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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
263/747

第128話-4 復讐のための準備

カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

アドレスは以下となります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、リース王国の騎士団に騎士見習いとして入団したランシュは、ヒルバスに模擬戦で敗れるのだった。そして、騎士としての生活を送り、一年が経過しようとしていた。

 俺がリース王国の騎士団に入って一年が経過した。

 この頃になると、ヒルバスとも模擬戦ができるようになった。

 キーン。

 「その成長力はとんでもないですね。ランシュ君。」

 お互いに距離を取る。

 「俺よりも剣術が強いのは今も変わらないだろ。だけど、今日こそは俺が勝つ!!!」

 俺は、ヒルバスに向かって、勝利すると宣言する。

 ヒルバスが俺よりも強いのはわかる。

 一か月前からやっと、騎士団の団員と模擬戦をしてもいいと、先輩から許可されたのだから―…。

 それでも、初勝利するのに、三週間はかかってしまったが―…。

 さすが騎士団ってことだ。

 毎日鍛えているので、なかなか差が埋まらない。

 それに、一回勝利したとしても、すぐに対策を立てられ、次には有効な手にならないのだ。

 いかに、上手く攻めて、倒すのか駆け引きの重要性を認識させられるのだ。

 まあ、天成獣の宿っている武器を扱う騎士たち同士の戦いを見たが、あれは策とかそんなのは関係ない。

 そう、天成獣の宿っている武器を持っていない俺では、確実に何もできずに倒されてしまうのは確実だ。

 どんだけ実力差というか、力の差があるのか、と思い知らされてしまう。

 俺はまだ、「騎士試し」というものには挑戦していないし、いまだに騎士見習いのままだ。

 それでも、騎士としての実力がついているのはわかっている。

 もっと、強くならないと―…。

 「両者だいぶ実力をつけたな。」

 先輩が声をかける。

 「まだまだ、実力を見せていない。」

 「そうですね。」

 俺とヒルバスの順に、先輩の声に頷き、この一年でどれだけの実力をつけたのかを示せていない。

 ヒルバスは、この一年でかなり実力をつけ、騎士団の中でも強い人たちに近づきつつあった。

 俺は、去年のこの頃、剣すら握ったことはなかった。

 だけど、去年の自分とは違う。

 剣についても、剣術についても少しだけ知ることはできた。

 俺とヒルバスを比べれば、圧倒的な差があり、実力差はかなり開いてしまったかもしれない。

 だけど、負ける気はない。

 強い弱いはあるが、勝利においての確率を左右するだけで、一回の勝負という面では、弱い者が強い者に勝利することは可能だ。

 まずは、ヒルバスの動きを十分に見て―…。

 !!!

 消えた。

 どこから―…。

 ヒルバスは飛んでいない、なら―…。

 と、下を見ようとすると、目の前にヒルバスの姿が現れる。

 すでに、ヒルバスは自身の剣で俺に向けて攻撃を開始していた。

 俺の右肘に当たるかもしれない位置に向けて―…。

 だけど、それでも冷静に対処はできる。

 剣を右手だけで持ち、すぐに、右肘をかばうように防御するように態勢を整えるのだった。

 キーン。

 俺とヒルバスの剣がぶつかる。

 今回使用している剣は、金属製でできているが、刃(こぼ)れしたものであり、斬れるすべての場所が丸くなっており、騎士の模擬戦で実際に使われるものだ。

 木剣は、あくまで、模擬戦でも怪我させて大事なことになるかもしれない人に配慮して騎士団の模擬戦をおこなうリングの近くに刃毀れした剣とともに武器を置けるようにしている武器置き場に置いてある。

 俺はヒルバスの剣がぶつかると同時に次の動きをしていた。

 防いだことに対して、わずかではあるが動揺しているのではないかと思い、次の攻撃へと転じる。

 その時、俺の剣をゆっくりと動かしながら、俺が何をしようとしているのかを考えさせる。

 そうすることで、ヒルバスが俺の目的に気づくのを遅らせる。

 俺は途中で剣とともに一回転しながら攻撃をする。

 さすがのヒルバスも回転しながらの攻撃は、予想していないだろう。

 「甘いですよ、ランシュ君。」

 キーン。

 ヒルバスは、すぐに俺の攻撃を意図を読んだのか、剣を自身の目の前に構え、俺の動きに合わせて、防御するのだった。

 これを初手から読むのか。

 いや、確実に対処するなんて!!

