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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
264/748

第128話-5 復讐のための準備

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、ヒルバスにランシュの目的が知られるのであった。ランシュがレグニエド王に復讐しようとしているのを―…。

 翌日の夜。

 ヒルバスが俺の部屋へと尋ねてきた。

 「何か用か?」

 と、俺は、ヒルバスに尋ねるのだ。

 俺は、人と関わるのは嫌いではないが、秘密を知られており、仲間とした人との関わりは基本的に避けたかった。

 いや、適度な距離と言った方が良い。

 その適度が難しいのだが―…。

 まあ、そんなことよりもヒルバスの要件とは?

 「少し、中で話をしましょうか。」

 と、ヒルバスが言うので、俺の部屋の中に入れるのだった。

 俺の目的に関する話であったら、周りに聞かれるわけにはいかない。

 「声は小さめで頼むな。」

 「うん、わかっています。」

 ヒルバスは、俺の言っていることを理解してくれたようだ。

 返事をしてくれたし、内容もそんな感じだ。

 そして、部屋の扉を閉め、窓際の方に向かっていく。

 「ランシュ君の目的に関しては、同意できない部分もあるが、ランシュ君の目的の達成のためには協力することは変えない。同時に、リースという都市の不都合な事実を知っているかい。」

 「何だ。」

 こんな発展して、大きな都市に問題でもあるのか?

 一般的に、スラムや貧困者がリースにいるのは、本で見た情報の中で知っているし、それはどうしても発生してしまうことであろう。

 仕方ないとは言わないが、それでも―…、どんなに政治を頑張ってもなくらないのだから―…。

 それで貧困対策を諦めるようではダメだが、窮乏化させていくのはもっとダメだけどな。

 「ランシュ君もリースの貧困とスラムの問題を知っているはずだと思います。だけど、その規模が次第に大きくなっていることは知らないと思います。リース王国はその情報を隠そうとするし、中央で牛耳っている奴らが―…、そう、とある商業の一派が権力を掌握しているから―…。ラーンドル一派が―…。」

 ベルグも言っていたな。そんなことを―…。

 「ラーンドル一派って言えば、リース王国の国際商業の最大手のグループであり、当主がリースでも影響力を及ぼしているという―…。それがどうしたんだ?」

 俺にとっては、基本的に関係ないことだ。

 そんな商業の一派は、俺の復讐対象ではないし―…。

 「ランシュ君とも関係があるかは別だけど、レグニエド王の命令に対しては反対していないと思いますよ。彼らはレグニエド王を傀儡にしているのだから―…。レグニエド王の判断は、彼らの判断と言ってもおかしくありません。そして―…、このリース王国、いや、リースの衰退の要因であり、彼らのせいでリースの人々は、ずっと満足に食と職に困らない生活をしていないのです。」

 ……………。

 可哀想だと思うが、俺は自分の復讐が一番であり、ヒルバスの要件に構っている暇はない。

 それに―…、レグニエド王に復讐した後のリース王国のことなんかは―…。

 「たぶん、ランシュ君に言ってもすぐにはわからないと思いますが、私の過去を話せばわかると思います。」

 そうして、ヒルバスは自らの過去を語るのだった。


 「私は、幼い頃、両親が亡くなり、貧困街で暮らしていました。そこでは、他者の物を盗むことでしか自らを生き永らえさせることはできませんでした。私もその例に漏れず、他者から物を盗み、盗まれそうになるのであれば、相手を暴力で蹴散らし、場合によっては、死に追いやっていました。そこに罪悪感? 最初はあったかもしれませんが、そんなことを抱いていて生きていけると思えるのですか? 罪悪感などすぐになくなりました。そこからは、生きることに必死で考えることは生きるためにどうするかぐらいでした。そんななか、ある人物に捕まるのです。そこの家は、商家で、国際貿易を商っているラーンドル一派とは対立する家でした。そこの人は、私のどこを気に入ったのかはわかりませんでしたが、養子という扱いにしてくれました。あくまでも、私にその当主へなる権限などなかったです。それはそれで構いません。私もその家で、実の子どもと同じように教育を受けることができました。その家では、当主は対立するラーンドル一派への憎しみや復讐への思いもありましたが、ある日、一人の女性―…、今の王妃であるリーンウルネ様に説得されたようで、以後は憎しみや復讐への思いを温存しながらも、誰かのためにラーンドル一派を追放しようと考えるようになりました。まあ、話が脱線してしまいましたね。私は、そのことに少しでも協力したいために、剣術を学び、勉学にも励み、そいつらを倒すことに裏で協力しようとしてリース王国騎士団に試験に受け、受かり、入団しました。ランシュ君もレグニエド王への復讐が目的なら、私と協力できるのです。ランシュ君は、復讐を終えた後は何をするのですか?」


 ヒルバスは、自らの過去と自らの目的を語り終え、俺に質問する。

 復讐を終えた後に何をする?

