわけではない。
実力で、騎士団の騎士として相応しいのかを示すためだ。
これを先輩に言った時―…。
―ガハハハハハハハハハハハハハハ。そんなことを言う奴は初めてだ。ランシュ、お前なら騎士団の試験は圧倒的な成績で受かるだろうなぁ~。それに、コネじゃなく、自らの実力を示そうとはなぁ~。面白い!!!―
先輩は面白がっていた。
俺としては、ベルグのコネに関しては、否定しないし、それに乗った以上は別に、そのことを気にしていない。
気にしてもしょうがないだろうし―…。
なぜなら、コネで入ることで、騎士として強くなることがどういうことかを理解できたのだから―…。
後は、コネに応えるほどの実力が身に付いたかどうかだ。
騎士見習いを終わらせ、騎士団の騎士と本当の意味でなるために―…。
俺は、今、騎士団の入団試験がおこなわれる、いつも騎士団の騎士が使っている模擬戦の会場にいた。
俺も使っているから、少しだけ緊張というものが落ち着く。
普段使用している場所だという意味で―…。
そして、試験を説明する人が入ってきた。
この人は、リース王国の騎士団の副団長フォルクスであり、実力は騎士の中でナンバーワンと言ってもいい。
「これから、試験の説明をする。やることは簡単だ。受験者で一対一で戦ってもらう。そこで試験官に声をかけられた者は、不採用とする。不採用と言われた者は、この奥にあるスペースの中にいてもらう。そして、私、試験官長であるフォルクスが「止め」と宣言し、そこでスペースにいかなくてよかった者が、騎士団採用ということになる。説明は以上だ。」
と、フォルクス副騎士団長が説明を終えると俺たちは、試験を受けるのだった。
模擬戦は、だいぶ鍛えられているのだから―…。
そして、今回、負けることでも勝つことでもない。
大事なのは、騎士としての力および成長できるのかということが重要になってくる。
そして、今回、この試験を受けている中で一人だけ、やけに強いという雰囲気を纏っている女の子がいる。
彼女と模擬戦をやる時は、油断することは一切許されない。
「では、君と君―…、リングに上がって試合を始めてくれ。」
こうして、試験が始まるのだった。
二時間後。
俺も三戦して、疲れているがまだ戦うことはできる。
冷静に判断をすることができる。
そして、受験者の三分の二以上が不採用者のスペースに行かされていた。
後残りは、三十三人ほどとなっていた。
それにしても、ここまで来ると、一人一人の実力が強いというのがわかる。
だけど、俺が今までしごかれてきた騎士団の騎士たちを思うと、やっぱり天と地ほどの差がある。
それはもう絶望的に―…。
二年でここまで戦えるなんて―…。
さらに、俺も四戦目へと向かうのだった。
四時間後。
残ったのは、二人しかいなかった。
そして、俺は、やけに強いという雰囲気を纏っている女の子と戦うことになった。
「ここまで残ったのです。お名前は何というのですか?」
と、女の子の方が尋ねてくる。
「相手に名前を名乗るのであれば、先に自分が名乗るべきではないのか。俺はランシュだ。」
「私は、メルフェルドと言います。よろしくお願いします。」
頭を下げてくるのだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と、こちらも頭を下げるのだった。
礼儀正しいなぁ~。
だけど、これは模擬戦といえども、勝負だ。
実力は、かなりのものだ。
騎士に採用されてもおかしくないというよりも、将来は騎士団のトップになってもおかしくない。
正直言って羨ましい。
ヒルバスもそうだが、剣の才能があれば、コネがなくてもって―…、俺の場合は貧困だったから無理か。
だけど、俺は、こういう天才たちを超えていかないといけない。
だから、俺の出せる最大の実力を発揮させて、メルフェルドを倒す。
「試合始め!!!」
と、試験官が試合開始の合図をすると俺とメルフェルドは剣を構えるのだった。
そして、動くことはなかった。
動けるはずもない。
あのメルフェルドは、攻めの攻撃もできるが、カウンターもできるのだ。
わかる。俺が一歩でも先に動けば絶対に負ける。
メルフェルドが動けば、俺もメルフェルドを倒すことができる。
見えるというのはこういうことか。
まるで、漠然とであるが、何を相手がしようとしているのかがわかる。
双方ともそうだとわかっているから、尚更だ。
騎士として大事なのは、勢い良く攻めて相手を一瞬で倒して、倒したことによる数々の武勇だけではない。
大事なのは、仲間や人々を守りつつ、敵の脅威をしっかりと自分にくぎ付けにしておくことだ。
相手が自分の実力で倒せないのならば―…。
倒せるのならば、確実に倒して、味方の援助と人々の避難誘導―…。
「止め!!!」
そして、メルフェルドと俺は試験官のいる場所へと向きを変える。
そこには、試験官長のフォルクス副騎士団長が立っていた。
「ふむ、今年の試験での採用者は、君たち二人で決まりだ。片方のランシュに関しては、騎士見習いであったから知っているが、少女の君の方は名前を―…、もう一度。」
フォルクス副騎士団長は、メルフェルドに自らの名は何というか尋ねる。
フォルクス副騎士団長もメルフェルドの名前は聞いているだろうが、改めて確認したいようだ。
俺は、何度も名前を呼ばれているし、顔も見ているだろうから、今更確認する必要など存在しない。