 「相手の殺気をちゃんと理解しておけば、簡単に次の攻撃がどうなのかぐらいは予想できますよ。ある程度ですが―…。」

 そう言いながら、ヒルバスは剣を振り上げる。

 一年前と同じ。

 俺はその時、頭の中に去年のリース王国の騎士団に入った時の模擬戦のことを思い出す。


 ―攻めてこないのですか、ランシュ君。ならば、こっちからいかせていただきます―


 その後、剣を振り下ろしたヒルバスに対して―…、俺は剣の先を立てて―…。

 で、剣が衝突し、ヒルバスの持っている剣がするっと、滑って―…。

 俺の左肩に当たったんだ。


 ―痛ぁ―――――――――――――――――――――――――――――――― ―


 叫んだんだよなぁ~、左肩があまりの痛さで―…。

 って、そこを思い出してどうする!!!

 だけど、この記憶のおかげで、俺にはまだできることがある。

 俺は去年と同じように模擬戦用の剣を立てる。

 「去年も、それで左肩に当たって、痛いと叫んでいたのは誰ですか!!! 去年から学習したんですか!!!!」

 失礼な!!

 「学習したわ!!!!!」

 学習ぐらいするわ。

 そうしない奴が、成長できると思うなよ。

 そして、ヒルバスは剣を振り下ろし、去年と同じ結果になるとヒルバスは思っていただろう。

 だけどなぁ~、ちゃんと考えていれば対処は可能だよ。

 剣の流れを予測していればねぇ~。

 キーン。

 ヒルバスの持っている模擬戦用の剣と俺の持っている同様の剣が衝突する。

 その時の金属音がなる。

 それと同時に、俺は右側へと移動を開始し、自らの持っている模擬戦用の剣を横にしていく。

 その動きにヒルバスは動揺―…、してるな。

 だが、その表情を見続けて、ざまぁ~しているほどの暇はない。

 これが今の模擬戦でヒルバスに勝つために俺ができる唯一の手でしかないのだから―…。

 横にした剣をヒルバスの腹部に狙うのだった。

 そして、ヒルバスに俺の持っている模擬戦用の剣を当てることに成功する。

 「グッ!!」

 よしっ!!!

 そして、ヒルバスは後ろに倒れるのだった。

 「そこまで!!!」

 こうして、俺は初めてヒルバスに勝利した。

 「う、しゃぁ――――――――――――――――――――――――――――――。」

 ついつい、勝利した嬉しさから声を張り上げるのだった。


 それからしばらくして―…。

 「ランシュ君、あの攻撃では隙を突かれてしまいました。」

 と、ヒルバスは、俺に向かって言う。

 「まあ、去年は、剣も初めてだから、どうなるのかわかっていなかったから―…。まさか、去年のトラウマが勝利へと繋がるとはな!! だけど、俺はヒルバスよりもまだ弱い。俺はもっと強くならないといけない。」

 俺の言葉に対して、ヒルバスは少しだけ、表情をきつくする。

 この時、勝利に少しだけ浮かれていたかもしれない。油断していた。

 俺、気づけ。

 「そうですか―…。」

 その後、俺は何回か模擬戦をすることになったが、ヒルバスを倒すために集中していたために、勝利することはできなかった。


 その日の夜。

 俺は外に出ていた。

 騎士団の敷地の中の森だ。

 そこには、ベルグがいた。

 「やあ、一年ぶりだね。ランシュ君。」

 「ああ、久しぶりだ、ベルグ。」

 俺は、今日の夕方に俺の部屋に鳥が一羽おり、窓をガラスが割れないように上手くつつくので、鳥がいる窓の方へと向かう。

 その鳥は、右足に一枚の紙が結ばれていたのだ。

 その結ばれた紙の結び目を(ほど)き、紙を広げる。

 そこには、文字が書かれていた。


 ―深夜、鳥が鳴く時に、騎士団の敷地内にある森の中で ベルグ―


 そういう手紙があったので、俺はその時間に人があまり入り込んでこない森の中にいるのだ。

 そして、深夜になって鳥が鳴いたので、この場にいる。

 もちろん鳥は、俺とともに外に出ると、勝手に飛び出して、どこかへと行ってしまうのだった。

 鳥の大きさは小鳥を少しだけ大きくしたほどであるが―…。

 「ランシュ君、騎士団での生活には慣れたかな。」

 「ああ、慣れた。慣れない方がおかしいだろ。」

 「そうか、それは良かった。君にとっても騎士団で騎士になる方が目的を達成するのには一番だからね。」

 「そうだな。俺の目的は―…、レグニエドとエルゲルダへの復讐だからな。」

 ガサッ!!!

 音―…、俺は警戒する。

 でも、逃げたような音はしなかったな。

 「なるほど。」

 と、ベルグは言うと、すぐに俺の目の前に消える。

 相変わらずどういう原理になっているのか理解できないが―…。

 そう俺が思っていると、ベルグは何かを抱えたまま俺の目の前に再度、姿を現わすのだった。

 そこには―…。

 「ヒルバス。」

 そう、ヒルバスがランシュに抱えられていたのだ。

 どうして、ヒルバスが―…。

 まさか、付けてきたのか?