 そんなことを考えている暇は、俺にはない。

 だけど、ヒルバスは話を続けていく。

 「さっき、私を養子にした商家の当主をリーンウルネ様が説得したと言いましたよね。その時、当主にも復讐を終えた後は何をするのか? と尋ねていました。私は、復讐を協力し、その当主の復讐が終えたなら、私はリース王国のためにスラムに陥る人を減らしますよ。そうすれば治安が良くなり、王国内の経済および社会が安定すると思っています。良い方面で―…。」

 ヒルバスは、俺を真剣な眼差しで見つめながら、言ってくる。

 そういう言い方は、俺には止めて欲しい。

 だけど、それを言うことは俺にはできない。

 真剣な表情というものが、光眩しく感じて、目を逸らしてしまう。

 しばらくの間、無言の空間となり、沈黙がかえって俺を小さくさせる。

 どう答える。

 そう簡単に、答えなんてでるわけないし―…。

 う~ん。

 「まだ、答えは出ない―…。」

 「そうですね。私のところの当主もそうでした―…。ゆっくり考えてください。私はこれにて、失礼いたします。」

 そうヒルバスが言うと、ヒルバスは、俺の部屋の外へと出ていくのであった。

 そんなこと考えてどうなるのやら―…。復讐なんて成功しなきゃ、後のことなんて意味ないだろうに―…。

 俺はそう思いながら、ゆっくりと体を休めるのだった。


 翌日から、ヒルバスのある言葉が頭から離れなかった。


 ―ランシュ君は、復讐を終えた後は何をするのですか?―


 本当に厄介なことをしてくれた。

 それでも、訓練で精彩を欠くわけにはいかない。

 一秒でも早く、強くならなければならないのだ。

 俺の復讐を達成させるために―…。

 キーン。

 あっ!!!

 「ランシュ、この頃、動きが拙いぞ。何か悩みがあるのか?」

 模擬戦用の剣を弾き飛ばされてしまったようだ。

 何をやっているんだか。

 今の模擬戦の相手は、先輩であった。

 先輩は、俺が模擬戦に集中できていないことを見破っているのか、俺に向かって、悩みがあるのか言ってくるのだ。

 思っている以上に勘が鋭いな。

 だけど、先輩にも俺の復讐を知られるわけにはいかない。

 「悩みに関しては、気づいていないかもしれません。ですが―…、今のところは大丈夫です。」

 先輩に嘘を付くことに抵抗感はない。

 だけど、好き好んで先輩に対して嘘を付きたいわけではない。

 あくまでも、俺の目的に関してであり、俺の出自のことであるが―…。

 「そうか―…。まあ、悩みのない人間などいやしないしな。存分に悩んで、自分なりに答えを出せばいい。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」

 先輩は、最後には笑い声をあげるのだった。

 本当、この先輩は絶対に悩みがなさそうだ。

 いや、こういうアドバイスができるのだから、実は結構悩んだことがあるのではないだろうか?

 まあ、先輩の人生に興味がないので、どうでもいいし、答えを知りたいとは思わない。


 訓練も終わり、俺は、部屋の中で考えるのだった。

 復讐をした後に何をするか、か―…。

 ……………………………。

 浮かばねぇ~。

 復讐をしなきゃ、気持ちの方が浮かばれないけどな―…。

 俺は、自分という存在に新たな気づきというものを得た気がする。

 そう、悩むと解決するまで考え続けてしまうということを―…。

 ふう~。

 こりゃ~、しばらく悩むなぁ~。

 俺はそうして、その日は悩みすぎて寝るのが遅くなってしまうのだった。


 休日。

 俺は図書館にいる。

 今日も勉強だ。

 この頃は、リース王国だけでなく、リースの海の向こうにある大陸の情勢についても学んでいた。

 サンバリアも王政なのか―…。

 リースと一緒だな。

 そして、ある事件における嘘っぽい情報が書かれていた。

 何々―…、人喰い兵器―…?

 なんだそりゃ?

 怖いなぁ~。

 まあ、人を喰い殺す兵器なんて発明できるのか。

 たぶん、長距離砲兵器が人を飲み込んでいる様子を見た人が人が喰われたという風に感じて、名付けたのか。

 その方が納得がいく。

 まあ、嘘っぽい情報は、頭の片隅ぐらいに入れておくべきか。

 それにしても―…、復讐の後に何をやるのか?

