第128話-3 復讐のための準備
カクヨムで『ウィザーズ コンダクター』を投稿中。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
アドレスは以下となります。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ランシュとヒルバスの指導にラウナウがつくのだった。大丈夫なのか?
俺とヒルバスの紹介が終了した。
そして、騎士団の団員たちはそれぞれ解散していくのだった。
「任せたぞ、ラウナウ。」
「おう、任せとけ。リーウォルゲ団長。」
リーウォルゲ団長は、ラウナウに呆れるのだった。
自分で指名しているのだから、今更、他の騎士に変更することはできない。
そう思っているのだろう。
「わかった。わかったから、くれぐれも変なことはするなよ。」
「立派な騎士にするから、大丈夫だ。気に病む必要はないのだよ、リーウォルゲ団長。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
ラウナウは、心配するなと団長に言いながら、笑いあげるのだった。
声デカいし―…。
ヒルバスの方は、表情を一切変えていないし―…。
ああ~、こういう奴みたいにポーカーフェイスな表情が重要なんだよなぁ~。
と、少しだけ思ってしまう―…。
俺もこういうポーカーフェイスの表情を覚えないとなぁ~。
そして、リーウォルゲ団長は、どこかへと去って行く。これから仕事なのだろう。
俺たちはラウナウに案内され、騎士が模擬戦をおこなうための場所に連れていかれる。
「ガハハハハハハハハハハハハハハ、着いたぞ。ここが今日のお前らの訓練場だ。名前は、表情をあまり変えないヒルバスと、ベルグの奴に紹介されたランシュか。まあ、俺にとっては誰かの推薦なんてどうでもいいが―…。ここで大事なのは、実力だ。」
ラウナウは、笑いあげながらも最後の方では、真剣な表情で言う。
その差が、本当なんだと当時の俺には感じられた。
ビビってしまう―…、この時の俺の状態だ。
「まあ、二人ともまだ子どもだ。一人前には十年ぐらいでなってもらえればいい。それに―…、お前ら新人にも、リース王国が所有している天成獣とか言う特別の生き物の力が宿っている武器が扱えるか試す「騎士試し」にも参加できるからなぁ~。ちなみに、俺はダメだったが―…。」
ベルグが天成獣とか何とかは言っていたような―…。
まあ、天成獣とかいうのがどういうのかは理解するのは、その「騎士試し」でその武器を扱えることがわかってからだ。
期待しすぎず、騎士としての実力をつけていくしかない。
それが前提だ。
「だけど、一度失敗したとしても新たな武器が手に入れば、再度、参加することも可能だけどな。そこは運ってやつだ。」
「そうなんですか。私としては、やってみたいですね。」
と、ラウナウの言うことに、ヒルバスが反応するのだった。
「そうか、ヒルバス。まあ、あれは一種の運試しのようなものだからなぁ~、運が良ければ天成獣の宿っている武器を手に入れられるわけだ。もちろん、リース王国を離れる時には、返還の義務があるみたいだがの~う。」
「返還の義務があるのは何か勿体無いですが―…、天成獣の宿っている武器が扱えるなら、相手国との戦争では、百錬錬磨も夢ではないですね。」
ヒルバスは、目を輝かせながら言う。
確かに、天成獣というものが扱えるのなら、それは俺の復讐にとってもどれだけの力になるか。
まあ、運の要素があるし、騎士としての純粋な力をつけないとな。
「まあ、そうは言うが、騎士としての実力をつけなければ、ただの宝の持ち腐れでしかないがな。だから、双方ともに今日は、実力を測ることにする。だから―…、二人に模擬戦をしてもらう。さあ、双方ともにリングに上がってもらおうか。武器は木剣で十分であろう。」
そうラウナウが言うと、俺とヒルバスに木でできた剣を一つ渡されるのだった。
俺は、剣というものを始めて持ったので、疑問に思うのだった。
どう扱えばいいのか。
見た感じでは、こう剣先の方が尖っているから、前に出して、相手を突くのか?
まあ、分からんが、やってみることにするか。
とにかく、俺の実力はたぶん、このリース王国の騎士団の中では一番下なのは確実だ。
俺は、すぐにリングへと向かう。
リングに上がって、広いなぁ~と思いながらも、ここから落ちたら、大怪我しそうに感じるのだが―…。
そうならないためには、自分で何とかして実力をつけろということだろうか?