 どうする、抹殺するか。俺の本当の目的がリース王国の騎士団に知られてしまう。

 「抹殺するよりも、仲間にしなよ。彼―…、今日の模擬戦とやらを見ていて気付いたけど、剣術の実力も十分だけど、器用だからいろんな武器も扱いこなすことができる。頭もキレる。このような人物を失う方が、世界にとって大損だよ。それに、大丈夫。彼はランシュ君の秘密を知っても、敵対するようなことはしないさ。」

 また、おかしなことを言ってる。

 だが、仲間にできるのであれば、それが一番良い。

 必要以上に殺さなくて済むのは、俺の心が痛まなくていい。

 だけど、騎士である以上、どこかで、誰かを殺さないといけない。祖国の敵というの名の人々に対して―…。

 「ランシュ君、何でレグニエド王への復讐を―…。」

 ヒルバスは目を鋭くしながら、俺にレグニエド王への復讐の理由を尋ねてくる。

 ここは話さないといけないパターンだろう。

 ああ、話そうか。

 「まず、クルバト町という町を知っているか。」

 「クルバト…町。確か、去年、アルデルダ領の領主エルゲルダと増税政策で対立してクルバト町の町長が町民を洗脳したということで、その洗脳を解除するために仕方なく、町を燃やしたという事件ですか。それが―…!!!!」

 ヒルバスは、リース王国やエルゲルダにとって都合の良い情報を言う。

 世間に認知されているあの事件に関しては、ヒルバスのさっきの言葉で説明される。

 一般常識になっている。

 「その中には嘘が大半だ。俺が言うことが事実だ。この目で、そのクルバト町の事件を見ているからな。まあ、領主たちの陰謀はベルグから聞いたことだし、ベルグは去年まで宰相で、実際にクルバト町の中にその日、俺と出会って、入っているのだからな。」

 ヒルバスは急に静かになる。

 俺は真剣な表情で言う。

 「俺はクルバト町の唯一と言っていいほどの生き残りであり、洗脳されたというのは確実に嘘だ。燃やされた日も人々は普通に過ごしていたし、変な意見などはでていなかった。」

 この言葉では、説得力が低いような―…。

 「俺が付け加えて言おう。厳密に言えば、クルバト町の町長が町民を洗脳したのは、嘘だよ。それに、俺はその複製資料をちゃんと持っている。ここに―…。」

 そして、ベルグはその複製資料を出して、俺に渡し、俺はそれをヒルバスが見やすいようにするのだった。

 複製資料に書かれている文字をヒルバスが目線で覆い、最後に両手で掴むのだった。

 「嘘!!!」

 ヒルバスはあり得ないという感じで言う。

 その表情と声を聞いたベルグは、冷静な声で言う。

 「事実だ。複製資料だけじゃない。その証拠も俺の優秀で信頼できる部下に調べさせている。そう、クルバト町は、アルデルダ領の領主エルゲルダの増税政策に反対したために、燃やされたのだ。エルゲルダの怒りを買って―…。それをリース王国の現王レグニエドはエルゲルダの嘘を信じて、その話に乗っかってしまったのだ。エルゲルダの嘘を確かめもせずに―…。」

 ヒルバスは明らかに動揺している。

 もう、いい加減―…。

 「嘘だよね。」

 「残念ながら、事実だ。ランシュ君はクルバト町の生き残りであり、町長から洗脳などされていないし、罪のない子どもをも実際に殺している。ランシュ君の妹もその時に殺されている。」

 ベルグは事実を述べていく。

 そこに嘘が混じっているかもしれないという思いは、俺にはなかった。

 それしたところで、俺の復讐が止まるわけがない。

 「わかった―…。ランシュ君に協力するよ。」

 「そう、君は賢いし、それに―…、器用だし、騎士としても強くなると思うよ。俺の見る目はあるから―…。」

 そして、ヒルバスは俺の復讐に協力するようになった。

 なぜ、ヒルバスが協力するようになったかは、この時は考える余裕もなかった。

 まあ、後に知ることになるかもしれないが―…。

 そして、ベルグは、ヒルバスが騎士として強くなることを平然と言うのだった。

 こいつに人を見る目があるか―…。

 まあいいや。

 こうして、俺はヒルバスという協力者を得ることになり、ベルグはすぐに消えてしまうのだった。

 その後、俺とヒルバスは、リース王国の騎士団の宿舎寮の中の自分の部屋にそれぞれ戻っていくのだった。


第128話-5 復讐のための準備 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。


次回の投稿に関しては、完成しだい、この部分で次回の投稿の日にちを報告すると思います。

では―…。


2022年1月17日 次回の投稿分が完成しました。次回の投稿は、2022年1月18日を予定しています。


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