 まったく、浮かばねぇ~。

 リース王国という国にスラムはあるし、今の権力や体制による歪みというものが生じているのは理解している。

 伊達に一年ほども勉強を続けていないのだから―…。

 う~ん。

 「ランシュ君、何に悩んでいるの?」

 ミネイルさんが尋ねてくる。

 ミネイルさん、急に後ろから声をかけてこないで欲しい。

 「う~ん、リース王国のことをどう思いますか、ミネイルさん。」

 先輩は勘が鋭いところがあるので、聞きずらいが、空気をかなり察してくれるミネイルさんなら俺の復讐のことには気づかないだろう。

 俺の勘だが、そのような感じがする。

 「う~ん。」

 と、頭を捻りながら考え始める。

 そして、しばらく考えた後、ミネイルさんは言い始める。

 「そうねぇ~。リース王国は一般的に言って良い国とは言えないねぇ~。私個人としては、今のところちゃんと過ごせているので、全然大きな不満というものはないよ。だけど、リース王国にはスラムがあるし、多くの露店の人とかは、店で売り上げても、増税がここのところおこなわれ続けて、利益が減っているし、従業員を雇っている所では、従業員の給料を支払うのに苦労しているみたい。」

 「増税って…。」

 少しそこが気になったので、口にしてしまう。

 「ランシュ君は知らないだろうね。あんまり外に出ないだろうし、騎士団の人たちは、必要な物は売店で買えば済ませられるし、王国からの支援で、値段が変わっていないから―…。だけど、リースは増税で、去年よりも物の値段が上昇しているのよ。商売している人々もカツカツな状態で、仕方なく値段に還元しているみたい。増税の理由が、リース王国はアルデルダ領の支援のため、将来の財政崩壊にならないために、今からコツコツと資金を貯めておく必要があるから、だって―…。リース王国がなくなれば、リースが混乱に陥り、商業も、安定した繁栄もなくなるからって言うのよ。それを泣く泣く受け入れて、増税に賛成しているみたい―…。」

 増税の理由はわかったが、俺が学んだことによれば、税を増やしたければ、経済を良くするしかないし、経済が良くなれば、税収が増えるように国というものは最初からそういう税システムにするといわれている。

 お金を中心とする経済では、お金を多く持つことが必要になるのだから―…。それをどのような方法でなすかの違いみたいだ。

 うまく説明できないが―…。

 まあ、お金を多く持てれば、自らの権力を増すことができるみたいだし―…。

 だけど、増税という選択肢は、世間にお金が異常に多く回っていて、かつ、世間ではもう消費できる以上にある場合に、その対象にかけてするとかどうかとか―…。

 経済とか税とか言われていることの説明は難しすぎる。

 要は、お金を多く持ち、だぶつかせている人のお金を税として多めの徴収して、お金を必要としているのに少ない人たちに回すということである。

 そうして、経済を循環させようとするのだ。

 うん、難しすぎて、要領が得ないな。

 「ならば―…。」

 と、言いかけたところで、ミネイルさんが言い始めるのだった。

 「だけど、ここだけの話なんだけど、露店の人の噂だと、増税したお金は、リース王国の財政崩壊にならないようにするためではなく、アルデルダ領とラーンドル一派にお金が流れているとか―…。私には、真相がどうとか分からないけど―…。」

 噂か―…。

 根本があるのか、ないのか。

 まあ、そういうことを考えたとしてもな。

 だけど、少しだけ、リース王国が暮らしやすいようにできればいいなと思うのだった。

 うん、これを一応の答えにするか。

 その後、しばらく、勉強をしたり、ミネイルさんと話した後、俺は、リース王国の騎士団の宿舎に戻るのだった。


 夕食を済ませた後。

 俺はヒルバスのいる部屋へと向かうのだった。

 トントントン。

 「は~い。」

 と、ヒルバスがドアを開け、俺を招き入れるのだった。

 さて、頑張って言うことにしますか。

 仮の答えを―…。


第128話-6 復讐のための準備 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。


ランシュの過去の話が長くなっているなぁ~と感じます。一応、第128話のどこで終わらせるかは頭の中ではある程度決めています。たぶん、内容はやっていないのですが、文章では登場したと思います。そこらへんで―…。

次回の投稿に関しては、完成しだいこの部分で報告すると思います。

では―…。


2022年1月19日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年1月20日頃を予定しています。

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