その方がいいが、騎士見習いとか言ったら、不合格になった人たちが―…。
もう言ったとしても遅いだろうが―…。
「メルフェルド。」
「なるほど、採用だ。ただし、騎士という職業は大変だし、女性の身で―…。」
「できますよ。私は、リースの偉大な騎士アークス=カッツィーネを目指しているのですから―…。女性の身なんて関係ない。目指す夢に男や女によって、できるできないはあるかもしませんが、騎士には男と女という性別によってできるできないはないはずです。」
メルフェルドは、フォルクス副騎士団長の目を見据える。
その表情は、真剣さ、騎士へとなろうとしている気持ちがこの場にいる今日騎士に採用されようとしている者の中で、一番だと感じさせられる。
俺もメルフェルドの言葉にたじろいでしまう。
騎士として格が違う、として―…。
フォルクス副騎士団長は、平然としている。
「試して悪かったな。だが、女性が騎士で有名になるのはかなり難しい。現に我が騎士団にも女性はいるが、数自体は多くない。それに力で優る男性の方がどうしても出世しやすいものだ。だけど、メルフェルド、君は、ヒルバス以来、いや彼以上に騎士として強くなりそうだな。期待している。」
そう言うと、フォルクス副騎士団長はメルフェルドの方から、俺の方へと向かってくる。
「ランシュ―…。お前はコネで騎士見習いになったが、今度は騎士になるために実力を示すとはな。今までコネで来た大半のクズどもとは違って良かった。これで、お前も晴れて騎士だ。自分を誇るといい、リース王国騎士団へようこそ。」
「ええ。」
そして、俺の返事とともに、フォルクス副騎士団長は去って行き、これで試験が終了するのだった。
夕方のリース王国騎士団の宿舎。
その中の食堂。
俺は驚きすぎていた。
「ランシュ、ようやく騎士見習いから騎士になったか。それも試験を受けて―…。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハ、これで、悪口は言われなくなるな。」
と、先輩は大声で笑い声をあげる。
先輩、外じゃないので、声を少し小さくして欲しい。
「じゃあ、ランシュの騎士採用に乾杯。」
と、先輩がコップを掲げ、乾杯をするのだった。
宿舎の食堂にたくさんの騎士がおり、乾杯をするのだった。
「ランシュ、コネだけの野郎かと思ったが、試験を受けて、実力示して、騎士になるとはなぁ~。なら、もうお前は俺たちの仲間だ。なら、仲間が増えたことを祝おうぜ~。」
と、一人の騎士の先輩が盛り上がるのだった。
そして、ツッコミを入れられるのだった。
「お前は、騒ぎたいだけだろうが!!」
「痛てぇ!!!」
『ハハハハハハハハハハハハハハ。』
笑いが起こる。
俺も笑ってしまう。
やっと、俺はリース王国の騎士団に受け入れられたのだろう。
そう感じてしまうと嬉しくもあり、悲しくもあった。
俺の目的は、リース王国の王レグニエドへの復讐だ。
そうである以上、いずれはリース王国の騎士団と対決しないといけなくなる。
今は、そのようなことを心の奥底に入れておこう、俺はやっと一つの落ち着ける場所を手に入れたのだから―…。
「ランシュ君、おめでとう。」
「ああ、合格してきた―…、これで俺も晴れて騎士というわけか。」
ヒルバスは、俺にリース王国の騎士団への騎士として採用されたことを喜んでくれているようだ。
まあ、そうだろうな。
家臣とかいう感じになっているのだが、ヒルバスが騎士で、俺が騎士見習いであったので、上下関係逆じゃない―…、と思っていたが、これで対等というわけだ。
そして、俺のリース王国の騎士団の騎士への合格を祝う宴会という名の馬鹿騒ぎが始まるのであった。
本当に思うのだが―…、馬鹿騒ぎが好きだよなぁ~。
まあ、俺も嫌いじゃないが―…。
その後、深夜まで宴会が続くことになり、俺は物真似をやらされたりとか、歌を歌わされるのであった。
これ、俺への祝いなのだろうか?
翌日。
リーウォルゲ団長が壇上で新人を紹介するのだった。
俺の紹介はない。
なぜなら、騎士見習いとして入団していたこともあるが、騎士へ実力でもぎ取ったし、宴会で団長からも祝われたので、今日の紹介はなしとなった。
宴会やったからいいんじゃない、そんなふうに―…。
リーウォルゲ団長、以外にも適当な人だと思う。
「今日から、メルフェルドがリース王国騎士団に入団することになった。天才と言ってもいい。将来はヒルバスとともにリース王国騎士団の主力になるだろう。」
「よ…よろしくお願いいたします。」
と、リーウォルゲ団長の紹介に、申し訳そうな表情で頭を下げるのだった。
謙虚だなぁ~。
こういう人が、いろんな人から慕われるのだろう。
そして、騎士団の団員から拍手されるのだった。
騎士団の華という感じになりそうだ。
実力は折り紙付きだから大丈夫だろう。
こうして、俺のリース王国の騎士団での騎士としての生活は三年になるまで平穏が続くのだった。
第128話-7 復讐のための準備 に続く
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
ランシュ視点での過去は長くなっているような気がします。アルデルダ領に関する話まで進まないなぁ~、と思いますが―…、そろそろ到達すると思います。
次回は、「騎士試し」の予定です。
では―…。