それよりも、戦うか。
俺はとにかく、構えようとする。
「ランシュ、お前、剣の持ち方もわからないのか。ナイフを持つような感じだぞ。」
ナイフ―…。
ああ~、なら、こうだな。
そして、ナイフは持ったことがあるので、それと同じように持つ。
剣もそれでいいのか~。
なら、扱い方も切るという感覚で十分か。
「ナイフと言っただけで、剣を持てるようになるとは―…。」
悪い意味で、俺、目立ってるなぁ~。
それでも、やるべきことは決まってるんだ、やってやるだけだ。
「ランシュ君、どうして君が騎士団に入ってきたかはわかりませんが、今のようなままでは、試験を受けた候補者たちが浮かばれませんよ。」
ヒルバスが言う。
それぐらいはわかってる。
こっちも必死。
まずは、喰らいつく。
どこまでやれるか、試す。
俺はもう、戻れはしないのだから―…。
「両者とも準備はできたか? できたなら始めるぞ!!」
ラウナウが言ってくる。
答えは決まっている。
「ああ、準備は完了だ。」
準備の仕方も知らない俺が、いくら準備しても無駄。
なら、出たとこ勝負だ。
「完了です。」
ヒルバスの表情は、俺を見下すものだ。
今はそのままでいい。
俺は、地獄を見てる。あの日燃え盛る町、そして、ヒーナと母さんが殺されるという地獄を―…。
お前らには、想像できないだろう。
だから―…。
「わかった。じゃあ、試合開始!!!」
ラウナウの宣言で試合が開始される。
俺は、相手の動きを待つ。
警戒はして、損はない。
「攻めてこないのですか、ランシュ君。ならば、こっちからいかせていただきます。」
そう言うとヒルバスは、俺の方へと向かって、走りながら来る。
俺へと攻撃を仕掛けようとしているわけか。
いや、待てよ。
あいつの動きを真似れば、いいんじゃないか。
騎士団に入団するために、騎士として実力を示しているのなら、剣とかいう武器の扱い方もわかっているはず。
ならば、この剣で守りながら、ヒルバスの剣の動作を覚えるんだ。
今、俺がしないといけないことだ。
ヒルバスは、俺の目の前に近づき、剣を上から下へ振るうのだった。
手に当たると痛そうなので、木剣の剣先で立てるようにして、守るのだった。
そして、俺とヒルバスの木剣が衝突するが、するっと滑り、俺の左肩に当たるのだった。
………………。
「痛ぁ――――――――――――――――――――――――――――――――。」
この時、俺は剣の扱い方を知らなかった。
そして、同時に、ヒルバスの一撃が強かったために、その痛さに我慢できず、声を出してしまうのだった。
ああ、あの時は痛かった。
もし、今の俺がアドバイスできるのなら、言ってやりたい。
もう少し頭を使え、と―…。
一時間は経過した。
左肩の痛みは、しだいにおさまっていくのだった。
「ランシュよ、俺は初めて見たぜ、剣を突き立てるように守る奴を―…。まあ、大体どういう実力なのかはわかった。ランシュ、お前は剣を握ったことすらないのか。それにしても、なぜ、ベルグ様は君のような存在を―…。」
リース王国の騎士団に入れたのか。
まあ、俺はその理由を知っているが、それでも、終える義理はない。
それにしても、剣を突き立てては守らないのか―…。
まあ、次からそうしなければいい―…が、しばらく、対戦することすらないだろう。
「ランシュは、剣の基礎からな。」
仕方ない、剣をこの模擬戦で初めて握ったのだから―…。
ヒルバスの方も、俺を見下しているのか?
俺は、ヒルバスの方を見ると、そのように感じた視線だ。
「はい。」
そう、返事するしかなかった。
「ヒルバス、お前の実力はあの一筋で大方はわかった。さすが、この年齢で騎士団の入団のための試験に合格するだけある。剣筋が良い。だが、あくまでも、合格できるだけであり、雑さもあるし、まだまだ駆け引きの面では拙いところがありすぎる。まあ、二人ともまだ若すぎるぐらいだ。この五年で、半人前にはしてやるからな。これから、俺のことを先輩と呼ぶように―…。」
そして、ラウナウ、いや、先輩の指導が始まるのだった。
俺がリース王国の騎士団に騎士見習いとして入団してから、三カ月が経過した。
俺は剣の基礎を先輩から学んだ。
「ランシュ、踏み込みが甘い。」
「はい!!!」
俺は、この頃、周りから、何で辞めないんだとコソコソ言われてる。
たぶん、俺に聞かれないようにしているように見せかけていて、俺に聞こえて、自主的にリース王国の騎士団を辞めるように祈っているのだ。
俺を追い出せば、罪悪感を感じてしまうからだ。直接的に追い出すようにすれば―…。
そんなことには耐える。
俺には、目標があるのだから―…。
一方で、ヒルバスは、もうすでに、他の騎士団のメンバーと剣の打ち合いをおこなうほどの実力までになっていた。俺よりも成長が速くて、追いつけるのか心配になってしまう。
「だいぶ、良くなったぞ、ランシュ。俺からすれば、剣術を始めて、三カ月でここまで成長するとは―…。ヒルバスのような天才とは違うが、お前も十分にすごい方だからな。」
先輩は俺を褒めるのだった。
だけど、俺は、復讐をなさないといけない以上、ヒルバスを越えないといけない。
そうしないと、リーウォルゲ団長やリースの騎士団の団員をこえて、レグニエドに復讐することはできない。
それがわかっている以上、焦ってしまう。
「ランシュ、焦っても強くはならないぞ。騎士とは、人として自らを律し、信念のために生きる姿ができるものを言う。だから、表情を出しながらも、どこまで出せばいいのか律し、揺るがぬ信念を持たねばならない、俺らは―…。その生き様を見せるのだ。周りにな。」
先輩は熱い人だと思う。
だけど、俺の目的が復讐である以上、後ろめたく暗いものでしかない。
先輩に俺の復讐のことは言う気にはなれないけど―…。
「はい!!」
だいぶ、先輩に毒されているような―…。
騎士としての生き方は、先輩のように暑苦しくはなりたくないが、それを除いては先輩のあり方は尊敬するし、そうなりたいと思ってしまう。
だけど、再度言うが、先輩のように暑苦しくはなりたくないが―…。
こうして、今日も訓練を続けていく。
訓練とは別に、リース王国の地理や歴史、周辺諸国の情勢などの勉強もさせられた。
勉強自体は興味があったので、させられたと言っても苦痛ではなかったし、教えてもらえ、自分の視野も拡大したと思う。
さらに、見習いだから給料は安いが、休日などにリース王国の騎士団が所有する図書館が騎士および騎士見習いならば利用できるので、そこでゆっくりと知識を吸収するのだった。
そして、今日はその休日で、図書館にいる。
「ランシュ君は、本当に、勉強熱心だねぇ~。あんまり騎士の方々は寄られないのに―…。感心するよ。」
図書館司書のミネイルさんが声をかけてくれる。
ミネイルさんは、元々、初対面の人とコミュニケーションをとるのが苦手だが、本が好きで、知識や教養もあるので、たまたま知人の勧めで、この図書館で司書として働くようになったという。
俺は良く、図書館を訪れるので、ミネイルさんとは話す間柄になっていた。
ミネイルさんには、リース王国の騎士団で教えられている以外に、いろんな科学の本などで分からない部分を教えてもらってもいた。
「でも、騎士さんには、そういう難しい知識というのはいらないような―…。」
騎士という人々は、国を守ることや治安の維持、他国との戦うことが仕事である以上、勉学は騎士に必要なことを学んでいればいい、もしくは学ぶ必要がないと考える騎士が多い。
俺は、どういうわけか、いろんなことを知りたいと思う。
それに、復讐した後のことを考える余裕はまだ、この時に存在はしなかったが、貧しくてできなかったことができ、それが楽しいと感じられるという純粋な気持ちもあった。
「純粋に学ぶのは楽しいですから―…。知っておいて損はないですから―…。」
「そうなの。珍しいね。」
ミネイルさんは、俺を不思議な騎士見習いとして見るのだった。
それでも、勉強は楽しいのだから―…、知識は知っておいて損はないし、知っていることによって、要人たちの会話に加わることもできる可能性が存在しているのだから―…。
この休日は、昼食も忘れて、図書館で勉強をするのだった。
その図書館からの帰り道で―…。
「ランシュ、図書館とか言っているのか?」
先輩は声をかけてくる。
そう、先輩と偶然、ばったりと一緒になるのだった。
「はい、勉強はリース王国の騎士団に入団するまでできませんでしたし、それに、何かを学ぶということは楽しいです。俺の目標である王族の護衛となると、それなりに知識を知っていた方が話もできますし、信頼もされると思います。」
まあ、このような理由はないではないが、本当は、勉強していて楽しいし、知識を知ることが重要なのは理解できる。それに、俺の復讐のための情報も集めやすいかもしれないと思ったからだ。
「そうか、ランシュ、お前は本当に賢いよなぁ~。というか、俺にはそういうのはカラっきりだし、ランシュは騎士ではなく、文官になった方がいいのではないか?」
「アハハハハハハハハ、図書館司書の人にも前に言われましたが、俺が調べたことによると、コネが相当必要なので、俺は実力がある程度重要とされる騎士で十分です。」
文官になったところで、復讐に成功しても、鍛えていない以上、逃げるのは難しいし、普段から鍛える騎士の方が俺にとっても都合が良い。
「そうか、ガハハハハハハハハハハハハハハ。頑張れ、ランシュ。俺はお前を応援してるぞ。」
こうして、先輩と他愛無い話をして、騎士団の寮に戻っていくのだった。
第128話-4 復讐のための準備 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
ここしばらくランシュ視点で物語は進んでいきます。
次回の投稿に関しては、2022年1月15日頃にもおこなうと思います。
ちょうどこの部分の後書きを書く数十分ほど前に仕上がりましたので―…。
では―…。